読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

天久鷹央。天医会総合病院、統括診断部の部長を務める彼女は、明晰な頭脳と圧倒的な知識で、あらゆる疾患を看破する。そんな天才医師の元には各科で「診療困難」となった患者が集まり……。原因不明の意識障害。河童を目撃した少年。人魂に怯える看護師。その「謎」に秘められた「病」とは? 現役医師が描く本格医療ミステリー、ここに開幕 書き下ろし掌編「蜜柑と真鶴」収録。(Amazonより)
ずっと気になっていたんですがアニメを機に読みました。ミステリーはやっぱりいいなあ。面白い。
天才医師の天久鷹央と、彼女に振り回されるワトソン役は部下である小鳥こと小鳥遊優。鷹央の推理力に圧倒されるけれども、彼女自身が「空気が読めない」「人の心の機微をすくいとるのが不得手」という自覚があって、小鳥に頼り、時に傷つき、という関係性がなんだかいい。天才でも凄腕医師でもやっぱり人なんだよなあ。
病院という世界で患者と看護師、医師と医師など、人の心も絡んでいるお話で面白かった。

物語を生み出す裏側、教えます
書下ろし短編、全作品解説インタビュー、宮部みゆき・伊坂幸太郎との特別対談も収録。永久保存版ガイドブック。(帯より)
著者インタビュー、作品紹介、対談、著者に縁深い人たちの書評などとまとめたムック本。寄稿したあとがきまで載っているのはすごい。
私は発売されたばかりの『冷たい校舎の時は止まる』をリアルタイムで読んで、めちゃくちゃすごい作家さんに出会った! と感動してずっと追いかけている読者です。辻村作品だけを追いかけているだけでなくなったいまも、ほぼ漏れなく読んでいることにこのムックを読んで気付いて笑ってしまいました。好きなものって多分そうやって気付いたら傍らにある。
インタビューにも作品紹介にも、人から人へ、仕事から仕事へ繋がっているエピソードが見え隠れしていて、どうすればそうやって真摯に人と向き合えるんだろうか……と読みながらぼんやり考えていました。その真心が伝わらなければ生み出されなかった作品や仕事がたくさんあると思うと、本当にすごい。その真っ直ぐな眼差しが感じられるような良いムック本でした。

2020年春、コロナ禍で登校や部活動が次々と制限される中、全国の中高生は複雑な思いを抱えていた。茨城県の高校二年生、亜紗。渋谷区の中学一年生、真宙。長崎県五島列島の旅館の娘、円華。それぞれに天文活動に出会った生徒たちは、オンライン会議を駆使して、全国でつながっていく。望遠鏡で星をつかまえるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」開催の次に彼らが狙うのは——。(帯より)
コロナ禍でそれまでの「当たり前」が失われた。それは子どもたちも例外ではなかった。けれどそれでも「何ができるのか」を考えた生徒たちが、大人を通じて次々につながっていく。まるで星座のように。
いろんなところでぐっときて泣いてしまう。だから辻村作品は好きなんだ。一生懸命な君たちは絶対に報われるよと言ってくれるような気がする。またコロナによって「学校と家」という狭い世界がより狭くなったかと思ったら、彼らは部活動を通じて広い世界を知ることができたこと。真宙の息苦しさが軽くなっただろう出会いが泣けて仕方がなかったし、離れていても大丈夫だと思い合える凛久たちのことも本当によかった。
信じていたものが壊れた。けれど出会えなかった人たちと出会えた。どっちがいいか悪いかわからないけれど、それを丸ごと抱えていくしかないことも切ないけれど、少しでもより良い人生になるようにと願っている人たちがいることを忘れないでほしい。

僕が使者だと打ち明けようか——。死者との面会を叶える役目を祖母から受け継いで七年目。渋谷歩美は会社員として働きながら、使者の務めも続けていた。「代理」で頼みに来た若手俳優、歴史の資料でしか接したことのない相手を指名する元教員、亡くした娘を思う二人の母親。切実な思いを抱える依頼人に応える歩美だったが、初めての迷いが訪れて……。心揺さぶるベストセラー、待望の続編!(裏表紙より)
死者との面会を叶える使者「ツナグ」。若くして祖母の役目を引き継いだ歩美はもう社会人。生者と死者を引き合わせる歩美だが、彼もまた迷っていた。
第1巻にあたる「ツナグ」は死者との再会を望む生者のミステリーも含んでいましたが、この続巻は人と人の繋がりの方を重視して描いている印象。「ご縁」で繋がる依頼は確かに生きている人たちに必要なものだったと実感するエピソードが多かった。
「歴史学者の心得」「母の心得」が特に好き。
「歴史学者の心得」は生きているうちはたった一度のはずの死者との面会に、直接関わりのない遥か過去の人物を指名した人物の話。未来の人物に「あなたに会って、過去のことを聞きたい」と言われたら、死んでなお自分の人生に意味があったと実感できるんだろうなと思うと、ぐっときてしまった。
「母の心得」は母と娘二組の話。それぞれ違う後悔を抱えている世代の違う母親が、ほんのひととき邂逅する瞬間がとてもよかった。

