読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
十六歳の王子カレルの近侍であるマリエは、仕える主から懸想をしているのだと告白された。最も近しいところにいたはずのマリエだったが、その相手に心当たりがない。懸想の相手に思いを伝えるにはどうしたらいいかという問いかけに、本を読み、数々の作戦をこらすも、マリエは認識していなかった。殿下が懸想しているのが、自分であることを。
西洋風の王国、王宮での、王子と近侍の少女のすれ違いロマンス。視点がマリエなのですが、彼女の淡々とした語り口と生真面目な言動が、もう思いっきり違う方向に頑張りすぎていてもだもだ。それに対してはっきり言うこともできないカレルは、言葉遣いこそ王族ですが、子どもっぽく、幼いながらも真っ直ぐな気性で、将来を期待させる王子様。ウェブ版の最後ではしっかりと王位についたようで何よりです。この物語でいいなあと思ったのは、王国と王族と身分差というのが、どうにもならないところがやっぱりあって、それでもそれぞれ出来うるかぎり最良な選択をして、幸せになるというところ。べたべた甘いわけでなく、少しほろ苦いロマンスで、面白かった。
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山田梢太として華乃子とひとつ屋根の下での生活にテンパる加地梢太。地方の小さな病院で静かに暮らすジョナサン——。鳥籠から巣立った住人たちはそれぞれの生活を送っていた。〈鳥籠荘〉は無人となり、このまま歓楽街のはずれで朽ちていくだけなのか……。
そんなある日、トランクを引いて〈鳥籠荘〉の前に現れたのは——?
〈鳥籠荘〉の後日談エピソードに加え、番外編「Blood Party!〜眼鏡と吸血鬼〜」を収録。——女子高生・キズナが通う学校に勤める美術教師・浅井にはある噂があった……。それは、吸血鬼!?〈鳥籠荘〉は吸血鬼の館!? 謎めいた保健室の先生・由起も登場する、もうひとつの〈鳥篭荘〉ワールド!(カバー折り返しより)
鳥籠荘シリーズ、エピローグ巻。山田家の面々と、ジョナサン、そしてキズナのその後の物語。みんな、それぞれに巣立った場所でうまくやっている様子。エピローグには登場しなかった住人たちも、どこかで生きているのだろう。暗かったアパートから出て、見た世界は穏やかな光に満ちている。
子どもたちが大きくなっていく感じが、時は進むという実感になりました。華乃子と梢太の、小学生から大人へとゆっくり変わっていく話がもだもだでした。女子特有の結束力や、ちょっと女子に遅れをとる男子とか、もうあああ分かるうううって。
エピローグはとてもいいエピローグでした。
番外編の吸血鬼話もよかった! これだけでも成立している番外編って、すごい。面白かった。もっと吸血鬼学園生活を堪能してみたかった。ここでのキズナと浅井は、最終的に仲良さそうで何より。
夏休みも終わり学園に戻った泉水子は、正門でふと違和感を覚えるが、生徒会執行部として学園祭の準備に追われ、すぐに忘れてしまう。今年のテーマは〈戦国学園祭〉。衣装の着付け講習会で急遽、モデルを務めることになった泉水子に対し、姫神の出現を恐れる深行。果たして会終了後、制服に着替えた泉水子はやはり本人ではなく……。大人気シリーズ! 物語はいよいよ佳境へ。姫神の口から語られる驚くべき事実とは……!(カバー折り返しより)
泉水子の日記から始まる第四巻。夏休みが終わった後、学園祭に向けて、会議をしたり下見をしたり学生らしいことをしている泉水子たちは、アニメにはそれほど描かれていなかったところかなと思います。いろんな生徒がいることが分かるのが、原作は楽しい。しかしさりげなくオタクへのネタがばらまかれているのはなんでなんだ。泉水子は夏の大祭の知識なんてないはずなのに笑
深行との仲は相変わらず進まない。じれじれというより、本当に仲良くなるのかという不安ばっかりになってくる。どちらも気にし合っているのに、未来への不安が停滞させるんだろうか。
