読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

成南電気工科大学にはキケンと呼ばれる部が存在する。正式名称は機械制御研究部。機研=危険として恐れられるそこには、数々の伝説があった。一回生の元山は、同期の池谷とともにそこに入部することになる。
面白かった! 他の有川作品みたいに責められる感じがなかったけれど、部活ものとしてすごく楽しく読んだ。いつも普通の人々を書いていると思うんですが、今回は若干名、かなりの変人がいてところどころぶっ飛んだ言動が凄かった。内容も男子校の部活ってこうなのかなあという、身も蓋もないところがあったし。
遊ぶなら全力で。勝たないまでも負けない。部長上野の言動がかっこいい。中身は置いておくとして。ロボット大会の最後の自爆は笑った。
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小劇団「シアターフラッグ」——ファンも多いが、解散の危機が迫っていた……そう、お金がないのだ!! その負債額なんと300万円! 悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。
新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるのだが……!?(裏表紙より)
面白かった。有川作品は考えさせられるけれど、スカッともするので気持ちいい。楽しい読書だ。
司にいちゃんかっこよすぎです。惚れる。こういう、一見固そうに見えるのに、柔軟で融通が利いて心配りも出来る人って憧れだ。すごく大人。人間として素敵だ。
一番手に汗握ったのが、用意した道具がない! というところ。どうなるんだろう、でもきっとうまくいくと分かっていながら、すごくどきどき、興奮した。みんなが一致団結して、つながり合って、信頼し合っていて、というのがすごく嬉しい。
まだまだ続きがありそうな個性的な登場人物ばかりで、一冊で終わるのが惜しいなあと思っていて、だから続編が執筆されると聞いてわくわくしています。

附属中学から女子高に上がった亜矢は、中1からの親友である菜穂と寄り道するなどして「すこぶる平和な学校生活」を送っていた。ある日、いつもの散歩道で小学校時代の同級生・安藤くんに出会う。ぐっと背が伸びた安藤くんとの距離が縮まり心ときめく亜矢だったが……。
文庫書き下ろしで贈る、人気作『卵と小麦粉それからマドレーヌ』の3年後を描いた姉妹編。
〈解説・金原瑞人〉(裏表紙より)
主人公が菜穂から亜矢へ。『卵と小麦粉それからマドレーヌ』ではとても大人っぽく落ち着いていた亜矢の視点で綴られます。亜矢の目で見ているからか、それとも16歳になって周囲が、特に菜穂が追い付いたのか、亜矢の落ち着きが年相応に思えました。
『卵と〜』の菜穂は健やかな成長という感じだったのですが、亜矢は一度芽を潰され傷をつけられたところからの成長だったので、ちょっとだけはらはらしました。家族との齟齬やすれ違いもあって、自分の嫌なところを自覚している亜矢に、とても共感する。彼女の感じるものひとつひとつが、彼女でなければ感じられないことなのでは、と思う。
友達四人で外でお弁当を食べるというシーン。
お天気のせいじゃなくて、こんなふうにさりげなく特別なとき、わたしはふいに泣きそうになる。この平和であたたかな時間が永遠に続くことはなくて、それがわかっているから泣きたくなるのだとわたしは知っている。
大人になっていくことへの優しい目が感じられるので、すごく好きなシリーズだと思う。

入社した会社を三ヶ月で辞め、フリーター生活を贈る武誠治は、母・寿美子の鬱病によって生活が一変する。自分のことしか考えていない父親や、母の看病をしながらの就職活動。目標は、家を買うこと。
面白かった! 最初もうどうしようもなく暗くて辛くて、でもいつか救われるはず! と読み進めていたけれど、そういう状況でもすごく面白くて、就職してからはもっと面白くて。面接についてちょっと書かれていたり、働くこと、がすごく大切なことなんだなあと感じました。こういう風に働きたいなあと羨望してしまう。
嬉しかったのが、誠治が面接を蹴ってしまい、のところ。認めてくれる人はいるんだ、と思うと、すごく嬉しくなった。
いつものベタ甘は特になくて、でも多く好意の形が描かれているなあと思います。それでもちょっとだけ見えた恋愛成分は、かわいくてとてもよかった!

もうすぐクリスマス。少年トーマスは父親から突然、引っ越しを告げられた。任務を終え、遠い故郷の星へ帰らなければならない。優しいお隣のおばさんや友達ともお別れだ。ところが、いよいよ出発というときに思わぬ事故に巻きこまれ、父子は離れ離れになってしまった! はたして、トーマスは一人大好きな地球に残ることを選ぶのか? 父子の愛と、二人を取り巻く優しい人々との別れを描くちょっぴりほろ苦いファンタジイ(裏表紙より)
異星人の少年と、父親の物語でした。少年の選択、というのが丁寧に描かれているように感じました。もうちょっと異星人っぽいのかと思ったら、特にエイリアン的な出来事で周囲に影響を及ぼすことはなかったので、少々残念。
でも、ラストがとてもよかった。じわっときてしまった。ステラはきっと分かってるんだろうなあ……。確かではなくとも、そうであるかもしれない、と微笑んでいるようなのが感じ取れて。

