読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

憧れの存在だった上級生の香澄と芳野に誘われ、舞台背景画を描くために三人の合宿に参加することを決めた毬子。しかし合宿前に「九瀬に関わるのはよせ」と香澄に対する忠告を見知らぬ少年から受ける。待っていた合宿が始まり、三人だった香澄の家「船着場のある家」にやってきたのは、忠告をした少年月彦と、毬子に思いを寄せてくる暁臣。五人の合宿は、やがて夏の日に起こった二つの事件を暴こうとしていく。
恩田陸成分補給。久しぶりに底知れないところで怖かった。
少女たちの幻想というのか、一枚の絵を見ているような。ちょうど、表紙の酒井さんの作品のような、絵がずっと連続して続いている感じ。
恩田さんの視点みたいなのをずっと感じる作品だった。あとがきにもあるように、恩田さんの、少女たちを見た時の思いがずっと滲んでる。それが多分、一人称で語られながらも、第三者が見ているような、絵を見ているような不思議な感覚を引き起こすんだろう。
一番好きなのは芳野の章「ケンタウロス」。香澄の「愛してるわ」の意味がラストでぐっと迫ってきて良かった。少女から少女へ、という愛なので、少々倒錯的と言えるのだけれど、暗黒さはないので、とても良かった。
最初のページの文は、意思みたいなのが語りかけてる感じなのかな。
夏に読む童話的小説。でも読み終わるとやっぱり怖い感じ。
PR

羊飼いの少年サンチャゴは、ある夢と占い師と老人の導きに従って、エジプトのピラミッドに待つ宝物を求めて旅立った。「前兆に従うこと」「大いなる魂」の存在を学んでいく少年は、やがて「大いなる魂」に到達する。そして最後にたどり着いたものは。
世界のひとつひとつを見て大切なものを学んで、世界と自分のつながりを感じる、という物語。教えというか、祈りというか、こうあって欲しいという願いが込められているように思う。
はっきりと言えないけれど、きっとこうだったら幸せなんだろうな、と思ってじんわりする。同じ系統の気がする「星の王子さま」みたいに死ではなく、より良い生について書かれているような。
少年が風を呼ぶところが感動する。自分まで風や太陽やすべてを書いた手と会話しているような気になる。
三人称で名前が最初に出ただけでほとんど出ないのは、童話や昔話を意識しているのかな。口伝えの物語となるように、という想いがあるなら、すごい。
これ平成9年が初版なのか。平成19年で29版。長く読まれてるんだなー。

