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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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オズの魔法使い (ハヤカワ文庫 NV (81))
たつまきに巻き込まれたドロシーがたどりついた所は、ふしぎな美しさに満ちた魔法の国——オズ。彼女は大魔法使いオズ様の力を借りてカンサスに帰るために、愛犬トト、脳のないかかし、心臓のないブリキの木樵り、臆病なライオンたちを道連れに、オズ様の住んでいる〈エメラルドの都〉をめざして旅に出た。
オズの国で展開するドロシーたちの奇妙な冒険を描いて、世界各国の少年少女たちには多くの夢を、童心を忘れた大人たちには、ひとときの安らぎを与える幻想小説の名作!

瑞山いつきさんの「マギの魔法使い」がオズをモチーフにしているのと、授業の関係で興味を持ったので、初めてきちんと読んでみた。
オズはシリーズ、ということを、実はさっぱり知らなかったです。エメラルドの都に行く話なだけだと思ってました。この「オズの魔法使い」できちんと『行って帰る』物語になっているので一巻だけでも読めます。
児童文学において大抵の少女は、異国の地でとても礼儀正しく振る舞う、ということを事前に聞いていたので、ドロシーの言葉遣いにおしゃまな感じが現れていて微笑ましく感じた。しかし、読んでみると、本当に旅の一行は利害関係で旅をするんだな……とそこの辺りが非常にリアルで、シュールに感じました。
ひとつ気になったのは、別れのシーンで、きこりとライオンにはキスをするのに、かかしに対してはぎゅっと抱きしめるだけであること。何故その差が……? と思ったりした。ちなみに作中では主にかかしが大活躍である。
初めて読み通したけれど、とてもいい児童文学だと思った! 教訓でもないし、楽しい冒険ものという感じで。教訓ものは教訓もので面白く読むけれど、普通に不思議な国を歩く話はやっぱり好きだなと思った。
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ちいさなちいさな王様
ある日、ふらりと
僕の部屋にあらわれた、
僕の人差し指サイズの
気まぐれな小さな王様。(カバー折り返しより)

児童書なのか絵本なのか。哲学的言葉遊びみたいなお話。
生まれた時は大きくて、年を取れば段々小さくなり、本当に小さくなって見えなくなってしまう王様の一族。僕の目の前に現れる王様も、例に漏れない。
4の「命の終わりは永遠のはじまり」が好きだ。

「(前略)たとえば、きみのお父さんが、もう見えないくらい小さくなったからといって、それは、彼がいなくなってしまったことにはならないだろう? もしかしたら、きみのお父さんは、僕たちのすぐ近くにいるかもしれないんだから。(略)つまり、きみたちのところじゃ、どんどん果てしなく小さくなり続けるから、命の終わりもないんじゃないかって、僕は思うんだけど」


人の死後の、魂や記憶のことを思った。
読んだものの書影がなかったので、新装版の方の書影を貼っておきます。
魔術師の帝国 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-12 リフトウォー・サーガ 第 1部1) (ハヤカワ文庫FT)異世界の虜囚 (ハヤカワ文庫 FT フ 2-13 リフトウォー・サーガ 第 1部2)偉大なる者―リフトウォー・サーガ第1部〈3〉 (ハヤカワ文庫FT)
14歳になったパグとトマスの少年時代は終わった。掟により、二人は自分の適性にかなった職業についた。だが、戦士になったトマスは喜んでいたが、魔法使いの弟子となったパグは面白くなかった。自分に魔法の力があるとは思えないのだ。そんなある日、難破船の知らせが届いた。実はこの事件が異次元人侵略の前兆だった……。別世界ミドケミアを舞台に、新人が従来のファンタジイにはかつてない壮大なスケールで描く超大作(上巻、裏表紙より)

