読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

風花舞う冬景色の中、鳴は立ちつくした。
「……燃えてしまっている……」
目の前に広がる焼け野原。震えるその細い背を、颯音は無言で抱きすくめた。
時は戦国乱世。異能集団「狐」との最後の戦いを決意した鳴と颯音は、全ての決着をつけるために戸谷ノ庄を旅立とうとするその矢先、故郷・美駒の窮地を知る。敵は、かねてより美駒を狙う隣国・円岡。狙いは、嫡男のみに伝えられる一子相伝の美駒の財。幼い弟・常磐が危ないと覚った鳴は、美駒を救うために発つ。そして目にした、変わり果てたかつての故郷の姿——。
戦により困窮した地、囚われた弟・常磐。焼け跡にこだまする、“業多姫復活”を願う民の叫び。
春まだ遠い、霜月。始まりの地で待つのは、懐かしき人との再会か、新たな戦いの呼び声か——。(カバー折り返しより)
業多姫四巻。異能集団「狐」の首領・青津野との決着を付けるため、旅立った鳴と颯音は、二人が出会った美駒の国に戻ってくる。
甘ったれだった弟の常磐が段々颯音に懐いていくのがかわいいな。年下の面倒を見る颯音も、ちょっとぎこちなかったけれどなんだか見ていて和む。鳴と颯音のなかなか合流できないすれ違いはこの時代設定ならではなんだろうけれど、でもちょっとじりじりしました。
弾く、という力は、鳴の中の問題なのかとちょっと思う。香椎との関係は、思い通りにしようとする母親と、自己を得て反発する娘の関係だと感じて、これまでありふれた場所にいなかった鳴には、大変だけれど彼女が得られた「普通」のようで、ちょっと切なくなる。
お話としてはちょっと間に挟むようなお話だった印象です。「狐」の影が見えるけれど、それぞれ特に狙われるわけでもなく。鳴の中で、置いてきた美駒のすべてとの決着をつける巻だったのだな。
PR

「お前に、俺の何がわかるっていうんだ?」——不良神父にして若手最強の祓魔師ギブ。彼はニネベの街で幼なじみの祓魔師レオンと再会するが、些細なことで喧嘩別れしてしまう。
そんなレオンに、ヨセフと名のる神父が接近。親友と信じていたギブの思わぬ秘密を暴露され、レオンは激しく動揺する——。そしてギブの《聖なる下僕》である魔物の少女ツキシロの身にも、危機が迫り……。宿命のヴァンバイア・ストーリー!!(裏表紙より)
スカーレット・クロスシリーズ第二巻。このぎりぎりのセクハラ加減と変態具合が楽しいなあ! 胸と足か……私ならどっちが好きだろう(どっちも好きだ……)
新キャラであるレオン神父は、お坊ちゃん育ちのどうしようもない人かと思ったら、さすがギブと付き合ってきただけあって、きちんとした考えと真っすぐさを持った人で安心しました。こういう意表をつくところが一巻から受け継がれていていいなあ。二巻はまだ話を探っている感じがあって、この先の物語の方向性がはっきり見えなくてどうなるんだろうとどきどきする。
しかし、一言言うなら……ツインテールはだめだと思う……。
6月になりました。
様々な事情が重なって、今年はよく漫画を読んでいるようです。現在の読了数は活字の二倍くらい。
最近の少女漫画も好きですが、萩尾望都作品にドはまりしています。この頃のSFやファンタジーに、とても心惹かれる。
最近読んだのは萩尾望都さんの『アメリカン・パイ』(秋田文庫・全一巻)