姫神とのデートは楽しい。姫神のただではいかない性格や言動が好きです。一度は世界遺産になったことがあるというのが、また辛い……。途方もない時間を生きるとああいうものになるんだろう。「決められた未来が白く途切れた」なら、姫神は見失うものがあるのかなと思うとその辺りも切ない。
「わたし、もともとそんなに自信のある人間じゃないんです。(中略)コンプレックスのかたまりの中で、わたしは本当につまらない人間なんだとずっと思い続けていたんです。でも、『あ、それでもわたしは書くことが好き』みたいに、書くのが好きという、たったひとつのことはあったんですね」——本文より
本書では、あさのあつこさんと中学生が出会い、語り合い、手紙を交感し、そして、あさのさんは、自分の中学時代を振り返りました。
大人になってもチュウガクセイのキモチを忘れたくない。そんなあさのさんからのメッセージに満ちた一冊です。(カバー折り返しより)
新潟中越地震で『バッテリー』を読んでいるという中学生との往復書簡。俳優・神木隆之介さんとの対談。六人の中学生男女との対談。中学生たちの質問に答える章。そして、あさのさんが高校二年生の時に書いた短編小説「マグナード氏の妻」巻末付録。
2008年の本ですが、中学生の悩みってそうそう変わらないなあ……。けれど、この本で話している中学生たちはずいぶんしっかりした物の考え方をしている。いじめのたいしても、アクションを起こしたいという気持ちがあるのは強くないとできない。
子どもの世界が狭いなんて、大人の決めつけだ、学校以外にもお風呂で、電話で、ノートその他色々なところに世界がある、というあさのさんにその通りだなあと反省しました。子どもの世界、確かに狭いんだけれど、一口に狭いんじゃなくて、思ったよりもたくさんあるよな、と。
学園祭の企画準備で、夏休みに鈴原泉水子たち生徒会執行部は、宗田真響の地元・長野県戸隠で合宿をすることになる。初めての経験に胸弾ませる泉水子だったが、合宿では真響の生徒会への思惑がさまざまな悶着を引き起こす。そこへ、真響の弟真夏の愛馬が危篤だという報せが……。それは、大きな災厄を引き起こす前触れだった!(カバー折り返しより)
アニメを見てから読む三巻。SMFやおじいちゃん周りの話があって、戸隠の派閥が感じ取れるようになっていると思いました。こうしてみると、泉水子も深行もどっちつかずでみんな落ち着かないんだろうなあと思う。主人公たちが道を決めないとなかなか方向が決まらないので、「普通になりたい」という願いは難しいことなんだと感じます。
このシリーズで感じることだったんですが、「RDG」って、結構神霊やその他特殊能力に関することをすべて説明し切らずに進めるよなーと。明確にすると雰囲気が壊れたり読者の考え方が破綻してしまうからなんだろうか。きっちり考えてあるのに、こういうものなんだと臭わせる程度にしてあるのが面白いな! 真響、真夏、真澄の関係性が特にそう思う。
女子校の中等部に通う赤音。親友の春来と楽しい学校生活を送っていた。しかし、学年の中心的存在の少女・舞がふたりの友情を引き裂いてしまう! ふたりの間に割りこもうとする舞を拒んだことで、赤音はクラスメートから嫌がらせを受けるようになる。以来ひとりぼっちでいる赤音。だが彼女には、誰も知らない秘密があって…! 乙女の園で華やかに繰り広げられるリリカル・ミステリー!(カバー折り返しより)
学校という小さな世界での少女たちの物語! 学校からほとんど出ないのに、ここまでぐいぐい読ませられるのはすごいなあ。友情と裏切りって、とっても美味しいものだと思います。そこまで友人が絶対である学生って、すごい生き物だよなあ。
赤音、春来、舞、琴乃がそれぞれぎりぎりと精神にダメージを受けている感じがとてもよいです。特に赤音と春来は、物語上、必要以上に傷つけ合っている。舞と琴乃はそれぞれの立場を自覚する頭のいい子たちなので、一歩退いたところにいるのですが、四人の少女がいるとそれぞれの心理状況にいろんな見方ができて面白い。でも、舞は事態をこじれさせただけなんじゃないかなあ。自信のある人が陥りがちなことですね。結局彼女はどうなったのかも見たかった。
名前にまつわる少女と心とミステリというのが、とってもよかったです!
