読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
倒産秒読みの出版社に勤める編集者の秋本葵は、社運をかけて依頼した超売れっ子小説家・蒼井まことから執筆を快諾され打合せをすることに。蒼井は経歴を一切伏せている性別も不明な作家だ。だけど緊張しながら指定された場所に向かった秋本は愕然とする。蒼井は秋本が大学時代付き合っていた松永笙吾だったのだ。過去に訳あって自分から別れを切り出し消息を絶った秋本は、笙吾との突然の再会に驚く。慌てて依頼をなかったことにしようとした秋本だが、笙吾に条件を出され!?
小説家×編集者で贈るドキドキ出版業界ラブ!!(裏表紙より)
編集者と小説家の恋物語。正しくは恋愛小説家じゃないし、語り手は編集者である葵です。
すごくほのぼのしました! かわいいな、この二人! つんとしている感じの葵は攻めのように見えて受けであり、犬のように葵を慕う年下の笙吾が攻めである。この二人のやり取りが何気なくて、読んでいて非常にほのぼのとしました。仕事をしている風景が一番読んでいて楽しかった。是非とも別作品の『青年漫画家の恋』や『映画監督〜』や『ボディーガード〜』を読んでみたいです。
私はお仕事ものが好きなのだな……としみじみ思いました。
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幻想と叙情の詩人ブラッドベリの魔法の力で、読者はこの世には見えないものを見せられ、触れられないものに触れることができる。読者は、あるときは太古の昔に誘なわれ、またあるときは突如として未来の果てまで運ばれてゆく。「太陽の金色のりんご」「霜と炎」「霧笛」など、ブラッドベリ自身が16編を自選した珠玉の短編集!(裏表紙より)
SF短編集。宇宙や宇宙船が関わる話が多いです。
でも読みながら、家族の話が多いなあと思いました。家族の「ちょっといい話」が多い。切ない話もあるけれど。
萩尾望都さんの漫画作品の方を最初に読んでいたので、思い浮かべながら読むとまた面白かった。「霧笛」は名作だよなあ! 他に好きなのは「宇宙船乗組員」「この地には虎数匹おれり」「いちご色の窓」「霜と炎」。「霜と炎」は濃縮された人類の物語だった……。すごかった。
合わせて読みたい。
上記の本に入っていないブラッドベリの話もあります。
王国の絶対的カリスマ、第一王子リチャード。2人の弟王子を溺愛する彼は、兄上至上主義で苦労性な次男ジェームスと、やんちゃな末っ子フィリップに支えられ、次期国王と名高い。だが、正統な王位継承者だけが手にできる証、「ロイヤル・シーズ」が消えるという前代未聞の事件が発生! なぜか、東の島国ニホンから種の目撃情報が入り、お忍びで旅立つことに!?
ちょっとキケンな兄弟愛で、最強の世直しミッション開始!!(裏表紙より)
ビーンズ文庫創刊10周年の記念の小説。収録作品が雑誌やWEB初出のものなので、短編が複数収録されていて、ドラマ台本みたいな台詞のみの話もあったりなどして、なかなか変則的な本だ……と思いました。
ビーンズ王国の三王子が、王位継承に必要な「ロイヤル・シーズ」が欠片となって飛び散った先、東の島国ニホンに旅立つ! というお話がメインなのですが、この一冊で完結していません。ロイヤル・シーズ探索の短編の間に、全然本編と関係のない短編が挟まっているという。
短編の主な語り手は末っ子フィリップ。兄たちがロイヤル・シーズを探している中、彼だけ学校に通わされるのですが、短編なのが惜しいなあ! 王子様が留学して学園ものやるっておいしいのに!
