読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
阿燐は雍台国の第一王女。しかし若くして即位した兄・双王、愛らしく無邪気な妹・可籃とは違って、実は王室の血筋ではない。中原の小国雍台はたびたび反乱や侵略に悩まされていた。そして異境の趨几国郎颱王に王女を一人差し出すことになった。側室として。「五年たったらお前を必ず迎えに行く」——秘かに想いを寄せる兄王の言葉だけを信じて自ら志願して趨几国へ向かう阿燐の運命は!?
17歳で衝撃デビューした新鋭の待望第二弾。(裏表紙より)
中華風ファンタジー。政略結婚ものですが、恋愛ものではなくて一人の王女の情念を描いた作品。国の結末がはっきりしなかったのが物足りなかったけれど、女の物語としてみるならすごい話だ。暗殺を命じるところは、これぞ中華! という感じがする(偏見)
阿燐は結局最後まで救われることがはなかったんだと思うと、複雑な気持ちになる。郎颱が繰り返し言った、「幸福になろうとしない」という言葉がすごく重い。
でも好きだな、この話。
森崎朝香さんの『雄飛の花嫁』が似ているという話を聞いたけれど、設定は似ていても、書いている話は全然違うなあ、と思う。
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捜査中に貞操の危機に陥り、香港マフィアの香主・黎に助けられた偽造通貨Gメンの一樹。優しく淫らに唇を奪われ、艶やかな存在感を放つ黎に魅了された。だが、彼が持つ札束に疑念を抱いた一樹はそれを押し殺して捜査に当たり——「飼い慣らして、身も心も俺のものにしたい」拉致され、残酷なまでの悦楽に堕とされた。それでも、孤独を吐露した黎が見せた安らいだ顔、愛おしむような眼差しに心が騒ぐ。職務と黎への想いの狭間で惑う一樹は、つらい決断を迫られ…! 裏切りに揺れる恋。(裏表紙より)
表紙がホログラムPP加工ですごい。まばゆい。
今回のお仕事は、攻が香港マフィア、受が財務省の偽造通貨Gメン。潜入捜査をしていたら怪しい男を発見、ついていってしまったことから……というお話。相手のことは元から気になっていたけれど、無理矢理貞操を奪われて結局好きだと自覚しました、という話で、これまで読んできた中で、行為シーンが一番すごかった。どうぐ……。
本人が気付いていないだけで、受の一樹はあっちこっちから矢印が放たれているように感じたんですが、黎一筋でかわいいです。黎の揺れ動く気持ちも、彼の視点がないのに感じられて、地の文が好みでした。
「君が隠しているものをすべて、見せてごらん」母を事故で失い、ジュエリーショップを引き継いだ水本愁一の前に一人の男が現れる。それは、以前、母の葬儀の場にいあわせ、愁一に冷ややかな視線を向けてきた男だった。遠山紘貴と名乗るその男は、ある指輪を探してほしいと愁一に依頼する。——はたしてこれは偶然の出会いなのか。だが、愁一の本能が告げていた。この男は危険だ、と。やがて愁一は遠山の手によって自分の裡に潜んでいた欲望を知ることになり!?(裏表紙より)
色恋の面で派手だった母親とそっくりな容貌を持つ愁一が、ロシア人の血を引く美形の遠山と出会い、というBL。文体が重厚な印象で面白かったです。表現が耽美というか、使ってくる単語が凝ってて面白いなあと思って読みました。
母親に対する愁一のコンプレックス、トラウマを描いていて、「母と同じ血が流れている」という設定が、私は男女問わずとてもおいしくいただけるので、この話はとてもエロチックでした。すれ違いや勘違いはこういう話にはお約束だなあと思ったりもするけれど。
アンティークジュエリーについて描いてあるのがいいなと思います。本当に、BL小説は職業が面白いなあ。
主人公周りの登場人物は結構固められているわりに、最後おちなかったのがちょっと残念でした。おばあさまとか、いいキャラだと思うんですけど!
