読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「俺とキスしない?」
赤い頭巾がトレードマークの少女、アチカ。彼女が幼なじみから押し付けられたのは、寮生の願いを叶えないといけないという不思議な『子羊寮』の世話係だった。
けれど、たった一人の寮生・オズマリアは、顔はいいのに出会い頭にキスを求めてくる変態男! なんとか寮母をやめたいアチカは、彼に嫌われようとするけれど、オズマリアには不思議な秘密があって…?(裏表紙より)
僧兵として、聖教府から重要人物認定されている人物たちが集う子羊寮の寮母になったアチカ。現在の寮生はただひとり、片目が赤いオズマリア。その彼に出会い頭に「キスしない?」と言われたアチカだったがもちろん受け入れられるはずがなく。
「心を満たされる」ことがキーワードになっていて、心が満たされた瞬間、オズマリアには死が訪れるということが明らかになると、逃げ回っていたアチカが彼を満たしてはいけないと心配して距離を置いたりなどするのがかわいい。過保護すぎる兄と義弟(というのか幼馴染というのか)もいて、義弟のルキアンが入寮したのにはおおっと思いました。意外と火薔薇持ちが多いのかもしれないなあと思うと、世界観が面白いなあと思ったり。
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ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。(裏表紙より)
「うつくしい墓」「エトワール」「タンギー爺さん」「ジヴェルニーの食卓」の四つの短編が収録されています。画家のギスギスした話かと思っていたんですが、どれも画家本人ではなく別の人物の視点から描いたもので、柔らかい光を感じるものもあれば、影が残る話も、寂しいような気がすることもありました。
表題作の「ジヴェルニーの食卓」が一番好きかなあ。食卓が象徴するもの、家族、平穏といったものがじわじわと感じられて。絵画や彫刻など芸術作品を愛することはもちろん、語り手であるブランシュはモネその人と彼のつくる空間を愛しているのが伝わってくる。そして料理をする自分はその一部であることを感じているのではないかなあ、とか。
音楽家、俳優、文筆家とさまざまな顔を持つ星野源が、過剰に働いていた時期の自らの仕事を解説した一冊。映画連載エッセイ、自作曲解説、手書きコード付き歌詞、出演作の裏側ほか、「ものづくり=仕事」への想いをぶちまける。文庫化にあたり、書き下ろしのまえがき、ピース又吉直樹との「働く男」同士対談を特別収録。(裏表紙より)
星野源さんのエッセイ集。自作解説などもあり、この人全力で仕事を楽しんでいる人だなあと思いました。読んだのは文庫で、2015年の発売なんですけれども、この後めっちゃ忙しくなるんだよなあ。楽しすぎて振り切れるんだろうか……。
欲望丸出しというわけではなく、淡々と自らの願望をしたためる、そのテンポが好きです。
というか、自筆の字がかわいいな!? 絶妙なヘタレ字です。
「私が決闘を申し込んで、ミリアを自由にします」
容姿だけは完璧の変な貴族、ラーシャリオンを人質にしたことで、誘拐犯の少女ミリアの人生は思いもよらぬ方向へと進み始めた。身代金も無事(?)に受け取り、あとは人質を解放して逃げるだけ!と思っていたが、なぜか人質は帰ろうとしない。どうやらラーシャリオンは、ただの貴族じゃないようで…。(帯より)
大貴族を誘拐したわけあり少女、ミリア。現在、アーカディア大陸は、血みどろの戦争を引きずって争いが絶えない。ミリアの目的とは。誘拐されたラーシャリオンは何を考えているのか。コメディかと思いきや戦記の序幕といった感じです。
なんというか、登場人物がだいたい病んでいる!笑 ミリアからしてだいぶときてるのでは……というのがかなり早い段階から分かるし、ラーシャもおかしい。でも、得てして才能のある人は壊れている場合が多いのかもなあ……などと思いました。
倉宮一族は、かつて、人の命を恣にしたために封印されたタタリ姫の魂を甦らせようとしていた。
凪は、三つ目の〈因子〉を手に入れる命を受け、京都にある旧家・芹埜家に潜入することに。
しかし、そこで凪を迎えたのは、死を覚悟し自らの内に潜む因子を差し出そうとする少年・陸だった。
そして、敵対する「ハン」に入るように勧めるエージェントのカイの存在に、揺れる凪の心の行方は!?(裏表紙より)