マイアミで暮らす天涯孤独のバンドマン、グラン・パは、ある日浮浪児のリューを拾い、行きがかりで世話をすることに。このリュー、実は少女。英語があまり得意でないらしい彼女が時々口ずさむのは、ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」という曲。あることがきっかけでリューを舞台にあげたグラン・パは、彼女の歌声をきくが……。(表題作)
一緒に収録されている「アロイス」や「ジェニファの恋のお相手は」「雪の子」が萩尾望都作品を論じるにあたって取り上げられそうな印象なので、「アメリカン・パイ」はかなり異色なように思えます。
この作品がとても好きです。ヨーロッパほどきしきし寒い感じがするのでもなく、温かく穏やかな世界にゆるゆると解き放たれていくようなお話なのです。でもしっかり切なくて。顔は悪いが人はいいグラン・パと、「小鬼」リューの出会いと別れが、じわりと染みる。
上記の作品の他にも収録されている作品は様々あるのですが、私のブログに書くなら取り上げなければならぬだろう作品は「ヴィオリータ」。たった16ページに過去—現在—未来の時の流れを見る。
ある老人がまどろみから目覚め、ヴィオリータを探す……その夢を見たヨハン少年は、外から窓に雪をぶつけられて目覚める。外には彼の好きな少女ヴィオリータが……。(「ヴィオリータ」)
繰り返し出会うヨハンとヴィオリータ。どこからが夢で、過去で、現在で、未来なのかを考えると、かなりの質量を持った話なのにたった16ページなのか! という気分になります。
永遠の少女、追いかける少年、という構造は、恩田陸の『ライオンハート』を思い出させるなあ。『ライオンハート』はロバート・ネイサンの『ジェニーの肖像』がオマージュ元ですね。でも、ジェニーはどちらかというと、原作付きで萩尾先生が描いていらっしゃった『マリーン』の方が似ていると思ったり。
そして、実は読んでいます。大高忍さんの『マギ』(既刊8巻)

妹がマギから大高さんにドハマりしてすももを読んでいたのですが、私は何故か読もうとしていませんでした。
分かってくださいませんか、面白いと分かっているものはなかなかすぐに読みにくいって!
8巻の途中で話が一段落するので、待ってよかったと思いました。カシムとの決着は号泣してしまった。ほんの少し、違っただけ。それだけでここまで辛い戦いをせねばならないとは。自分のすべきことを全力でやる、ということは、それに気付くことも、すべきことを知ることも、全力を出すことも、たくさん難しい。というようなことを考えました。




西炯子さんの『STAY』(小学館文庫・全四巻)。私が読んだのはフラワーコミックス版でした。
とある田舎の高校の、演劇部に所属する高校生たちとその周辺の人々のオムニバス。
西さんの描く女性は、かっこいい……。
ちょっと変わった人も多いですが、一番好きなのは刈川さんです。彼女の風貌は冴えませんが(たぶんそれゆえに主人公にはなりませんが)理解者たる位置にいるのがかっこいいです。なので一番好きな話は「双子座の女」です。清雅のかわいさがまたたまらない。でも注意していただきたいのが、男(?)と男のお話であること。話のメインが性同一性の男の子です。しかしかわいいのだ、乙女で。
同じくらい好きなのが、「愛してる」です。お互いにやっていることは痛いのに、ときめく。同じものを目指して、別れて、どこかで出会うという形が好きなんだ。主人公たる写真を撮るカメラ小僧もまた大筋では脇にいましたが、彼も理解者の位置にいた人で、そんな彼がメインに据えられた短編。「愛してる」の一言が幸せそうでたまらない。
様々な事情が重なって、今年はよく漫画を読んでいるようです。現在の読了数は活字の二倍くらい。
最近の少女漫画も好きですが、萩尾望都作品にドはまりしています。この頃のSFやファンタジーに、とても心惹かれる。
最近読んだのは萩尾望都さんの『アメリカン・パイ』(秋田文庫・全一巻)

マイアミで暮らす天涯孤独のバンドマン、グラン・パは、ある日浮浪児のリューを拾い、行きがかりで世話をすることに。このリュー、実は少女。英語があまり得意でないらしい彼女が時々口ずさむのは、ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」という曲。あることがきっかけでリューを舞台にあげたグラン・パは、彼女の歌声をきくが……。(表題作)
一緒に収録されている「アロイス」や「ジェニファの恋のお相手は」「雪の子」が萩尾望都作品を論じるにあたって取り上げられそうな印象なので、「アメリカン・パイ」はかなり異色なように思えます。
この作品がとても好きです。ヨーロッパほどきしきし寒い感じがするのでもなく、温かく穏やかな世界にゆるゆると解き放たれていくようなお話なのです。でもしっかり切なくて。顔は悪いが人はいいグラン・パと、「小鬼」リューの出会いと別れが、じわりと染みる。
上記の作品の他にも収録されている作品は様々あるのですが、私のブログに書くなら取り上げなければならぬだろう作品は「ヴィオリータ」。たった16ページに過去—現在—未来の時の流れを見る。
ある老人がまどろみから目覚め、ヴィオリータを探す……その夢を見たヨハン少年は、外から窓に雪をぶつけられて目覚める。外には彼の好きな少女ヴィオリータが……。(「ヴィオリータ」)
繰り返し出会うヨハンとヴィオリータ。どこからが夢で、過去で、現在で、未来なのかを考えると、かなりの質量を持った話なのにたった16ページなのか! という気分になります。
永遠の少女、追いかける少年、という構造は、恩田陸の『ライオンハート』を思い出させるなあ。『ライオンハート』はロバート・ネイサンの『ジェニーの肖像』がオマージュ元ですね。でも、ジェニーはどちらかというと、原作付きで萩尾先生が描いていらっしゃった『マリーン』の方が似ていると思ったり。
そして、実は読んでいます。大高忍さんの『マギ』(既刊8巻)

