読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

未開の自然が多く残る惑星“バーミッシュ”。交通手段としては飛空船などが安全だ。女好きで傍若無人な自由人・イヴと、彼に仕える信心深い少年ヨシュアは、プロペラ機で商業自治都市・タナエルにやってきた。
タナエルでは、惨殺事件が続いていた。原野に棲む“魔人”の仕業らしい。だが、かつて軍の特殊部隊にいたイヴは、魔人らしからぬ手口に不審を抱き、手負いの魔人ハースを捕らえ——人間の強欲が元凶なのだと知る。
一方、市の新任の保安局長・メイは、自分のプライドと保安局の面子をかけて意気込むものの……。(カバー折り返しより)
樹川さんらしいエッセンスが感じられる、SF作品。口が悪いが真っ直ぐなイヴ。頼りないが信心深く主を深く敬愛するヨシュア。二人は魔人に手を貸すことになるんですが、ストーリーはもちろん、慈悲深い聖職者ながらがめつい神父であったり、戦士ながら非情に徹しきれずイヴやヨシュアにわずかに心を許す魔人ハースであったり、まったくの外野のせいで世界の本質を見ることのできない特権階級の女性保安局長メイであったり……キャラクター性がもう本当に、懐かしいくらいに樹川作品で読んだ人たちだという感覚があって。もう新しい物語は読めないんだよな……と寂しくなってしまった。
映画のような、映像を思わせるオープニングからエンディングまでがすごく楽しかった! 多分こういうカットなんだろうな、音楽がかかるんだろうなってたくさん想像しました。
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異教徒に攫われた過去を持つ王女リヴェラは、幼い頃から不吉だと忌み嫌われ居ない者のように扱われていた。だが大国のアスガルドの皇帝グエンは彼女の前に跪いて求婚し強引に花嫁とする。戦に優れ死神と畏怖されるグエンは意外に快活な性格でリヴェラには優しかった。「もっとかわいい声で啼け。俺の淫らな花嫁」宴の席、各地にある寺院、あるいはサウナの中、あらゆる場所で抱かれ乱れさせられ、喜びを覚えるリヴェラは!?(Amazonより)
幼少期に異教の儀式の生贄としてさらわれたことで「傷物」として扱われる姫君が、大国の皇帝の花嫁となる物語。原始的宗教の儀式なので衆人環視の前で……というのが面白そうだったので読みました。一回きりかと思いきや何度も、なのでちょっと笑ってしまった。もうちょっと抵抗しような!
甘々溺愛からの、自国の身近な人間の裏切り、ヒーローの救出と王道展開。しかし前半の、時系列が細切れに前後するのはだいぶ読みづらかった。このパート、さっきの話の後? それよりもっと前? みたいな。中盤からはそういうこともなくなって安心しました。

「あの雲が、本当のことを全部隠してるんだ」
常に上空を覆う雲によって、空の青さを知らない世界。
雲を払えるのは《ヘクセ》と呼ばれる魔法使いの少年少女だけ。
並外れた飛行技術を持つ少年カリムは、幼馴染みで当代随一の《ヘクセ》揺月と再会する。
しかし彼女はある病により、昔とはまるで別人で……?
「高く飛べない」少年と「空でしか生きられない」少女の邂逅が、世界の色を変えていく。
第21回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作。(Amazonより)
子どもたちが空を飛び、精霊の力を用いて社会を動かすこの世界。歳を重ねることで能力を失う子どもたちの中、未だ力を残して空を飛び回る少年少女のすれ違いと小さな変化のお話。
とてもロマンティックで、少年少女のすれ違いもだもだがじれったくも微笑ましい。空を飛ぶことで厚い雲の上から精霊を呼ぶっていうのは特別感があっていいな。
ただ、特殊な言葉やルビを用いた表現は独特で美しいんですが、私たちのいるこの世界とどのように違うのかがほとんど伝わってこなくて想像しづらかったのがすごく残念。どういう建物なの? どのくらいの高さなの? この世界や社会の仕組みってどうなっているの? という部分が置き去りなので、とても御伽話めいている。まさしく「魔法使いの世界」なんだけれど、具体的な景色が全然浮かばなくて。
それでも失敗のせいで後悔を抱えてすれ違い続ける少年と、寂しさを紛らわせることができず素直にそれを口にすらできない少女と、そんな彼を見守る少女と、という三角関係とその変化が王道でじれじれもだもだして楽しかったです。
昔々、隣り合う二つの国がありました。この二国はたいそう仲が悪く、長く戦争が続いておりました。やがて古い取り決めに従い、金の国アルハミトは最も美しい王女を嫁がせ、水の国バイカリは最も賢い男性を婿にやる……はずが、それぞれの国が約束を違えたことで、アルハミト王国第93王女サーラと、バイカリ王国の建築士ナランバヤルは、偶然にも偽りの夫婦を演じることになる。それは二つの国の未来を変える出来事だった。
原作が大好きで、すごく泣いて、映画化をとても楽しみにしていた作品。もうすごくよかった! 泣いた! 誰かを思う、国を思う真っ直ぐな気持ちがみんなを繋いだ、最高の作品だった。
王女ながら自分に自信がないサーラ。けれど彼女の卑屈さは言葉にされることはない、というのがすごく胸に迫る。ただどうしようもないときがあって、それが涙になってしまったり、ナランバヤルが受け止めてくれたり、というのがもう、もう……! サーラはなんて素敵な人なんだろうと思うし、その魅力をしっかりちゃんと気付いているナランバヤルが素晴らしい。
「言葉にしない思い」が緩やかに人々をつないで、誰かの言葉が気付けなかった思いに気付くきっかけになって。いやもう本当に、本当に素敵な作品をそのまま映像にしてくださって感謝しかない。いい作品を見たと心から言える、そんな映画作品だと思います。しみじみと、本当に、美しいものを見た……。
原作が大好きで、すごく泣いて、映画化をとても楽しみにしていた作品。もうすごくよかった! 泣いた! 誰かを思う、国を思う真っ直ぐな気持ちがみんなを繋いだ、最高の作品だった。
王女ながら自分に自信がないサーラ。けれど彼女の卑屈さは言葉にされることはない、というのがすごく胸に迫る。ただどうしようもないときがあって、それが涙になってしまったり、ナランバヤルが受け止めてくれたり、というのがもう、もう……! サーラはなんて素敵な人なんだろうと思うし、その魅力をしっかりちゃんと気付いているナランバヤルが素晴らしい。
「言葉にしない思い」が緩やかに人々をつないで、誰かの言葉が気付けなかった思いに気付くきっかけになって。いやもう本当に、本当に素敵な作品をそのまま映像にしてくださって感謝しかない。いい作品を見たと心から言える、そんな映画作品だと思います。しみじみと、本当に、美しいものを見た……。

