読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

魔法の素質は本物でも、女の子ゆえに魔術の道に進ませてもらえず、かといって持参金不足で結婚もできずに悩む、年頃のフィアメッタ。父親は大魔術師にして公爵に仕える金細工師。だがその父はいまや息絶え、その強力な霊は邪悪な者のもつ“死霊の指輪”に囚われようとしていた! 黒魔術から父を守るために、炎の乙女が立ち上がる。時代はルネサンス、恋と冒険の歴史ファンタジイ。(裏表紙より)
ルネサンス時代の少女と少年の、指輪と霊をめぐるファンタジー。
女の子ゆえに魔術の道に進めないながらも、才能を発揮するフィアメッタは炎の性質を持つ。憧れの近衛隊長ウーリの弟トゥールはスイスで鉱夫をやっており、地精(コボルト)を見ることができる。モンテフォーリア領を奪おうとしているロジモ公フィランテと書記官ウィテルリは、霊を捉えて指輪に閉じ込める死霊の指輪を作ろうとしていた。そんな彼らから、父親の霊、兄の霊、モンテフォーリアを救出する。
序盤で語られているウーリの像うんぬんが、最後にこう生きてくるとは!
どちらかというとトゥールがメインのお話だったように思うので、フィアメッタがこれでもかと活躍してほしかったなあと思いました。でも最後は楽しそうでよかった。
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初夏の北海道から始まる青春タイムトラベル物語
この街は壁に囲まれている。札幌を襲った天災から十六年、復興という名の再開発事業のせいで、街は厚く高い壁の中にすっぽり収まっていた。
そんな街で育った十五歳の少年・駆は外の世界への憧れを抱いている。怖いもの知らずの彼は、街一番の秀才・勇夢と幼なじみの夏月を巻き込み、無謀な脱出作戦を計画するが……ある夏の日、放課後の屋上に“過去へ駆ける少女”が落っこちてきて——!?
一人の少女が巡る三つの暦。壁に秘められたナゾを紐解く、青春のロスタイムストーリー。(裏表紙より)
壁に囲まれた街、札幌。壁を越えて外の世界へ行くために飛行機を作った駆、勇夢、夏月の三人だったが、そこへ空から少女こよみが落ちてくる。彼女は高いところから落ちると過去へ飛ぶことができる能力者だという。
過去へ駆けることができるのはこよみだけで、他の三人は未来に向かって進んでいく。大人になった彼らは街を囲む壁と、やがて街を飲み込むほど巨大な塔の秘密を知るようになる。青春ものかと思いきや終末世界もの。四人だけの話というのがちょっと残念なくらい、奥行きのある話だと思うんですが、いやあ落下する少女っていいなあ。

小学三年生のぼくのクラスでは、マキが女王として君臨し、スクール・カーストの頂点に立っていた。しかし、東京からやってきた美しい転校生・エリカの出現で、教室内のパワーバランスは崩れ、クラスメイトたちを巻き込んだ激しい権力闘争が始まった。そして夏祭りの日、ぼくたちにとって忘れられないような事件が起こる——。伏線が張りめぐらされた、少女たちの残酷で切ない学園ミステリー。(裏表紙より)
ルルル文庫の「横柄巫女と宰相閣下」シリーズなどで知られる鮎川はぎのさんの別名義の作品。解説で知ったんですけれども、高瀬ゆのかさんも別名義なんですね。
降田天さん名義の本作は、小学三年・四年生のある教室での女子の争い(スクール・カースト)から端を発した、夏祭りのある事件をめぐる話。第一部子どもたち、第二部教師、第三部真相の三部構成です。
第一部のマキとエリカの争いが描かれる一方、小競り合いにきっかけになる行動を起こしているのは誰か、語り手の真意はなど、いろいろと仕掛けている感じだなあということがわかるのですが、第二部、第三部と読んでそこまでしてしまったか! と嫌な気持ちになったのはすごかった。なんらかの方法でマキの口封じをしたんだろうとは思ったんですが、そこで「クラス」という生き物が動くのか……ため息してしまったわ……。
そして大人になっても本当に幸せにはなれない人たちがいる。描かれてはいなけれども、四年一組の人たちは絶対どこかに欠陥を抱えて生きているんだろうな……。

戴冠式を目前に控えたルリタニア王国にただよう陰謀と邪恋の暗雲。王位の簒奪を狙う王弟ミヒャエル大公とヘンツオ伯爵。風雲急を告げる王国の渦中に、偶然とび込んだ国王に瓜二つの英国の快男子ラッセンディルの数奇な三カ月の大冒険。〈剣と恋〉〈義侠と騎士道〉の華ひらく絢爛たる世紀末の宮廷大絵巻。正編と併せて、続編『ヘンツオ伯爵』を収録する。(標題紙より)
ルリタリアの国王戴冠式の前日、ラッセンディルは同じ名前で血のつながりのあるルドルフ国王と交流を持つ。だが酒に薬が混ぜられており国王は昏倒。ラッセンディルは周囲と協力して国王の身代わりを務めるが、その後国王が王弟に囚われて再び入れ替わることができなくなってしまう。という国王を救出して入れ替わりを終了する「ゼンダ城の虜」
その「ゼンダ城の虜」において王妃フラビアと密かに恋仲になっていたラッセンディルだが、二人のやりとりを証明する女王の手紙を、王弟ミヒャエルの側近であったルパート・ヘンツオに奪われてしまう。その手紙を取り戻すために、身代わり劇に加担したフリッツとサプトは奔走し、ラッセンディルもやってくるが……という「ヘンツオ伯爵」。
評判的には「ゼンダ城の虜」の方が有名で評価も高いようなのですが、私としては「ヘンツオ伯爵」までも含めて好きです。悲喜劇として面白いなあと思いました。「ヘンツオ伯爵」でまさか国王がああなるとは……。そして最後にもまたばったんと裏返って、「おおー……」しか声が出なかった。いろいろと予定調和なところがこういう作品は面白いと思っているので、最後まで興味深く読みました。

