読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「こいつ、俺に気があるんじゃないか」——女性が隣に座っただけで、男はなぜこんな誤解をしてしまうのか?
男女の恋愛問題から、ダイエットブームへの提言、野球人気を復活させるための画期的な改革案、さらには図書館利用者へのお願いまで。俗物作家ヒガシノが独自の視点で綴る、最新エッセイ集!
〈文庫オリジナル〉(表紙裏より)
2005年の発行で、十年ほど時間が経っているわけですが、すごい、今と比べられる話題ばっかり揃ってる気がする。コンピューター、結婚、オリンピック、野球、災害。こうしてみると、十年くらいじゃあなかなか変わらないんだな、ということでしょうか。コンピューターだけは、携帯電話がさらに進化してスマートフォンになりましたが。
「四十二年前の記憶」が一番好きだな。幼い頃の記憶って、すごく不思議で、印象的で。そのもとをたどるのは、面白い。
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子どもと本の出合いを創る━━多メディア時代の今日、読書がもつ固有の価値と、子どもの本の魅力、手渡し手である大人の役割を考える。(帯より)
子どもに本を、ということが提唱されたその後の動きをさっとまとめた一冊。2006年の刊行なので、もう十年前ですね。近年の出版では、という話に「ファンタジーブームのゆくえ」という項がありますが、ずいぶん変わったようにも思います。少なくとも、和製ファンタジーはだいぶと大きな市場になったように感じます。
実際の本のタイトルを引いてきつつ、子どもと本の関わりの動きがまとめられていて、どちらかというと、読書ボランティアや地域文庫といった、つなぎをする役目の人から見た一冊でしょうか。今度は、文学から見た、子どもと本の本を読みたくなりました。

美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった——楽園崩壊にまつわる驚愕の真相を描いた第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作ほか、異なる時代、異なる場所を舞台に生きる少女をめぐる五つの謎を収めた、全読書人を驚嘆させるデビュー短編集。(裏表紙より)
本屋さんで紹介文を読んで、「これは絶対に面白い」とアンテナがぴんと立ったので読みました。私のアンテナ、ちゃんと働いてる! めっちゃくちゃ面白かった。
とある庭園の管理人姉妹の謎の死の真相を解く、表題作「オーブランの少女」。イギリスの古い時代に医者が殺人に手を染める「仮面」。大雨の日にやってきた客はいったい何者なのかという「大雨とトマト」。女子校でのとある少女の謎と事件を描く「片想い」。極寒の地に流れ着いた首のない死体から始まる、架空帝国の物語を描く「氷の皇国」。どれも素晴らしかったですが、少女小説っぽさですごく素敵だった「片想い」と、厳しく過酷な帝国での、野心を秘めた残酷な姫君の振る舞いを主軸にした「氷の皇国」だけで、この本は素晴らしかった……と思いました。もちろん、表題作もすごく面白かった。
歴史がちゃんと下敷きになっていて、かつファンタジーもミステリーも好き! という人は楽しめるのではないかなー! いい本に出会った!

夏、クラスメートの代わりにミステリーツアーに参加し、最悪の連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。最近、周囲で葬式が相次いでいる『僕』。——一見、接点のないように見える二人の少年の独白は、思いがけない点で結びつく……!! すべての始まりは、廃遊園地にただよう、幼女の霊の噂……? 誰も想像しない驚愕のラストへ。二度読み必至、新感覚ミステリー!!(裏表紙より)
ミステリーというより、ホラー? 一人称で語る人間が二人いて、それぞれの視点で交互に語りながら、その二人がゆっくりと近付いていく。その接点は、とある殺人事件。
全体の半分に来るまでに二人がどこで交わっているのかというのはすぐに分かるので、その後どう話が落ちるのかを固唾をのんで見守りました。読み終わって、確かに「二度読み必至」(帯より)だなあ、と思いました。最後がえっと戸惑ってしまって、読み落としたかなーと最初からぱらぱらめくってしまった。
「僕」の方が、どうして『おれ』のことを知っていたのか、というのがちょっとよく分からなくて、確かに語っている部分はあるんですが、その詳細がはっきりしなくて「そんなに思ってたの?」と思ってしまった。
一人の視点からの語りなので、こう、ひたひたと迫ってくる恐怖があるんですよね……。はっきりと人殺しが誰なのかが分かるようになると、その冷静な口調が怖い! と背筋がぞくぞくしました。それで改題前のタイトルが「亡霊」なんだから、これやっぱりミステリーじゃなくてホラーだよ!
短編がほかに二本収録されていて、どちらも単独の話。「Aさん」はまごうことなくホラー。「春の遺書」はホラー(幽霊)の要素がありつつ、ミステリーに近いものがありました。

