読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

男子高校生の有栖川千早には人に言えない秘密がある。なんと訳ありで少女服のモデルをしているのだ。謎の美人モデルのセレーネにキスされて揺れる乙女心ならぬ男心。そんなさなか全寮制男子校の月夜の宮学園に転入した千早は同じクラスにモデル仲間の白鳥麗音の姿を見つけてどっきり。おまけに気になる意地悪な美形生徒会長の月城輝夜との間に新たなる秘密が……。(裏表紙より)
イラストがかわいい。中高生が好きそうな絵だわあ。そして作中の男子たち、みんなフェアリーだよ! 妖精さんすぎるよ! かわいらしいなあ。
全体的にもうちょっと学園ものをー! という気持ちでした。女装男子のバレる?バレない?の学園生活が見たかったよー。上記の紹介文だけで全編の説明がされてしまっているので、ちょっと残念。本編もシーンや話を細切れにしてしまっていて、小説というよりはショートショートを繋ぎ合わせただけの話みたいだったなあ。でもフェアリー。妖精すぎるのでそれはそれでありかもしれない!

父を亡くし、天涯孤独となった佐原左記子は全寮制の谷津柱高校に編入した。
理事長の娘・倉宮凪に学園を案内されるのだが、ここには、なんとも奇異な規則が! ——この地に伝わる怪談の噂話をしてはいけない。破った者には不幸が訪れる、と。
やがて、自身の中に潜む不可思議な力が呼応しはじめていることに気付いた左記子は、既のところで甲斐に助けられるのだが……。
禁忌の扉を開く、本格学園ホラー登場!!(裏表紙より)
全寮制学園もの。ホラーなの、ミステリーなの? とわくわくして読みました。そうか、その方向の話か!
怪談と謎の校則、持ち込めるものは限られている学園、洋館の校舎、訳ありな生徒たち、お茶会、不思議な力などなど、閉鎖的な学園での要素がたっぷりでした。楽しかったー。でももっと学園してもいいのよ。
登場人物たちも一癖二癖あって面白かった。できることならこの学園で全部を解決してほしかった気もするけれど(学園ものが好きすぎて……)、続きはエージェントものになるんだろうか。できることなら、凪と対照する女の子に蛇多哩姫に勝ってほしかったなあ……。左記子はロストしてしまって。

冷酷さから〈氷雪王〉とも渾名される、皇帝エドリックが皇后に選んだのは、地方伯の娘にすぎないアイリス。逆らうことなどできるはずもなく、アイリスは幼馴染みへの淡い恋心を殺し、皇帝との華燭の典に臨んだ。しかし皇帝は渾名通り情のない男だった。互いを名前で呼ぶことすら許さず、〈皇后〉として公務を果たし、世継ぎをもうけることだけを要求し…!? 2010年度ロマン大賞受賞作!(裏表紙より)
色んなところ評判をお聞きするので、読んでみた。
はー……面白かったぁ……。
タイトルやイラストのふんわり感に騙されてしまいますが、内容はとても大きな歴史の一部を覗き見るもので、『雄大なる時間』を感じる、儚くも美しい歴史の物語でした。これ、味付けが違ったら普通の政略結婚小説になると思うのだけれど、構成がすごい! 悲劇的な結末を予感させながらも、歴史が「語る」部分と「語らない」部分が、もう見事で! 結末は後世の人々や読者しか知り得ないというのは、ぞくぞくときます。面白かった。
アイリスは、最後まで自分らしさを失わない、可憐なヒロインで。嫌みっぽいところがないのが好きでした! 本当に、下手するとこれはうっとうしくなる気がするので、さらっとしながらも心をつかんでいく様が描かれていてにやにや読んでしまった。
面白かった!

時計塔に住む純白の少女怪盗・クリスは、永遠の魂をもつ青年・クリストルとともに美術品を盗み、名作に残る悲しみを救っていた。幼なじみの少年探偵・ササラと敵対し、誰にも言えない秘密をかかえながら、罪を重ねるクリス。そんな中、警察から挑戦状を受け、危険な勝負がはじまる——!
少女が隠し続けた真実と選択した答えとは!?
WEBで人気の小説が、大幅加筆に10年後の未来編書き下ろしを加え、完全版として登場★(裏表紙より)
いいお話だった! 本当に、「物語の世界」という感じだったな。不思議で、でも心地よい世界のお話だった。
最後まで怪盗と探偵で突き進むのかと思ったら、そっち方面には行かず、街(世界)を救うというお話になっていって……。悪役の存在が突然で戸惑ってしまった。意外な真実に驚きもしたけれど、主人公が秘密を抱えている人物だというのはすごく面白いな。時計塔の怪盗という名前は誰のものだったのか、というのを考えるのが、すごく楽しい。
ハッピーエンドで終わってよかったー。

