読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

父の旅のみやげに一輪のバラの花を頼んだため、心優しいベルは、見るも恐ろしい野獣の住む城へ行かなければなりませんでした。さて、野獣は彼女に何を求めたでしょうか……。
詩人ジャン・コクトオが絶賛し、映画化したこの美しい幻想的な物語は、二百年も前に書かれながら今日も人々の心を捉えます。他に「三つの願い」等珠玉の十四篇収録。(裏表紙より)
古典的な児童文学(?)を読みたいなと思って手に取りました。読み聞かせるような穏やかな文体がとても心地よかったです。教訓的なお話ばかりなので、読む時が合わなければ鬱陶しいと思うかもしれないけれど……。
基本的には教訓とロマンスが多く、王様とお姫様、貴族の娘、仙女が登場する話です。心掛けを立派に、誰が見てなくとも神様が見ている、という西洋的な考えがよく現れた話ばかりだと思っていたら、解説を読むと話の元の元にあたる部分には民話があるよう。
「美女と野獣」以外は知らない話ばかりでしたが、面白かったです。
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女王様、人生最大のピンチです! 銀行預金は差し押さえられ、財布の中身はたったの千円。ガス代さえ払えないのに、住民税を納めろと、区の職員“タイノーセイリマン”に追い込みをかけられる死闘の日々。青息吐息の家計を尻目に、またもや買い物してしまうのは何故!? 女王様は今日も崖っぷち人生をひた走る! 解説・森 奈津子(裏表紙より)
2に続いて、逼迫した家計。1の頃と比べて買い物の話も少なくなっていますが、借りる話はどんどん大きくなっている……。お金を借りるというのが恐い私は、なんだか想像がつかない世界だ。
中村さんが最後の方になって繰り返しかかれている東電OL。依存症というものに、2で登場した、しゃべり場の若者たちの話が思い出される。強迫観念とか、執着。自分の価値を認めてほしいということなのかなと思う。飢餓感というのは、自分の中で一番苦しい感覚で、何をしても満たされないということは生きることに意味を見出せていないということで。それがどういう方向で表に現れるか、が足掻きやもがき、生き方なのかなと思う。

はた迷惑な兄の身代わりに、乙女劇団を立ち上げることになったミレーユ。「惚れ薬」を手にしたヴィルフリートは、恋煩いの末に大暴走! しかもいつもは冷静なリヒャルトも、今日は何だか積極的で……!? 最高の恋愛成就を願ってミレーユが仕掛ける、一世一代の熱演(もちろん男装)の行方とは……!?
かくして『身代わり伯爵』の駆け落ちを賭けた熱演がはじまる!?
恋の花が咲き乱れる、ハイテンション王道ファンタジー第4弾!(裏表紙より)
3巻からそれほど間を置かない日から始まる4巻。天然糖度高めでごちそうさまでした。リヒャルトがあれこれと悩んだり、触ったりするのに、もう身悶えが。切ない、甘い、ときめき! でにやにやしっぱなしでした。乙女劇団に「宝塚?」って思ったり、ぬいぐるみに「ネネちゃんのママ?」って思ったりして、コメディ部分にも笑いました。楽しかった!
もう本当に、リヒャルトの言動の数々にきゅんきゅんです。胸キュンしすぎて生きてるのがつらい。
ミレーユ本人が秘密に触れさせてもらえていないこともあって、陰謀部分がじりじりしてもどかしいんですが、続きがとても楽しみ。

