読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「紅き大魚の伝説」
深い海の底に暮らす五行を司る五つの一族は人間界を管理し見守っている。十六歳になったチュンは成人の儀式として人間界へと赴くも、嵐に襲われた挙句、網にかかって身動きが取れなくなってしまう。そこへクンという名の少年に助けられるも彼は溺れ死んでしまう。彼の献身に恩を感じたチュンはクンを生き返らせるために一族の掟を破るが……。
中国のファンタジーアニメ。神様の描写や魂の考え方が中華ファンタジーという感じで好きだなあ。あとこの作品、風景の描写がとても美しい。幻想的というほどのありえなさではなくて、どこまでも自然で、こういう重畳的な光景は古い時代にあったかもしれないと思わせる懐かしさがある。
物語は神に準ずる一族の少女が、世界の理を破って人間を生き返らせようとするも、幼馴染の少年に見つかってしまったり、禁忌を犯したために天災が起こったり、ととても神話っぽい。禁を犯すものには罰があり、願いのためには代償が必要だとひたすら描いているような印象です。それだけにこう、願いのために代償を、その代償を帳消しにするために代償を、という展開にはちょっともやっとしてしまい……。諦めない心に潔さよりも往生際の悪さを感じてしまった。
それでも少年少女が自らの行いに自問自答する展開は素晴らしく好みで、素敵な作品でした。
深い海の底に暮らす五行を司る五つの一族は人間界を管理し見守っている。十六歳になったチュンは成人の儀式として人間界へと赴くも、嵐に襲われた挙句、網にかかって身動きが取れなくなってしまう。そこへクンという名の少年に助けられるも彼は溺れ死んでしまう。彼の献身に恩を感じたチュンはクンを生き返らせるために一族の掟を破るが……。
中国のファンタジーアニメ。神様の描写や魂の考え方が中華ファンタジーという感じで好きだなあ。あとこの作品、風景の描写がとても美しい。幻想的というほどのありえなさではなくて、どこまでも自然で、こういう重畳的な光景は古い時代にあったかもしれないと思わせる懐かしさがある。
物語は神に準ずる一族の少女が、世界の理を破って人間を生き返らせようとするも、幼馴染の少年に見つかってしまったり、禁忌を犯したために天災が起こったり、ととても神話っぽい。禁を犯すものには罰があり、願いのためには代償が必要だとひたすら描いているような印象です。それだけにこう、願いのために代償を、その代償を帳消しにするために代償を、という展開にはちょっともやっとしてしまい……。諦めない心に潔さよりも往生際の悪さを感じてしまった。
それでも少年少女が自らの行いに自問自答する展開は素晴らしく好みで、素敵な作品でした。
PR
記者のカムは両親を亡くした姪のエルと暮らしている。病弱なエルのために奔走するカムは、ある日「人魚の万能薬」のことを知り、その薬を求めてエルとともにサーカスにやってきた。そこにいたのは水槽の中を漂う人魚のエリザベス。トリックだと信じないカムだが、ある日エルとともに足があるエリザベスと再会し……。
Netflixだと「ザ・リトル・マーメイド」ですが、元は「リトル・マーメイド 人魚姫と魔法の秘密」というタイトルですね。
「リトルマーメイド」を下敷きにした実写版。冒頭の雰囲気からこれは「シンデレラ」を下敷きにした「エバー・アフター」のオマージュなんだな、と理解する。あれも実際にあった出来事があってシンデレラになった、という話でしたね。
こちらは囚われのエリザベスが本当に人魚で、悪い魔法使いであるサーカス団長に魂を囚われている。記者の男性と姪の少女がその事件に関わり、カムは人魚姫と恋をし、エルは自分の力で人魚姫を救う。なかなか込み入った設定になっていますが現実に起こった話という感じではなく、とてもメルヘン。サーカスの風景や、人外の容貌を持つ人たちも登場するので、どちらかというと異世界の、スチームパンクみたいな世界の出来事みたいだなあなんて印象を持ちました。
二人の恋の続きは想像に任せるという感じなのかな。ちょこちょこ会っていたら嬉しいなあ、なんて思いました。
恩田陸『灰の劇場』を最新作として、これまでの著作ガイドや対談、他作家のエッセイを収録したムック。
対談は少し前のもののはずなのに話していることが完全にいまの時流を言い当てていて、うおっと思って読みました。小川洋子さんとのジャンルの話、純文学とエンタメのどこが違うのかとか、エンタメを書く人と純文学を書く人の違いとか、大塚英志さんとの対談での「どこのジャンルにも属さないで書いている人が、そこかしこにいる」とか、やっぱりみんなそんな風に思っているんだなあと。
あと恩田さんが一年ごとに印象的だった作品をまとめているページがあって、映画のなかに見たことがあって面白いと思っていたタイトルが入っているとめちゃくちゃ嬉しかった。
同じ名字に、同じクラス。春に進学したばかりの八木商業高校で、偶然に出逢ってしまった“佐古野”郁美と“佐古野”灯馬。すぐにクラスメイトから「夫婦」とはやしたられるようになり、憂鬱な日々を過ごしていた郁美だったが、ある日、灯馬のアイディアで、ふたりは夫婦の秘密を共有することになる——。
星海社ウェブサイト『最前線』にて“いい夫婦の日”に公開され、イラストを担当したHERO自身のコミカライズでも話題を呼んだ表題作に書き下ろしを新たに二篇加え、ついに単行本化。今、スマートフォンを通じて掌の中にある恋を描いた、紅玉いづき×HEROのタッグで贈る最新作。(裏表紙より)
公開当時に表題作は読了済み。コミカライズも。
表題作「青春離婚」に加えた書き下ろし、bot運営をすると男子ととある女子の交流を描いた「非公式恋愛」、野球部の元主将と義理の妹になる予定の女子と料理を絡めた「家族レシピ」の三本を収録。今回初めてこれらの作品の世界観が共通、というか舞台が八木商業高校であると知って嬉しい驚きでした。こういう連作大好き!
