読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

混血の少年リンツの国では事件が起こっていた。怪盗ゴディバが富豪たちの宝物を盗むという事件である。ゴディバを追う探偵ロイズは少年少女のヒーローだった。ある日父が買ってくれた古びた聖書から風車小屋のマークが描かれた地図を発見したリンツは、これはゴディバの隠れ家の地図ではないかと推測し、ロイズに手紙を書いて。
子どものためのミステリーランド、という複数の作家によるシリーズものなので、王道を行きつつ綺麗に終わるのかと思ったら、そうでもなかった。さすが乙一といった感じ。
怪盗の正体は父さんかなと思ったんだが死んでしまったし、もしかして隣人か、とも思ったら両方だったなんてすごいトリック。ロイズが悪者というのもすごい。人死にが出るのもびっくりした。最初のロイズに会うまでは児童文学っぽく、ドゥバイヨルと共闘するのは青春小説! という感じがしてわくわくした。ロイズが人質にしたリンツ母にキスするシーンはマフィア映画みたいだし、ラスト、両親と子のシーンは厳かになった。くるりくるりと回って色んなチョコレートを味見したみたい。良かった!
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天邪鬼伝説が残る『入らずの山』に、産業廃棄物処理場が作られることになった。ある満月の夜、その建設現場の近くをライトバンで通りかかった宮脇年輝は、側溝にポルシェを脱輪させ立ち往生している美女・加賀山和美を助けた。和美の目の前で五トンもの車体を軽々と持ち上げる年輝——それを見た和美は、すがる思いで年輝にある頼み事をする。その結果、年輝は峠の天邪鬼に取り憑かれてしまうハメに——!? ファン切望の名作が大幅な加筆の上、転生!!(裏表紙より)
SFというより現代ファンタジー、それもほのぼのの色が強い。
ちょっと物足りない印象。天邪鬼との生活は良かったけれど在り来たりでもある。もうちょっと大きな事件とかときめきが欲しかった。例えば、イーシャがもう少し大きく成長する、とか。イーシャと年輝には子供と大人の関係しかなくて。

科学技術発祥の地”楽園”を訪れたバロットが知ったのは、シェルの犯罪を裏付ける記憶データが、カジノに保管された4つの100万ドルチップ内に存在するという事実だった。チップを合法的に入手すべくポーカー、ルーレットを制していくバロット。ウフコック奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、最後の勝負ブラックジャックに臨んだ彼女は、ついに最強のディーラーと対峙する——喪失と安息、そして超克の完結篇(裏表紙より)
アシュレイとのブラックジャックは多分現実的には有り得ないんだろうが、もし本物の戦闘として引き分けになり続け、傷を負いながら勝利を目指していると考えると面白いかもしれない。
シェルが来て、バロットがチップをわざと返していくのは、ダークヒーロー的。こんないやらしく返す主人公なんて滅多にいないだろうなと思う。
初読時は、ラストにウフコックが死んでしまったんだと思っていた。だが、今よく読んでみると、ボイルドに奪われた銃にはウフコックはいなくて、バロットの突き出した右手にウフコックがいた。そして最後に引き金のない銃になっている。スーツに干渉して「今度こそ本当に、もぬけの殻だった」とあるように、ボイルドには奪われてなかったのかと。本当私は濫用されかけて死んだのだと思っていた。
バロットとボイルドの差は、自らを委ねる事が出来たかどうかにあるのではないかと思う。ヴェロシティを読んでしまったら、ボイルドがただウフコックを使いたかっただけという理由が薄く感じられるけれど、ボイルドはウフコックの感情を読みとる能力を恐れてもいた。でもバロットは恐れなかった。ふと思った。一度死んだ者と生き続ける者の差というもの。
ボイルドはこの戦いの後、本懐を遂げる。それが本当のこの物語の終わり。

緊急事態において科学技術の使用が許可されるスクランブル—09。人工皮膚をまとって再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身(ターン)した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で相手を仕留めていくバロット。その表情には、強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る——緊迫の第2巻!(裏表紙より)
ウフコックは濫用されてもバロットを離れなかったという所に、彼自身も心が成長している事が窺える。ボイルドたちが去ってしまった後の《楽園》は、更に進化しているようだ。人々は脳内で会話する。チャールズ博士は首だけになっている。ボイルドを駆り立てているのは好奇心だとチャールズ博士は言う。
トゥイーたちがまた来てと言うのと、ベル・ウィングが会いに来てくれと言うのと、二つの誘いがあるけれど、バロットはどちらの誘いも行けなさそうという感じがする。
袂を分かつきっかけになった事件の説明が、ヴェロシティとはちょっと違う。少女を保護したのをイースターも確認している事になっているような。その後車に戻って射殺したとあるけれど、確かそのまま車に閉じ込めたままだったような。
カジノの勝負を勝っていくのはわくわくするが、私にはまだバロットが戦っている感じがしない。

