読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「お前ら、いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼を合わせることができなくなった。しかし、やりたいことが見つからず、高校を出ても迷走するばかりの僕にとって、彼女を思う時間だけが灯火になった…<未来予報>。
ちょっとした金を盗むため、旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は、とんでもないものを掴んでしまう<手を握る泥棒の話>。他2篇を収録した、短篇の名手・乙一の傑作集。(裏表紙より)
晴れというテーマで本を探した時にこれが出てきたので、久しぶりに読み返してみた。何回目かの再読。
乙一さんの書く愛が好きなので、「未来予報」はかなり好きな作品。未来の予言に捕らわれて、未来を違えてしまったのかもしれないけれど、いつでも未来は不確定という古寺の『予報』の言葉が染みる。
「手を握る泥棒の話」もいいなあと思いながら。最初に読んだ時は、もっと不安定な気持ちだったのだけれど、今読んでいると、なんだか登場人物がみんな身近に感じられて、それでいて頑張ろうと思えるようになっているのが不思議。
「フィルムの中の少女」「失はれた物語」は乙一節全開だなと思った。
羽住都さんの絵がまた好きでたまらなくて、カラーページをずっと眺めてしまう。
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アダルシャン王国の辺境・グラーレンの地で、王弟・アレクシードは自分の出生の秘密を知る。驚く彼に、真実を告げた男は、兄王を裏切るようささやきかける。
「あなたこそ、この国の真の王。玉座を、全てを、あなたへ」
兄王への誓いと、王都で囚われている幼い妻・ユスティニアを思い苦悩するアレクシード。そして決意のもとに、兄の待つ王都へ攻め上るが…!? アダルシャン・シリーズ衝撃の第4弾!!(裏表紙より)
実はこの感想を書く時点で完結まで読んでしまったので……感想が色褪せているんだが。
エリアスの思いが非常に痛いのでした。彼ほど過去にとらわれている人はいないだろうなあ……。幼い子ども相手というのが彼の後悔の元なんだろうなあ……。しかし完全な悪役になるには、彼はアレクに忠実すぎたわけで。
この巻の非常に萌えたところは、夫婦二組の図ですな! 気になっていたユーゼリクスとアゼリアの関係が、やっぱりそうかー(ニヤニヤ)なのでした。妻に弱いユーゼル……。アゼリアは普通の女性だけれど、心の支えなんだよな……。多分政略結婚の意味合いが強い夫婦なんだけれど、でも絆が強くて非常に好きなのだ。
この巻で王都編に決着がついて、アレクとユティの行く末も決まる。アレクが帰ってきてユティはまず平手を一発、というのがいいなあ。どっちも相手がすごーく大切なんだ。
兄弟は相変わらず食い違って不器用であるので、にまにました。無理強いできない(多分己のプライド9割相手を思って1割くらいで)ユーゼリクスがいい。

綾音、戸崎、箱崎の三人は、学生時代を思い出している。それぞれに、それぞれのものに情熱をかけた、大学生の頃。告白する者、今まさに走る者、思い出す者……。三つの視点で語られる「別れるための物語」
いつもと文体が違ったので読み始めてぎょっとした。大丈夫かなと不安になりながらも、第三部の「陽の当たる場所」の締め方は恩田さんの好きなテーマっぽいなーと思った。
物語としては面白みにかけるかもしれないけれど、みんな大人になりかけた頃に感じたもの、がかなり細かく描かれているように思う。私は非常に随所でどきっ、どきっとした。
特に第一部。「あいつと私」は、小説家になりたいとは言えない気持ちが分かった気がしてぎくっとした。
小説家になりたい、なんて、口が裂けても言いたくないし、そう心の底では思っていることを認めたくなかった。
第一部は小説家、二部は音楽、三部は映像という創作物に絡めているけれど、詳しい話は語られない。まるでそれはこれを読んだ自分が作るんだというようだった。

