読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
フジテレビのアナウンサーとして活躍し、50代も半ばを過ぎてフリーに転身。直後、ステージ4の悪性リンパ腫であることが発覚する。一時は死を覚悟するほどの絶望のなかで、家族や友人からの励まし、医療者たちとのかかわり、SNSへのメッセージ——小さな希望を積み上げ、がんで失った引き算を、足し算に変えていく。猛烈に働いていたときには見えなかった発見など、激動の日々と気づきをありのままにつづる。(カバー折り返しより)
アナウンサーの笠井信輔さんの闘病と家族、そして入院中に変化した世の中のことの話。
テレビを拝見していて知らない方ではなかったので、癌だと聞いたときはびっくりしましたが、画面を見ているだけではわからない葛藤や、家族とのやりとり、家庭の中の笠井さんがうかがい知れて興味深かったです。
インスタやブログで情報発信してしまうのは、やっぱりメディアの方だなあと思ったり。世の中の流れ的にバズった後は炎上というのも、この国の社会の縮図という感じでなんとも言えない気持ちになったり。
劇団☆新感線の座付き作家、アニメーション「天元突破グレンラガン」「キルラキル」「プロメア」で知られる脚本家・中島かずきと、作品に関わった役者人、早乙女太一・早乙女友貴、新谷真弓、松山ケンイチ、堺雅人、朴璐美、梶裕貴、宮野真守、洲崎綾、藤原さくら、粟根まこと、上川隆也、福士蒼汰、十三名との対談集。
新感線は人生で一回生で見たいし、グレンラガンもキルラキルといったTRIGGER作品も大好きだし、と思って読んでみたんですが、中島さんのファンだけじゃなく作品のファンも必読という感じで、キャスト起用や俳優さんたちの仕事や心構えが語られていてとても面白かった!
また取り上げられている俳優さんたちがみんな存じ上げている方ばかりなのも、他のお仕事や出演のことを思い浮かべながら読めたので楽しかったなあ。
そうだったのかー! と思ったのが、上川さん。グレンラガン放送当時は何故起用されたのかよくわかっていなかったんですが、やっぱりあの頃アニメ好きなのは知られていなかったんですね。不思議だったんだよなあ、なんかすごくはまっているのが。
王子様を待たないで。ダイヤもお寿司も自分で買いなさい。母が子どもたちに教えたのは、自らの人生に基づいた生きるためのエールだった。思春期の娘を見守る著者からのメッセージが詰まった一冊。
生まれ育ったところは、不良が多く、器量良しの女の子たちは早々と結婚するもすぐに離婚、あるいは子どもに手をあげる親になるパターンが多い。そんな家庭で育った西原さんは自立を目指し、失敗を経ていまがある。
書かれている話が、ありのままの現実。各家庭の経済格差が子どもの将来に影響するということが取りざたされているいまだからこそ、親になる人間は自分でお金を稼ぐことを前提で結婚や子どものことを考えなくちゃいけないし、子どもは子どもで自分で生きるすべを見つけ、王子様を待つんじゃなく見つけに行こうと。
そうね、そうだね、と思うところがたくさんありました。印象は、西原さんがあの頃の自分にかけたい言葉であり、娘へ贈るメッセージという感じ。面白かったのは思春期の娘を観察しているところ。多分実際はばちばちだろうし、本気でむかついてやりあうときもあるんだろうけれど、すごいなあと思うのは「かつての自分もそうだった」と思えているところ。大人になるとそういうのって忘れちゃうと思うんですよね。
ヤングケアラー、それは家族のケアや介護を担う青少年や若者たちのこと。認知症の家族、障害を持つ親や兄弟、家族の自殺など、介護を担う理由は様々。その当事者が語る、私のこれまで。
近頃よく見るヤングケアラーに最近関心があって、本を見つけたので読んでみました。
文章を書くプロではないけれど日常的に書くことで自分を見つめ直してきた人々による手記、でいいのかな。
子どもが介護することになると、壁になるのは進学や就職。非協力的な家族もいればその逆もあったり、そもそもどうすればいいのかわからないという家庭もある。そして子どもたちはみんな「後ろめたい」気持ちで自分の道を歩む。それがたとえ家族のサポートをすると決めていても、これでいいのか、この人がいなければと思う自分が嫌だと思ってしまうことが嫌だというの、すごく根深くて悲しい。誰にも相談できない状況でいる人が多いし、求めるものとは違う言葉をかけられたり、そうじゃないのになって思っていたりして、介護やケアに対する考えが改まる時期が来ているのかなあと思いました。家族で介護して当然じゃないし、普通という言葉の呪いを自覚するべきなんだろうな。
まだ古き世の名残が尾を引く開明の時代、明治45年。横濱。女学生の紅の父親が持つ長屋には、いつの頃からか、ひょろりと痩せた京訛りの青年絵師が住みついていた。紅が幼い頃から長屋に暮らす時川草介というその青年は、幼い頃に神隠しにあったことがあり、そのせいか怪異を見ることができるという。あるとき、紅の許嫁だった好青年・一谷誠一郎が行方不明となり、草介に助力を求めたが……?(Amazonより)
明治の末、庭師の父を持つ女学生の紅は、長屋に住む売れない絵師の草介に助けを求めた。消えてしまった許嫁はどうやら椿にかどわかされたらしく、怪異を見ることができる草介ならと思ったのだった。
まっすぐで世間知らず、心優しい女学生が、のらくらと生きる風変わりな訳あり絵師とともに身近な謎を解く。謎は、怪異のせいのように描かれているものの実際はもっと恐ろしいものによる仕業。紅の言動と振り回される草介のやりとりが楽しい分、真相や、隠された草介の過去なんかの影が黒々と深くなっていて、とても明治モダンらしさが詰まっている。
時川という名前から、過去作の『モノノケ踊りて、絵師が狩る。』に繋がる人物なんだなあと想像するのも楽しい。時川の人だから、なんとも形容しがたい、固く結びついて離れがたい関係を形成するのは当然のことなんだなあと思ったりなどして、今後の二人をもっと見ていたいなと思いました。
30代のころの私は、次から次へと執筆・翻訳の依頼が舞い込み、1年365日フル稼働が当たり前だった。その結果、30代の10年間で50冊ほどの単行本を出すに至った。
が、そんな私もふと気がついてみれば、最後に本を出してから8年以上も経っていた。
――なぜか?
