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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)
ギャングの世代間抗争に端を発した拷問殺人の背後には、闇の軍属カトル・カールの存在があった。ボイルドらの熾烈な戦いと捜査により保護拘束されたナタリアの証言が明らかにしたのは、労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影だった。ついに牙を剥いた都市システムにより、一人また一人と命を落としていく09メンバーたち。そしてボイルドもまた、大いなる虚無へと加速しつつあった——暗黒と失墜の完結編。(裏表紙より)

ヴェロシティは虚無の物語。虚無に呑み込まれてしまった絶望の人の物語。
カトル・カールによってメンバーが欠けた事が虚無への入り口。あるいはオードリーの殺害。もしくはボイルドの友軍爆撃。全ての虚無は最初から仕組まれて、ボイルドを突き落とした——もしくはその道を歩む事を選ばせた。
これほど報われないというのもすごいと思う。この巻のクルツの裏切り、オセロットの死、ジョーイ、ワイズ、ラナ。ナタリアまでが亡くなり、イースターとウフコックだけが残された。いや、子どももいた。ただシザースという人間とは別の存在として。
スクランブルのラストから続くエピローグ。愛した女と同じ最後を遂げた。肉体は残さずに吹き飛ぶ。自分が犯した爆撃の時と同じ言葉を、シザースとして意識を共有していたワン・アイド・モスが叫ぶ。「おお、炸裂よ!(エクスプロード)」
スクランブルを次に読みたい。虚無へと至ってしまったボイルドの心情がきっとよく分かるだろう。
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マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)
廃棄処分を免れたボイルドとウフコックは、”三博士”のひとりクリストファー教授の指揮の下、9名の仲間とともにマルドゥック市へ向かう。大規模な再開発計画を争点にした市長選に揺れる街で、新たな証人保護システム「マルドゥック・スクランブルー09」の任務に従事するボイルドとウフコックたち。だが、都市政財界・法曹界までまあ着込む巨大な陰謀のなか、彼らを待ち受けていたのはあまりにも凄絶な運命だった——(裏表紙より)

運命の敵カトル・カールがお目見え。段々万国ビックリショーになりつつある。最初からか。
ここで一人、ハザウェイが脱落。それでも自らの任務の為に複雑な気持ちを消化するボイルドたちはやはり兵士という印象。
ボイルドとナタリアの間に子どもが出来るというのが衝撃。家族が出来るというのはこの物語の中ではとても安らぐ。だがとても嫌な予感がする。皆、死んでいなくなってしまうような。
ボイルドがウフコックと離れなければならない状況に追い遣られるか、ボイルドが暴走してウフコックが離れてしまうか。スクランブルにおけるボイルドのウフコックに対する執着を見るに(曖昧にしか覚えていないが)後者だろうか。
マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
戦地において友軍への誤爆という罪を犯した男——ディムズデイル=ボイルド。肉体改造のため軍研究所に収容された彼は、約束の地への墜落のビジョンに苛まれていた。そんなボイルドを救済したのは、知能を持つ万能兵器にして、無垢の良心たるネズミ・ウフコックだった。だが、やがて戦争は終結、彼らを”廃棄”するための部隊が研究所に迫っていた……『マルドゥック・スクランブル』以前を描く、虚無と良心の訣別の物語。(裏表紙より)

「マルドゥック・スクランブル」以前、ボイルドを主人公としたハードボイルド小説。文体は必要最低限の表現を省いて、/や——を駆使したもの。初めてそういう小説を読んだ。
12人(本当は13人だった)の人間が特殊能力を駆使して、任務をこなすというものだが、その戦闘シーンが特殊な能力を使って行われる為、ありふれたものではなくなっていて、先が読めずにページを次々に繰ってしまう。
スクランブルを読んだ身としては、スクランブルで憎めない、だが最強の敵だったボイルドの人柄、懸命さに打たれる。そうして無垢が、まだ白ではなく透明であるようなウフコックの可愛らしさにきゅんとする。
ただ裏表紙のあらすじにある通り、無垢、つまりウフコックと訣別する物語である為に、それを覚悟して読まねばならないと思っている。
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都下校外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず——多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か? 異臭は? ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は? そもそも、本当に事故なのか? Q&Aだけで進行する著者の真骨頂!(裏表紙より)