常に美貌を磨くことに余念がなく、周囲からも美しいと褒め称えられているスフィーナ王女。ある日、そんな彼女に兄王子の勧めで専属護衛の青年ジェニアスがつくことに。戸惑いつつ、一目ぼれした彼がいつも近くにいることを喜んでいたけれど……。ジェニアスから、顔しか美しくないと言われてしまって!? これからは外見だけではなく、内面も磨き上げて、絶対に彼に「美しい」と言わせてみせるわ!! 美貌磨きに邁進する勤勉な姫君と専属護衛のラブファンタジー。(Amazonより)
大岩の子を崇める、王家の人間にはなんらかの「才能」が与えられる王国で「美貌」の才能を持つ王女スフィーナは、才能を重じて美容に余念がない。だがこの振る舞いは、事情をよくわかっていない護衛のジェニアスの誤解を生んでしまっている。
マイナスから始まるジェニアスの気持ちが、兄や義母に貶められている状況でも王女らしさや優しい心を失わないスフィーナへの恋心に変わるのは当たり前で。ごく一部の味方を除いて孤立無援かと思いきや、証拠を揃えれば国王陛下が助けてくれたので、もっと早くなんとかしてあげてー!! と叫ばずにはいられなかった……。よく頑張ったよねえ、スフィーナは。誤解から「美しくない」と言われて、しかしちゃんと内も外も美しく、それをさらに磨き上げて強くなったスフィーナに拍手。

〈椿屋敷〉に住む香澄と柊一は、ワケあって結婚した“偽夫婦”である——とはいうものの。香澄が柊一への気持ちを自覚したことで、ついに……。もちろん柊一も、ずいぶん前から香澄のことを憎からず想っているのだ。柊一のもとには今日も今日とて客人が絶えない。七変化椿、もうひとつの椿屋敷……? 三者三様の夫婦のあり方にふれ、ふたりは関係を見つめなおし——。
ついに完結! 秋の椿屋敷、仲良し偽夫婦の出した答えは?(裏表紙より)
ご結婚おめでとうございます! もう結婚してるけど!
色々な夫婦の形を見ながらも、二人はそれぞれの気持ちを固めて……。柊一のずれっぷりにおお? と思いながら、香澄さんがしっかりしていてよかったと思いました笑 こういうところが微笑ましくて、二人の関係性にほっこりさせられて好きなんだよなあ。
しかしできれば! その後の二人の話をもっと読みたかった! 本当の夫婦になったぎこちなくて甘酸っぱいところを! みんなと一緒に見守りたかったよー!!
檀と絢さんも落ち着くところに落ち着き、晶紀さんも新しい出会いで知り合いが増えたり、人と人の繋がりが読んでいてとても楽しかった。

