読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「新たな契約を結ぼうか?」
魔の潜む都ロゼッタ。幼い頃の記憶がない少女リゼルは、化物に襲われていたところを炎の魔法を操る青年伯爵アーベルトに救われる。悪魔に力を与える妙薬《エフェメラ》である彼女を守るかわりに、アーベルトは彼が追っている事件の捜査協力を要求。その上、メイドとして伯爵家で働くことを命じてきて…!?
永き時に飽きた悪魔伯爵との出会いが少女の運命を変える。霧煙る都のラブファンタジー。(裏表紙より)
どこかロンドンを思わせる、血なまぐさい事件と貧民窟を抱える魔都ロゼッタ。幼い頃から負っている醜い顔の火傷と悪魔の所有印のせいで、花を売ろうとするも自身を養うことさえままならない少女リゼル。そんな彼女が、人間に擬装して人の社会を生きているアーベルトと出会い、悪魔がらみの事件を解決する物語。
軽くですがちょっと謎解き風味のにおいがあったり(誰が怪しいのかは一発で分かるんですが)するのは、この世界観のせいでしょうか。悪魔?らしい伯爵と警官と聖職者と、下町と霧と殺人事件。主人公がメイドに扮したり囮を担ったりするところがとても! いいです!
意外に優しいアーベルトで私がおおっ! と感動したのは、「あんたも悪魔のくせに!」と言ったリゼルに激高したり嫌味を言ったりせず、黙って抱え込んでくれた、あそこですよ! こいついい男だ……! と感動しました。
《エフェメラ》らしい設定はあんまり出てこなかったのがあれだったんですが、最後の啖呵でヒロイン激かわと思ったので、満足しました。この話結構好きだ。
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はじめて、本気の恋をした。
はじめて恋を失って、はじめて本気で好きだったのだと気づいた——。有川浩、朝倉かすみ、梨屋アリエ、石原まこちん、吉野万理子、紺野キリフキ、宮木あや子ら七人の人気作家たちが、人生はじめての大切な失恋を綴った小説アンソロジー。終わった恋、始まらなかった恋、始めてはいけなかった恋……七人七色の失恋のカタチ。はじめての失恋には、恋愛のすべてがつまっている。(裏表紙より)
有川浩「失恋の演算」朝倉かすみ「ノベライズ」梨屋アリエ「FreecyLove」石原まこちん「タマママーンを探して」吉野万理子「マリン・ロマンティスト」紺野キリフキ「とげ抜き師」宮木あや子「はじめてのお葬式」以上七作の短編アンソロジー。
有川浩さんの短編を読んでみたかったのと、宮木あや子さんの作品を読みたかったので。
紺野キリフキさんの「とげ抜き師」はどこかで読んだな。宮木あや子さんの「はじめてのお葬式」は『セレモニー黒真珠』(未読・積んでる)に収録されているのを確認。
一番好きなのは「はじめてのお葬式」なんですが、「失恋の演算」も切なくて双子ならではのあれでそれで、とても胸が締め付けられました。どんなに鬱屈した思いがあっても、ちゃんと前を向ける登場人物はよいものです。
「あー……そっか、もしかして俺しばらく音信不通だった?」『一週間。さすがに死んだかと思うだろ』そんなにたってたっけ。どうりで六月も終わるはずだ。
——三嶋は友人の電話に起こされ、寝ぼけたままバスルームへと向かった。ふと、戸口に人の気配がし振り返ろうとした時、首筋にあてられた刃物の感触に全身が凍りついた。