なぜ、私なの?——賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ち塞がる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮のかぎりを尽くした男だった……弾丸のごとき激情が炸裂するシリーズ全3巻発動!(裏表紙より)
ヴェロシティのエピローグ直前。主人公はルーン・バロットという少女娼婦。なぜ自分なのかと問う事を許されていくまでの物語、と思った。ヴェロシティは虚無、スクランブルは魂の再生というのはヴェロシティ三巻の帯の文句。
相棒となっていくバロットとウフコックの過程が上手く描かれていると思う。バロットが超人的な力を手に入れる所も気持ちいいが、諫めてくれるウフコックの存在がきいていて良い感じ。畜産業者との戦闘はやはり手に汗握るが、ヴェロシティのように研ぎ澄まされた感覚がないように思う。冲方丁は進化しているんだなと思う。
オクトーバー社の作った人物、が仲間にいる事が書かれているが誰? と思った。ここでは創設者というわけではなくて、現在の腐敗に至らせた人物と見るのが、ヴェロシティを読んだ人間としての正しい認識の仕方だろうか。

ギャングの世代間抗争に端を発した拷問殺人の背後には、闇の軍属カトル・カールの存在があった。ボイルドらの熾烈な戦いと捜査により保護拘束されたナタリアの証言が明らかにしたのは、労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影だった。ついに牙を剥いた都市システムにより、一人また一人と命を落としていく09メンバーたち。そしてボイルドもまた、大いなる虚無へと加速しつつあった——暗黒と失墜の完結編。(裏表紙より)
ヴェロシティは虚無の物語。虚無に呑み込まれてしまった絶望の人の物語。
カトル・カールによってメンバーが欠けた事が虚無への入り口。あるいはオードリーの殺害。もしくはボイルドの友軍爆撃。全ての虚無は最初から仕組まれて、ボイルドを突き落とした——もしくはその道を歩む事を選ばせた。
これほど報われないというのもすごいと思う。この巻のクルツの裏切り、オセロットの死、ジョーイ、ワイズ、ラナ。ナタリアまでが亡くなり、イースターとウフコックだけが残された。いや、子どももいた。ただシザースという人間とは別の存在として。
スクランブルのラストから続くエピローグ。愛した女と同じ最後を遂げた。肉体は残さずに吹き飛ぶ。自分が犯した爆撃の時と同じ言葉を、シザースとして意識を共有していたワン・アイド・モスが叫ぶ。「おお、炸裂よ!(エクスプロード)」
スクランブルを次に読みたい。虚無へと至ってしまったボイルドの心情がきっとよく分かるだろう。

廃棄処分を免れたボイルドとウフコックは、”三博士”のひとりクリストファー教授の指揮の下、9名の仲間とともにマルドゥック市へ向かう。大規模な再開発計画を争点にした市長選に揺れる街で、新たな証人保護システム「マルドゥック・スクランブルー09」の任務に従事するボイルドとウフコックたち。だが、都市政財界・法曹界までまあ着込む巨大な陰謀のなか、彼らを待ち受けていたのはあまりにも凄絶な運命だった——(裏表紙より)
運命の敵カトル・カールがお目見え。段々万国ビックリショーになりつつある。最初からか。
ここで一人、ハザウェイが脱落。それでも自らの任務の為に複雑な気持ちを消化するボイルドたちはやはり兵士という印象。
ボイルドとナタリアの間に子どもが出来るというのが衝撃。家族が出来るというのはこの物語の中ではとても安らぐ。だがとても嫌な予感がする。皆、死んでいなくなってしまうような。
ボイルドがウフコックと離れなければならない状況に追い遣られるか、ボイルドが暴走してウフコックが離れてしまうか。スクランブルにおけるボイルドのウフコックに対する執着を見るに(曖昧にしか覚えていないが)後者だろうか。

