読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

貧しいながらも町医者として、やりがいを感じて生活していた娘——珠華は、謀略によって、一夜にして王宮で暮らす公主になっていた。
誰一人味方のいない王宮、わからない作法にとまどい混乱する珠華だったが、持ち前の明るさで、公主にしかできないことをしてやろうと気持ちを切り替える。
一方、王として自覚のない、若いへたれな春慧は、珠華のペースに巻き込まれ、やがて二人は……!?(裏表紙より)
あらすじではシリアスっぽいですが、「へたれ」という単語がある通り、どこかコメディな印象のある今回の巻。ヒーローが年下弟系へたれってめずらしいな!(花嫁シリーズは男前ヒーローが多い印象なので)
珠蘭公主がたいへんひどかったので、珠華にはがつんとやってほしかった気もしつつ、珠華の王宮での言動は気持ちよかったです。明るく元気な女の子! というのをびしびしと感じたので、気持ちよく読めました。
国王春慧も珠華のおかげでかっこよくなっていっていたので、できればこの続きを読んでみたいな! 年下の女顔のへたれを返上してぜひ珠華を攻めまくってほしい。

玄武書房辞書編集部。新辞書『大渡海』の刊行を目指し、荒木はとある冴えない風貌の男「まじめ」を営業部から引き抜く。まじめは言語に関する変わり者だったが、みるみる辞書編集の能力をしめしていく。荒木、まじめ、西岡、佐々木、岸辺、そして松木先生。言葉を愛する者たちの辞書作成クロニクル。
面白かった! 本当にみんな変人ばかりだけど、仕事をに誇りを持っているってかっこいい! 自分のやりがい、できること、折れたり悩んだり不安になったりするけれど、一つの大きなことを達成していくことは仕事をする上での大きな喜びなのだな。
たくさんの人たちが次の世代にバトンを渡していくという話なのですが、それが作中にも登場する「言葉は生き物」という言葉ではとどめきれない、時間というものと合わさって、読んでいると切ないような嬉しいような気持ちになって、とてもいいお話でした。
本そのものの仕掛けもあって、楽しい一冊でした。カバーの下をちゃんとめくるんだ!
しかし三浦さんの本は、本当に、中年からお年寄りな男性がかっこいいし、かわいいよなあ……とジジ好きにはたまりません。

出版社で編集の仕事をしている真也は、昔から触れたものの思いを読める能力の持ち主。強ければ強い思いほど鮮やかに読み取ることができる。ある日、会社の同僚のカオルに、アメリカで映画の仕事をしている父が帰国するから、迎えにいってほしいと言われる。父親が現れるものの、そのとき真也が触れたものからは、まったく別の光景が見えていた。
有川さんの『ヒア・カムズ〜』、キャラメルボックスの『ヒア・カムズ〜』のパラレルストーリー、という二つのお話が収録されています。どちらの家族のお話でした。
思ったより短いなというのが読了後の最初の印象でした。それでもじんわり面白かったですが、スパスパっとしたお話ではあんまりない、でしょうか。有川さんのお話は、どちらかというとちょっとミステリっぽく、いわゆる「いいお話」。パラレルストーリーの方こそ、有川さんの独壇場という感じのお話だった気がします。
パラレルストーリーの、「嘘をつく子」の話が、痛くて痛くて。だめな大人って、痛いけれど、こういう見方をすれば愛おしいのだな、と感じました。私はこっちも好みです。

高知県観光部おもてなし課。課内で最も若い掛水は、観光特使の一人に任命された高知県出身の作家・吉門喬介の問い合わせメールに応じたところ、壮絶なダメを出される。吉門とのつながりをきっかけに、お役所体勢、民間視点の欠如など、なかなか突破できない壁を前に奔走する掛水たちおもてなし課だったが……。
県を元気にしようとするものの、なかなか突破できないお役所的な考え方を、びしびしと指摘し壊そうとしていく作家の吉門。言葉には厳しいものがあって正しすぎるがゆえに痛いところもありましたが、最初からそれを聞こうとする掛水はとてもえらい。最初からかっこいい片鱗があるじゃないか! と思いました。
そんな風にして最初はすごく痛くて辛いのですが、だんだんとみんなが見ている同じ「光」を目指していくところは楽しかったです。人が変わっていくところを見るのは楽しいし気持ちがいい。
巻末には実際のおもてなし課の方をまじえた対談があり、実際に高知県がおもてなし課として取り組んでいることが少し分かって、私が高知県の特使なら小説を書くことで貢献しよう、という有川さんの戦略にまんまとはまっているなあと思いました。