妹がマギから大高さんにドハマりしてすももを読んでいたのですが、私は何故か読もうとしていませんでした。
分かってくださいませんか、面白いと分かっているものはなかなかすぐに読みにくいって!
8巻の途中で話が一段落するので、待ってよかったと思いました。カシムとの決着は号泣してしまった。ほんの少し、違っただけ。それだけでここまで辛い戦いをせねばならないとは。自分のすべきことを全力でやる、ということは、それに気付くことも、すべきことを知ることも、全力を出すことも、たくさん難しい。というようなことを考えました。




西炯子さんの『STAY』(小学館文庫・全四巻)。私が読んだのはフラワーコミックス版でした。
とある田舎の高校の、演劇部に所属する高校生たちとその周辺の人々のオムニバス。
西さんの描く女性は、かっこいい……。
ちょっと変わった人も多いですが、一番好きなのは刈川さんです。彼女の風貌は冴えませんが(たぶんそれゆえに主人公にはなりませんが)理解者たる位置にいるのがかっこいいです。なので一番好きな話は「双子座の女」です。清雅のかわいさがまたたまらない。でも注意していただきたいのが、男(?)と男のお話であること。話のメインが性同一性の男の子です。しかしかわいいのだ、乙女で。
同じくらい好きなのが、「愛してる」です。お互いにやっていることは痛いのに、ときめく。同じものを目指して、別れて、どこかで出会うという形が好きなんだ。主人公たる写真を撮るカメラ小僧もまた大筋では脇にいましたが、彼も理解者の位置にいた人で、そんな彼がメインに据えられた短編。「愛してる」の一言が幸せそうでたまらない。

夜、眠るユーリの目を覚ましたのは、夢から掴んできた氷のかけら……ではなく、「うさぎ」が投げ込んだ氷のかけら。深夜訪れたうさぎとともに、夜遅くにドーナツ屋さんに出掛けるユーリ。彼とうさぎの物語。
『夢見る水の王国』が好きだったので読んでみた。
夢の中から自分の部屋へ、そこから夜の街の、ぼんやり光るドーナツ屋さんにいたかと思えば、いつの間にか幻想的なお祭りの中にいて、海の音を聞き、気付けば宇宙にいた……という旅をするような不思議なお話でした。文章が心地よくて好きだなあ。ひたひたと夜と星のにおいがする。物語に登場する星といっても、銀河の星も、太陽の光もあって、うさぎがいなくなった後の光は、さあっと世界に朝がやってきて、視界が白く染まったように思いました。茫漠とした宇宙にいたと思ったのに、いつの間にか大地に、この地球に立っていた、という感じで、はっと目が覚める思いがした。

リヒャルトに熱烈なキスをされて以来、奇行を繰り返すミレーユ。煩悩を振り払いながら敵国シアランで新米隊員として捜査を続けていたが、劇団員に紛れ、女装で神殿への密使として潜入することに!! 任務を遂行しつつも幽閉された神官長と接触を図ろうとするが、団長に正体を疑われ、事態は驚きの方向に!?
かくして『身代わり伯爵』と捨て身の求愛騒動が巻き起こる!!
じれったい2人の恋模様も進展する、注目の急展開!!(裏表紙より)
求婚だー!! という身代わり伯爵7巻。当たり前といっては当たり前ですが、そうか、その段階に昇るか……とちょっと感慨深かった。ミレーユがリヒャルトと一緒にいると読んでいてすごく嬉しくなるのは、二人が好きだからだろうなあと思う。何より、ミレーユの思いが本当に恋する乙女でいいなあ。誰かを救いたい、助けたいという思いで突っ走るミレーユは本当にかわいい。しかし無自覚なのが転がりポイントである。
思いがけない秘密まで明かされ、これはどこに決着するんだろうとどきどきする! 早く既刊最新刊に追い付きたいなあ。

