読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
千年を生きる鬼・戸倉聖と志島弓生——彼ら二人を中心に、登場人物それぞれの生き様を鮮やかに映した「封殺鬼」が、装いも新たに登場! 今回の舞台は社会情勢が不安定でオカルトブームが起き、奇妙な人食い事件にも揺れている、昭和初頭の東京。表の陰陽師が捨てた「力」の系譜を継ぐ裏の陰陽師にして若干十歳で当主となった美少女で「鬼使い」神島桐子が中学生だった頃の物語を描く新章が、ついに幕を開ける!(裏表紙より)
実は初めて読む「封殺鬼」シリーズ。キャンパス文庫版の続きという位置付けでいいのかな。桐子が当主になった時に、兄と信頼していた人が死んでいるというのはわかるので、特に違和感を感じずに読みましたが、その辺のことをちゃんと知っていたらもっと面白く読めたのではないかと思うと惜しい(『花闇を抱きしもの』は買ってあるのでそのあたりでわかるかな?)
昭和初期の東京。人を食らう化け物騒ぎが世間を賑わしていますが、まだまだ序章といった感じで、怪しい団体や黒幕めいたものは登場しますが、まず顔見せといった様子。底知れぬ実力を持っていそうな武見志郎くんがすごく気になります。
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20世紀初頭、ベルリンに存在した人と人以外の存在を繋ぐ探偵事務所。長い任務から帰還した探偵ジークは、人狼の少年の世話と新しい依頼を押し付けられた。依頼の背後に見え隠れする人狼の影——巨大な陰謀は静かに幕をあけ、二人を陰惨な事件に巻き込んでいく。第2回C★NOVELS大賞特別賞受賞作に書き下ろし短編「クリスの奮闘録」を収録。(裏表紙より)
ドイツにある、人外たちが所属する探偵事務所。探偵ジークが人狼の少年エルを押し付けられたことから、人狼にまつわる事件に関わることに。
次から次へと人外のものたちが起こす騒動がなんだか楽しい。全然落ち着かないし、新しい人物が頻繁に出てくるし、ひっきりなしに面倒ごとが起こるんですが、エルが可愛くて癒されます。それからジークの正体がなんなのかと思いながら読んでいくと、そうきたかーと。でもだったらアドルフは助けられなかったのかな……嗅覚が鋭いとかないんだろうか……とちょっと悲しくなったりもしました。
エルの可愛さは短編の「クリスの奮闘録」でいかんなく発揮されていて、ごろごろしました。それから誰かから見たジークも、本編を読み終わった後だと面白いなあなんて思ったり。
江戸幕府が瓦解して五年。強面で人間嫌い、周囲からも恐れられている若商人・喜蔵の家の庭に、ある夜、不思議な力を持つ小生意気な少年・小春が落ちてきた。自らを「百鬼夜行からはぐれた鬼だ」と主張する小春と同居する羽目になった喜蔵は、様々な妖怪沙汰に悩まされることに――。
あさのあつこ、後藤竜ニ両選考委員の高評価を得たジャイブ小説大賞受賞作、文庫オリジナルで登場。〈刊行に寄せて・後藤竜二、解説・東雅夫〉(裏表紙より)
百鬼夜行から落ちてきてしまった、妖怪の小春。正体は妖怪なのでは? と周囲から恐れられている強面で無愛想な喜蔵。なんだかんだと一緒に暮らすことになった二人だったけれど、喜蔵の周囲で妖怪による事件が起こり始め、それに首をつっこむ羽目に。
なんだかかなり文章が読みづらいなあと思ったんですが、恐い恐いと言われている喜蔵の優しいところや、生意気なことを言いながらもちょっとした寂しさみたいなものを抱えている小春の姿が生き生きとしているなあと思いました。
刊行に寄せてを読んで、発行年を見たら2010年7月。今はかなりあやかしものってメジャーなので、そうかこのころはまだ少なかったのかあと思いました。