「俺とキスしない?」
赤い頭巾がトレードマークの少女、アチカ。彼女が幼なじみから押し付けられたのは、寮生の願いを叶えないといけないという不思議な『子羊寮』の世話係だった。
けれど、たった一人の寮生・オズマリアは、顔はいいのに出会い頭にキスを求めてくる変態男! なんとか寮母をやめたいアチカは、彼に嫌われようとするけれど、オズマリアには不思議な秘密があって…?(裏表紙より)
僧兵として、聖教府から重要人物認定されている人物たちが集う子羊寮の寮母になったアチカ。現在の寮生はただひとり、片目が赤いオズマリア。その彼に出会い頭に「キスしない?」と言われたアチカだったがもちろん受け入れられるはずがなく。
「心を満たされる」ことがキーワードになっていて、心が満たされた瞬間、オズマリアには死が訪れるということが明らかになると、逃げ回っていたアチカが彼を満たしてはいけないと心配して距離を置いたりなどするのがかわいい。過保護すぎる兄と義弟(というのか幼馴染というのか)もいて、義弟のルキアンが入寮したのにはおおっと思いました。意外と火薔薇持ちが多いのかもしれないなあと思うと、世界観が面白いなあと思ったり。

ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。(裏表紙より)
「うつくしい墓」「エトワール」「タンギー爺さん」「ジヴェルニーの食卓」の四つの短編が収録されています。画家のギスギスした話かと思っていたんですが、どれも画家本人ではなく別の人物の視点から描いたもので、柔らかい光を感じるものもあれば、影が残る話も、寂しいような気がすることもありました。
表題作の「ジヴェルニーの食卓」が一番好きかなあ。食卓が象徴するもの、家族、平穏といったものがじわじわと感じられて。絵画や彫刻など芸術作品を愛することはもちろん、語り手であるブランシュはモネその人と彼のつくる空間を愛しているのが伝わってくる。そして料理をする自分はその一部であることを感じているのではないかなあ、とか。

音楽家、俳優、文筆家とさまざまな顔を持つ星野源が、過剰に働いていた時期の自らの仕事を解説した一冊。映画連載エッセイ、自作曲解説、手書きコード付き歌詞、出演作の裏側ほか、「ものづくり=仕事」への想いをぶちまける。文庫化にあたり、書き下ろしのまえがき、ピース又吉直樹との「働く男」同士対談を特別収録。(裏表紙より)
星野源さんのエッセイ集。自作解説などもあり、この人全力で仕事を楽しんでいる人だなあと思いました。読んだのは文庫で、2015年の発売なんですけれども、この後めっちゃ忙しくなるんだよなあ。楽しすぎて振り切れるんだろうか……。
欲望丸出しというわけではなく、淡々と自らの願望をしたためる、そのテンポが好きです。
というか、自筆の字がかわいいな!? 絶妙なヘタレ字です。

「私が決闘を申し込んで、ミリアを自由にします」
容姿だけは完璧の変な貴族、ラーシャリオンを人質にしたことで、誘拐犯の少女ミリアの人生は思いもよらぬ方向へと進み始めた。身代金も無事(?)に受け取り、あとは人質を解放して逃げるだけ!と思っていたが、なぜか人質は帰ろうとしない。どうやらラーシャリオンは、ただの貴族じゃないようで…。(帯より)
大貴族を誘拐したわけあり少女、ミリア。現在、アーカディア大陸は、血みどろの戦争を引きずって争いが絶えない。ミリアの目的とは。誘拐されたラーシャリオンは何を考えているのか。コメディかと思いきや戦記の序幕といった感じです。
なんというか、登場人物がだいたい病んでいる!笑 ミリアからしてだいぶときてるのでは……というのがかなり早い段階から分かるし、ラーシャもおかしい。でも、得てして才能のある人は壊れている場合が多いのかもなあ……などと思いました。

倉宮一族は、かつて、人の命を恣にしたために封印されたタタリ姫の魂を甦らせようとしていた。
凪は、三つ目の〈因子〉を手に入れる命を受け、京都にある旧家・芹埜家に潜入することに。
しかし、そこで凪を迎えたのは、死を覚悟し自らの内に潜む因子を差し出そうとする少年・陸だった。
そして、敵対する「ハン」に入るように勧めるエージェントのカイの存在に、揺れる凪の心の行方は!?(裏表紙より)
タタリ姫の因子を持つ少年の元に潜入した凪。そこにはカイもいた。誰が敵で誰が味方か。自分は、このまま倉宮にいていいのか。揺れ動く凪の心の回ですね。前回は学園でしたが、今回はお屋敷。気難しい先代と、夫殺しの疑惑がある後妻、病弱だが賢い当主の少年と、その双子の弟。この要素だけ見ると本当に少女小説かな?笑
結局凪は倉宮を離反することに決めたようですが、続きどうなる予定だったのかなあ。

「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」——穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決……。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾!(裏表紙より)
映画化話題に、というわけではないのですが、ふと読んでいなかったことを思い出して読みました。短い話が4つ。弱小吹奏楽部に在籍しながら、学校内で起こる小さな(大きな?)事件解決のために、チカが走り、ハルタが推理する。この、チカとハルタが仲がいいのか悪いのか、ライバルにしてもなんというか楽しい感じが好きです。どっちも相手にされないんだろーなーとわかる感じが……笑
謎を抱えた人たちは、重いものを持っているんだな、ということをふと感じた一冊でもありました。