上巻438ページ。下巻は515ページ。パグとトマスという二人の少年がメインで、パグの方に焦点が当てられている。ありがちな児童向けファンタジーなのかなと思っていたら、結構どっしりと進んでいって、上巻中盤から一気に面白くなってきた。戦争が始まった頃は巻き込まれたような形の少年たちが、成長して大人になっていく物語。上巻はパグがいなくなるので、ちょっと魅力半減という感じだった。下巻からツラニの捕虜にされてしばらく音沙汰なかったパグが登場。パグが登場するときたきたきたーと思う。ツラニはどうやら西洋における想像上の東洋みたいな感じらしい。名前の音がちょっと不思議。登場人物たちが成長してどっしりとした印象の下巻。人物がみんなしっかりとした足取りで歩んでいて、それが今思うと手堅い感じでも、パグという主人公が現れるとわっと盛り上がる。最後パグに贈られたものを考えると、パグの成長物語であり、様々な人々の成長物語だったんだと思う。
狩猟長官マーティンと、船長エイモス・トラスクがなんか好きだ。マーティンはユーモアも理解してちょっと皮肉っぽい影のある人。エイモスは豪快で勇猛な元海賊。この二人の活躍ももっと見たいなあと思っていた。
ラストはそれぞれに綺麗に終わっている。戦争の始まりと集結がこの「魔術師の帝国」なので、死や裏切りもあってまだ謎は残るけれど、どっしり読んだと思った。
万華鏡―ブラッドベリ自選傑作短編集 (サンリオSF文庫)
アメリカの代表的な作家、レイ・ブラッドベリの自選SF短編集。
「アンリ・マチスのポーカー・チップの目」「草原」「歓迎と別離」「メランコリイの妙薬」「鉢の底の果物」「イラ」「小ねずみ夫婦」「小さな殺人者」「国家短距離ランナー」「すると岩が叫んだ」「見えない少年」「夜の邂逅」「狐と森」「骨」「たんぽぽのお酒」「万華鏡」「日と影」「刺青の男」「霧笛」「こびと」「熱にうかされて」「すばらしき白服」「優しく雨ぞ降りしきる」

先生が「たんぽぽのお酒がいいよ」と仰ったので借りてみた。
言い回しがとても素敵。
さあ、典型的なガーベイのだんまりが始まった。そこに坐っているのは世界一の沈黙の生産者であり配給業者である。彼に注文すればたちどころに沈黙をパッケージし、咳払いとささやきで紐をかけ配送してくれるのだ。沈黙の品数も豊富だ。当惑、苦痛、平静、平穏、無関心、幸福、金色、神経過敏などいろいろある。これらの沈黙の山のなかにガーベイ氏は坐っているのだ。
「アンリ・マチスのポーカー・チップの目」

話の終わり方も、どきっとするもの、ほうっと息を吐くものがあって、とても好きだった。
「たんぽぽのお酒」は連作で、その中の表題作「たんぽぽのお酒」が好き。たんぽぽのお酒の描写がとても綺麗。
「国家短距離走ランナー」はこれこそ映画みたいで面白かった。
この本の中で一番好きだったのが「万華鏡」!
ロケットが爆発して宇宙に散り散りになった船員たちは、かろうじて電話で繋がれるものの、向かう先は宇宙の塵だった。感情が暴走し、最後の瞬間誰かを傷付けたり、無気力になったりする船員たち。そしてホリスは……。
「願いごとをするのよ」母親がいった。「願いごとを」
いっちばん
捕まえられない掏摸の話を日限の親分から聞いた若だんな。一方で妖たちは若だんなを喜ばそうと三手に別れて街へ品物を探しに行く「いっちばん」。品比べをすることになった長崎屋と二店の物語「いっぷく」。若だんなを攫った天狗と狐の小競り合い「天狗の使い魔」。菓子作りの修行に出た栄吉は、後から入ってきたにも関わらず菓子作りの上手い八助に思い悩む「餡子は甘いか」。雛屋のお雛が現れるもその塗り壁化粧がなくて人々は目を剥き、その上婚約者のいるお雛に惚れる人物が現れて……「ひなのちよがみ」。

段々文章が幼い感じになってきている気がするんだけど、気のせいかな。
若だんなが相変わらず大事にされてるけど、今回は結構がんばった感じだと。かわいい話は表題作「いっちばん」。若だんなが愛されてる。なんとなく好きなのは栄吉が思い悩む「餡子は甘いか」。栄吉が苦しむのは切なかった。小気味よかったのは「いっぷく」。意外なラストでおおっと思った。
そしてそろそろ若だんなの恋愛面の話をー! 「ちんぷんかん」収録の「はるがいくよ」も良かったけどー!
流れ星が消えないうちに (新潮文庫 は 43-1)
奈緒子は加地君が好きだった。加地君と付き合っていた。しかし突然の事故が二人を引き離し、一年後、奈緒子は巧君と付き合っていた。巧君は加地君の友達だった。半年が経って、二人の間では、加地君のことは決して口にしないようになっていた。それでも、二人で星を見るとき、ようやくその時が来る。