パピヨンの姿をした八百万の神・モノクロと暮らして四ヵ月。祖母の家に帰省した美綾は、自身の才能や適性を見出せず、焦燥感を抱いていた。東京へ戻る直前、美綾は神官の娘・門宮弓月の誘いで夜の氷川神社を訪れ、境内で光る蛇のビジョンを見る。それは神気だとモノクロは言う。美綾を「能力者」と認識した「視える」男、飛葉周は彼女につきまとい、仲間になるよう迫る。(裏表紙より)
第二巻。前回の事件の人たちは出てこず、新しい事件に巻き込まれる美綾。今度は神官筋の女性、弓月と、同じく神官筋だけれども危険な能力を持つ飛葉の二人です。
この話の全体像が見えない、というかどこに決着するんだろうなあと思いながら読んでいるのですが、あくまで美綾は普通の人で、たまたま神霊やら古いものに関わってしまったという立ち位置を貫くのかな、という事件の決着でした。最後、乗り込んでいくんじゃないかと思ったのに、使った手段がごくまっとうだったので。
このシリーズの空気感、大学生ということだったり、友人関係、キャンパスやサークルの雰囲気なんかがしっくり馴染む(リアルとはまた違って、ああこんなふうだったなっていう)感じがすごく好きです。美綾の高校時代の友人、愛里がすごくいいですね。他のみんなと一緒にいるときには気付かなかったのに、二人で会うようになるとその人がくっきりとして、「なんか、いいな」って思う感じ、わかります。
フェアリーの気をひくな。フェアリーを見つめるな。フェアリーを見る力を持つ少女アッシュリンは、彼らの不気味な世界など、見えないふりをしてきた。ところがある日、人間の男の姿をまとったフェアリーに誘いをかけられる。人間とフェアリーの間で揺れるアッシュリン。RITA賞YA部門受賞、ローカス賞推薦作品に選ばれた、ロマンティック・ファンタジーの決定版。シリーズ開幕。(裏表紙より)
フェアリーを見ることができる17歳の少女のロマンス。作中にも匂わせるものが出てきますが、ステファニー・メイヤーの『トワイライト』の流れをくむようなYA小説です。いろいろとものすごく現代的。
アッシュリンの学校での位置ははっきりしませんが、フェアリーが見えるせいでいきなりびっくりしたり、男性に対する経験が少ない、真面目よりの風変わりな子という感じ。友人はいますがみんな奔放なので、妖精との関わりを恐れて常にびくびく警戒しているアッシュリンはいまいちそれに乗り切れない。でも、アッシュ以上に風変わりな青年セス(親から譲られた財産で列車の車両を買い、それを家に改造して暮らして、学校に行かずに大学に行くかアートスクールに進学するか考えている。口にピアスを開けている)とは友達以上恋人未満の関係。
そんなアッシュリンが、サマーコートとウインターコート、簡単にいうと夏のフェアリーと冬のフェアリーの争いに巻き込まれ、サマーコートの女王になるかどうかの決断をせまられる。
結末はハッピーエンドで、意外なほどうまくいったなあという感じ。アッシュリンを誘惑するサマーコートの王キーナンは、アッシュの前に失敗してしまった女王候補のドニアにまだ気があり、ドニアは女王になる試しが失敗した時に「次に試しを受ける者に警告する」という義務を負うのでよく登場してキーナンのことを忘れられないでいるのがわかるのですが、こちらもうまくいって。羽住都さんの表紙の美しさから想像していなかった軽さだったのでちょっとびっくりしたのですが、結末が面白かったです。
オンブリア——それは世界でいちばん古く、豊かで、美しい都。そこはまた、現実と影のふたつの世界が重なる街。オンブリアの大公ロイス・グリーヴの愛妾リディアは、大公の死とともに、ロイスの大伯母で宮廷を我が物にしようとたくらむドミナ・パールにより宮殿から追いやられる。だがそれはふたつの都を揺るがす、怖るべき陰謀の幕開けにすぎなかった……2003年度世界幻想文学大賞に輝くマキリップの傑作ファンタジイ!(裏表紙より)