スマホ、SNS、アプリ、bot、ソシャゲと現代の高校生(2021年現在だと少し古くなりつつある?)を描いているのが身近でいて懐かしい。紅玉さんは本当に、人と繋がりたいけれど臆病でいる、かすかな結びつきに胸を震わせる人たちを描くのがお上手で、「非公式恋愛」はうるっときました。
「非公式恋愛」では「青春離婚」に登場した、郁美の心をざわつかせたパソコン部の一年女子が登場。こういうしたたかな子だろうなと思っていた想像通りで笑ってしまいつつ、その一生懸命さに応援したくもなって。また「僕」の弱さや勇気に胸が震えてしまってどうしようもなかった。
「家族レシピ」は親の再婚で義理の兄妹になる予定の二人が登場。料理をする二人のツッコミとボケ(正確にはボケではなく真剣)に爆笑。パスタが線香みたいに燃える、確かにな!
全編通して何がときめいたって、「青春離婚」では11月22日に物語が終わるのですが、「非公式恋愛」と「家族レシピ」はそれぞれ卒業式が行われる三月までのお話なので、裏で進行している郁美さんと灯馬さんが垣間見える!!! それぞれ視点が違うので、アプリを通してだったり、最後に登場したときの会話に匂わされていたりして、もうときめいてときめいて仕方がなかった。この時点で結婚する気なんじゃん! したけど!(コミカライズ収録おまけ漫画参照)。
素晴らしい連作でした。幸せな気持ちで読み終わりました。
清掃会社で働く岡田は何もない日々に焦りを感じつつ暮らしている。ある日先輩の安藤に誘われ、阿部ユカが働くカフェを訪れた岡田は、そこで同級生だった森田と再会する。安藤からキューピッド役を頼まれた岡田がカフェの周りをうろついているとユカが現れ、実は森田にストーキングされていると話す。ユカと急接近する岡田と安藤。一方で森田はとある事件に関わっており……。
地味でなんとも普通の岡田と、アウトサイダーで殺人を犯す森田。二人の対比が苦しい作品でしたが、ちょっと軽かったのがもったいなかったなあ。岡田の普通さはわかるので、森田のことをもっと知りたかった。
岡田の平凡さが面白かった。付き合った彼女が実は経験豊富な……なんてよくあることなんだろうなと。言動がちょっと変わっている安藤も、森田と比べれば普通で、役者さんが個性的なので見ているだけで面白かった。こんなに存在感のある「普通」を演じられるのはムロさんだけだよなあ、なんて。
最後の懐かしさと希望、悲しみの漂うシーンはいい余韻でした。どこで道が分たれるかなんてわからないものだ、という気がして。
動画作りが好きなケイティは変わり者という自覚がありつつ、映画を作る大学への入学が決まった。だが自然を愛する父親のリックは動画にばかり没頭するケイティを心配するあまり、作ったものに興味を示さない。ぎくしゃくした家族を心配した母親のリンダは恐竜付好きの弟のアーロンも交え、家族四人で大学へ、しかも古い自家用車で向かうことに。しかしその旅の途中、世界的なシェアを誇る人工知能「パル」による機会の反乱が起きてしまった。
「変わり者」をここまで大きくクローズアップするのは珍しいような気がします。そして「それは全然悪いことじゃない」とはっきり肯定するのも。時代だなあ。
変わり者で全然スマートじゃないミッチェル一家。アウトサイダーな自覚があるから、みんなと違うとか、きらきらした人たちにちょっと苦手意識や恥ずかしさを感じている。そんなリアリティがとても愛おしくて、あちこちで笑ってしまった。家族の形はそれぞれで、すれ違いつつも一生懸命に愛しているんだな、という普遍的なものを感じました。
あとマシン側の意見がとても現代的だったのも目新しくて面白かったです。そうね、端末側やシステム側から見ればそうよねーと笑
女子高生のバードは写真が趣味。プレゼントされたアンティークのポラロイドカメラで写真を撮っていると、何故か不思議なものが映り込んでいることに気付く。やがて写真に映った人々が何者かによって順に殺されていくことに気付いたバードは、同級生たちとともに呪いから逃れる方法を探そうとするが……。
カメラに撮られた人々が順番に悪霊に殺されていく、というホラー。引っ込み思案な十代の少女が、気になる男子や友人たちとともに、自分たちも呪いの対象となりながら逃れようとする。十代に限らないと思うんですけれどこういう、全員が対象となりうる状況の仲間割れ、そんなこといってる場合じゃないだろう! 協力しろよ! と叫んじゃう。