まんがをイメージしたお菓子を作り、まんがとフードの関係をエッセイとして書き下ろした一冊。
「ハチミツとクローバー」「のだめカンタービレ」「笑う大天使」「D班レポート」「はみだしっ子」「西荻夫婦」「くちびるから散弾銃」「いちご物語」「グーグーだって猫である」「天然コケッコー」「時をかける少女」「Landreaall」「エマ」「Under the Rose」「ベルサイユのばら」「放浪息子」「アラベスク」「舞姫 テレプシコーラ」「アナスタシアとおとなり」「Papa told me」「マルメロジャムをひとすくい」「おいしい恋グスリ」「西洋骨董洋菓子店」「百鬼夜行抄」「棒がいっぽん」「蟲師」「リトランテ・パラディーゾ」「コダマの谷」「トーマの心臓」「バルバラ異界」「Rさん」からイメージしたお菓子とそのレシピ、そして作中のフードについて論じている。更に、羽海野チカ、くらもちふさこ、よしながふみ、萩尾望都、それぞれの対談を集録。
本そのものも可愛いし、興味深いことがたくさんあって、すごく素敵な本だ。個人的に、入江亜季さんの「コダマの谷」を取り上げているところがポイント高いです。
少女漫画の中で、フードがどのようにして扱われているか。フードは何を示しているか、を語られているのですが、確かにその通りだ! と頷く。特に対談では、福田さんが、漫画家さんに、この作品ではこういう風にフードが使われていますね、というようなことを問われていて、まさに、フードと少女漫画の一冊! という感じでした。羽海野さんとの対談では、ちょっとだけジブリとフードについても語られていて面白かった。
留学先の教授の紹介で、英国で最も美しいと名高い古城「薔薇の城」で住み込みバイトを始めた夕貴。高貴な美貌を持つ城主の侯爵・レヴィンは、大学で見かけて以来夕貴の密かな憧れの人だ。けれど、実際のレヴィンは複数の恋人を持つ遊び人だった。からかい混じりに自分を口説いてくるレヴィンに戸惑っていたある夜、話し相手にと招かれた彼の私室で、突然雷鳴が鳴り響く。驚いて思わず抱きついた夕貴を、レヴィンは意地悪く「誘うなら抱いてやろうか」と押し倒して…!?(裏表紙より)
ハーレさんでまだお目にかかったことのない無理矢理系だったよびっくりしたー。無理矢理でも、多少は「憧れ」という気持ちがあったのでまあそこまで無理矢理というわけではないのかもしれない。ここまで恋愛だけを書くジャンルもすごいよなーと何故か今日はしみじみ思う。
英国に留学している建築学科の大学生・夕貴と、侯爵・レヴィンのお話。最初に書いたように、びっくりなところから関係が始まる。夕貴にちょっかいをかけてくる貴族がいたり、身分や地位に固執するレヴィンの身内がいたりと、二人の関係は段々と深まっていく。
夕貴がかわいいです。レヴィンも男前です。ラスト周辺、決め手を打ったレヴィンが「ビジネスで手の内を明かすやつがあるか」と言った瞬間、「あーそうかーそうだよねー別に語らんでもいいよねー」とつい納得してしまったのが我ながらおかしかった。
顔・髪型・服装すべてが地味でさえない図書館司書デイジー。34歳の誕生日の朝、彼女は心に誓う——負け犬から脱して結婚するのだ! ゲイの美容コンサルタントを得てクールな女に変身したはいいが、夜遊びデビュー早々、デートレイプ・ドラッグを捜査中の警察署長ラッソと鉢合わせ。マッチョで強引、理想とはかけ離れた彼に反発しつつ急接近するデイジー。が、ひょんなことから殺人事件に巻きこまれ……ロマンティック・サスペンスの女王が贈る抱腹絶倒の痛快作!(裏表紙より)
これは一応ハーレクイン系のロマンス小説と位置づけていいのかな(詳しくないのでなんとも)。だとしたらハーレクイン二冊目です。ロマンスの中に殺人事件が絡むお話。面白かった。
地味で冴えない34歳(!)のヒロインが大変身。このヒロイン、デイジーの言動が、どこか的が外れていておかしい。小さな街ということもあるけれど、●●●ー●をスピーカーおばさんのお店で買うとかな! 遊んでると思われたくて、という理由に噴いた。なんだかちょっとおかしくてかわいいぞ。しかもその買い物が後々までネタとして扱われて、噴いてしまった。
ヒーローのジャックはマッチョで強引な警察署長。バツイチ。真面目で初心なデイジーをからかうのを楽しみにしている。二人のやり取りが、どっちもいい年して子どもか! というレベルで面白い。喧嘩ップルかわいい。