第14回スニーカー大賞《大賞》受賞!!
えん罪により逮捕された少年ムオルは、人里離れた共同霊園に送られ墓穴を掘る毎日を送っていた。そんなある夜、自らを墓守りと名乗る少女メリアと出逢う。彼女に惹かれていくムオル。だが謎の子供カラスから、ムオルが掘っている墓穴は、人類の天敵・死なずの怪物”ザ・ダーク”を埋葬するものだと聞かされる! 混乱するムオルは、さらにダークに殺されるメリアを目撃してしまい——!?(裏表紙より)
暗闇の中の少年と少女の物語といった印象のお話でした。墓守からダークな話を連想しがちでしたが、そんなことは全然なくて、年頃の少年と純粋な少女の出会いと希望の話。ちょっと優しくて、ちょっとだけ残酷でグロテスクで、最後は明るく終わる物語。
場所が動かないので、ライトノベルっぽくないなあと思いました。でも、すごく引き込まれました。現実のどこかにあるのに、それを感じさせないメルヘン感というか。読み終えてふわふわとしている。

女王の髪から生じるという、不思議な金の炎によって守られた炎杳国。ある時、炎杳国との戦に敗れた夜冗国は、女王より和平の証として公主の婿を要求されたのだった——。盛大な婚礼の最中、炎杳国公主・宝蘭は初めて見る夫、夜冗国公子・宵雪の、血のように赤い瞳に強く惹かれた。そして、宵雪もまた敵国の公主の可憐さに目を奪われ……。意に染まぬ、政略で結ばれた二人の恋の行方は!? ルルルカップ読者支持率No.1の文庫化!(裏表紙より)
大変あまあまらぶらぶでごちそうさまでした。
あらすじの、「恋の行方は!?」というほどの危機はそんなになく、一目惚れのせいであっという間に仲良くなった感じがしてちょっとだけ物足りなかったのですが、やる気がなくて卑屈なのかなと思っていた宵雪が、実はすっごく余裕たっぷりで甘い台詞を言うので、数々のあまーい言葉の数々ににやにやしっぱなしでした。炎を生じさせることができる、というのが不思議でなんだか好き。喋り方フェチでもあるので、宝蘭の物言いはかわいいと思いました。

年が明け——カシュヴァーンはアリシアの誕生日のために、図書館創設を進行中! 最近の暴君夫は愛妻の薬指に興味津々だったり、愛妻が大好きな幻の奇書『雨悪』の作者を屋敷に招待しようと目論んだりと、とにかく騒々しい有様。そこに究極の邪摩者……怪物・ゼオルディスが現れた! 自由気儘な逗留はカシュヴァーンを苛立たせ、アリシアに入れ知恵まで……。悪夢のような日々はある日”悪食大公”ガーゼット侯爵の異彩かつ奇妙な訪れにより、無事落着したかに思えたが——!? 曲者だらけ、夫婦の『特別』な第7弾!!(裏表紙より)
大きな事件が起こるわけではないのですが、段々と事態が動いているらしいのが感じられる第7巻でした。カシュヴァーンの妻へのめろめろっぷりが加速している上に、アリシアも特別な思いに気付いて「おなか痛い」になっているのににやにやします。
ゼオルディスやその周辺の素性については謎のままですが、カシュヴァーンたちの今後の方針が決まりつつあったり、ディネロがちょっと微妙な感じだったり、不穏な気配が漂う。そのなかで、ガーゼット侯爵は癒しでした(本気) あんなちょっと変わり者の上品で素敵なおじさまいないよ!
死神姫シリーズって、実は色んな人が色んな闇を抱えて、実はかなり深刻なのに、その深刻にどっぷり浸からずにいるのが面白いよなあ! と思います。どんな風にみんなが未来を目指していくのか楽しみです。

丘の上の幽霊屋敷。新しい住人が現れるたびに事件は起こる。人々の記憶は蓄積されていく。ホラー連作短編集。
こわかったけれど、とても上品で毒のあるホラーでした。面白かったー!
丘の上の幽霊屋敷に住んだ、関わった人々の記憶が一作ずつで語られます。一人の人を中心に据えているかと思えば、実は違うというのが(「私の家へようこそ」)ひええ! と思いました。一番恐かったのは、「あたしたちは互いの影を踏む」。
ねえ、結局、勝負はつかなかったんだよ。
びくうっ! としました。結末が分かっているだけに、この一文の威力が凄まじい。
そんな恐怖的な短編ばかりかと思えば、意外に明るい「俺と彼らと彼女たち」。これを読むと、最も「彼らと彼女たち」の原因というか、根本たるものは、「その土地と家」にあたるのだなと思いました。家を守る者には害を加えないというか。かれらは、ただひたすらに自分たちの生活を守りたいだけという。

隣国エッセウーナによって制圧された、小国オクトス。囚われの身となったオクトスの王女エパティークは、絶望の中にあった。
だがある日、そんなエパティークの前に、エッセウーナの第二王子テオバルトが現れ、告げた。
「これから、俺と君とで旅に出る。捕まれば、命はない」
その『旅』とは、願い事を叶える伝説の銀竜を呼び出すというもの。呼び出すために必要とされる生贄が、エパティークなのだ。
王位継承争いで帰る場所のないテオバルト。囚われ、生贄となるエパティーク。支配した者と、された者。互いを憎み、反発しながら、孤独な二人の長い旅が始まる——。宿命の愛と冒険の物語!(裏表紙より)
面白かった! とてもよき王道ファンタジーでした。互いを憎み合っていたのに、心を通わせていくところは、本当によかった。名前の響きが異世界風で、とても美しい伝説の物語を読んだ気がしました。伝説とうたが生きる素敵な世界だったと思います。こういうのがとても好きです。
銀竜の伝説の真実にはすごくびっくりしましたが、決着のつけ方がとても好きです。アマポーラとロザリーの対比がすごい。でも、テオバルトは気付いていなかったんですね、自分の妹が、自分が嫌悪感を抱いていた存在そのものを体現していることに。
これに続きがあるというのがびっくり。ちゃんと終わっているので……。続きも読みたい。