読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
瓶子貴宣は、月収10万円の私大非常勤講師。博士号を持ち実力も抜群なのに、指導教官の不祥事で出世の道を閉ざされた。しかも姉が育児放棄した甥、誉を養ってもいる。貧乏でも正規雇用を諦めない貴宣の前に、千載一遇のチャンスが。だが誉を引き取りに姉が現れ、家庭問題まで勃発——。奮闘するポスドクの未来はどうなる! ? 痛快かつ心温まる、極上のエンタテインメント。『マル合の下僕』改題。(裏表紙より)
就活ものはメンタルにくるのできついとは気付いていたんですが、そこそこの年齢の社会人の非正規雇用の現状を描いたものも心にクると気付かされた作品。現実辛い。
しかもこれ瓶子先生は理系で情報関係だから、文系の講師陣はどれだけきついかと想像するともっとメンタルにくる。そしてまた学生たちとは違って、家族を養うってこんなに大変なのかと。誉がとてもいい子だからなんとかなっているけれど反抗期真っ盛りだったりやんちゃでぐれていたりするときっともうちゃんと生活できてないよ……。
ただ物語は、たとえお金にならなくても、努力したことや、身につけた知識、技術といったものは未来への選択肢を広げるから決して諦めるんじゃない、という内容。「どうして勉強するの?」という問いに対するアンサーだったように思います。そして人を踏みつけにして得られるものはないということも。
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比翼連理の国王夫婦。私はそこに割り込む悪役の〈第二妃〉——。
辺境領主の嫡女として生まれ育ったベルタは突如、国王に嫁ぐことになる。それも王室に前例のない〈第二妃〉として。
愛されることも愛することもない生活を覚悟して輿入れしたベルタは、しかし儀礼的に済まされた三夜の儀式で妊娠する。継嗣のなかった王室にもたらされた待望の男児。その生母となった彼女は、やがて否応なしに正妃と対立し、我が子をめぐる権力闘争に巻き込まれていく……。
激動のヒストリカル・ロマン開幕!(裏表紙より)
悪役の第二妃ですが陛下の子どもを産みました、という悪役令嬢ものをとても真面目にヒストリカルに仕立てたお話。ただテンプレートと異なるのは、ベルタに凄まじい才覚と人望があって王妃になれる資格があること。
それまで生まれてもはかなくなった子ども、それも王子を産んだことでベルタへの見方が変わるのはこうした王宮ものとしては避けられないとはいえ、国王ハロルドも徐々に傾いていくのがなんか、なんか……それでいいのか、でもマルグリットが激しく傷付いたように彼も深く深く傷付いていたんだなということもあるしな、と割り切れない気持ちに。
ただ、結果的に王妃を退けたベルタも、両親から見れば愛情を欲しがり、父母のような家族を作ることをどこかで想像していた少女の心があるのだと思うと、胸が苦しくなる。
幸せを願うのとはまた違って、誰も不幸にならないでほしいと願って読み終えました。
公爵夫人への道を歩み出したアリスは、婚約者アーサーと共に隣国・ティナヴィアへと留学していた。楽しく異国生活を送るはずが何故か、アカデミーにて孤高の公爵令息ヴィンスに気に入られてしまう。彼を慕う貴族令嬢からの嫌がらせが始まるが、多忙なアーサーには相談できず悩んでいた。一方彼は――そんなアリスを常に監視していて!? 陰で守りながら、「辛いことがあれば、すぐに言ってほしい」と彼女に頼られることを望んでいた。二人がすれ違う中、ヴィンスからのアプローチや、令嬢たちの嫌がらせが一線を越えた時、遂にアーサーが動き出す。
隣国でも重い愛情(?)が止まらない! 王道シンデレラストーリー第2弾!(裏表紙より)
晴れてアーサーと両思いになり、彼と王太子殿下とともに隣国へ留学するアリス。アーサーは仕事で、アリスは一人、父親の知人の家に間借りしながらアカデミー生活を楽しむはずが……という第二巻。
二度目の学園生活は、いじめられっこ卒業というか笑 一回経験しているから嫌がらせも怖くない、といえば嘘だけれど、いじめられている知人を守ることはできるという面白さがありました。
溺愛したいあまりに閉じ込めて自分しか見えない頼れないようにしたアーサーの、行きすぎた愛情。前巻は乾いた感じで笑っていたんですが、今回ちょっと引いてしまった……というのは、アリスに対する言動がモラハラだと思ってしまって。