アダルシャン王国の南・グラーレン地方で起こった領土問題のため、戦地へ行くよう兄王から命じられた王弟アレクシード。そのことで幼い妻・ユスティニアと言い争い、気まずいまま別れてしまったせいで、彼は彼女のことが気になって仕方ない。やがて訪れたグラーレンの町に、妙な既視感を覚えるアレクシード。そして敵軍からの、裏切りへの誘い…。そこに王都から、驚くべき報が――!? アダルシャン・シリーズ激動の第3弾!!(裏表紙より)
アレクとユティが離ればなれになる。というのはもし普通のカップルだったら辛い別離なんだけど、なんだかこの二人を見ていると非常に安心感があって、大丈夫大丈夫と思ってしまう。どちらかというと大丈夫という印象を抱くのは十歳のユティの方が強い感じが。情けないアレクシード。
政略結婚、王国物の王道なのにこの作品が非常に好きでどうしようかと! 兄弟、妾腹の王子、政略結婚、幼い妻、陰謀、戦争……。この巻では特に兄王ユーゼリクスと、ユティの会話が非常にたぎった。
「義兄上は、誓いの価値を御存知ない」
「…………」
「わたしは誓ったぞ。アレクと夫婦になると、誓った」
これ十歳が言うんだ。もえずにどうする。

新興国アダルシャンには、王権を守護するという宝剣がある。剣の名はハルシフォン。先頃、皇女ユスティニアと結婚した、戦神の誉れ高い王弟アレクシードに下賜されたものである。だが国王ユーゼリクスの剣となるべき英雄(アレクシード)には、現在(いま)も黒い噂がつきまとう。果たしてかれに、王の守護者たるべき資格があるのか、と。そんな折、アダルシャンと隣国との間に、国境の領土問題が発生して…? 「アダルシャンの花嫁」に続編登場!(裏表紙より)
前作である「アダルシャンの花嫁」での容赦ない展開に、大切な人を失ったアレクシード。非常に人間関係と政治部分がどきどきするシリーズだなあと思いました。うじうじする(でもやることはちゃんとやる)アレクシードが非常にいい登場人物で、彼が何を見つけていくのかというのが非常に綺麗な気持ちで見守りたくなる。
兄と弟の気持ちが、微妙にすれ違っているのに悶えてしまう。どちらも相手を大切に思っているのに、そしてそれぞれ正しいと思われる行動をしているのに、どうしても正面からかち合わない。ユーゼリクスがアレクシードのため彼を内政に近付けなかったのに、という思いと、アレクシードの兄のために国を守らねばという思いが、どうしてこうも他人の思惑や政治のせいですれ違ってしまうんだろう! これはいい兄弟小説です。

末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その反抗はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作!(裏表紙より)
導入の、息子を攫われた男の手記のところからものすごい勢いで引き込まれてしまった。
コンピューター制御による犯罪。88年刊なのに、私が読んだ21世紀の現在なら可能なのかもしれないと思わせるところにぞくぞくした! 多分警察の捜査も進化していると思うけれど、とても面白かった。
とても冷静で理性的な誘拐と復讐だったように思う。手記を読んだのが十一年後だとすると、その一年間に誘拐の準備をしたわけで。そうなると彼の心は、冷静というより狂気で静かだったようにも思う。
オススメありがとうございました!

エリザベス・カラーを
首に巻いた少女たちが
この世に解き放たれた——。
少女ファッション誌「ゴシック&ロリータバイブル」に掲載された傑作短編に、単行本未収録分を加えた決定版! 怪奇、不条理、恋、愛、夢、妖精、ロック……、とびきりロマンティックでスイート、だけど可笑しくって、ときどきどこか哀しい20編。オシャレでキュートな物語をめいっぱい詰め込んだ、大槻ケンヂの幻想劇場へようこそ。(裏表紙より)
裏表紙のあらすじ文がキラッキラしてて眩しいぜ。
すごーく面白かった! すごい。うまい。これだけあっさり読めるのに楽しいってどういうことだ。
最初に収録されている「巻頭歌——エリザベス・カラーの散文詩」がちょっとビクッとしてしまってまさかこういう話ばっかりか! とどきどきしたんだけれど、笑えるし泣けるしびっくりするしという話がたくさん詰まってて全然飽きなかった。
「戦国バレンタインデー」は留名(おうすごい名前)が「やあ、ワシは神様じゃ」の台詞で登場した神様によって戦国時代に飛ばされ、自決の時を待つお姫様と侍の交流を描く。べたなのにときめいた。ラストがとてもいい。
「二度寝姫とモカ」はファンタジー。短編ならではの素敵な話。猫いいよ猫。猫とお年寄り最高。
本当に楽しかった! オススメありがとうございました!