本をこよなく愛する少女リィナは、エルグリッド大陸図書館で働く新米司書。館内では「モグラ」と蔑まれる地階位に入れられてもめげず、先輩司書ジーンにしごかれていた。だが、友人が呪われた「魔本」に捕らわれ、リィナの日常は一変する。図書館には「魔本」と戦う司書——《読解の異能者(リーディング)》が潜むことを知ってしまった上、自分にも特別な力があると告げられ…!?
第9回ビーンズ小説大賞読者賞受賞、異色のダークファンタジー!!(裏表紙より)
受賞作だけあって、すごく優等生な話だったなあ、と思うあたり、なんだか色々自分が毒されている感じがしないでもないのですが苦笑 図書館と呪われた本、という設定が好きな人は好きなんだろうなあというポイントを的確に突いていて、うまいなあと思いました。
面倒見がいいけれど無愛想なジーンと、真面目で一生懸命でかつ友達思いのリィナの、先輩後輩コンビが、今後もっとラブな展開にいくのかというのが気になります。いや、挿絵のリィナ、めっちゃかわいいんですよ! ドレスアップのシーンもあるんですけど、普通に美人だよね!? それでもって、司書(この世界観においての)としての成績も優秀、かつリーディング能力も特別って、すごく……ヒロインです……。
一方で、ジーンがちょっとヒーローっぽくないというか、ヒロインに救われるヒーローポジションなので、もうちょっと男前なシーンをください! と思いました。

人気作家である母が書いた原稿を奪われてしまったセシリア。母の担当編集者であるラルフから、代わりに二週間で完璧な原稿を書けと命じられる。小説が大好きで、こっそり書き続けていたセシリアだったが、母のような濃厚なロマンス小説を書くなんて絶対無理! だって恋をしたことすらないんだもの…。だが高級ホテルに閉じ込められ、情熱的なラブシーンを書くための、ラルフの指導がはじまって…!?(裏表紙より)
あとがきで書かれていますが、ヴィクトリアンものでした。ロマンス小説が低俗とか、足首を見せちゃダメとか、髪は結わなくちゃとか。細々したところがいい感じで、ホテルに缶詰にされて作家としての心得を解かれたり、原稿に指導が入ったり、エロスなやりとりがあったりと、面白かった。
強引で俺様なヒーローが、結局ちょっと可愛かったりもして、奔放なロマンス小説家のお母さんとのちょっとしたやりとりや、最後の真相なども面白くて、少女小説とTLのバランスがとても好みでした。

娘ざかりを剣の道に生きたある武家の娘。色白で細面、けして醜女ではないのだが父に似て口がいささか大きすぎる。そんな以登女にもほのかに想いをよせる男がいた。部屋住みながら道場随一の遣い手江口孫四郎である。老女の昔語りとして端正にえがかれる異色の表題武家物語のほか、この作家円熟期の秀作七篇! 解説・桶谷秀昭(裏表紙より)
「鬼ごっこ」「雪間草」「寒い灯」「疑惑」「旅の誘い」「冬の日」「悪癖」「花のあと」の七編。商人だったり武士だったり町人だったり、尼さんだったり、出てくる主人公は色々な立場の人。ちょっとした陰謀や事件の話もあるんですが、人と人が交流することで生まれる、不和や優しさみたいなものが、すべての話に漂ってる。「冬の日」の男女や、「花のあと」の哀愁めいた過去の恋と現実のおかしみみたいなものが、すごくいいなあ。
時代小説はまったく初心者なんですけど、面白かった。

休暇中のセラピスト、ディオンヌが新たに依頼を受けた患者は、海、空、山をこよなく愛し、どんな冒険にも勇敢に挑む男ブレイク・レミントンだった。登山で大怪我を負い、再び歩くどころか食べる気力さえ失って衰弱の一途だという。渡されたレントゲンを見るかぎり、傷は癒えている。承諾を迷うディオンヌは添えられた写真を手に取った——鍛えあげた肢体をあらわにし、深いブルーの海をバックに生き生きと微笑む事故前の彼。ディオンヌの心がうずいた。(裏表紙より)
有能なセラピストのヒロインと、歩けなくなって衰弱した若きエンジニア。最初はまったく立場が違っていて、ヒロインであるディオンヌは自らの仕事をてきぱきとこなし、心理的にも身体的にも有利に立っているのですが、だんだんと二人の関係が変わっていくにつれて、心理的な優位がブレイクに移り、ディオンヌは迷い悩み傷つく……という話展開が面白かったです。何より、冒頭の、ブレイクを手玉にとるセラピストとしてのディオンヌの働きぶりがよかったなー。相手は病人とはいえ、腕相撲して勝っちゃうんだもんなあ(そしてウエイトリフティングの元選手だったりもする)。
二人の仲が決定的になり、ディオンヌが過去の傷からブレイクから遠ざかろうと試みるんだけれども、ブレイクの囁く台詞の甘いこと! 別れようとなるときも、自信がある様子なのがハーレクイン的に最高のヒーローなんじゃないでしょうか。
ラストの、子どもたちとのシーンが好きです。ちょっと予感めいたものも含ませているような気がする。
オススメありがとうございました。面白かったです。