読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。そこに秘められたメッセージの意味とは!? 天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者、岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴え渡る〈覆面作家〉シリーズ第3弾!
解説・有栖川有栖(裏表紙より)
しょっぱなから糖分上昇である。上昇にも関わらず、大人っぽく、しっとりとユーモアある台詞などで書かれているから、思わずときめいてしまった。「こら、千秋」はやばい!
結局お兄さんとか、お父様とのあれやこれやがもっとたくさんあっても楽しかったかもと思ったのだけれど、これだけでも十分楽しかった。この巻はとってもしっとり甘かった。最後の「覆面作家の夢の家」のラストシーンは、良介自身の口調も変わってて、やばいやばい! と思いました。二つ目の「覆面作家、目白を呼ぶ」がやり切れない思いでいっぱいだっただけに。
ちょっとしたことで謎を呈示されて、えっとなった次の展開を読んで、明らかになる答え。そのテンポがとても好きです。引きがとてもぐっとくるというか。
これで終わりなんて残念。楽しかった!
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ペンネームは覆面作家——本名・新妻千秋。天国的美貌でミステリー界にデビューした新人作家の正体は、大富豪の御令嬢。しかも彼女は現実に起こる事件の謎までも鮮やかに解き明かす、もう一つの顔を持っていた! 春のお菓子、梅雨入り時のスナップ写真、そして新年のシェークスピア……。三つの季節の、三つの事件に挑む、お嬢様探偵の名推理。人気絶頂の北村薫ワールド、〈覆面作家〉シリーズ、第二弾登場!(裏表紙より)
シリーズ第二弾。面白かったー! 北村作品はしんみりする作品もあれば、鋭くて怖い作品もあって、すごく楽しいなあ! 愛情から来る事件もあれば、歪な人物の姿もあり、しんみりしたりどきっとしたり。何よりも文体から思慮深さとユーモアが感じられて、自分に喋りかけられてるわけでもないのに、読んでいて笑ってしまう。
登場人物もすっごく素敵。左近先輩が異動してしまったので、今回からライバル雑誌の編集者、静が登場。元気がよく歌って躍れるというハイなところまで、活き活きしていてすごく楽しい。彼女と某方との関係がもしかしてと思うところもあり、次の巻を読むのが楽しみ。

『江戸』が『明治』に改まり、世はめまぐるしい勢いで移り変わった。ご維新で禄を失った士族の若様たちは、その新しい世で生きている。西洋菓子屋で立身を目指す皆川真次郎。悪友で警官の長瀬たち。小泉商会のひとり娘沙羅。『お人好しで寂しがりや』の真次郎は、いつもいつも騒ぎに巻き込まれ。
とても好きです。好きです。「序」の書き出しでノックアウトされてしまいました。
維新後の東京が舞台。洋菓子屋を経営する真次郎、というところにいきなりきゅんとします。西洋菓子という、この時代ではめずらしいものを作る職人の名前が、厳つい皆川真次郎という名前なので。
他に出てくる登場人物は、長瀬は飄々とした食えない警官で巻き込み役。切れやすい美貌の武芸の達人、園山。おきゃんでしっかり者の女学生、沙羅。その父親で狸の小泉社主。みんなみんな魅力的。東京狭しと走り回っているのが浮かんで、にこにこしながら読んでしまった。しかし様々な事件が明るく解決する裏では、人々の立身の思惑や戦争や感染症など現実社会の闇がひたひたと迫ってきているのが分かって、その絶妙なバランスに胸が切なくなったりしました。
畠中さんの作品はみんな好きだけど、これは色々きゅんとするなあ。語り口がなんだか好きだー。表紙も可愛くて好き。

「どこの誰とも分からない娘」という継母・エマの言葉に傷つき、王子との恋をあきらめたランプリング貿易商の娘、美春。
その矢先、航海に出ていた父・ジェイクが行方不明になり、エマはショックで寝込んでしまう。「わたしたちでランプリング商会を守るのよ!」と、美春たちは立ち上がるが…。ガラスの靴を叩き割ったシンデレラ、美春とオーラル王子の恋の行方はどうなるの…!?(カバー折り返しより)
『屋根裏の姫君』の続きです。前回がかなり悲しい終わり方だったので、この巻も前半は、父親が行方不明になったり、エマの精神が衰弱して美春に厳しく当たったりと、相当厳しいのですが、それだけに自分たちの意志で運命を切り開いていくランプリング三人姉妹の眩さは素敵!
しかも解決となる出来事がいくつもいくつも重なって、第十章からはほろり、やら、にやにや、やら、きゅん、やら、心臓が忙しかった。
「太陽の昇る国」の種明かしはえ!? となってしまった。そ、そうか、別に良いんだけど、しかし、びっくりしたなあ。
みんながみんな夢の国を求めていると書いたけれど、だからすれ違って、傷付け合ってしまうのは切なく、この『裸足の花嫁』でハッピーエンドを迎える結末は、もう本当に嬉しかったです。

貿易商ランプリングの娘=美春は継母のエマにひどくいじめられ、みすぼらしい格好で屋根裏に住んでいる。そんな健気な美春が、舞踏会でガラスの靴をはいたら……。
アッと驚く展開。運命の恋のその後……。
女のコなら誰でも知ってる、憧れるシンデレラ・ストーリー。でも「香山版」はひと味もふた味も違う、青春サクセス物語なのだ。思わず涙のクライマックスが待っている!!(カバー折り返しより)
中学生くらいの時にこれを読んで、ここで終わりなのかと思っていたら、実は続きがあることを知って隣の市の図書館まで行って読んだ思い出がある。実はその頃からずっと欲しかった本なのだ。
ちなみにこの巻だけでは完結しません。
物語はシンデレラをなぞっているのだけれど、気になるのは継母エマと継姉の長女アネット。似通った思いを抱えた、よく似た母子。次女のキャロルはキャロルで、多分そんな家族を持ったのを眺めているからこういう性格になったんじゃないかなーと、続きを覚えていないので考えてみる。
みんながみんな、『遠い国』や夢の場所を望んでいるのが切ないなと思った。思うがゆえにその場所に囚われているというのか、変わることができない。そのもどかしさを読みながら感じた。
どこか同じ世界の遠い国に思えて、しかしどこか違う世界の話って、なんだかいいなあ。

