読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々


「過去を視る」力を持つ帝国の史官・ヤエト。病弱な彼は、赴任先の北嶺で地味な隠居生活を送ることを夢見ていた。しかし、政治に疎い北嶺の民に悩まされ、さらには北嶺に太守として来た勝ち気な皇女に振り回され休まる間もない。だが、北嶺を知るにつれ、ヤエトはこの地に帝国の秘密が眠ることに気づいていく…。歴史の光陰が織りなす壮大なるファンタジーロマンの扉がいま開かれる——。(上巻裏表紙より)
おっもしろかったー……。もっとこの世界を、すごく深く知りたくなった。話が進むに連れて明らかになる余談(と言ってもきちんと本編には大事だけれど)に、この世界がとても深くて広いことを気付かされて、すごく、いいなあ……と思いました。
帝国の辺境でのほのぼの物語かと思いきや、ヤエトの苦労性のせいですごく大変な物語。ヤエトが少しずつ手繰り寄せ始めている秘密が、ものすごく大変なことを呼び寄せて(そしてそのせいで色々問題が引き寄せられているのではと思う)、非常にどきどき。ヤエトも皇女もルーギンも皇妹も、すごくいいなあ。ヤエトの不思議な力が感じられる度に、すごくどきどきしてページを繰る手が早くなってしまうのは何故だろう。
なんだかんだで一生懸命になるヤエトが、上巻はすごくかわいいなあと思っていたけれど、下巻になって「帰る」という目標を見つけた彼はすごくかっこよくて、皇女が見たらきっと笑ってくれるような気がしました。ただ単に脱出する、北嶺に危機を知らせにいくっていうことじゃなかったと思う。
会話がすごく好き! 冗談を交えたり、食い違うのも面白くて。特にヤエトと皇女の会話は好きだなあ。
皇女、伝説、過去視、竜、帝国、陰謀、政争などなど、盛りだくさんですごく楽しかった。上下巻で結構分厚いはずなのに、あっという間に読んでしまった。面白かった!

桃李大学付属、那賀市桃李学園。文武両道の有名私立大学に付属する中高一貫校である。その高等部の一角に、部員5人未満のため非公式な存在の文化部ばかりが集い、「マイナークラブハウス」と通称される古ぼけた洋館があった——。
思春期を旅する「普通じゃない」少年少女たちの一筋縄ではいかない日常を描き、面白いのに不思議とジンとくる、最先端の学園小説。〈解説・三村美衣〉(裏表紙より)
いわゆる「はみ出しものクラブ」が集まった、マイノリティーの集団がマイナークラブハウス。そこでの一人一人の視点で語られる学園の日常。色んな考え方が、分かる分かるという意味でむずがゆくて、とても青春ものでした。
マイノリティーと言っても、もうマイナークラブハウスに入ってしまうとそこがすごく好きになっている。だから全然卑屈ではなくて、爽やかそのもの。それでいて、みんながみんな「仲間」としての意識を持っているせいか、すごく仲が良い。むしろ第一話での普通の学園生活の方が、凄まじい異空間みたいだ。
第四話が好きだなー! バンドの話。こういうちょっと悪ぶった(?)視点のバンドものって、純粋に登場人物が「すげー! すげー!」と叫ぶから本当に楽しい。かと思ったら、一番子どもっぽく、こうしていられるのはいつまでだろう、と泣きそうになるのもすごく分かってしまう。
気になるひと、気になる話で一巻が終わったので、続きも読みたい。

藤見高校三年二組のクラス会。そこでいつも話題になるのは、女優になった「キョウコ」のこと。彼女をなんとかクラス会に呼び出そうとする、かつてのクラスメートたち。しかしそのことによって蘇る、劣等感や嫉妬といった感情に、かれらは向き合わなくてはならなくなった。
太陽が一体誰なのか、と思い悩む高校時代を送った人々の物語だったのかな、と思いました。辻村深月作品を分けた場合、光と闇の、闇に属する組み分けなのだろうな。『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を読んだ時に感じた、この、大人に対しても独特の、冷えきっているのにどろどろとした視点というか。ものすごく陰湿にねちねちと責められている気分になりました。三十代を目前にした、女の形がとても恐ろしく描かれているような気がします。
キョウコやリンちゃんに関しては、「ええええええええ!!?」と叫ぶ叫ぶ。うわあうわあ、すごく辻村さんらしいトリック。一話目にどうも変だなーと思いながら読んでいたのが、ここにきて明らかになってすごいと思うのに、すごーく陰鬱な気分になりました。