『天地明察』の頃から数年間の対談集。対談相手は、かわぐちかいじ、富野由悠季、井上雄彦、養老孟司、夢枕獏、伊坂幸太郎、天野喜孝、鈴木一義、中野美奈子、滝田洋二郎、山本淳子(敬称略)
『天地明察』が本屋大賞、映画化の流れでばーん! となっている時のものなので、何故渋川春海を選んだのかという話や、SFではなく時代小説を書いたのか、ライトノベルから一般文芸に行ったのかという話がしょっちゅう出てくる印象でした。『天地明察』の頃からの人はその辺の話はあんまり知らないのかもなー。冲方さんのインタビューや対談やブログは面白くて結構読んでいるので知ってるよ! という話題も多かった。
しかし、やっぱり各分野の第一線で活躍している先達の方たちとの、これからの創りものとは、という話はすごく面白かったなあ! 富野由悠季さん、天野喜孝さんの話は特に面白かった。富野由悠季さんとの対談でリアリズムと日本現代社会について話をされているんだけれど、リアリズムでものを考える、という感覚はあんまり分からないとしても、ここがすごくうっとなったところ。
富野 (略)「踊る大捜査線」の本広克行監督に、今の多くのクリエイターは自分でモノを生み出せない、おもしろいモノをいろんなところから引っ張ってきて、それをどう上手に並べるか、つまりサンプリングが今のモノづくりなんだって説明されて驚いたんだけど、それって当たり前の感覚なの?
冲方 そういう考え方もあるとは思いますが、自分の能力で全部つくるよりもサンプリングしたほうが観客に届いてしまうという悔しさも入っているんじゃないでしょうか。
これも一種の活動なんだけれど、どれほどリアリティのあるものが、リアリズムとして人の生活に取り入れられるかという点で考えると、ライトノベルが消費だと言われる感覚はなんとなく分かる気がする。みんながモノを作れる時代というのは、こういうことなんじゃないかなあ。
『特別』な才能を持った少年少女だけが入ることのできる『特別』な塾。ヴァイオリニストとして活躍する少女・盟は、音楽枠で塾を受験する——。合格者はわずか二人! だが盟は当然のように難関を突破する。入学した塾では、裏口入学の生徒がいるという噂があった。盟はいっしょに試験を受けた巴のことを疑うが……!? クラシックな塾で華麗にくりひろげられる、リリカル・ミステリー!!(カバー折り返しより)
友桐さんがまた本を出されると聞いて、コバルトのを探して読んでみることにする。友桐さんの作品は『白い花の舞い散る時間』しか読んだことがない上、だいぶと昔だったので、エージェントものだったっけ? と最後はぽかんとしましたが、やっぱり少女で陰鬱でミステリな物語はよいものです。疑心暗鬼と、本物の友情と、まだ自分たちが属していない社会を仰ぎ見ている感じが、ぶるぶるして読んでしまいます。
音楽に選ばれ、音楽を奏でる天才である盟。実力はありながら一歩及ばない印象、しかしミステリ好きの社交家な沙耶、才能を持ちながら目立たない沙耶の従弟・拓斗、実力が備わっているか疑わしい巴。選ばれた存在、というものをどのように追っていくか、受け止めるか思い悩む少女たち。最後は一作目の『白い花の舞い散る時間』にぐるっと戻っているようなので、読み返したいし、他の作品を読んでいきたいです。昔はさほど印象を受けなかったんだけれど、読んでみるといいなあ、これ。
十八諸島の世界を巡り、世界各地で話を集め、他の土地へと伝え歩く、それが我ら語り部の生業。冬至の夜、我らは島主の館に集い、夜を通じて話をする。それが煌夜祭——年に一度の語り部の祭。お話ししよう。夜空を焦がす煌夜祭の炎壇でも照らすことの出来ない、真の闇に隠された恐ろしい魔物の物語を……廃墟となった島主の館で、今年もまた二人だけの煌夜祭が始まった——!
第2回C★NOVELS大賞受賞作(裏表紙より)
『〈本の姫〉は謳う』の感想の時にこれ読んだはずなのに記録がない……と首をひねっていたんですが、読み始めてやっぱり読んでる! が、結末が思い出せない……ということで再読しました。ブログでは初めての感想ですね多分。
人と魔物と語り部の物語を、語り部が語ることによって、人々の生きたもの、繋いでいくものが次第に明らかになっていく。魔物はどうして存在するのかという理由は明らかにされないものの、語り継ぐ人々の力によって、世界がいい方向にも変わっていけるエンディングでした。誰と誰が繋がり、誰が生きているのか考えながら読んでしまうと「えっえっ」とページを戻ってしまうんですが、本がまさに語っているなあという物語で、とても面白かったです。
『夢の上』もあるので読もう。