「悪霊よ、去れ!」
修験者を志す高校生・袴田幸太郎が力を込めて突き出した数珠は、しかし何の効果も生み出さなかった。「袴田さん、お上手ですね。凄い、凄いですよ」などと拍手とともに真面目に感心されたりして——袴田が転校先で出会った2人の少年は、それでもしっかりと、普通の人間ではないのだった。
母親の幽霊に育てられたという不思議な少年「伊佐」、万年不機嫌そうな雪女の息子「雪」。そんな彼らと一緒の道行きは、やっぱり怪異な事件のオンパレードで……。
1人と2匹(?)とその愉快な仲間達が織りなす、楽しくてハートフルな当世妖怪奇譚。(裏表紙より)
かわいい話だった。ボーイミーツボーイというのかな。妖怪の少年二人と人間の少年の、怪異な事件を追う話を三編収録。
派手な事件といえば、ちょっと気持ち悪い感じの怪奇な登場人物(幽霊とか妖怪とか)との戦いくらいで、あとはしんしんとお話が進む。
魅力的な登場人物ってこういうのなのかな、となんだか思うところあって考えてしまった。伊佐も雪も袴田も、ヒメも玄太郎も、みんなそれぞれ見えないところで動き回ってる気がする。全然何をしているのかは掴めないし、ご都合主義的に唐突に現れてぱっと解決してしまうんだけれど、現れると一気に文字の画面が華やかになるなあ、と。
明らかになっていないことがいくつもあるし、伏せられてもいるようなので、続きがとても気になる。

時は平安時代。高名だが傲慢な絵師の良秀は、貴族の大殿様に頼まれた地獄の絵が描けずに苦しんでいた。清冽な劫火に灼かれ、悶え苦しむ美しい女——。それを自分の眼で実際に見たいと良秀は望む。そこで大殿様は、残酷な方法を思いつき……。芸術のために全てを犠牲にするエゴイズムを凄絶に描いた表題作のほか、「羅生門」、「蜘蛛の糸」、「鼻」、「藪の中」など著者の代表作を収録。(裏表紙より)
芥川をこの年になって初めてしっかり読んだけれど、とても、すごーく良かった……。
人間の微妙な心理を精密に描きつつ、物語がどこか神々しい光や闇で満ちている感じ。私のツボは「地獄変」「奉教人の死」「舞踏会」「藪の中」。
「舞踏会」は鹿鳴館で社交界デビューする少女の話。「奉教人の死」は切支丹もの。
「地獄変」は裏表紙にあるあらすじの通りだけれど、圧巻。語り手は一体何者なんだろうというところから、「大殿様との関係はなかった」と繰り返される語り手の台詞が裏があるんじゃないかと怖かったり、畜生である猿と人間の良秀の対比と逆転した魂の清さとか、色々すごかった。
「藪の中」がまだいまいち呑み込めなくて、後で読み込むつもり。全員が己の信じたいもののために嘘を吐いているようにしか思えないんだ……。多襄丸は己が名のある盗賊で女に求められたから。女は誇り高いと思っている自分のために。男は死ななければならなかったことの正当化。うーん、どうだろう。根拠がないので本当に印象だけ書いてみたけど。
でも、すごくよかった。読みやすかったし、馴染んだ感じでするする読めた。
しかし、表紙……表紙がどうにかならんのだろうか……。私が持っているのは小畑氏の絵なんですが、普通の、学生が持っててもおかしくない表紙でも出そうよ……!

「これはきれいに飾り立てられた追放劇だ」数万人もの市民に見送られ、盛大な出帆式典により旅立ちの時をむかえた空飛ぶ島、イスラ。空の果てを見つけるため——その華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。式典を横目に飛空機エル・アルコンを操縦するカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた……。
『とある飛空士への追憶』の世界を舞台に、恋と空戦の物語再び!!(裏表紙より)
主人公であるカルエルの背景がメインに語られます。なのでちょっと辛かったです。
色々あって大人しい性格になったのかと思いきや、かなり……難のある少年に育ってしまったね……と今後の展開がちょっぴり不安と期待でいっぱいです。
それだけに、普通の少年としてクレアと出会って、自転車に乗っているシーンはじんとしました。というか、自転車のシーンがとんでもなく綺麗でした。ロミオとジュリエットと銘打っているだけに、出会いはイコール一目惚れっぽくて……。
クレアの正体も明らかになっているので、次が気になります。

小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが……。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた 8編。解説・吉田伸子(裏表紙より)
いつもの空気を考えていたら、しんみりと大人の女性向けの話が多かったです。もうちょっとじっくり読みたいな! と思うくらい入り込んでました。
「マイ・フーリッシュ・アンクル」の少女と叔父の話は、ときめきでもありました。
「セイムタイム・ネクストイヤー」は、ほろりとしました。やっぱり、どうしてこう、ホテルマンさんとバーテンダーさんはいい味を出すんだろう! 素敵! 惚れる!
「バルタン最期の日」は、ザリガニ視点の話ということで、びっくりした。しかもなんかいい話だよ!? ちょっとハードボイルドなザリガニの話を読むとは思わなかっただけに、傍観者でありながら、バルタンの物語はしんみりしました。
面白かった!