「動かないで。動いたら切れるよ」
三嶋の前に突然現れた少女マドカ。三嶋の夏はこうして始まった———。
第9回電撃ゲーム小説大賞<大賞>受賞作『キーリ』シリーズの著者、書き下ろし長編。(裏表紙より)
夏になったら読みたくなると聞いていたので、手に取ってみた。
現代らしさを残しつつも遺伝子操作、特に新生児の遺伝子をカスタムすることが流行している社会で、それらの幸不幸を抱えている主人公三嶋と、少女マドカ、その周辺の人々の物語。これは、とてもいい拾い物(誰かが家に転がりこむ話の意)!!! 世界観がとてもよくて、一緒に住む話っていうのはこういう風にちょっと寂しくて陰気な雰囲気の方が好きだー。
無気力な三嶋が、マドカに振り回され、痛い思いなどもして、過ごしていく生活がとてもいい。しかもあの場所で一度話が終わらずに、まだ続いたのがよかった! こういうの、読みたかったよー。分厚かったし、電撃文庫らしい軽さがあんまりなくて、読み応えがあって面白かった。よいものでした。
伯爵家でナースメイドとして働くマリアンは、屋敷で開かれたガーデンパーティで、侯爵家のローレンスに見初められ、強引に唇を奪われてしまう。彼は真剣にマリアンを愛していると優しく語り、結婚を申し込む。貴族である彼がどうして私を? 戸惑い恥じらうマリアンに、歳の離れたローレンスのしなやかな手は次々と未知の悦びを教えてゆく。清純な少女の身体は初めて愛を知って……!?(裏表紙より)
ホワイトハートにこんな真っピンクの背表紙があるの!? と思ったら、今流行りのTLものでした。甘々でべたべたなロマンスでした。
孤児である十六歳のナースメイドの少女が、その初心さと清純さゆえに、手慣れた貴族女性に飽きていた侯爵に見初められて結ばれるという話以上のなにものでもないのですが、ほんのりとヴィクトリアンな舞台と二人の甘い生活が味だと思いました。エロスを追及するならそのまま衆も(省略)しても面白かったんじゃないかなーと思う私は汚れてて本当に申し訳ありませんでした。
「私のこと、好きになって下さいっ!」ある理由から、花盗人と呼ばれる宮廷一のプレイボーイ・アロイスを籠絡することになったフリーダ姫。外見だけはアロイス好みの大人びて遊び慣れした美女に見えるものの、その中身は泣き虫で純情な少女。そんなフリーダのあまりに危なっかしい誘惑に、本気の恋をしないはずのアロイスも次第に調子を崩されて!? 蕾の姫君と華麗なる花盗人の、ままならぬ恋の行方は!? 大団円の王道ラブコメディ!(裏表紙より)
ご主人様なシリーズ四作目にしてシリーズ完結巻。三作目に登場した、騎士である姫君フリーダと、これまで三作に登場して見事なアシストをしてくれていた花盗人、遊び人アロイスのラブコメでした。
お兄ちゃんなアロイスが、フリーダを放っておけないと世話を焼いたり、目を離せないフリーダがその純粋さゆえにアロイスのハートをぐらぐら揺さぶってしまうのは大変にやにやでした。宮廷で居場所を作っていくフリーダの話も見てみたい気がしましたが、アロイスとのやりとりがもう可愛くて。
これまでの主人公たちがそろい踏みして、みんなが応援してくれるのはとても楽しかった。特に男衆のやりとりが笑 「愚か者の世界へようこそ」「同じ穴の狢です」声出して笑ってもうた。
楽しいラブコメシリーズでした!