亡くなった大公の愛妾リディアが、宮廷を追い出されるところから物語は始まる。ドミナ・パール(黒真珠)と呼ばれる老獪な女によって宮廷が支配されていく中、亡くなった大公の妹の子ながら父親が不明の父なし子と揶揄されるデュコンや、地下世界影のオンブリアに暮らす魔女フェイ、その蝋人形のマグが、光と影の世界の変革の現場に居合わせることに。
美しいと言われながらも薄暗く古びたオンブリア。ごちゃごちゃとして判然としない魔法が潜む影のオンブリア。表裏になった世界を行き来する者たちが最後に目にするものは、混然としていた世界の縁が綺麗に整理された新しい世界……ということでいいのかな。光は光に。影は影に。繋がってはいるけれど影が光の世界を支配することはない、という感じ。
最後に変化した人たちの姿が見られるのは楽しいですね。リディアが生き生きとしているのが嬉しかったですし、父親に笑顔で迎え入れられたのもじんわりと感動しました。
魔族達に伝わる、魔族に強力な力を与えることができる人間“花嫁”の伝説。水神を祀る神社の娘・小夜は洪水と病で相次いで両親を失い、絶望し、神域の湖に身を沈める。だが、そこは魔族達の世界への入り口であった。湖城の魔王・ヴィリは、奴隷の身から前魔王を倒し、魔王の座に就いたが、力を失い、その座を追われつつあった。ヴィリに凶刃が迫る中、小夜はヴィリの“花嫁”になれるのか!?(裏表紙より)
水害の折に父が行方不明になり、母は心と身体を壊して入院中。親戚の家族に世話になるも、ついに母の死が訪れた。居場所を希求する小夜は、母が亡くなったその日、実家の神社の神域である湖に行き、白睡蓮が咲くその水の世界に焦がれて沈んだところ、目が覚めた時には不思議な異界にやってきていた。
淡くて、胸を締め付けられるような切ないファンタジー。弱いことを憎み恐れる魔王ヴィリと、繊細だけれど芯の強い小夜が、二人寄り添うお話でもあります。この優しくてちょっとだけかなしいお話に、イラストがすごくマッチしていて、小夜ほんとかわいい美少女……! って思ってました。そして言動にちょっと弱さが透けてみえるヴィリのかわいいこと。ちょっと病んでいる風なのがはらはらして、小夜が負けないかどきどきしました。
寄り添った二人がこの先どんな道を歩みのか気になるなあ!
雨の公国の第四公女ニケは、世界を統べる太陽王の花嫁として晴れの大国にやってきた。国を豊かにし財政を立て直したという太陽王リヴィウスは、ニケよりも年下で少年と呼べる年齢。かくして、切れ者で誰をもそばに寄せ付けないリビと、公女らしからぬ行動力で人の心をつかむニケの、ただではいかない夫婦生活が始まり……。
原作は連載開始時から読んでいたんですが、かなりアニメ用に改変されているんですね。ニケのニケらしいところが第一話からあますところなく描かれていて、こういう行動的なヒロイン好きだわあと思う笑
話の進行に合わせて変わるOPが見たくて見始めたんですが、自分が知っているOPがほぼ全員揃っているものだったので、最初の誰もいないOPを見てようやく、自分が「ん?」と思っていた部分も変化するパートだということに気付きました。最後のキスするカットがすごく好きです! でもEDの全裸はどうかと思う!笑
ストーリーは雨の公国へ行って認めてもらうところまででおしまい。このお話、結構えぐいところが見え隠れするのが少女漫画らしくなくって好きなのですが、そういうところはいろいろとカットされている感じがしました。演出の工夫は、この話のコメディ部分が強調されていて面白かった。
