読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
ローマ法王死去によって行われたコンクラーベ。有力候補たちを押しのけて選出されたのは、誰も予想だにしていなかったメルヴィルだった。誰もやりたくない法王の座を押し付けられたメルヴィルは、重要な就任演説を放棄してしまう。医者にかかり、精神科医まで呼んで、それでも足りず外の医者にかかったが、そこでメルヴィルは逃亡してしまう。
どこがハートフルだー! 詐欺だー! と叫んでしまったラストでした。「ええー!?」と驚きの声を上げる結末。途中からそういう予感はしないでもなかったんですが、なかなかブラック。もうちょっとエンターテインメントっぽくて明るくきゃっきゃした話かと思っていました。おじいちゃんたちはみんな可愛いのに……。
上記紹介文の内容が全体の三分の一くらいはあってどうも導入(だと思っている部分)が長いので、期待していたタイプの話じゃなさそうだなと思ったら。だというのに過程を省いているところがあって、これはどういう状況でそうなったんだろう、という点が気になってしまった。
しかし、単なる悲しい映画ではなくて、人としてどう受け止めているのか、また、どう受け止めていくのか、メルヴィルが淡々と、じっと自分と向き合っているのが分かる。周囲は全然彼に意識を向けなくて世界は滞りなく回っていて、けれど時折知らされるサン・ピエトロ広場に集まった信者たちの姿が突き刺さるように訴えてくる。エンタメ映画としての起伏はほとんどないのですが、精神的なダメージが見ている人間には結構ありました。決めなければならない、法王として立たなくちゃいけない、でも自分には無理だ、期待されている、みんな待っている、ごまかしは続かない、けれどいつバレるだろう……などなど。傍観者ならではのどきどきがすごくて、だというのに最後はアレかと! 突き落とされたわ!
外から招かれた精神科医(監督ご自身なんですね……)がまた、こいつめんどくさいっていうキャラクターで、この人結局なんだったんだろうなと考えてみたんですが、内と外の隔絶の象徴だったのかなあ。プライドが高くて自分が最高峰だと言う外の精神科医と、自分では無理だ導くことなんてできないと頭を抱える新法王。かたや街のどこにでもいる医者、かたや世界唯一の法王様。そう考えると、医者なんかもうお前法王になっちゃえよっていう傲慢さでのキャラクター配置だったのかもしれない。メルヴィルは謙虚こそ美徳だと思いますが、それが過ぎるとああいう結末になるのかも。
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