なんか、思った話と違った。思ったより感情的にならずに、淡々と日々を越えていく感じだった。
巧が、加地君と奈緒子の関係が好きだったんだろうなーというのが滲んでいた。奈緒子はとても好きだったんだろうというのが泣くシーンで爆発していた。それでも、何故か親身には来ないというか。その辺り不思議な空気感だった。
何にも解決しないように見えて、これから解決していくんだろうという、日々を少しずつ越えていく感じ。私としては恋愛小説というにはときめきポイントが少なくて少々薄い気がした。なので、この小説は、「生きる」日常を書いたものなんだろうと思う。忘れない思い出を持った人のための物語だ。
ちんぷんかん
若だんながあの世に行ってしまう!?「鬼と小鬼」。表題作「ちんぷんかん」は広徳寺にやって来た親子は縁談をまとめてほしいと秋英に頼みにくるが、実は親子は妖怪で。「鬼と小鬼」「ちんぷんかん」「男ぶり」「今昔」「はるがいくよ」の5編。

若だんな自身の切なさが染み入る「鬼と小鬼」。若だんなの純粋さというか綺麗さがよく分かる一編。
「男ぶり」はおかっつぁんとおとっつぁんの馴れ初め。
「今昔」は妖たちがわくわくする様が「つくもがみ貸します」のつくもがみたちと重なった。妖怪ってやっぱり悪戯好き。
「はるがいくよ」は切なかった。小紅とのこと、何より兄やたちの若だんなへの静かな思い。そして若だんなが抱く答え。いつか決めるときが書かれるんだろうか。
うそうそ
若旦那、旅に出る。
若旦那の喋り方は可愛い。というか若旦那そのものが可愛いという話をした。
若旦那の思いとお比女の思いが同調するというのが今回の話だったけれど、そういえば妖が見える人と何かというのはなかった。若旦那は見えることを厭っていないんだな。当然か。
人の業の深さよ……という話だった。そのうち、若旦那に、人間止めますかの問いが発せられそうな気がする。
つくもがみ貸します

江戸時代もののミステリーと義姉弟の一方通行ラブ。ときどきふっと出てくる一方通行と、語り口調にときめける。
清次がかっこいい。スマート。なのにお紅のことになると恋する青年。お紅はしっかりしているように見えるけれど、もうちょっと早く気づけーと思った。つくもがみたちも一癖あって、清次とお紅との攻防が楽しい。
喋り方や書き方が、優しく語られているようで畠中作品はすごく好き。「〜だよ」「〜かい?」とか。
ラストの「ああ、良い日だよ」がじんわりくる。
ページをめくれば (奇想コレクション)
五〇年代アメリカを代表する女性SF作家の短編十一作。子どもと日常的な非日常などを書いた作品を多く収録してある。《ピープル》シリーズ第十三作「忘れられないこと」は、ある女教師が一人の転入生で出会った事で不思議な体験をする。

原文は英語で、訳者がいるはずなのに、テーマや雰囲気など読んだ後のどこか薄ら寒い感じ、影のようなものを見た気がする。喋り方に特に現れていたように思います。
「先生、知ってる?」はすごく好きな作品。「先生、知ってる?」の一言は何かきらきらしたものが隠されているようで可愛いのに、その裏では現実がある、という差が読んでいてすごくいいと思った。
表題作「ページをめくれば」は感動的だった。ページをめくれば誰もが幸福になる。幸福になれると教えは、じいんと響いた。

「もう一度、希望と可能性と純粋の喜びにあふれた輝かしい魔法の朝を、胸をときめかせて迎えることができるとしたら、なにをさしだす? エボー先生はその方法を教えてくれた。わたしたちに約束と希望を与えてくれた。だれだって最後には幸福に暮らせると教えてくれた。だってそう書いてあるから。わたしたちはゆっくりとページをめくりつづければいいの。どうしてそうしないの?」
 「ページをめくれば」より


人生を物語に例えることはあるけれど、こうしてページをめくるという形で表現したこの一編、すごく感動した。
すごーく好きな作品だった。読めば読むほど染みる感じがする作品がたくさんある。
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Author:月子
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