マンガ家デビュー後、上京時に待っていた「缶詰」という極限状況。のちに「大泉サロン」と呼ばれる東京都練馬区大泉のアパートで「マンガで革命を起こす!」と仲間と語り合った日々。当時はタブーだった少年同士の恋愛を描ききり、現在のBLの礎を築く名作『風と木の詩』執筆秘話。そして大学学長として学生たちに教えてきた、クリエイターが大切にすべきこととは。『ファラオの墓』『地球へ…』などベストセラーを連発し、少女マンガの黎明期を第一線のマンガ家として駆け抜けた竹宮惠子が、「創作するということ」を余すことなく語った大ヒット自伝、ついに文庫化!(裏表紙より)
再読。初めて読んだとき「創作者として身につまされることばかり書いてあって、読んでいて苦しかった……。」「空回りしている感じとか、焦りばかり募るとか、才能のある人を前にしてもやもやしてしまったりとか」と感想をつけてあるんですが、今回は苦しいというより、そこで何もかも嫌になって投げ出さなかったことやむしろ失うまいとしがみついたことに思いを馳せました。そこまでして本当に欲しいものは手に入ったんだろうか、いまもまだ苦しいけれどなんとか折り合いをつけているんじゃないかな、って。才能や創作の世界で生き続けるってそういうことなのか。

ずっと一人ぼっちだった。黒狼王(あなた)に、出会うまでは。
妾腹ということで王妃らに虐げられて育ってきたゼルスの王女エデルは、戦に負けた代償として義姉の身代わりで戦勝国へ嫁ぐことに。相手は「黒狼王」と渾名されるオルティウス。野獣のような体で闘うことしか能がないと噂の蛮族の王。しかし結婚の儀の日にエデルが対面したのは、瞳に理知的な光を宿す黒髪長身の美しい青年で――。
やがて、二人の邂逅は王国の存続を揺るがす事態に発展するのだった……。激動の運命に翻弄される、波瀾万丈のシンデレラロマンス!(裏表紙より)
妾腹の王女として長らく虐げられてきたエデル。王妃には誰も逆えず、父王は見て見ぬふり。敗戦の代償として王女を、と求められ、嫌がった姉の名前を名乗って結婚する。結婚してもなおエデルにつきまとう憎悪を断ち切ってくれたのは、蛮族と蔑まされている王だった。
結婚した先でもいじめられる、その壮絶さ。文化や価値観が違うと嫁ぎ先でもやられてしまうのか……。しかも最後までそれが尾を引くという。
どこまでもか弱いエデルなので今後どう王妃らしくたくましくなっていくのか想像がつかない。オルティウスがすでにめちゃくちゃ甘いので、是非とも彼を翻弄していただきたいな!

親から召使として扱われているマリーの誕生日パーティー、主役は……誰からも愛されるマリーの姉・アナスタジアだった。パーティーを抜け出したマリーは、偶然にも輝く緑色の瞳をしたキュロス伯爵と出会う。2人は楽しい時間を過ごすも、自分の扱われ方を思い出したマリーは彼の前から逃げ出してしまう。そんな誕生日からしばらくし、姉とキュロス伯爵の結婚が決まったのだが、贈られてきた服はどう見てもマリーのサイズで――!?「小説家になろう」発、勘違いから始まったマリーと姉の婚約者キュロスの大人気あまあまシンデレラストーリー!(Amazonより)
小柄で愛らしい姉アナスタジアと比較され、長身で知識欲と好奇心の強いマリーは両親に虐げられて使用人のような日々を送っていた。自身の誕生会を姉の結婚相手を見繕うために父母に利用され、姉は結婚が決まる。しかし姉は事故死、マリーは両親によって姉の婚約者キュロス伯爵のもとへ送り出されるも、実は彼が本当に結婚したかったのはマリーの方で……というシンデレラストーリー。
……なんですが、物語は1巻で終わりません。両親は何故マリーだけをひどく扱ったのか。キュロスたちは何を調べようとしているのか。ここまで来るとアナスタジアの事故って偽装じゃないのかと読者的には疑ってしまうんですが、1巻はマリーが恋心に向き合いつつ、キュロスに大事にされようとしていることを受け止めるまでです。続きが気になるー!