ロマンティック・サスペンスと銘打っているけれど、デイジーが積極的に事件解決に乗り出すわけじゃなかったのがちょっと残念。地に足着いた女性なんだけど、もうちょっと活躍してくれても! おかしな言動だけじゃなく! と思う。
でも面白かった。
道化師のアルヴァンジェナ、売り子のジュデル、軍人のファーロン。不思議な遊園地で出会った三人は、人間のいなくなった世界で、「眠り」を探して旅に出た。彼らが唯一の手掛かりとするのは、古い言い伝え。遥か西にある〈眼〉は虹の生まれる場所で、同時にそこで「眠り」を司っているというのだが…。ノベル大賞を受賞した表題作に、書き下ろしの連作中篇を加えた、抒情ファンタジー。(カバー折り返しより)
「月虹のラーナ」「輝上の楽園」「貝の柩 海の底に」の中編三本を収録。表題作が一番SFファンタジーっぽくて、後の二編は不思議なファンタジーでした。
「月虹のラーナ」は、道化師と少女と軍人が旅をするというお話で、大人向けの童話のような印象でした。暗い世界を、止まった時間を、三人が延々と歩いているという光景が、ふわっと広がってくる。
「輝上の楽園」は、人物設定が神話世界のようで素敵だ。暁の公子、宵闇の姫、移り気で恋多き空族。ここでのファーロンがすごくひどい人でちょっとびっくりしました。
一番好きなのは「貝の柩 海の底に」で、これは人魚たちの物語。人魚世界を描いているのが、すごくときめいてしまいました。嵐の海で、沈みかけた船に歌いかけて男たちをさらう人魚たちの、妖艶で美しいこと。その後男性たちがどうなるかというのもさらっと書いていますが、そのさらっと加減がまた妖しくて好きだ。アンハッピーとあとがきにありましたが、一概にアンハッピーというわけでもなくて、ちょっといい話で終わっているところも好きな理由です。
江戸から明治に入って二十年。時が時ならば若様と呼ばれていたはずの長瀬たちは、これからの暮らしのため、巡査となるべく、教習所で訓練を受けることを決意する。その学舎では、長瀬たち若様組、薩摩組、静岡組、平民組と様々な派閥が生まれていた。果たして若様たちは無事に巡査となることができるのか。
面白かった! 『アイスクリン強し』の前日譚で、真次郎から離れて若様組が巡査になるまでのお話。明治の警察学校を舞台にした学園もの、という表現でいいのかな。
時代が変わり、人の身分が代わり、士族と平民など派閥が教習所にも生まれている。それぞれの身の上から巡査を目指す青年たち。若様組の個性も光っているけれど、教習所の同窓たちや、教師陣まで個性的で面白い。特に無能な所長や、理解のある教師、嫌味で贔屓があるくせに底知れないナンバー2の存在が楽しい。派閥を越えて訓練生たちが結束するところもすごくよかった。最後の大乱闘はすごく楽しかったし、学園ものとしてすごく楽しかったと思う。
個人的に沙羅ちゃんが好きなので、もっと出て! と思ったんですが、若様組もすごく楽しくて、続きがあれば読みたいなあと思いました。
いままで読みたくても読めなった、雑誌「Amie」に掲載された、幻の『マリア外伝』が大幅にボリュームアップして、ついに登場です。マリアよりも艶やかで狂おしい、エルザ、フランツ、ユリアの恋物語——。
そしてもうひとつ、スペシャル企画として池上沙京先生のコミック版『マリア』も収録。豪華絢爛たるドイツ王朝絵巻……。ため息の出るような流麗なイラストを、存分にお楽しみください!! ロマンの世界へ、ようこそ!(カバー折り返しより)
『マリア』から遡って、そのマリアの親世代に当たる三人の恋物語。ハプスブルク家の娘としてハルバーシュタット公と政略結婚したエルザ。しかし公は六十歳の老人。しかしハルバーシュタットには宰相の若く美しく明晰な息子フランツがいた。かつて宰相家に仕え、エルザに仕えることになったユリアは、フランツの思いを胸に秘めている。ハプスブルクの女として、横暴に振る舞う夫に従順な妻であるエルザは、フランツへの思いを秘め、フランツもまたエルザに。
という三角関係と政略と歴史を感じるロマンスでした。『マリア』を知っていなくとも読めますが、やっぱり『マリア』も一緒に読んだ方が絶対に面白い。というのは、『マリア』では今ひとつ冷たいのかどうなのかよく分からなかった宰相(フランツ)の人となりが分かるからです。外伝を読むと、『マリア』の主役であるフリードリヒが、宰相と分かり合えたのではないか、と思っているところに深みが出てすごくいい! ほかに好きだったのはマリアがいる数少ないシーンで、エルザがマリアを愛おしんでいるところが一番胸に迫りました。