戦地において友軍への誤爆という罪を犯した男——ディムズデイル=ボイルド。肉体改造のため軍研究所に収容された彼は、約束の地への墜落のビジョンに苛まれていた。そんなボイルドを救済したのは、知能を持つ万能兵器にして、無垢の良心たるネズミ・ウフコックだった。だが、やがて戦争は終結、彼らを”廃棄”するための部隊が研究所に迫っていた……『マルドゥック・スクランブル』以前を描く、虚無と良心の訣別の物語。(裏表紙より)
「マルドゥック・スクランブル」以前、ボイルドを主人公としたハードボイルド小説。文体は必要最低限の表現を省いて、/や——を駆使したもの。初めてそういう小説を読んだ。
12人(本当は13人だった)の人間が特殊能力を駆使して、任務をこなすというものだが、その戦闘シーンが特殊な能力を使って行われる為、ありふれたものではなくなっていて、先が読めずにページを次々に繰ってしまう。
スクランブルを読んだ身としては、スクランブルで憎めない、だが最強の敵だったボイルドの人柄、懸命さに打たれる。そうして無垢が、まだ白ではなく透明であるようなウフコックの可愛らしさにきゅんとする。
ただ裏表紙のあらすじにある通り、無垢、つまりウフコックと訣別する物語である為に、それを覚悟して読まねばならないと思っている。
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都下校外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず——多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か? 異臭は? ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は? そもそも、本当に事故なのか? Q&Aだけで進行する著者の真骨頂!(裏表紙より)
インタビュアーとその回答者による会話のみで構成される小説。物語の始めは、事故が起こった直後、ある団体によって調査がされていると分かるが、読み進めていく内に時間が経過し、最終の問答の時点では数年が経過していると思われる。事故は何が原因だったのか、ある事が示唆されているもの、結局は分からないまま、物語は終わる。
恩田陸が性的なものを書くと、恐ろしい。妙な感じがする。それから恩田陸は恐怖物語を書くのがとても上手い作家だと思う。怪談話など、ぞわぞわする。言い換えると、ファンタジックなものが上手い。ラストの、教団教祖の少女と未来の少女の言葉は、暗闇の中にドアが開き、光が溢れてくるような印象を抱いた。
都下校外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず——多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か? 異臭は? ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は? そもそも、本当に事故なのか? Q&Aだけで進行する著者の真骨頂!(裏表紙より)
インタビュアーとその回答者による会話のみで構成される小説。物語の始めは、事故が起こった直後、ある団体によって調査がされていると分かるが、読み進めていく内に時間が経過し、最終の問答の時点では数年が経過していると思われる。事故は何が原因だったのか、ある事が示唆されているもの、結局は分からないまま、物語は終わる。
恩田陸が性的なものを書くと、恐ろしい。妙な感じがする。それから恩田陸は恐怖物語を書くのがとても上手い作家だと思う。怪談話など、ぞわぞわする。言い換えると、ファンタジックなものが上手い。ラストの、教団教祖の少女と未来の少女の言葉は、暗闇の中にドアが開き、光が溢れてくるような印象を抱いた。
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語


ある街の大劇場跡に小さな女の子が住み着いた。自らをモモと名乗る少女は、人々に温かく受け入れられる。しかし街には灰色の男たちがやってきて、人々から時間を盗み始めたのだった。
モモかわいい! こういう「何も持っていない」女の子、自分自身があって心が豊かな女の子が主人公は、すっくと立って前を見つめて、それから私たちの手を引いてくれる。
モモも、他の登場人物も、心豊かで楽しく描かれていて、文体はやっぱり児童文学なんだけれど、何かをずっと指差していると思う。それは読めば分かると思うけれど、こういうものをエンデは「メールヘン・ロマン」と言ったそう。
モモが時間のみなもとを見る時、その美しく壮大な描写に引き込まれて息を呑んだ。幻想的で、きれいだった。
マイスター・ホラとのやりとりはすごく好きなところだった。
アンケートからのオススメでした。送って下さった方、ありがとうございました!

ある街の大劇場跡に小さな女の子が住み着いた。自らをモモと名乗る少女は、人々に温かく受け入れられる。しかし街には灰色の男たちがやってきて、人々から時間を盗み始めたのだった。
モモかわいい! こういう「何も持っていない」女の子、自分自身があって心が豊かな女の子が主人公は、すっくと立って前を見つめて、それから私たちの手を引いてくれる。
モモも、他の登場人物も、心豊かで楽しく描かれていて、文体はやっぱり児童文学なんだけれど、何かをずっと指差していると思う。それは読めば分かると思うけれど、こういうものをエンデは「メールヘン・ロマン」と言ったそう。
モモが時間のみなもとを見る時、その美しく壮大な描写に引き込まれて息を呑んだ。幻想的で、きれいだった。
マイスター・ホラとのやりとりはすごく好きなところだった。
「あなたは死なの?」
マイスター・ホラはほほえんでしばらくだまっていましたが、やがて口を開きました。
「もし人間が死とはなにかを知っていたら、こわいとは思わなくなるだろうにね。そして死をおそれないようになれば、生きる時間を人間からぬすむようなことは、だれにもできなくなるはずだ」
一二章 モモ、時間の国につく より
アンケートからのオススメでした。送って下さった方、ありがとうございました!