大事な探しものがある人だけがたどり着ける、不思議なコンビニたそがれ堂。ミステリアスな店長が笑顔で迎えるのは、大好きな友だちに会いたいと願う10歳のさゆき、あるきっかけからひきこもりになってしまった17歳の真衣、学生時代の恋をふと思い出した作家の薫子……そこで彼女たちが見つけるものとは? ほのかに懐かしくて限りなくあたたかい4編を収録したシリーズ第2弾、文庫書き下ろしで登場。〈解説・三村美衣〉(裏表紙より)
一巻目が生きる希望や何か暖かいものを見いだしていったのに比べて、この巻はもうちょっと暗い、死の気配が濃い巻でした。ちゃんとその影や闇の先に、生きるための力を見いだしていくのですが、それに至るまでの色々が、三者とも辛い。避けられないことだとは思うのですが、継母に愛されるかどうかの不安、引きこもりから脱出できるかどうかの不安、帰ってこない淡い恋の相手の行方を思う不安など、これは救われるお話だということが分かっていても、辛いものがありました。
でも三編目の「魔法の振り子」、作家の薫子のコンビニでのシーンはちょっとうるっとしてしまいました。ああ言われたら、きっと、作家冥利につきるだろうな……。

かつての日本には、わが国固有の伝統精神があった。その一つが武士道である。それは、新渡戸稲造が1899年に英文で『武士道』を発表し、世界的な大反響を巻き起こしたことでもわかる。本書はその現代語訳である。発刊当時の明治期と同様、現代の私たちは急速な国際化の中で、日本人のアイデンティティを見失いつつある。「日本人とはなにか」を問い、倫理観・道徳観を見直すことができる格好の書である。(裏表紙より)
読みやすかったし、面白かった。そうなのかーという発見がいっぱいあった。日本人をかっこよく書き過ぎかなあとちょっと恥ずかしい気もしましたが、もし武士道という精神が日本人に息づいていたら嬉しいな。
武士道にある五つの徳を中心に、切腹や復讐や女性についても書いてあって、面白かった。訳者の方が、武士道は過去の遺物だと思っていたことがあると書いてあったけれど、私もそういう部分があったなあ。古くさくて、現代的でなく進歩的でない考え方だと思い込んでいたけれど、全然そんなことはなかった。日本人らしい、と言われることの根底にあるような考え方だったんだな。日本人の道徳は武士道だったというのは面白い。その武士道が廃藩置県によって廃れていくと、書生たちがその名残を帯びているという見方も面白かった。

自分以外の人間が“ロボット”に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。
クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている……ような?
イラストは『JINKI』シリーズの綱島志朗が担当。「電撃文庫MAGAZINE増刊」で好評を博したコラボレーション小説が、書き下ろしを加え待望の文庫化! 巻末には描き下ろし四コマのほか、設定資料も収録!!
うえお久光が紡ぐ、“少し不思議な”日常系ストーリー、登場!!(カバー折り返しより)
うおおおおおお面白かった!! 導入でもある最初の話「毬井についてのエトセトラ」は、うーんライトノベルの文章だなあ……とちょっと読みづらかったのですが、「1/1,000,000,000のキス」からはまってしまった! うおおおおおお。
普通の人とは相容れない認識の力を持つ少女・毬井ゆかりを心から友人だと思っている少女・波濤マナブの日常と非日常の物語。あくまで日常の中で世界・運命と戦うマナブの話「1/1,000,000,000のキス」がもうすごかった!
とある組織から数学に対して天才的な才能を持つ少女アリスがやってくる。アリスの目的はゆかりを連れて行くこと。ゆかりを救うために、マナブはとある能力を使って、ありとあらゆる平行世界を行き来する。ある時は人を殺し、ある時は別人になり、ある時は組織さえもつぶし……。
量子力学がどうのという話は私はあまり理解がないのでそこはさらっと読んだので、とんでもなく面白かったです。何度でもあなたのために世界線を越える、という話で、それがまた中学生の少女たちの話なので、本当に私の好みどストライクでした。結末の付け方が、ああ、いいなあ……と思うものでした。
世界も運命も、いつでも私たちのものだ。