少女マンガ雑誌の当時の掲載作品を振り返りつつ、作品を論じたり、作家を論じたり。どちらかというと、風俗的なこと、読者層や掲載誌についての話が印象的でした。章ごとに作品の印象的な台詞を用いて、「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな!」[宗方仁 『エースをねらえ!』]、読者たる少女がどういう風に読んでいたかというのに触れています。それから時代をどんどん経て……と現代になっていくにしたがってちょっと内容が薄くなっていっている気がするんですが、池田理代子とか山本鈴美香から24年組、吉田秋生の章は面白かったです。
コミケが報道で取り上げられる今、どんな風にマンガが受け止められているか知りたいなあと思うので、また探してみよう。

白い時計塔に住む純白の少女怪盗クリスは、呪いによって永遠を生きる青年・大怪盗クリストルと共に月夜を舞って美術品を盗む。そんなクリスを、漆黒の少年・ササラは恋愛感情を隠しながら探偵として追いかけていた。幼なじみの彼の制止をふりきって、怪盗を続けるのは——ある目的のため。
あなたは自らが呪われ孤独になると知りながら、ひとの悲しみを救えますか? 残酷な運命に立ち向かうピュアな怪盗が華麗に登場!!(裏表紙より)
てっきり西洋風世界観のファンタジーなのかと思ったら! 独特の価値観のある世界で面白いなあ。これだったら15歳の怪盗、15歳の少年探偵が警察に協力している、という設定が少女漫画みたく無茶でなくて不自然でないなあ。面白いなあ!
幼なじみ少年少女の距離感とか、子どもを見る大人の目とか、それでもひたむきに己の思いに生きていく人たちとか、読んでいて自然と応援したくなる登場人物たちだな、と思います。恋愛に重きが置かれていない感じがいいなあ。ちょっとだけ児童文学寄りのような。でも設定は非常にマンガ的で、その比重が心地いい。

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々——。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。(裏表紙より)
伊坂さんは何故かあんまり手に取ったことがなくて。これは借り物(ごめんめっちゃ長いこと……)
無茶苦茶な男・陣内と、それに巻き込まれる人々の視点から描く短編集で、目の見えない青年・永瀬が解くちょっとした謎もすごいですが、そこから更に未来の時間軸になる家裁調査官になった陣内の頃の話も、いい話で面白かった! 少年が絡むとやっぱり爽やかでいいなあ。「チルドレンII」はすごく好きだった。

さあ、お聞きなさい、グリマー姉妹のおとぎ話を。美しいけれど邪悪な王女や可憐な姫君をまどわす魔物の王子、闇の公子に恋した乙女や狼に変身する美少女たちがくりひろげる、美しく妖しく残酷な九つの物話を……。ダーク・ファンタジイ界の女王がグリム兄弟ならぬグリマー姉妹の名を借りて、「白雪姫」「シンデレラ」「美女と野獣」「ハーメルンの笛吹き」などおなじみの童話をモチーフに織りあげた、魅惑の幻想童話集。(裏表紙より)
面白かった! 好きだー好きだー!
おとぎ話のパロディなのですが、このダークファンタジーの、おとぎ話を別の形で表現したお話の虜になってしまいました。おとぎ話とはこういう側面もあるべきだよ!(と知った風な口をきく)
紀元前から未来にまでそれぞれのお話の時代が設定されているのが、とても面白いなあ! 特に「墨のごとく黒く」なんか、おとぎ話や不思議がそれまでと比べて少し変質した、というような20世紀を描いていて、その後の未来のお話「緑の薔薇」は再び神秘が戻ってきた時代で、という風に読めて、すっごく興味深かった。
「黄金の綱」が好きです。ご存知の方は「お前やっぱりロマンスか……」と思われるでしょうが、このロマンスがただものでない。人形として育てられた少女が、魔女の道具として扱われながら、最後にあっと声をあげる童話のような結末を迎える。ダークファンタジーがほとんどのこの本の中で、翻弄されながら目覚めていくような少女の物語の結末は光り輝き、けれど青い闇のような空気を嗅がせてきて、すごく好きだと思いました。
この本すごく好きだー。幻想物語、特にメルヘンとダーク方面がお好きな方にオススメ。