読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
恋人の聡実が眠り続ける病気にかかってしまった。数時間が数日、数週間、数か月、数年と、眠り続ける時間がながくなる。眠りながら老いていく彼女を主人公は見守り続けるのだが――。表題作を含む、著者渾身の短編集(Amazonより)
眠り続ける病を患った彼女のそばにあり続けた彼の話。「眠り姫」。
使用人を人とも思わない所業で暴行された少女は、美しい男と出会う。男はまるで最初から存在していたかのように事実を捻じ曲げる力を持っていて。ダークファンタジー「汝、信心深きものなれば」。
架空の小説の感想文が受賞したのをきっかけに図書館司書の女性と親しくなる「さよなら、アーカイブ」。
すべてが水に飲み込まれた世界で生きる中、リーダーの死をめぐる「水たちがあばれる」。
ヤクザから仕事の下請けをするようになってしまった探偵・真木の三つの事件。「探偵真木」シリーズ。
2004年に富士見ファンタジア文庫で出たのかこれが。仄暗いところを描きつつも、肩の力を抜くような会話の軽妙さとか、一方で息が浅くなるような臨場感とか。切なくて懐かしいような感じとか。いまでいうライト文芸と変わらないような密度の高い短編集で、とてもよかった。
流した涙がすべて真珠になるという「真珠姫」。海の呪いによって真珠姫となった少女は、処女を失うとその呪いもとけるといわれている。公爵夫人となった漁師の娘セシリアは、すっかり人生を諦めていた。彼女を痛めつけ、真珠の涙を得て喜ぶ夫との生活に、いつまで耐えなければならないのか。そんなセシリアの前に現れたのは――? 真珠姫たちに訪れる運命の恋を描く、大人のためのお伽話。(Amazonより)
涙が真珠になるがゆえに無理やり妻にされたセシリア。何もかも諦めきった彼女のもとに幼い頃ともに遊んだ男の子が成長して現れた「真珠姫の再婚」
公爵令息で宮廷医師のアルフレッドは王妃からとある企みに協力させられそうになっていた。ある日塔に囚われていた真珠姫ローズを診たことで彼女と思いを通わせるようになり。「真珠姫の逃避行」
真珠姫である孤児の少女マチルダは国王の献上品として鳥籠の中で暮らしている。国王ウォーレンが玩具を絶対に泣かせてみせるとマチルダを翻弄するが……「鳥籠の真珠姫」
三つの中短編が収録されています。あとがきによると時代的には「真珠姫の逃避行」→「真珠姫の再婚」→「鳥籠の真珠姫」だそう。
流した涙が真珠になる呪い、けれど処女を失うとその呪いは消滅する、という少々大人向きの設定。そのせいか少女たちの繊細な恋心を描きつつもちょっぴりあやしさもあって、どきどきしました。
しかし高価な真珠を生み出すという体質のせいか、三遍とも不幸な状況に置かれている少女たちばかりだったので、できれば幸せに暮らしているところも見たかったなあ。
赤毛とそばかすのせいで容姿に自信がなく、引っ込み思案なドレス職人のハーモマイア。ある日彼女は、ずっと想いを寄せていた幼馴染のカリストルに誘われ、町外れの森を訪れた。奇妙な“喋る白ウサギ”を追いかけて怪しい古城にたどり着いた二人。しかし城主である“時の魔王”クラウドの怒りを買い、カリストルは巨大な時計に取り込まれてしまう! 彼の命と引き替えに、ハーモマイアは魔王の花嫁になる契約を交わし、危険な仕事に手を染めるはめに――!? ラブ&ダークなゴシック寓話が開幕!(Amazonより)
童話めいた世界観。ちょっと近代寄り? 時の魔王の住処に足を踏み入れたことから囚われた幼馴染を助けるために、クラウドに仕える二人とともに行動する。
イメージ先行っぽい読み心地で、軽妙な会話が独特。ただ似たようなやりとりを繰り返すせいで前進しているのかわかりにくい。謎も謎のままで曖昧になってしまっていて、とても素敵なモチーフが散りばめられているだけにとても惜しい。変身とかドレスとか、胸をくすぐられるじゃないですかー。
前世の記憶を残したまま、技術貴族ヌイール家の子供に転生したユイ。それから数年後、十五歳になったユイは「針子」としての能力がないと判断され、邪魔者扱いされていた。そんな中、ユイはカロスティーラ・ロダンに「針子」として引き取られることに。地獄の日々から救ってくれたユイは、ロダンへの感謝の気持ちを込めてヌイール家で見せなかった「加護縫い」と「精霊との対話」で匂い袋を作ってプレゼントする。すると匂い袋を受け取ったロダンは国宝クラスの代物であることに気がつき……。針と蜘蛛と精霊で織りなす幻想的な異世界裁縫ファンタジー、登場。(Amazonより)