「信仰の敵、生命の略奪者よ。神の御名において《聖なる下僕》となることを誓うか?」瀕死の状態で倒れていた、吸血鬼との《混ざりもの》の少女ツキシロ。不良神父ギブは彼女を助けるかわりに、強引に自分の下僕とする契約を結ぶ。主従生活を始める二人だが、意地悪なギブにツキシロはふりまわされっぱなし。さらに、彼女を襲う謎の吸血鬼の影が——!? 闇と宿命のヴァンパイア・エロティカ!! 〈第1回ビーンズ小説賞優秀賞受賞作〉(裏表紙より)
面白かった! 少女小説というより、ちょっと少年向けライトノベルのにおいがする印象でした。
宗教とヴァンパイアものですが、神様に対する考え方がすっきりきっぱりしているところがあって、清々しいほどはっきり信仰というものに対する考えを述べるギブ神父がかっこいいなあと思う。ヒロインのツキシロはヒロインとしての魅力は今のところ強くはない感じですが、純粋培養で成長を見守りたくなる初心なところがあるなと思います。
読みながら全然考えていなかったので、混ざりものという存在でツキシロを認識していんですが、あっそういうことか! となったときの気持ちよさが楽しかった。曖昧な言い方になるのはネタバレ避けです。
しかし読んでて楽しかったな。続きも読もう。

セレブ専門の結婚相談所で働く優也は、実はゲイで超オクテな童貞。ある日、スタッフとして働くお見合いパーティで、超男前社長・鷲宮寛貴の担当をすることになるが、生真面目でウブな態度に興味を持った鷲宮から「俺の運命の相手はお前だ」と甘く口説かれて、流されるまま一夜を共にしてしまう! 彼に遊ばれただけと感じながらも惹かれる気持ちを隠して、鷲宮の“運命の相手”探しに奔走する優也。けれど、鷲宮の父が突然、お見合い相手の女性を選んできて…!?(裏表紙より)
受け側がゲイなのかーと思いながら読みました。基本的に攻めの方がリードすることが多いので……。こちらも攻め側がリードしてましたが、とすると攻めはバイだったのか……と下世話なことを考える。
面白い職業と強引系攻め、というテーマで人に選んでもらったのですが、このお話は結婚相談所とセレブ。富裕層というステータスはBLには必須なのかなあ? と何作か読んで思う。大きな度量で受け入れることが必要なのかもしれません。しかし東京タワーでいたしちゃっているのは笑ってしまった。
主人公の優也の視点での三人称で、読みやすくもありました。この主人公が乙女のようでかわいい……。理想のデートを思い描いていたり、運命の赤い糸の話をしたりと、ピュアでかわいいなあと思いました。

「わたしの名前はルカルタ・ラカルタ。迎えが来るまで暇つぶしさせてくれ」
転校生は…異星人!? 地球調査団として日本に派遣された女団長ルカルタは、留学生のフリをして高校へ潜入。「キミは俺が必ず守る」と一方的に愛を捧げる部下のノモロをひきつれ、初めての学校生活を満喫&大暴走!
しかしそこに忍び寄る黒い影…地球の未来はどうなるのか!? 破天荒な宇宙人が巻き起こす地球救出ハイテンション・コメディ登場★(裏表紙より)
SFで青春もの。楽しかった! ルカルタの感動がかわいくて、楽しそうで、読んでいて楽しい気持ちにもなったけれど、幸せな気持ちにもなった!
ルカルタの視点でずっと描かれ続けているわけだけれど、これが普通の高校生である中村や竹内や愛尾から見れば、それまでつながっていなかった人間たちがつながることになった、とっても爽やかな青春小説なわけで。そういうところを想像すると、思わず転がってしまう。
SFと青春、本当にいいなあ。すごく楽しかった。
あとすごく好みだったところはあとがきで、神尾さんが言っていた、食べ物に感動しているか、というところ。すごくいいなと思う。

サクラバカズキは忙しい。
ドナドナになったり、暴走族になったり、
白い魔物(あいふぉん)に翻弄されたり……
それでも嵐が来ようが、風が吹こうが、
やっぱり毎日、書店に行き、毎日必ず、本を読む。
読書魔サクラバの好評ウェブ連載単行本化!(カバー折り返しより)
この辺りになると、私もウェブ連載に追い付いていて、いくつか読んだ記憶のある文章がある。これだけ本の話ができるのは幸せだよなあと、今日はとても羨望の思いで読み進めていた。
巻末の『トワイライト』についてちょこっと語ってある対談がすごく好きだなと思う。読書日記にある本はほとんど読んだことがないので、知っている本が出てくると、すごく特別なことのような気がする。