祈らないルカナートの話「信じるならば君の心を」。上流貴族の令嬢シルヴィアナがどうしてそう考えるまでに至ったのか、ルカナートとの初対面とライオスとの恋「何度でも」。近衛隊三人組の日常「さても楽しき」。花祭りの夜の二人「だからひそやかに祈るよ」。『wonder wonderful』の番外編衆。
どれも素敵なお話でした。祈らないルカナートに始まって、祈るルカナートに終わるというのがにくい! 好き!
中編とも言えるページ数の「何度でも」がすごく好きでした。上流階級に生まれながら、柔軟な思考と知性、親しみやすさを持ったシルヴィアナが、どうしてそうなるに至ったのか、ということが描かれているのですが、ひとつひとつ新しい見方を見つけていくシルヴィアナがとても素敵な人でした。それを見ているルカナートもライオスも、新しい見方を見つけていって、うまくいかないことも、悪意もあったけれど、シルヴィアナが自分に出来ることを信じて前を向く様がかっこよかった。
半泣きで読んでいたのが、p144-146、特に「決して相手を非難しなかった」という一文。ここにすごく感動して、ぽろっと泣いてしまった。こういう人が、この世界にいたらどれだけ素敵になるんだろう。そういう風に。
おまけがー!! もうすごく嬉しかった!

歩いててふと気がついたら、あたし、幽霊になってた! 頭がぼやけてて何も思い出せないし、下を見たら自分の体がないじゃないの。生垣やドアをすり抜けて家のなかに入ると、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのケンカ。誰もあたしのこと気づきゃしない。でも、どうして幽霊になっちゃったんだろう……現代英国を代表する女流作家の、おかしくもほろ苦い時空を超えた物語。(裏表紙より)
幽霊が、自分が誰なのか、どうしたら呪縛から解かれるかの物語。後半になるまで話の進みがいまいち把握できなくて、ちょっと乗り切れなくて。子どもたちの日常生活を描いていても、なんだか荒んでいる気配があって、恐かった。大人たちが出しゃばらない、主人公や子どもたちの邪魔をするというところは、児童文学らしいなあと面白かった。でも、もっと弾けたファンタジーの方が好きだなあと思う。昔らしさを描いているのも好きなんだけれども!
中盤から後半にかけてが一番面白い。

「大きな森」の家をあとにして、インガルス一家は、広々としえた大草原での新しい土地をもとめ、インディアン・テリトリイへ幌馬車で旅だちます。いくつもの州を通りぬけ、ようやくたどりついた大草原に、とうさんとかあさんは力をあわせて家を作っていきます。ローラ六歳から七歳までの一年間の物語。(裏表紙より)
一作目『大きな森の小さな家』よりは事件がめいっぱい起こって、はらはらどきどきした。インディアンについて多少なりとも知識があると、読んでいると様々な言動が引っかかってしまう。そういう時代だったのだろうけれども。
お父さんの口癖が「終わりよければすべて良し」になっていたり、お母さんはなにかと「まあ、チャールズ!」と声をあげたり、メアリイが少しずつ子どもらしくなくなっていたり、ローラがお転婆でメアリイとうまが合わなくなりつつ会ったりと、変化が見られて面白かった。

高級ブランド品を求めて東奔西走の毎日。強欲にお買い物を楽しんでいたうさぎ女王様の元に、とうとう恐怖の住民税の催促が。支払いを求める区の職員“タイノーセイリマン”とのバトルは熾烈を極めることに……。はたして女王様の運命やいかに? 大爆笑の夫婦対談も収録した、好評エッセイ第2弾。 解説・清水草一(裏表紙より)
別世界過ぎて、この人ちょっと……と恐くなってきた。ブランドに取り憑かれているとしか思えない! でも周囲の人が「あれいいわねえ」って言ってるのを聞いてほしくなる気持ちはとてもよくわかる! でも金銭感覚が違いすぎてやっぱり恐い!
でも、そんな中で、途中で挟まった、真剣10代しゃべり場の話(p216)が、なんだかすごく響いた。
バス・ジャック事件について話していたようで、少年たちが語る内容に、中村さんが「ここまで彼らを追い詰めたのはなんだろう」と考えた、その内容。
(前略)「今の自分じゃダメだ」という漠とした不安感、そして「何かやりとげなくちゃ、何者かにならなくちゃ」という切なる強迫観念である。
今でもそう思っている自分は、ツイッターで叫んだ通り中二病継続中なんだなあと思う。