白泉社系の作品のアニメ化はなんというか、自分が歳をとったせいかどの作品も「これじゃない!」って思って見るのやめちゃうんですよね。私は原作のこの部分が好きなのに、それが排除されてるという風に感じることが多くて。それせかは見たし、他のものも見てみようかなあ。
小学生の頃、超平和バスターズと名乗って秘密基地に集まっていた六人。だがその内の一人、芽衣子(めんま)の死をきっかけにみんなばらばらに。やがて高校生になった彼らだったが、不登校で引きこもりになっていた仁太(じんたん)の前に、幽霊のめんまが現れる。彼女の願いを叶えるためにじんたんや他の仲間たちが再び集まり始め……。
名作と名高いあの花をついに履修。
死んでしまった幼馴染の願いを叶えるために、ばらばらだったかつての仲間たちが集結。でも幼馴染の死は、そろぞれの深い傷になっていてうまくいかない。自分は、と考えるその息苦しさや、すれ違いがリアルで、見ていて胸がぎゅうっとなる。そして不登校引きこもりのじんたんの心の動きが、本当に、自分のことのように感じられて痛かった……。脚本の岡田さんのご本をちらっと読んだところによると、不登校は岡田さん自身の経験だということで……ああ不登校に関する後ろめたさとどきどきと不安は共通のものなんだなあ、なんて思ったり。
しかしじんたんのポテンシャルの高さにびっくりする。不登校で引きこもりなのにバイトするっていうその志の高さよ……。本当に「つまずいた」だけなんだなあ。そして彼は周りに恵まれていたのも大きかったのかも。
幼馴染が関係を修復して、という単純な話にはならず、それぞれの思いが複雑化して入り組んでいくところがすごく面白かったです。自分の気持ちを泣きながら叫ぶシーンはもらい泣きした……。どうして!? っていう思いが吐露されるシーンは胸にくる……。
最後までぼろぼろ泣いてしまった作品でした。面白かったです。劇場版も見よう。
男は二度、女を撃った。女は一度、男の命を救い、一度、その命を奪おうとした。ふたりは同じ理想を追いながらも敵同士だったから……。悠久なる大河のほとり、野賊との内戦が続く国。理想に燃える若き軍人が伝説の野賊と出会った時、波乱に満ちた運命が幕を開ける。「平和をもたらす」。その正義を貫くためなら誓いを偽り、愛する人も傷つける男は、国を変えられるのか? 日本が生んだ歴史大河ファンタジーの傑作!! 解説・北上次郎
大貴族の甥で軍人のアマヨク、王位継承権を持ちながらも忘れられた王子メイダン、そして国に生きる多数の人々、軍人、野賊、貴族……そうした人々が内乱の続く国で一つの時代の変革に居合わせる物語。凄まじく大河でした。読み応えあった。
主人公はアマヨク。着任したての初々しさがどんどん薄れて、軍人として、強く、卑劣で無情になっていくのも面白かったですし、彼の中でどうしても譲れないオルタディシャルへの思い、カーミラやシュナンへの思いに揺れるところも、すごくずっしりきた。無力な民衆の姿がカーミラ(やその他大勢の人)を通して見えることも辛かった。
でもそんな中でもシュナンがなんだかアマヨクに似ていること、アマヨクが少しずつオルタディシャルに似たような感じがするところなど垣間みえて、最後のあたりは胸がいっぱいになっていました。
何よりも、メイダン殿下。息苦しい中で挟まる殿下の状況が、この先どんな風に関わってくるのか、とわくわくしていたら、やってくれました。わあああって思った。運命や天命って言葉を考えてしまった。
この物語の続きをもっと知りたいし、すごく色々なことがあったこともわかってその気持ちは高まるんですけれども、アマヨク・テミズという人のお話を濃密に味わうことができて、本当に面白かったです。