〈椿屋敷〉と呼ばれる一軒家に住む香澄と柊一は、ワケあって結婚した、仲良しだけど“偽夫婦”だ。しかし最近ますます、偽とも言い切れない感情が育まれているような。町の相談役である柊一のもとには今日も今日とて客人が絶えない。夕立のたび夏椿をもらいに現れる老婦人。柊一、担当編集・二本松、晶紀、男三人の一夜……。緑深まる夏の椿屋敷が見守る、第4巻。
ほんわかワケあり婚に、変化のとき——!?
(裏表紙より)
香澄と柊一の近くに晶紀が引っ越してきて、何かと一緒にいるようになった三人。関係性を変えたい男二人がばちばちするも、お互いに大人なのでひそかにめらめらしているのが楽しいですね。
しかし三人でお泊まり会の後、まさか不在だった香澄さんが恋を自覚するとは。いや友達と過ごすって段階でもしかしてとは思ってたんですけど! 友人勢グッジョブ! 多分最初は契約結婚って何それ! って憤りつつも香澄さんの暮らしぶりとか話し方を聞いて、なーんだ大丈夫そうじゃんって安心したんだろうな、なんて想像してにまにましました。
そうしたらすみれ荘側の方も! ケンカップルの不器用な恋と同時に檀と絢さんもー!! でもこれ多分もう一波乱あるやつー!!

〈椿屋敷〉と呼ばれる一軒家に住む香澄と柊一は、ワケあって結婚した“偽装夫婦"。——しかし最近、偽装とも言い切れない感情が、お互い芽生えつつあるような。そんな時、香澄の元・許嫁の晶紀が、椿屋敷の裏にあるアパート〈すみれ荘〉に引っ越してきた! 彼の目的はもちろん――。また、ひょんなことから、すみれさんに二人の秘密を知られてしまい……? 第3巻。
椿屋敷で、まさかの三角関係、勃発か!?(裏表紙より)
お互いを大事に思い合っているのに契約結婚という関係性が臆病な二人を縛り付ける、じれじれ夫婦の謎解きもの。このシリーズ、人の黒い感情にどきっとさせられるところがありつつも読んでいて心地良くて大好きなんですよねえ。
柊一の大学時代の同級生の話をはじめ、彼の過去の、どことなく影のあるたたずまいが感じられる巻だったかな。子どもの頃の気持ちがなかなか消えないまま、誰も見ていないとふっと暗いところに滑り込んでしまう、みたいな。
二人の距離が縮まりつつ、すみれ荘でも恋の気配。檀と絢さんはどうなるのか気になっています。

「私は、私を殺した犯人を知りたい」死の間際、薄れゆく意識の中で女王オフィーリアはそう願う。すると、王冠の持ち主にだけ与えられる“古の約束”により、妖精王リアは十日間だけオフィーリアを生き返らせてくれた。「一度は死んだ身よ。ならば今度こそやりたいことを全てやってやるわ」オフィーリアを使って権力を握ろうとした夫、周囲に流されがちで頼りない弟、恋心を寄せてくる近衛騎士……数え上げればキリがない犯人候補たち。女王を殺したのは誰なのか!? 生前の雪辱を晴らす強烈な平手打ちが炸裂する王宮ミステリー開幕!!(裏表紙より)
美しい女王として、周囲のために優しく慎ましく微笑んでいた女王オフィーリア。だが殺されたことで周囲の本音を聞くことになりついに怒りが爆発。私は私がやりたいことをやると、自分を殺した犯人を探す一方、自分が死んだ後の準備も始める。いつしかそれはお飾りの女王ではなく、本物の為政者としての存在感につながる。
平手打ちに罵倒語と、これまでできなかったことをやるオフィーリアが楽しい。やっていることはめちゃくちゃ怖い女王様で、やりすぎると粛清されそうな気もするんですが、舐めた態度をとるやつらが多くて「いいぞいいぞやっちゃってー!!」と思ってしまう私もいる笑
自分を殺した犯人にもですが、気持ち悪い執着を見せる相手にしっかり「気持ち悪い」と言い切ったところがスカッとしました。言わないとわかんないんだよなあ、思い込みの強いやつって!

「東京は果てしなく残酷で時折楽しく稀に優しい。ただその気まぐれな優しさが途方もなく深いから嫌いになれない」。1999年に芸人になる夢を抱いて上京し、現実を突きつけられて傷つき、挫折し、あきらめ、しがみつき、また傷つき——。そんな豪華な日々の中にささやかな楽しさや幸せを見出だし、なんとか過ごしてきた青春時代。振り返ればかけがえのない東京での日々を描いた、又吉直樹の傑作エッセイ集が待望の文庫化!(裏表紙より)
東京のまつわる100のエッセイ。個性の塊みたいな人たちの表現を見つめながら、内心で個性の塊みたいなことを思考している又吉さん。変わった人たちと付き合ってしまえることはやっぱり類は友を呼ぶってことなのか。しかしここにあるすべてが又吉さんの目で見て感じたものが綴られているだけなので、実際にそんな人たちが存在しない可能性もあったりという読み心地がとても楽しい。
相方の綾部さんに対する視線が面白かったなあ。この二人、こんな関係なのか、みたいな。自分にはできないことを自覚して、できる人のことを応援する又吉さんがすごくいいな。