アリスには怒っていないと言うしにこやかで言葉も穏やかなんだけれど、アリスはこのとき(その前もですが)自分が悪いんじゃないかとびくびくしているし、ヴィンスからの好意を「アーサー様はどう思うんだろう、嫌な思いをするんじゃないか」と考えてしまっているのは、もう支配だ、とかなり怖くなりました。ヒロインがいくら好きな相手でもその機嫌をうかがうのは、溺愛、執着、ヤンデレでもアウトだと思うんだ……。
3巻では結婚式が描かれるようですが、果たしてアリスは成長するのかな。公爵夫人ならアーサーに守られてばかりじゃいけないと思うんだけれど、楽しみなような怖いような。
五人の若者が山奥の古い小屋で楽しく過ごそうと、曰く付きだと匂わされたにも関わらずやってきた。だがそこで古びた日記を見つけたことで、次第に状況がおかしくなっていく。そして犠牲者が現れるが、このすべてはある人々によって巧みに計画されたことだった。
浅慮な若者たちがタブーに触れて次々に殺されるホラー、と思いきやそこに思い切りオカルト要素を加えてB級にしたよ! という作品。若者たちが殺される理由が邪神復活を阻止するためで、世界各国で行われている習慣だっていうのさすがに笑ってしまった。しかも成功と失敗数を競い合っているの滑稽でしかない。色々オマージュも仕込んであるようだし、本当に邪神復活を阻止する気ある? ないよ! というのを全アクセル全開でやっている。そういうの嫌いじゃない。
なので映画の内容としてはホラーもののセオリーを監視役たちと一緒に笑い、そうやって笑っている監視役たちを滑稽に感じる構造。深く考えるな、感じろの世界。頭空っぽにして楽しく見ました。
あるところに天才的な才能を持つ魔女がおりました。名前はイレイナ。十五歳という若さで魔女になったイレイナには、魔女になるきっかけとなった『ニケの冒険譚』に憧れ、旅をするという夢があった。だがその才能をよく思わない魔女たちは師となってくれず、風変わりな魔女フランのもとに押しかける形で弟子入りするも、何故か雑用ばかり言いつけられる……やがて旅立ったイレイナは魔女として様々なものを見聞きして。
表現とか諸々は全然違うんだけれど、物語の構成としてはポジティブな「キノの旅」だなあという印象でした。こういう形で受け継がれているんだなあという気持ちで楽しく見ておりました。
天才魔女、美少女という属性を持ちつつも、中身は普通の十代の女の子で、自分が関わった人や物事が悲劇的な結末を迎えることもしばしばあるのがリアル、かつイレイナの魅力をとても強く表しているように思います。そういうものだという達観することはなく、力不足を嘆き、慟哭し、落ち込む。そういうところがとても良い。
主に登場する人物がみんな魔女なので、女性同士のやりとりが多いのもとっつきやすいのかな。百合というかそういうものが好きな層へ向けたアピールを強く感じるのは、レーベル読者への配慮を感じないこともないけれど、原作は未読なんですがエピソードが面白かったので気になっています。
彩雲国、紅家の令嬢、紅秀麗は初の女性官吏として国のために邁進する。だが茶州で謎の奇病が流行したことをきっかけに窮地に追い込まれてしまい……。家とそれぞれの思惑が交差する中、秀麗は知り得た人々と絆を持って立ち向かう。
茶州の流行病から始まり、こう、最終的な黒幕的なものがちらっちらするんですが、制作時点で原作が完結しておらず途中まで。wikiのあらすじを読んでいるとここから最後に向けてぐわーっとくる感じなのに、惜しい。とっても。
原作は1巻と2巻だけ読んだだけなのでアニメだけの印象になるんですが、こんなに中華系官僚もの、かつ神仙にまつわる込み入った長編だったんだなあと感嘆しました。「貧乏令嬢、お給金を求めて後宮妃になる」から始まった話とは思えない。きっかけはどうあれ秀麗はずっとひたむきに女の身で自らの力で政治や民と向き合おうとしたんだなあ。
東京、八丈島。高校生の娘、双葉が反抗期を迎えて生意気な態度をとるのに腹を据えかねた母、かおりは、その日から学校に持っていくお弁当を凄まじく手の込んだキャラ弁に変える。母の怒りを感じた双葉だが、残したり捨てたりするのは負けたことになると毎日意地でも完食。そんななか、進路をはじめとした変化が母娘に訪れ……。
原作は未読。劇中のお弁当、撮影用とはいえめちゃくちゃ手が込んでいるし美味しそうで見ていてお腹が空きました!
思春期の難しさと親の気持ちについて、最近別の方の本で触れたところだったので、いろんな母娘の反抗期を思うとなんだか、娘としては大変だったんだけれどお母さんも本当に大変だったんだなあ、すごいなあとしみじみしてしまう。めちゃくちゃ面倒臭いし邪魔くさいし腹の立つ生意気な子どもを、よく放り出さず面倒を見てくれたもんだ。同じこと、私も子どもにできるのかなあなんて思う。
お弁当生活最後の母の嫌がらせ弁当は、最高に素晴らしくて泣いてしまった。