タタリ姫の因子を持つ少年の元に潜入した凪。そこにはカイもいた。誰が敵で誰が味方か。自分は、このまま倉宮にいていいのか。揺れ動く凪の心の回ですね。前回は学園でしたが、今回はお屋敷。気難しい先代と、夫殺しの疑惑がある後妻、病弱だが賢い当主の少年と、その双子の弟。この要素だけ見ると本当に少女小説かな?笑
結局凪は倉宮を離反することに決めたようですが、続きどうなる予定だったのかなあ。
「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」——穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決……。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾!(裏表紙より)
映画化話題に、というわけではないのですが、ふと読んでいなかったことを思い出して読みました。短い話が4つ。弱小吹奏楽部に在籍しながら、学校内で起こる小さな(大きな?)事件解決のために、チカが走り、ハルタが推理する。この、チカとハルタが仲がいいのか悪いのか、ライバルにしてもなんというか楽しい感じが好きです。どっちも相手にされないんだろーなーとわかる感じが……笑
謎を抱えた人たちは、重いものを持っているんだな、ということをふと感じた一冊でもありました。
「こいつ、俺に気があるんじゃないか」——女性が隣に座っただけで、男はなぜこんな誤解をしてしまうのか?
男女の恋愛問題から、ダイエットブームへの提言、野球人気を復活させるための画期的な改革案、さらには図書館利用者へのお願いまで。俗物作家ヒガシノが独自の視点で綴る、最新エッセイ集!
〈文庫オリジナル〉(表紙裏より)
2005年の発行で、十年ほど時間が経っているわけですが、すごい、今と比べられる話題ばっかり揃ってる気がする。コンピューター、結婚、オリンピック、野球、災害。こうしてみると、十年くらいじゃあなかなか変わらないんだな、ということでしょうか。コンピューターだけは、携帯電話がさらに進化してスマートフォンになりましたが。
「四十二年前の記憶」が一番好きだな。幼い頃の記憶って、すごく不思議で、印象的で。そのもとをたどるのは、面白い。
子どもと本の出合いを創る━━多メディア時代の今日、読書がもつ固有の価値と、子どもの本の魅力、手渡し手である大人の役割を考える。(帯より)
子どもに本を、ということが提唱されたその後の動きをさっとまとめた一冊。2006年の刊行なので、もう十年前ですね。近年の出版では、という話に「ファンタジーブームのゆくえ」という項がありますが、ずいぶん変わったようにも思います。少なくとも、和製ファンタジーはだいぶと大きな市場になったように感じます。
実際の本のタイトルを引いてきつつ、子どもと本の関わりの動きがまとめられていて、どちらかというと、読書ボランティアや地域文庫といった、つなぎをする役目の人から見た一冊でしょうか。今度は、文学から見た、子どもと本の本を読みたくなりました。
美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった——楽園崩壊にまつわる驚愕の真相を描いた第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作ほか、異なる時代、異なる場所を舞台に生きる少女をめぐる五つの謎を収めた、全読書人を驚嘆させるデビュー短編集。(裏表紙より)
本屋さんで紹介文を読んで、「これは絶対に面白い」とアンテナがぴんと立ったので読みました。私のアンテナ、ちゃんと働いてる! めっちゃくちゃ面白かった。
とある庭園の管理人姉妹の謎の死の真相を解く、表題作「オーブランの少女」。イギリスの古い時代に医者が殺人に手を染める「仮面」。大雨の日にやってきた客はいったい何者なのかという「大雨とトマト」。女子校でのとある少女の謎と事件を描く「片想い」。極寒の地に流れ着いた首のない死体から始まる、架空帝国の物語を描く「氷の皇国」。どれも素晴らしかったですが、少女小説っぽさですごく素敵だった「片想い」と、厳しく過酷な帝国での、野心を秘めた残酷な姫君の振る舞いを主軸にした「氷の皇国」だけで、この本は素晴らしかった……と思いました。もちろん、表題作もすごく面白かった。
歴史がちゃんと下敷きになっていて、かつファンタジーもミステリーも好き! という人は楽しめるのではないかなー! いい本に出会った!