1899年、トルコのスタンブールに留学中の村田は、英国人のディクソン夫人の元、ムスリムのムハンマド、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミィトリスと下宿している。彼らと日々議論を交わし、発掘に参加し、日本人と交流し、様々な神々と触れ合う日々。しかし帰還命令の帰国から数年、あの友たちは、第一次世界大戦の運命に巻き込まれ。
光が染みた。どうしてこんなにきらめくんだろうと思った。梨木さんの光は本当にラストにさあっとよみがえって射す。
村田たちの日々が、きっとどこにでもある普通の日々だった、けれどかけがえのない日々だった。
鸚鵡だから人馴れはしているだろうというのは見当違いである。最初は暴れて、知る限りの(多分)言葉で啼き立てた。
という一文から、(多分)の言葉に笑ってしまって、この瞬間から引き込まれていたのだと思う。
神様同士の喧嘩が面白かった。ちょっととぼけた感じになって、必死になったり被害を被ったりする村田たちがおかしい。
ねえ、私達はあの小憎らしい鸚鵡を、結局、随分愛したわねえ……。鸚鵡と、鸚鵡の周りの私達の笑い声を。
――友よ。
と甲高く叫んだ。
ぶわっと涙が溢れてきた。なんて光なんだ。
淡々としているのに鮮やかに描きながら、降り注ぐ淡い光を梨木作品は忘れていないように思う。越えていける強さというのか、きっとこれを思えば大丈夫というような、一瞬の輝きを感じる。
読んでよかった。
有川浩「クジラの彼」「阪急電車」「図書館革命」「別冊図書館戦争I」
クラフト・エヴィング商會「どこかに○いってしまった○ものたち」
澁澤龍彦「うつろ舟」
ステファニー・メイヤー「トワイライト7 赤い刻印」「トワイライト8 冷たいキスをあたしに」「トワイライト9 黄昏は魔物の時間」
樹川さとみ「グランドマスター! のこされた神の郷」「女神の刻印1 予言の守護者」「女神の刻印2 永遠の誓い」
田中啓文「ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺」
畠中恵「うそうそ」「ちんぷんかん」
川村次郎編「鏡花短編集」
森博嗣「黒猫の三角」
吉田浩美 「a piece of cake」
細音啓「黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで」
青木祐子「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスとつぼみの淑女」
今月面白かった本
・有川浩「阪急電車」
行きたくなったの意味で。電車のちょっとした関わりが面白かった。
・有川浩「別冊図書館戦争I」
べた甘でたいへん美味しかった。バトルするよりラブコメってた方がいいんでないか。
クラフト・エヴィング商會「どこかに○いってしまった○ものたち」
澁澤龍彦「うつろ舟」
ステファニー・メイヤー「トワイライト7 赤い刻印」「トワイライト8 冷たいキスをあたしに」「トワイライト9 黄昏は魔物の時間」
樹川さとみ「グランドマスター! のこされた神の郷」「女神の刻印1 予言の守護者」「女神の刻印2 永遠の誓い」
田中啓文「ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺」
畠中恵「うそうそ」「ちんぷんかん」
川村次郎編「鏡花短編集」
森博嗣「黒猫の三角」
吉田浩美 「a piece of cake」
細音啓「黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで」
青木祐子「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスとつぼみの淑女」
今月面白かった本
・有川浩「阪急電車」
行きたくなったの意味で。電車のちょっとした関わりが面白かった。
・有川浩「別冊図書館戦争I」
べた甘でたいへん美味しかった。バトルするよりラブコメってた方がいいんでないか。

19世紀イギリスのロンドン郊外にある仕立て屋「薔薇色」のドレスは着る人の心を映す。人々には恋を叶えるドレスと噂されていた。その店主クリスの元に、公爵家の令息シャーロックがドレスを依頼しにくる。ドレスを身につけるのは、足が動かなくなった妹フローレンス。フローレンスの秘められた思いと、ドレスの物語。
とてもしっとりとした物語だった。これは人物みんなが英語で話して、字幕をつける映画みたいにしたら綺麗だなと思う。
話は、主人公のクリスの話というよりも、あとがきにあるように「ドレスが主役」の物語。これは絵や映像でみたらきらきらしてうっとりするだろうな……!
クリスがたいへん落ち着いた女の子で好感が持てる。シャーロックが貴族の坊ちゃんしていて、まだ子どもであんまり好きじゃないけれど、クリスを引っ張っていくのはこのくらいがいいのかな。でももうちょっとシャーロックに大人の魅力を!
19世紀イギリスのロマンチックさが出ている感じで、ファンタジーをひとつまみ入れた具合がいい感じでした。続き物らしいので、どうなるか気になるところです。

サラデーニ家のウィーア姫は、恋人を人質に取られて叔父デガルと無理矢理結婚させられようとしていた。
彼女を助けるため、シィンは単身乗り込むが、デガルは術師を雇い、シィンに立ちふさがる。
婚礼から救出の盛り上がりがよかった。ウィーア姫が完全にヒロインなんだけれど、でも主人公は女の子だという。
ラダストールの「きれいだ」はちょっと不意すぎるんじゃないかなと思ったけれど、うっかりときめいた。もうちょっと彼自身の視点が書かれていたら、もっとときめいただろうに。
デガルがエロかったけれど、かなり悲しい人だった。もっと長い話になって、強大な敵として書かれていたら、その切なさが倍増したと思う。
まとめると、もう少し長く書いてほしかった! ということなのだろう。
一番のシーンは、階段を下りてきたシィンが、ウィーアと抱き合うシーン。完全に戦士とお姫様の図だけれど、心のつながりが見えるような気がして好きだった。「——愛してる」って。