恋だ! 仕事だ! 婚活だ! 彼氏いない歴二年の鑓水。年上社長と同棲中の朝日。遠距離恋愛に焦る壺井。DV男にハマる桶川。果てなき不倫に溺れる横山。彼女たちは悩めるアラサー女子「野良女」。今宵もお酒片手にあけすけなガールズトークに花咲かす。飲んで笑って、ちょっぴり泣いて——。アラサー女子のおかしくも切ない日々を軽快に描く連作小説。(裏表紙より)
宮木さんのいわゆるA面に属する話。あけすけに性生活とかそういう話をするアラサー女子五人の連作。
馬鹿馬鹿しくって、とても真剣で、ちょっと可哀想ですごく楽しかった。女子が集まってどうでもいいことをだらだら話しているのが好きだったりするのですが、もう本人たちは至って真剣な食べて飲んでいるシーンは欲求だだ漏れでおかしかった。
結局みんなそれぞれに何かしらに諦めをつけたり、変化してみたりするのですが、こう、だらだらと続いていられる友達っていいなあと思いました。
画面に現れたのは共和宇宙でも五指に入る大手保険会社キャピタル・ジェネシスの役員、ビル・ロギンスである。
「マクスウェル船長。——実はガリアナ星系へ跳んでもらいたいのです」
ダンの表情が少し変化した。
ガリアナ星系は年間数十万隻が通行する航路だが、海賊が跳梁跋扈することで有名な宙域でもある。
「海賊被害を減らす切り札となるかもしれないものを、なるべく速く届けていただきたいのです」
断ろうにも既に断れない雰囲気だ。
「おばさん、えらい人はどこ?」
ジャスミンはそれが自分に対する問いかけとは思わなかった。幼い少女の声だったからだ。
——ダンへの緊急依頼とジャスミンに声をかけた少女。この二点が重なる時、とても恐ろしい事件が……(裏表紙より)
この時代にはすでに旧式となっている《門》を用いた航海が行われているガリアナ星系。《門》を使う海賊が横行し、人質を取って身代金を要求するのだが、人質三人が帰ってこない。ジャスミンは偶然出会った少女とその家族に事情を聞き、ケリーとともに自ら救出に乗り出すが……という怪獣夫妻の話。
相変わらずジャスミン最強。なのになんだかんだ言いながら、ジャスミンもケリーも夫婦として相手のことを愛しているっていうのがにやにやです! しれっとのろけるから、ちょ、ちょっと詳しく! ってなりながらもそれが怪獣夫妻のいいところですね。
面白かった。
時は幕末、処は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、なんと貧乏神だった! とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至。傑作時代長篇。(裏表紙より)
作業の合間のちょっとずつ読もう、と思って手元においていたんですが、これが段々と面白くなってきて!
時代物はあんまり読まないので、倒幕やら志士やらという話は一般的に坂本龍馬、勝海舟サイコー! みたいなものが刷り込みされているのですが、この作品の武士側から見ると、武士とはこういう存在だったのだな……と染みるような感慨がありました。いちいち、彦四郎が哀れ、かつ、かっこよすぎる。不運でいるところに頼んでしまった神が、貧乏神、疫病神、そして死神。死神をどうするのかと思いきや……貫いた彦四郎は強い心の持ち主だ。最後がもう粋って感じ。
そしてまた、この神々の人間臭いこと。涙もろくて、情に流されやすくて、だから人間の近くにいるのかなと思ったりする。
面白かった!
姫とともに文字を回収する旅も終わりが近づく。しかし世界の滅亡を望むレッドはバニストンに災厄の種をまき散らした。懐かしい街、恩ある人々の危機に必死に闘うアンガスに彼は言い残す。「オレを殺す覚悟が出来たら第七聖域まで来い」追い詰められていくアンガスは「希望」を捨ててしまうのか? そして〈俺〉という語り手によって紡がれたもう一つの物語が交錯する時—―! 多崎礼の手で緻密に織られた世界がここに完結する。(裏表紙より)
二巻、三巻で、だんだんとこれは「巡る」物語なんだと分かっていましたが、分かっていただけに、辛さも喜びもひとしおでした。みんな、「希望」のもとに寄り集まって、再びこうして手を貸してくれたんだと思うと、光ってすごいなあ。
バニストンで起こった災厄、しかしそれは絶望への一歩でしかなかった。結果、大切な人が失われ、憎しみに取り憑かれるアンガス。しかし、そんな彼を救ったのは、セラを始めとした、希望を求めた人々の存在。アザゼルの物語もまた終局を迎えていき、アンガスという存在が何者であったのかが明かされる。
世界の運命の観測、という実はすごく壮大な設定があるんですが、そういう大層なものではなくて、アンガスが、アザゼルが、足掻いてもがいて旅をしたり何かを得たりする、多分希望を見つけるための話だったと思います。
最後は、どうせだったらみんなと未来を語り合っているアンガスが見たかったなー! と思いながらも、ハッピーエンドを観測するアンガスとセラを見ることができて本当によかった。私も彼らの世界が希望に溢れていることを祈る。
面白かったです。