三兄弟がみんな揃って兄弟だいすき! みたいな人たちで、男きょうだいがきゃっきゃしているのが好きな方は多分面白く読めると思います。非常にキャラ小説でありました。
その世紀の、その世界が禁じた本を焼き捨てるのが、焚書官モンターグの任務だった。その世界の人びとは、《海の貝》と名づけられた超小型ラジオを耳にはめこみ、部屋の巨大なテレビ画面に没頭して、書物がなくとも幸福に暮らしていた。だがモンターグは、ふとしたことから恐るべき秘密を持ってしまった……! 独特の文明批評で知られるSFの抒情詩人が、持てる感受性と才能のすべてをうちこんで結晶させた不朽の名作。(裏表紙より)
本を読むことが罪悪である世界。戦争の足音が聞こえる中、人々はテレビの中の人々を家族と呼んで、享楽的に過ごしている。これを読んでいる私にとってはこの世界はかなりおかしいと分かるだけに、常に狂気的で危うい世界のように思われ、主人公モンターグの焦燥や怒りに振り回されてしまって、どきどきながら読み進めました。
本を焼くシーンの恐怖感といったら。モンターグが妻ミリーの姿をはっきりと捉えた瞬間、背筋がぞっとした。この世界にいる人たちは、こういう人たちなんだ……。
ラストで登場する学者たちが、たき火を囲んでいるシーンがすごく好きだ。ほっとして泣きたくなってしまった。そうして彼らがどういう風にして本を守ってきたのかが分かるところにぐっときた。
面白かった。
かつての日本には、わが国固有の伝統精神があった。その一つが武士道である。それは、新渡戸稲造が1899年に英文で『武士道』を発表し、世界的な大反響を巻き起こしたことでもわかる。本書はその現代語訳である。発刊当時の明治期と同様、現代の私たちは急速な国際化の中で、日本人のアイデンティティを見失いつつある。「日本人とはなにか」を問い、倫理観・道徳観を見直すことができる格好の書である。(裏表紙より)
読みやすかったし、面白かった。そうなのかーという発見がいっぱいあった。日本人をかっこよく書き過ぎかなあとちょっと恥ずかしい気もしましたが、もし武士道という精神が日本人に息づいていたら嬉しいな。
武士道にある五つの徳を中心に、切腹や復讐や女性についても書いてあって、面白かった。訳者の方が、武士道は過去の遺物だと思っていたことがあると書いてあったけれど、私もそういう部分があったなあ。古くさくて、現代的でなく進歩的でない考え方だと思い込んでいたけれど、全然そんなことはなかった。日本人らしい、と言われることの根底にあるような考え方だったんだな。日本人の道徳は武士道だったというのは面白い。その武士道が廃藩置県によって廃れていくと、書生たちがその名残を帯びているという見方も面白かった。
医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった——。
透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。
第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。(裏表紙より)
特殊な暴走族のリーダーだった少年・昴が、脳死状態ながらも不思議な奇跡で装置越しに話すことができる少女・葉月と出会い、彼女の望みである臓器を必要としている人に彼女の臓器を分け与えるための助けをする、という物語。物語にはオスカー・ワイルドの「幸福な王子」が下敷きにされている部分があります。
出会いと結末以外は移植を必要とする患者たちの物語で、最初の章、主人公・昴のお話からは血なまぐさく荒んだ陰を感じ取ってちょっと萎縮してしまったのですが、語り手が代わっていくごとにぐいぐいと引き込まれてあっという間に読んでしまいました。
人の生きる死ぬを常に問いかけられ続け、物語の中でその人自身の生きることとは、が提示されていく。印象的だったのは哲郎の話でした。哲郎がああも言い切れた思いというのは不思議ですが、章タイトルが「鉛の心臓」だからと考えると、溶けずに残った思いの固まりを取り出すのは無理だった気がします。哲郎も、葉月も。
冷たい空気と冴えた光、そして青い闇を感じる作品でした。オススメされた作品でした。面白かったです。ありがとうございました!
父を亡くし、天涯孤独となった佐原左記子は全寮制の谷津柱高校に編入した。
理事長の娘・倉宮凪に学園を案内されるのだが、ここには、なんとも奇異な規則が! ——この地に伝わる怪談の噂話をしてはいけない。破った者には不幸が訪れる、と。
やがて、自身の中に潜む不可思議な力が呼応しはじめていることに気付いた左記子は、既のところで甲斐に助けられるのだが……。
禁忌の扉を開く、本格学園ホラー登場!!(裏表紙より)
全寮制学園もの。ホラーなの、ミステリーなの? とわくわくして読みました。そうか、その方向の話か!
怪談と謎の校則、持ち込めるものは限られている学園、洋館の校舎、訳ありな生徒たち、お茶会、不思議な力などなど、閉鎖的な学園での要素がたっぷりでした。楽しかったー。でももっと学園してもいいのよ。
登場人物たちも一癖二癖あって面白かった。できることならこの学園で全部を解決してほしかった気もするけれど(学園ものが好きすぎて……)、続きはエージェントものになるんだろうか。できることなら、凪と対照する女の子に蛇多哩姫に勝ってほしかったなあ……。左記子はロストしてしまって。