表紙の印象よりだいぶと軽い文体のファンタジー。もうちょっと硬いのを想像していた。
育った環境ゆえに言葉が若干不自由で体力がないけれど、神級の裁縫の腕(魔力を込められる)を持つユイ。転生者でもある彼女が一気に周りを引き込んでいく、いまでは完全に正統派なチート的魅力を持つ主人公の物語。いやー虐げられていた主人公が人を魅了して地位を手に入れていくの、気持ちいいわー。面白かった。
なお恋愛相手(と言っていいのか微妙な薄さ)は彼女を引き取ってくれたロダン氏ではありません。
面白くはあったんですが、途中で力尽きてる……という中盤の短文と改行具合が少し気になりました。状況がわかりにくい状況で会話が続く最後、二巻に続くといわれてまじかーとなってしまった。どうなるのかなあユイは。幸せになれるといいな。
わずか数千円で遊べる激安店、妊婦や母乳を売りにするホテヘル、40から50代の熟女をそろえたデリヘルなど、店舗型風俗が衰退して以降、風俗はより生々しく、過激な世界へとシフトしています。一方、参入するハードルが下がり、多くの女性が働けるようになった反面、大半の現場では、必ずしも高収入にはならない仕事になっているのが実態です。それでは、これから風俗はどこへ向かっていくのでしょうか? 様々な現場での取材・分析を通して、表面的なルポルタージュを超えて、風俗に画期的な意味を見出した一冊です。(Amazonより)
思っていたよりも硬くて、しっかりした問題提起と思考の一冊だった。性風俗という言葉を見ると女性問題や搾取の話になるのかと思いきや、福祉と支援の話になって、めちゃくちゃ興味深く読みました。
性風俗店がどのように機能しているのか。そこに所属している女性たちはどのような問題を抱えているのか。それらが担っている役割を当事者に近しい視点で記述しています。すごく安易に表現すると「ポジティブ」な面を書いている感じ。一方でこの世界に身を置いている人たちに救いの手が伸びていないという現状も記して、どのようなアプローチができるのか考えている。すごく考えさせられる本でした。
修道院学校から出た十七歳のジャンヌは、出会った青年ジュリアンに恋をし、やがて結婚する。だがジュリアンはだらしなく、けちで、ついにはジャンヌの乳姉妹メアリを妊娠させ、子どもとともに追い出した。やがてそのジュリアンが浮気が原因で死に、ジャンヌは息子ポールを溺愛するようになる。
モーパッサンの『女の一生』が原作。原作は未読。
世間知らずの娘が男に翻弄され、母親として息子に執着し、金を無心され、それでも生きていく、多分きっと当時はごくありふれた「ある一生」なんだろうという作品で、始終暗いトーンなのですが合間に差し込まれる光溢れる光景がジャンヌの執着を表しているようで物悲しい。常に世界は凍えて、荒波にさらされているような気がして。
体を壊して仕事をリタイアした颯太。とある理由から大学を休学中の、食いしん坊女子ひより。 人生迷子な二人は、亡き颯太の父が遺した小さな食堂『風来軒』で出会う。 町の人たちからとても愛されたこの食堂を存続させるため、二人は新たなメニューを探して旅に出る。 父の最期の料理はどこに? 幻の絶品コロッケの材料は? 東京から岩手の盛岡、そして北海道は美しい羊蹄山の麓、真狩村へ。 二人が歩む“おいしい旅”。元気になれるフード&ロードノベル、登場!(Amazonより)
離婚をきっかけに疎遠になった父の葬儀を出した颯太は、父の店の常連だった女子大生ひよりと出会う。人生のまいごである二人は旅と食を通じて、一歩一歩前に進んでいく。
すごく安定した読み心地で、登場人物が生き生きしていて読んでいてすごくほっとしました。物語を通して見える、食についてとか、高齢化のこと、地方のことなどが心配になったりするものの、「食べる」ことをしっかり見据えている感じがするからかな。
それぞれの悩みを抱えつつも、綺麗だね美味しいね楽しいねって思えることが素晴らしいことだと思える。そしてまた「食の記憶」をすごく大事にしている感じが愛おしかった。