ご存じだろうか。〈魔が差す〉という瞬間は、たぶんどんな人にも一度や二度は訪れるものなのだ。そう、犯罪行為などとは地球とアンドロメダ星雲くらいにかけ離れている駒子にさえ、その瞬間は突然やってきたのだから。クリスマスにひいた風邪が軽快し、空はすこんと晴れ上がった大晦日、出かけたデパートであるものに目を奪われたばかりに、息が止まりそうな思いをした駒子は……。(裏表紙より)
再読だった。でも未読の棚にささっていたので、あれー? と思いながら読みました。でもとてもしんみりと面白かった。駒子と瀬尾さんの物語というよりは、彼女たちを外側から見た二編でした。
駒子に対する評が、とてもずばりと書かれていて、私はどちらかというと駒子寄りだけれども、まどかの思いも分かる気がします。ちょっとテンポが違うなあと思う気持ちも、それでも誰かに親近感を抱く気持ちも、そして、駒子の「誰にとっても一番ではない」という悩みも。
これを読んで無性に宮沢賢治記念館に行きたい! と思ったりしました。

崖に聳えるガラスの館。かつてそこで命を落とした少女、千波は再びの生を得て、青年学者の吹原と出会う。しかし二人の前世からの縁と、吹原の一族に潜む愛憎がもたらす過去の悲劇が、千波に新たな試練を課した。前世の思い出を映す未来に導かれるように、千波は崖の館をめざし、歩きはじめる。少女と館を巡る三つの物語、完結。単行本未収録作品「肖像」を併録する。解説・千街晶之(裏表紙より)
『崖の館』ではミステリー、『水に描かれた館』では心理ミステリーと移り変わってきましたが、この『夢館』では幻想小説になっていました。そもそものテーマが「輪廻転生」であるので、不思議なことが起こっても仕方がないのですが、それに人間の心理が絡むと、本当に不思議な空気を作り出していました。
館シリーズの登場人物が一体どうなったのか気になるところでしたが、少しずつ登場してきてちょっと嬉しかった。涼子たちは別作品で登場するようなのが解説に書かれていたので、いつか読んでみたい。



「あんな《役立たず》を誘拐?」仕事を失って浮かない顔のダムーたちの前で、突然ヴィンスが連れ去られた。追いかけてみると、犯人はエルディア王国の大貴族。命を狙われている皇子の身代わりになってほしかったのだという。そんな勝手なと思いながらも、金のない用心棒四人組はOKするのだが……その頃キャサリンもこの王家の奇妙な風習に悩まされていた。シリーズ屈指の理不尽な事件に、信念のお嬢様、キャサリンの怒りが大爆発!?(上巻裏表紙より)
お借りしたもの。上中下巻の三冊分冊。
茅田さんの作品は爽快感が伴うけれど、レディ・ガンナーシリーズはそこから更に考えさせられた上で気持ちいいので大好きだ。気持ちよかったー!
異国での風習は奇妙に思えてもそこでは普通のことだから、と前置きがありつつ、おかしいものはおかしい! と訴えるキャサリン。現代人の私たちにとっては、それは当然の主張で、考え方で、主張できる彼女がすごくかっこいい。訴えるだけではなくて、人に考えさせる力を与えるから、空虚な言葉でなく上辺だけの主張じゃないと思えるんだな、きっと。
中巻で、キャサリンのドーザに触りたくてうずうずしているところは笑った。確かにちょこんと座られるときゅんとするかも。動物がとても綺麗だと思うのも分かる気がする。茅田さんは本当にケモノスキーだなー。いつ変身シーンが出るかな出るかな、とじらされたけれど、ケモノの大盤振る舞いでとてもにやにやしてしまった。異種人種にも族長とかあるのか! とわくわくした。ら、やっぱりドーザさんがかっこよろしくかわいかった。
続きが気になるシリーズでもあります。だいぶと前に、他の巻を読んだので、揃える傍ら読み返したいところ。