呪いの発端となるものと真相は、ああやっぱり……となりつつ、内向的な主人公が最終的に誰よりも勇気を、激痛を伴うような犠牲をもって悪霊を退治する展開はいいなあと思いました。
桐生戦兎によって創られた新世界によって平和を取り戻したように思えたのも束の間、人体実験を受けた者にだけ旧世界の記憶が戻り、その技術を用いいて新たに人々を支配しようと目論む者たちが現れた。主力である戦兎や万丈が返信できないいま、唯一残された希望は仮面ライダーグリスである一海だけ。だが勝利のためには犠牲にしなければならないものがあった。
ビルドはちょろっとかじった程度。グリスがとてもいいとは聞いていましたが、この作品を見てより知りたくなった。だって可愛くない!? なにこの愛嬌! 一生懸命でいいなあいいなあ。
しかもこれ、メインストーリーその後の作品の第二弾なんですね。第一弾を見てから見るべきだった……。
というかこれ本編じゃないの? という作品の雰囲気なのもよかったなあ。スピンオフになるとがらっと空気感が変わるイメージだったのでコメディしつつ決めるところはびしっと決めて、かっこよさを見せる展開、とてもよかったです。
長く付き合った彼氏に裏切られて失意のどん底に落ちた中川世絆は、さらに不幸なことに交通事故に遭ってしまう。加害者は綾瀬暁大。不動産会社に勤務する年下男子だ。この事故以来、世絆は幽霊が「見える」ようになった。―いや、正確には昔も多少は見えていたのだが、いつしか消えたその能力が、今さら復活したのだ。一方、綾瀬はといえば、「見えない」けれどそういうネタに興味津々なタイプで、世絆にぐいぐい近づいてきて…?東京都葛飾区亀有を舞台に迷走女子の奮闘をえがいた、ほっこり癒やし&元気回復のオカルト・ストーリー!(Amazonより)
33歳、先日誕生日を迎えた世絆(せな)は長年付き合った彼氏にふられた。ある日道路に横たわる猫の亡骸を見過ごせず、なんとかしようとしたところ、不動産会社勤務の綾瀬に事故と間違われて病院に連れて行かれる。するとそれまで失っていたはずの世絆の「見える」力が戻ってきて……という、幽霊が存在するけれど普通の日々を描いたお話。
決してあやかしものだったり幽霊ものだったり、お仕事ものや謎解きものではない。ごくごく普通の会社員の、気を張って一生懸命に生きていて、ちょっと弱くなるときもあって、当たり前に後悔する三十代女性のお話で、これがまた、「私にも起こるかもしれない」という塩梅がよくってなあ……!
猫の幽霊の可愛らしさと別れにはほろりとしたし、最後の飛空くんの話。多分これって私たちの生活のすぐ近くで起こっているかもしれないことで、世絆は何度も、こうしてよかったんだろうか、と考えていたけれど、物語のなかで、それが幽霊のことであっても、救われたものがあるように感じて泣けてしまった。
『華鬼 幻の特典短編集』
華鬼の視点でつづられる、幼い神無との邂逅「桜樹の檻」ほか、4巻の後の響と桃子を描く「重なり合う未来―これも、愛―」など、『華鬼』の世界が広がる短編集!
※ 本作品は、紙書籍版『華鬼』の1巻から4巻の発売時に、特典としてWeb上で無料公開されたものをまとめた短編集です。
出版社の特典だけでなく、著者のサイトに限定公開された作品も掲載しております。『華鬼』本編とあわせてお楽しみください。(hontoより)
hontoの限定販売かな? 『華鬼』が刊行されたときにレガロシリーズのサイトで読めた特典短編とサイト公開されたもののまとめです。ありがとうイースト・プレスさん。
巻を増すごとに甘くなっていく華鬼と神無の関係は特典小説にも表れていて微笑ましかった。いま改めて読むと不器用可愛いよなあ、華鬼。
華鬼の視点でつづられる、幼い神無との邂逅「桜樹の檻」ほか、4巻の後の響と桃子を描く「重なり合う未来―これも、愛―」など、『華鬼』の世界が広がる短編集!
※ 本作品は、紙書籍版『華鬼』の1巻から4巻の発売時に、特典としてWeb上で無料公開されたものをまとめた短編集です。
出版社の特典だけでなく、著者のサイトに限定公開された作品も掲載しております。『華鬼』本編とあわせてお楽しみください。(hontoより)
hontoの限定販売かな? 『華鬼』が刊行されたときにレガロシリーズのサイトで読めた特典短編とサイト公開されたもののまとめです。ありがとうイースト・プレスさん。
巻を増すごとに甘くなっていく華鬼と神無の関係は特典小説にも表れていて微笑ましかった。いま改めて読むと不器用可愛いよなあ、華鬼。