私が出版業界から足を洗うまでの全軌跡をご紹介しよう。(カバー折り返しより)
翻訳家の宮崎さんが自らに起こったトラブルと出版界の闇を語る。
読んでいて、確かにものすごく正当な怒りなんだけれども、ちょこちょこ欲望のせいでこういう事態を招いてしまったんじゃないかと思われるエピソードがあって、そういう人に悪い人が寄っていったんだろうなあと思ったところがいくつかあった。けれども、後の人が搾取されないように、というのは物凄くありがたい話だ。
ひっそり平凡に暮らしたい!…のに『最恐』竜王様の溺愛花嫁になることに!?
獣人のなかでも『最恐』とウワサの竜王・カインに嫁ぐことになってしまったレイナ。クールな彼のお飾りの妻として毎日ビクビク過ごす…はずだったのに、過保護に守られ、たくましい胸に抱きしめられ、彼の溺愛が次第にダダ漏れになっていき!? こんなに愛されまくる なんて聞いてません!! 本当は獣の本能のままに独り占めしたい、カタブツ竜王様の不器用な求愛ラブ!(裏表紙より)
家族から虐げられる不遇な王女レイナ。意地悪な姉が嫌がった獣人の王との結婚を代わりに受けるように命令されて嫁いだ先で、彼女は少しずつ本来の自分を取り戻す。王道の恋愛ファンタジーです。
冒頭、養家で楽しそうに暮らしていたはずが、血の繋がりのある父王の元に引き取られるとあっという間にびくびく、姉王女や兄王子に遠慮するようになってしまったレイナ。このときの言動が印象的すぎたのか、中盤以降の活動的な様子に「いったいどうした!?」と戸惑ってしまいました。突然変貌したように思えて……。
カインのこじらせは、王ならもうちょっとなんとかできたんじゃないかなあと思ったんですけれども、能力の割に可愛らしい性格で微笑ましかったです。
ブラック企業に勤める青山は、毎日上司のパワハラを受け、心身ともに疲弊していた。ある日駅のホームでふうっと飛び降りてしまいそうになったところ、小学校時代の同級生だったヤマモトに助けられる。意気投合し、やがて飲み友達となる二人だったが、別の同級生の情報で、ヤマモトがまったく知らない別人だと判明し……。
原作読了済。原作は小説として安定して面白かったんですけれども、思いがけず映画映えする内容だったんだなあと鑑賞後に思いました。
ヤマモトは一体誰だ? という不気味さよりも、青山がいい方向に変わったこと、仕事をする上で不幸な人がたくさんいること、新しい一歩を踏み出すことへの勇気やエールを強く感じました。最後はすごく爽やかで見ていて気持ちよかった。
しかし先輩の五十嵐さん、こちらは映像で見ると余計にやり方がえぐくて……。女優さんの演技力もあるんでしょうけれど、最後に青山が微笑んで突き放すの、なんとも言えない気持ちになったな。
宇宙で暮らしていたソニックは、とある事情で地球のアメリカ、モンタナ州グリーンヒルズの街の近くで隠されて暮らしていた。ひとりぼっちで孤独を感じながらも、彼の楽しみは住人たちの生活を覗き見ることで、特に保安官トムとその妻の獣医師マディがサンフランシスコに引っ越す計画も知っていた。しかしある日自らの力を防衛省に知られ、科学者のロボトニックに追われることになってしまい……。
ソニックの映画なんですけれどもソニックじゃなくても成り立つんじゃないかな。異星人とちょっと要領の悪い保安官の友情のお話。政府の偉い人に追われるのはお約束。ストーリーも尺も王道。安心して見られるも、最後の最後で続編を匂わせるのはよくなかったんじゃないかなあ……。
とにかくソニックのビジュアルが可愛らしく、ぎゅんぎゅん駆け回ることでお話が進むのが楽しい。寂しがり屋の宇宙生物と地球の人間の夫婦が仲良く暮らすの、とてもハッピーな終わり方でよかった。