パラドックス学園パラレル研究会、通称パラパラ研。ミステリ研究会志望のワンダは何故か、このパラパラ研に入部することに。部員はドイル、ルブラン、カー、クリスティーと名だたるミステリ作家の名前を持つものばかりだが、誰もミステリを読んだことがないという……。やがて起きる”密室殺人”と予想もできない究極の大トリック! 鯨ミステリのまさに極北!(裏表紙より)
前作『ミステリアス学園』があまりもあまりにもすごい真犯人だっただけに、今回はどんな趣向が凝らされているのだろうとわくわくして読みました。やっぱりすごかった。ミステリなのに、すごくエンターテインメントだなー! と思いました。
パラパラ研に入部することになったワンダ。この名前にぴんと来た瞬間から、すでにこの小説のトリックに巻き込まれてる(そういう点では、『ミステリアス学園』を読んでいないと説明不十分かもしれない)。ミステリの基本、法則性を逆手に取れるのは、これがこういう小説であるのと、登場人物に名ミステリ作家の名前を冠した人たちがいるからだなとお思います。いや、本当にすごかった!
『本当におもしろい本ほど壁に叩きつけたくなります』。笑ってしまった。
解説の方の文章も合わせて、すごくよかった!

十七世紀半ば、現在のドイツは三百の国家が割拠していた。その一つ、ハルバーシュタット公国は、若き選帝侯率いるブランデンブルクに、まさに攻め落とされようとしていた。
令嬢の身代わりに城に残った宰相の娘マリアは、父を処刑した選帝侯に誕生日を迎えたばかりの十四歳の身体を奪われた。
身を傷つけながらも、愛と生きる道を必死に探る少女。凛と前を見つめる瞳は、彼女の強い意志を宿していた。
禁断の愛、裏切り——身体の奥から熱くなる! 息をもつかせぬ歴史ロマンスの傑作!(裏表紙より)
再読。すごーくすごーく面白かった! 当時読んだ時も高校生とかそのくらいでしたが、今読んでもきゅんきゅんしっぱなしでした。歴史ロマンスいい!
どきどきする始まり方から、十四歳のマリアが選帝侯フリードリヒに包まれるまで、包まれてもそのさきの戦いや、思いに、ずっと胸をときめかせて読みました。マリアだけの視点ではなくて、フリードリヒがマリアに恋をしている(あの選帝侯が! あの女遊びの激しい男が!)というのがもう、たまらん! お互いを大切に思うがゆえにのすれ違いもおいしゅうございました。
マリアが、少年のようにとても激しいかと思ったら、あっという間に打ちひしがれてしまう十四歳の少女でもあって、そのアンバランスさが魅力的でした。フリードリヒも、大人の男性なのに少女に振り回されるようで、かわいらしい。
面白かった。おすすめです!

東京、下町の老舗古本屋「東京バンドワゴン」。営む堀田家は今は珍しい三世代の大家族。今回もご近所さんともども、ナゾの事件に巻き込まれる。ある朝、高価本だけが並べ替えられていた。誰が何のために? 首をかしげる堀田家の面々。さらに買い取った本の見返しに「ほったこん ひとごろし」と何とも物騒なメッセージが発見され……。さて今回も「万事解決」となるか? ホームドラマ小説の決定版、第三弾!!(裏表紙より)
第3巻。新しい家族が加わった堀田家だけれど、周囲の人々もゆっくり移り変わりつつあるのが感じられるホームドラマでした。なんだかんだで一番迷惑なのが我奈人さんだけれど、結局許される感じが悔しい!笑
登場人物も多くなると、第1巻、第2巻の事件が絡むので、この人誰だったかなとなること数回(だって文庫は一年ごとにしか出ていないのだ)。しかしみんな、どたばたと幸せそうでいいなあ。古書の寄り合いはもうちょっとじっくり見たかったな! しかしすずみさんかっこいい! そしてやっぱり藤島さんがおいしいところを持っていく。それは反則だけれど、許される感じがまたいいなー!