両親の離婚で、別れて暮らす元家族が年一度、集う夏休み。中学生の練は妹・千華子、母とともに、考古学者の父がいる中米のG国までやってきた。密林と遺跡と軍事政権の国。すぐさま四人はクーデターに巻き込まれ、避難中のヘリから兄妹が落下、親子は離ればなれに!? 疲労困憊でさまよう二人の身に、異変が……。息もつかせぬ面白さの新装版上巻。(上巻裏表紙より)
もうちょっと暑い時期に読んだら良かった! 読んだのは二度目(一回目は単行本で)だけれど、細かいところを覚えていなかったので新鮮で面白かった。
少年少女のサバイバルもの。とても練も千華子も頭のいい兄妹で、見ていて安心なんだけれど、展開がちっとも平和を許さないというか。分厚さがどこまでこの話は行くんだと思わせるというか。地下迷宮いいなあ。王の世界という言葉にもときめく。不思議なリーダーの少年ニコの魅力とか! 「モンジャヤキ」のニコが年相応の少年でかわいい。寄り添う兄妹も良かった。ものすごく冒険しているので、どういう形で決着がつくのか、再会の方法はとか思い出せずにどきどきしながら読んだ。
ラストはすごくいい! 大人サイドがあるので、大人向けライトノベルっぽいかもーと思いつつ、焦点は子どもたちなので子どもが読んでも楽しめる感じ。やっぱりこれ若い世代に読んでもらいたいなあと思ったり。
なあ、そう思うだろう?

還暦をじじいにくくられるなど我慢できない。定年退職後、アミューズメントパークに再就職した剣道師範のキヨ、柔道家で呑み屋の元亭主シゲ、機械いじりの天才の工場主ノリの三人は、幼い頃のように三人集い、自警団を結成した。ご町内の悪成敗、孫と娘の恋心、おっさんたちの活劇小説。
面白いよー面白いよー。有川さんの小説は気持ちがいいなあ!
おっさんたちがすっごくかっこいいし、孫の祐希と娘の早苗の恋模様がすっごくいい。キヨと祐希のコンビがいい感じにはまっていて、こういう関係っていいなあとにこにこしてしまう。こういう風に綺麗なところもあるけれど、第四話みたいな暗い部分も絶妙だった。本当に素敵な小説を書かれるよなあ……!

銀髪の男の腕に抱かれ、女はまるで眠っているように見えた。
その胸から流れ出る血は、すでに勢いを失っている。
男は凄まじい形相でこちら——赤髪の男が手にした聖咎の剣(インドルガンツィア)を見つめた。血に濡れた剣は、二人を戻れない未来へと誘ってゆくのだった……。
天界と堕界を分かつ混沌(カオス)の大地、アルカーナ大陸。その地で、赤髪の黒印騎士(シュワルツ・リッター)ジークはある男を追っていた。名をドラクロワ。かつて理想を掲げ合い、共に戦った友。だが、今は倒すべき相手。二人の間に一体何が? その決着とは?
一途ゆえに切ない者たちの戦いが今始まる! 消せない絆を賭けた、大軍勢バトル・ファンタジー!! 招け、《軍勢(レギオン)》!!!(カバー折り返しより)
このシリーズ、時系列が分からなくてどこから読んだらいいものかと悩んだんだが、完結してるっぽい無印を読んでみた。
ジーク、ドラクロワ、シーラの悲劇の前提があって、物語はドラクロワを追うものとなっている。回想が挟まるのでその辺りちょっとしんどかった。本当にアニメとかの『回想』みたいな書き方だったので。
物語はとっても熱かった! ノヴィアの事情が簡単に書かれているだけなので、多分数字の巻に入っているんだろうと思っている。ジークの過去に焦点が当たっているので、ジークという人物がどういう人物かよくわかるものだったし、これはジークの物語だったんじゃないかなあ。ジークと、ドラクロワと、シーラ。ラスト良かった。ベタと言われても良かった。ジークが過去から続く現在に囚われていたのだから、現在から続く未来に何を見出すかというのももっと見たかった気がする。
とても面白かった!