読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

ベリータは、現国王妃ファナに拉致されそうになった。自分の娘にカスティーリアの王位を継がせるため、無理矢理にでもポルトガルへ嫁がせようというのだ。
間一髪でアロンソに救出されたベリータは、束の間の安息を得るため、仲間と共にコルドバに身を寄せる。
起死回生の一手として、条件つきで隣国アラゴンの王子との婚姻を提案するベリータだが、心はアロンソへの想いに揺れていた。歴史ロマンの傑作、完結編!(裏表紙より)
全体的な印象だと、ダイジェストという感じの話の巻き方なんですが、完結巻です。
フェルナンド王子がすごくいい感じにおおらかで、ベリータとアロンソとフェルナンドで関係が成立するのがすごく、なんというか、面白いというかそれでいいのかというか!笑
ベリータとフェルナンドが初対面でかわした会話が、すっとぼけているようで真剣なのがすごく好き。
ラモンにまつわる事情が、物語ってこういうところがおいしいよなあ! というわくわくでした。
そしてやっぱりラストは悪者退治。きらめく歴史の大舞台に向けて、ベリータが一歩踏み出す。大きな歴史の、そこに生きた女王の、小さな一幕と冒険と恋の話だったと思いました。
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カスティーリア王だった父の死後、幼い弟と別れ、母と二人、修道院に幽閉された王女ベリータ。その後、母とも引き裂かれ、孤独のなか誰も信じられずにいた。
16歳になったある日、ベリータは王宮からの使いだという男たちに外の世界へ連れ出される。訪れた館で彼女が再会したのは、死の床にある弟だった。
その日からベリータの運命は一変する……。王位継承を巡る策謀。そしてアロンソへの恋心の行方は?(裏表紙より)
カスティーリア女王イサベル1世をもとにした歴史物語。のちのスペイン王国の礎を築く人たちの、若き日々のお話。
修道院に幽閉され、ただ一人、孤独に、誰も信じずに心のなかの母の声に従ってきたベリータ。神がかりともいうような驚くべき直感力で、事態を切り抜けていく。でも、エンリケス家のアロンソを気にしたり、というところは本当に普通の女の子で、後々出てくる「ばかじゃない方のベリータ」と「ばかの方のベリータ」という表現はとてもいいと思いました。女の子のなかに、王族としての顔と、ただの女の子という二面性はよいねよいね!
上巻は、ベリータの結婚問題において、ベリータ側がポルトガルではなくアラゴンにつく方がいいと決めて、アラゴン王国のフェルナンド王子との結婚を取り付けられるよう、トレド大司教に助力を嘆願しようと決めるところまで。

特別な人。たとえば、誰にどんなふうに見られてもいいけど、世間の目なんかかまっちゃいないけど、その人に変に思われたくない。その人の目には、とびきりの自分が映っててほしい。そんなふう? そんな人なら、いる。いるけど。——シャイなクセに肩肘張って、勝手にあたふたしてるあのなぎさくんを、多恵子の目で覗いてみれば……? というわけで、『なぎさボーイ』姉妹編待望の登場です!!(カバーより)
私は「ヒスってる」という感覚に縁がないので、そういう子が出てこられると理解できなくて困惑するんですが、多恵子も例に漏れずよく怒り、喧嘩をするという。でもその内側には、冷静に自分を観察したり、自分なりの思いで、自身のことを理解しようという動きがあるんですよね。
『なぎさボーイ』であの終わりだったので、これちゃんとオチつくのかなーと思ったら、ちゃんと終わってよかったよかった。背伸びしながらも、その分一歩ずつ進んでいく二人がいいなあと思いました。