遊郭が集う天下の歓楽街——《胡蝶街》には、人やモノにとり憑く《影》を詠み、《影》を封じる《巫》と呼ばれる遊女たちが集められていた。胡蝶街一の巫と名高い少女・天花は、お祭りの夜、7年前に突然姿を消してしまった幼馴染の月長と再会する。喜びと戸惑いのなか、大陸からやって来た皇子からの依頼をきっかけに、ふたりの過去と運命と恋が動きはじめる——。栗原ちひろが描く、和風退魔浪漫ファンタジー開幕!(裏表紙より)
和風退魔浪漫ファンタジー。健気で明るい、胡蝶街一、もしくは世界一の巫と名高い天花が主人公。言動が一生懸命でかわいいです。でも芯はしっかりしていて、前向きなところが好感が持てる。
お話は、どちらかというと退魔がメインで、甘くはないんですが、不思議な言動と謎めいたところのある幼馴染み月長が気になりすぎて、読んでいる途中からそわそわ。単純にふわふわした人、天花が大好きすぎて身を立てようとしただけかなーと思っていたんですが、実ははっきりとはそうでなかったというところがすごく面白かった。天花好きすぎだよこの人……!
あと鳩羽に噴く。この人多分一番面白い。変態的な意味で。
月長と紺藍だったら、紺藍が好きです。自分でももてあましてる感がよいです。

オリンピックを控え、急激に変貌を遂げていく東京。下町の古本屋で働く七人の少年たちが、勉強会を始めた。夢は独立開業。その資金のため共同で積み立て貯金を開始したが、青春期特有の人間関係の難しさに悩む。少年から大人へと脱皮するとき、誰もが味わうほろ苦い体験を優しい筆致で描く自伝的青春小説。(裏表紙より)
小説というより、過去日記? 東京オリンピックが開催される年に、出久根さんは二十歳を迎える。その少し前から、古書店で修行中の若者たちが集まってどうこうする話が書かれています。
印象としては、現代的な文体の文豪の日記や日常、という感じ。人間関係を丁寧に描いている感じが、そういう風に取れます。あんまり文豪作品には詳しくないのであくまでイメージ。
事件らしい事件は、主に人間関係にあって、そんなありふれたわずらわしさがなんとなく楽しい。そんな年じゃないのに、なんだかすごく懐かしくて、とても楽しいなあと思うのだ。

附属中学から女子高に上がった亜矢は、中1からの親友である菜穂と寄り道するなどして「すこぶる平和な学校生活」を送っていた。ある日、いつもの散歩道で小学校時代の同級生・安藤くんに出会う。ぐっと背が伸びた安藤くんとの距離が縮まり心ときめく亜矢だったが……。
文庫書き下ろしで贈る、人気作『卵と小麦粉それからマドレーヌ』の3年後を描いた姉妹編。
〈解説・金原瑞人〉(裏表紙より)
主人公が菜穂から亜矢へ。『卵と小麦粉それからマドレーヌ』ではとても大人っぽく落ち着いていた亜矢の視点で綴られます。亜矢の目で見ているからか、それとも16歳になって周囲が、特に菜穂が追い付いたのか、亜矢の落ち着きが年相応に思えました。
『卵と〜』の菜穂は健やかな成長という感じだったのですが、亜矢は一度芽を潰され傷をつけられたところからの成長だったので、ちょっとだけはらはらしました。家族との齟齬やすれ違いもあって、自分の嫌なところを自覚している亜矢に、とても共感する。彼女の感じるものひとつひとつが、彼女でなければ感じられないことなのでは、と思う。
友達四人で外でお弁当を食べるというシーン。
お天気のせいじゃなくて、こんなふうにさりげなく特別なとき、わたしはふいに泣きそうになる。この平和であたたかな時間が永遠に続くことはなくて、それがわかっているから泣きたくなるのだとわたしは知っている。
大人になっていくことへの優しい目が感じられるので、すごく好きなシリーズだと思う。