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天国はまだ遠く (新潮文庫)
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。(裏表紙より)

日常から別の場所で日々を越えて、心を癒して旅立っていく、というのは「西の魔女が死んだ」と同じシチュエーションだと。「天国はまだ遠く」は大人になって疲れた女の子に向けられた小説、なのかな。
田村さんの方言が更に癒しを呼び起こす感じがした。「ラブアンドピース以外のことが聴きたかったら、吉幾三を聴けばええ。それ以外のことは幾三がみんな歌ってくれとるから」が、いいわ……と思った。若い人を「姉ちゃん」とか「兄ちゃん」とか、田舎のおっちゃんおばちゃんはそんな感じだよなあ。(四十代五十代の我が両親も、うちの近所の人にかかれば兄ちゃん姉ちゃんになる)(私はなんだろう、お嬢ちゃん?)
自殺をはかるところでえぐかったら絶対面白くなかったと思った。そんなこと全然なくて、ゆっくり流れる時間がなんだかいいなあと思えて、結論の出し方も納得できるもので、良い物語だった。
これ読んで気づいたけれど、瀬尾さんって教員だったんだ。「図書館の神様」で抱いた印象がぐっと強くなった気がする。
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