IPCA(国際パラノーマル抑止機構)に所属する16歳のエヴィは、人間界にまぎれこむヴァンパイア、人狼、フェアリーたち——いわゆる“パラノーマル”を見分ける能力を使って、彼らの正体を暴き、捕獲するという任務についていた。普通の女の子として過ごしてみたい、そう思い続けるエヴィの前に、ある日謎の少年が現れ、不思議な詩の一節をささやきかける。それは彼女の未来を大きく変える事件のはじまりだった……。(裏表紙より)
異種族(パラノーマル)を見分ける目を持つ少女イヴリン(エヴィ)が、国際機構の捜査員として、機構の目から逃れようとするパラノーマルたちにタグをつけて回っている、というところからはじまります。パラノーマルたちは、あくまでグラマーと呼ばれる、偽装のための幻影の姿形をまとっている。エヴィはこれを見抜いて、本体を視認することができるので、人混みの中でグラマーをまとっているパラノーマルを見分けられる。なので、特殊捜査官ものなのかな、と思ったら、中盤になるにつれてそんな話ではなくなっていってしまい、ちょっと残念な気持ちもしつつ……。
IPCAの施設に潜入した、ドッペルゲンガーのパラノーマルの青年レンドとの出会いによって、人間たちが知らない、またエヴィ自身も知らない、パラノーマルの世界の事情が明らかになっていく。このレンドとのやりとりが、いかにも普通の恋に憧れる女の子と、心優しい思いやりのある青年の交流なんですが、いかんせん長い! 敵との遭遇が470ページあるうちの半分くらいでやっとくる。遅い!
けれど、情報が少しずつ開示されてくると、独特の世界が構築されているのがわかって、面白い。シリーズらしいけれど訳されていないので、続きは読めなさそう。残念。

東京のど真ん中、千代田区一番町。皇居の西側、千鳥ヶ淵公園と内堀通りを挟んだ向かい側に、約1万坪という敷地面積を誇る駐日英国大使館があります。
僕はその英国大使館で25年間、住み込みの専属庭師として広大な庭の管理を行ってきました。そして、英国大使館最後の専属庭師のひとりともなりました。
都内有数の桜の名所である皇居、千鳥ヶ淵周辺の桜は、明治時代に当時の駐日英国公使であったアーネスト・サトウ氏が館内に植えた桜が起源だといわれています。
そんな桜は、これまで僕の人生をさまざまな方向へ導いてくれました。(カバー折り返しより)
濱野さんの、英国大使館の25年間をさらりと振り返る一冊。特にどういう事件が起こって、ということを掘り下げるわけではなく、英国大使館の庭師としてどういう風に生活していたのかが書かれています。庭師として、植物の手入れはこうしなければならない! みたいなレクチャー本でもないし、人との心温まる交流にページが多く割かれているわけでもなかったけれど、そういう仕事があるのかあ、と興味深かったです。写真が見たかったんですが、やっぱりだめですよね……。

“男はすべからく泰然と構える”のが理想の俺なのに、体は小づくり、しかも女顔、とどめが名前で雨城なぎさ! 幼稚園で複数の男どもから求愛され、今は蕨第一中全校生徒からなぎさちゃん呼ばわりだ。その屈辱の過去の元凶北里と、ちゃん付けの張本人多恵子が俺に囁いた。三四郎が恋わずらい!?——恋に、受験に、揺れる青春前期、肩肘つっぱらかったシャイボーイの、悪戦苦闘のラブコメディ!(カバー折り返しより)
とても懐かしい雰囲気の、学園もの。主人公は男の子。男女の幼馴染の関係や、おせっかいな女の子、素直になれない男の子、というのが全面に現れていて、なんだか甘酸っぱくてむず痒い。これ、きっとなぎさは読者からキャーキャー言われてて、多恵子は共感を呼んだんじゃないかなあ。私は、多恵子はちょっと人のことが見えなさすぎなように思えますが!笑

千年にわたり永遠の雪原をただ歩き続ける異形の巨人ミール。人間の世界のすべては、巨人の背の上に作り上げられた都市だった。ミールとはなんなのか、どこへ向かうのか、知る者はいない。
ミールの研究を続ける“変人教授”ディエーニンの助手オーリャは、ミールの外——すなわち人の住めぬ雪原でひとりの少女を拾う。「外」からやってきた彼女との出会いは、終末へと向かう世界に何をもたらすのか。そして巨人の歩みの果てに待つ光景とは……。
ファンタジー史に残る傑作、著者全面加筆のうえ復刊!(裏表紙より)
雪に閉ざされた世界。巨人の背中に街を作り、暮らす人々。世界の名前=巨人というところから、もうツボをグイグイ押されて「……好き!」ってなりました。お話が短いなんて気付かないくらい、終末と再生のための要素がいっぱいに詰まっていました。
貧富の差が存在し、ひとり、貧しい暮らしをしながらも、しなやかな考え方を持っているオーリャを取り囲むのは、いつ迫害されるか分からない教授たち。富める者たち。世界が終わることを訴える宗教。
こういった、どうしようもない『終わり』がすぐそばにある感じと、オーリャの素直さや強さが、すごくいいんですよ! 世界の終わりは必ず来るけれど、そこに希望を持った人がいる、とわかる世界が!
短かったけれど、面白かった。正統派ファンタジーはいい……。