夢の中に繰り返し現れる、自分とそっくりな少女を探し求めて旅を始めた、女剣士シィン。彼女が訪れた街には『海の獣』の伝説が伝わり、そしてその地を守るサラデーニ家には、たった一人の姫がいた。
樹川さん得意の鈍感者は、この話では主人公シィン。美少女なのにまったく気付いていない。しかも剣の腕はすばらしい。そしてうわばみ。
神々がまだいて、幻獣が存在してという世界は大好きだ。しかも古い契約に縛られた獣が転生してずっと娘を守る、という設定はかなりいい。
シィンが自分の出自を探りながら、もう一人の自分であるウィーアを追い求める辺りは、無鉄砲なところが分かる気がする。それほどシィンは自分自身の正体を知りたいと心の奥底で思ってたということだと。
ヒーローであるはずのラダストールがとてもオペラシリーズのソラに見えてくる。もうちょっと人っぽいけれど。つかみ所がないというか、全部を知りながら人間の形をしている辺りが、とても。

名詠と呼ばれる、色を媒介にして行う召喚。赤、青、緑、黄、白。そして異端の夜色。赤を学ぶクルーエルは、異端の夜色名詠を学ぶネイトと出会って。
挿絵のせいなのか、優しい物語のせいなのか、透き通った印象の物語だった。
名詠式が綺麗なんだよなあ。何気なく印象はアルトネリコだった。
クルーエル自身が夜色名詠を学ぶのではなく、クルーエルが夜色名詠を学ぶネイトと関わる、という位置関係が面白いなと思った。
歴史が続くように、先生たちにも学生時代があって、というのが好き。この設定がある時点で、物語はかなり優しくなってるような気がする。クルーエル一人ががんばるのではなくて、ミオがいるところとか。イブマリーがいいな。彼女が最後に登場するのが、何よりも優しく切なかった。

「当麻亡命事件」後の話を、郁と堂上の恋愛を中心に描いた「別冊」。激甘注意!
大変おいしゅうございました、というほどの激甘小説。バカップルすぎる。
爆笑したのが、『一、「明日はときどき血の雨が降るでしょう」』の、返り血浴びてイイ笑顔な郁のシーン。それに対する堂上の態度がかなりイイ。「もうな、俺はな」の言葉がかわいいと思ってしまった。そしてその後の台詞はやっぱり殺し文句だった。
『二、「一番欲しいものは何ですか?」』では堂上の家族に対面。いい人たちで良かった……。ラストが甘くて顔面を覆った。郁が一番欲しいのがキスとか! それに応える堂上とか!
『四、「こらえる声」』はいいのか、書いちゃっていいのか、という感じだった。大人だもんね二人ともそうか気持ちよかったのかタイトルから内容を察しろ! という感じ。「そして俺はムツゴロウさんか!」で大爆笑した。堂上教官、何気なくツッコミ上手くなってませんか。
柴崎と手塚の関係もいい感じだ。柴崎がなにげに気持ちを隠しつつ接近、手塚は完全意識しながらもウブイ。二人の展開もかなり気になるところ。

国内の原子力発電所でテロが発生。当麻蔵人の「原発危機」をなぞらえていると報道されていた。稲嶺司令の勇退によって、新たな時代を迎えようとしていた図書隊において、郁と堂上は急接近中。そこで現れたのは「原発危機」の著者、当麻。出版社の折口は、メディア良化委員会によって作家狩りの始まりになるであろう当麻の保護を求めてきたのだった。
にやにや、どきどきがたくさんだった。
メディア良化委員会との対決がどきどき。その合間に垣間見える郁と堂上の関係と、柴崎と手塚の距離具合がにやにや。陰謀具合と戦闘のバランスも良い。ただ、郁が本当に恋する女の子で、そんなこと考えてる暇ないでしょー! とにやにやしながら叱ってしまうところだった。
一番の功労者は大阪のおばちゃん。有川さんは本当に大阪のおばちゃんのノリ好きなんだろうな。
エピローグはにやにやにやの嵐だった。ここに至るまでに色々あったんだろうなと思うと、やっぱりにやにやが止まらない。