インタビュアーとその回答者による会話のみで構成される小説。物語の始めは、事故が起こった直後、ある団体によって調査がされていると分かるが、読み進めていく内に時間が経過し、最終の問答の時点では数年が経過していると思われる。事故は何が原因だったのか、ある事が示唆されているもの、結局は分からないまま、物語は終わる。
恩田陸が性的なものを書くと、恐ろしい。妙な感じがする。それから恩田陸は恐怖物語を書くのがとても上手い作家だと思う。怪談話など、ぞわぞわする。言い換えると、ファンタジックなものが上手い。ラストの、教団教祖の少女と未来の少女の言葉は、暗闇の中にドアが開き、光が溢れてくるような印象を抱いた。
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

ある街の大劇場跡に小さな女の子が住み着いた。自らをモモと名乗る少女は、人々に温かく受け入れられる。しかし街には灰色の男たちがやってきて、人々から時間を盗み始めたのだった。

モモかわいい! こういう「何も持っていない」女の子、自分自身があって心が豊かな女の子が主人公は、すっくと立って前を見つめて、それから私たちの手を引いてくれる。
モモも、他の登場人物も、心豊かで楽しく描かれていて、文体はやっぱり児童文学なんだけれど、何かをずっと指差していると思う。それは読めば分かると思うけれど、こういうものをエンデは「メールヘン・ロマン」と言ったそう。
モモが時間のみなもとを見る時、その美しく壮大な描写に引き込まれて息を呑んだ。幻想的で、きれいだった。
マイスター・ホラとのやりとりはすごく好きなところだった。

「あなたは死なの?」
 マイスター・ホラはほほえんでしばらくだまっていましたが、やがて口を開きました。
「もし人間が死とはなにかを知っていたら、こわいとは思わなくなるだろうにね。そして死をおそれないようになれば、生きる時間を人間からぬすむようなことは、だれにもできなくなるはずだ」
一二章 モモ、時間の国につく より



アンケートからのオススメでした。送って下さった方、ありがとうございました!

桜の下の人魚姫

桜の蕾を見つける季節、姉の勤める病院で、ひとりの少年に出会った沙耶。彼に惹かれて病院に通う内に、沙耶は彼の病名を知るのだが。

短編二本収録。断然「桜の下の人魚姫」を推します。もう一編の「月のしらべ 銀のみち」も私は好きだったけれど、人魚姫が一番良い。時々無性にこの話が読みたくなります。
もう、切なかった。彼の病気がなんなのかはある程度予測が付いたのだけれど、姉と沙耶の区別を彼が口にした瞬間、沙耶に同調したように涙がどっと溢れた。淡くて儚くて、優しい文章。切ない系だけどハッピーエンドなのが嬉しい。

「君の名残を」

友恵、武蔵、そして志郎。現代で生きる普通の子供だった彼女たちは、ある激しい雨の日、世界から忽然と姿を消した。それぞれに散った彼女たちが目覚めた時、そこは平安末期の日本だった。

面白かった! すごく良くできている物語でした。これは歴史ファンタジーに分類されるんでしょうか。
それぞれに歴史に関わっていくシーンは興奮します。そうだったのか! と伏線が明らかになった一番最後の武蔵のシーンには涙腺が緩んでしまいました。
ただ歴史を追っている為に、その部分が長くなってしまったりして解りやすいものの、やはり登場人物がどう動くのかが見たいので、読み進めるのが面倒になったりもします。けれどたくさんのシーンにはのめり込む事が出来る。
時を超える恋愛や歴史が好きな人は是非。最後は胸に来ます。

「ばいばい、アース」〈上〉〈下〉
どんな種族の特徴も持たない事が特徴の少女ベル。師シアンの元を離れ、自らの由縁を知る為に≪唸る剣≫を手に旅人になる試練を受ける。やがてベルを≪理由の少女≫と呼ぶ者たちが現れ、彼女は戦いへと進んでいく。

完成された世界観で描かれる少女の物語。独特の専門用語や言い回しも多いので、難解で、読み進めるのに苦労する時もあるけれど、段々と止まらなくなる。
勇ましい少女が剣を手に戦っていく様は格好良すぎる。そして戦いの様子が美しい。剣楽と呼ばれる集団戦闘には、すごく興奮した。
何よりベルの美しさ。自分を探している彼女の、強さと、野性的な美しさ。勇ましくて、小さな少女をいつも思い浮かべるのに、細い手足をいっぱい広げて疾走しているようなイメージ。
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Author:月子
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