読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
第14回スニーカー大賞《大賞》受賞!!
えん罪により逮捕された少年ムオルは、人里離れた共同霊園に送られ墓穴を掘る毎日を送っていた。そんなある夜、自らを墓守りと名乗る少女メリアと出逢う。彼女に惹かれていくムオル。だが謎の子供カラスから、ムオルが掘っている墓穴は、人類の天敵・死なずの怪物”ザ・ダーク”を埋葬するものだと聞かされる! 混乱するムオルは、さらにダークに殺されるメリアを目撃してしまい——!?(裏表紙より)
暗闇の中の少年と少女の物語といった印象のお話でした。墓守からダークな話を連想しがちでしたが、そんなことは全然なくて、年頃の少年と純粋な少女の出会いと希望の話。ちょっと優しくて、ちょっとだけ残酷でグロテスクで、最後は明るく終わる物語。
場所が動かないので、ライトノベルっぽくないなあと思いました。でも、すごく引き込まれました。現実のどこかにあるのに、それを感じさせないメルヘン感というか。読み終えてふわふわとしている。
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女王の髪から生じるという、不思議な金の炎によって守られた炎杳国。ある時、炎杳国との戦に敗れた夜冗国は、女王より和平の証として公主の婿を要求されたのだった——。盛大な婚礼の最中、炎杳国公主・宝蘭は初めて見る夫、夜冗国公子・宵雪の、血のように赤い瞳に強く惹かれた。そして、宵雪もまた敵国の公主の可憐さに目を奪われ……。意に染まぬ、政略で結ばれた二人の恋の行方は!? ルルルカップ読者支持率No.1の文庫化!(裏表紙より)
大変あまあまらぶらぶでごちそうさまでした。
あらすじの、「恋の行方は!?」というほどの危機はそんなになく、一目惚れのせいであっという間に仲良くなった感じがしてちょっとだけ物足りなかったのですが、やる気がなくて卑屈なのかなと思っていた宵雪が、実はすっごく余裕たっぷりで甘い台詞を言うので、数々のあまーい言葉の数々ににやにやしっぱなしでした。炎を生じさせることができる、というのが不思議でなんだか好き。喋り方フェチでもあるので、宝蘭の物言いはかわいいと思いました。
年が明け——カシュヴァーンはアリシアの誕生日のために、図書館創設を進行中! 最近の暴君夫は愛妻の薬指に興味津々だったり、愛妻が大好きな幻の奇書『雨悪』の作者を屋敷に招待しようと目論んだりと、とにかく騒々しい有様。そこに究極の邪摩者……怪物・ゼオルディスが現れた! 自由気儘な逗留はカシュヴァーンを苛立たせ、アリシアに入れ知恵まで……。悪夢のような日々はある日”悪食大公”ガーゼット侯爵の異彩かつ奇妙な訪れにより、無事落着したかに思えたが——!? 曲者だらけ、夫婦の『特別』な第7弾!!(裏表紙より)
大きな事件が起こるわけではないのですが、段々と事態が動いているらしいのが感じられる第7巻でした。カシュヴァーンの妻へのめろめろっぷりが加速している上に、アリシアも特別な思いに気付いて「おなか痛い」になっているのににやにやします。
ゼオルディスやその周辺の素性については謎のままですが、カシュヴァーンたちの今後の方針が決まりつつあったり、ディネロがちょっと微妙な感じだったり、不穏な気配が漂う。そのなかで、ガーゼット侯爵は癒しでした(本気) あんなちょっと変わり者の上品で素敵なおじさまいないよ!
死神姫シリーズって、実は色んな人が色んな闇を抱えて、実はかなり深刻なのに、その深刻にどっぷり浸からずにいるのが面白いよなあ! と思います。どんな風にみんなが未来を目指していくのか楽しみです。
丘の上の幽霊屋敷。新しい住人が現れるたびに事件は起こる。人々の記憶は蓄積されていく。ホラー連作短編集。
こわかったけれど、とても上品で毒のあるホラーでした。面白かったー!
丘の上の幽霊屋敷に住んだ、関わった人々の記憶が一作ずつで語られます。一人の人を中心に据えているかと思えば、実は違うというのが(「私の家へようこそ」)ひええ! と思いました。一番恐かったのは、「あたしたちは互いの影を踏む」。
ねえ、結局、勝負はつかなかったんだよ。
びくうっ! としました。結末が分かっているだけに、この一文の威力が凄まじい。
そんな恐怖的な短編ばかりかと思えば、意外に明るい「俺と彼らと彼女たち」。これを読むと、最も「彼らと彼女たち」の原因というか、根本たるものは、「その土地と家」にあたるのだなと思いました。家を守る者には害を加えないというか。かれらは、ただひたすらに自分たちの生活を守りたいだけという。
隣国エッセウーナによって制圧された、小国オクトス。囚われの身となったオクトスの王女エパティークは、絶望の中にあった。
だがある日、そんなエパティークの前に、エッセウーナの第二王子テオバルトが現れ、告げた。
「これから、俺と君とで旅に出る。捕まれば、命はない」
その『旅』とは、願い事を叶える伝説の銀竜を呼び出すというもの。呼び出すために必要とされる生贄が、エパティークなのだ。
王位継承争いで帰る場所のないテオバルト。囚われ、生贄となるエパティーク。支配した者と、された者。互いを憎み、反発しながら、孤独な二人の長い旅が始まる——。宿命の愛と冒険の物語!(裏表紙より)
面白かった! とてもよき王道ファンタジーでした。互いを憎み合っていたのに、心を通わせていくところは、本当によかった。名前の響きが異世界風で、とても美しい伝説の物語を読んだ気がしました。伝説とうたが生きる素敵な世界だったと思います。こういうのがとても好きです。
銀竜の伝説の真実にはすごくびっくりしましたが、決着のつけ方がとても好きです。アマポーラとロザリーの対比がすごい。でも、テオバルトは気付いていなかったんですね、自分の妹が、自分が嫌悪感を抱いていた存在そのものを体現していることに。
これに続きがあるというのがびっくり。ちゃんと終わっているので……。続きも読みたい。
東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない——。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。(裏表紙より)
再読。高校生かその時分に読んだので、ずいぶん久しぶりでした。あの頃は、もっとどろっとした、嘘みたいな青春、というような感じがあったのだけれど、二十歳を過ぎたら、ずいぶん彼らがかわいらしく、一生懸命に映った。
十四歳たちの一年を、八話に渡って描いたものです。友情、が今回の再読で強く感じた。馬鹿をやっているように見えて、彼らなりの事情がある。激しくいがみ合うことなく、自然と集まり、支え合っている、大切な時間を過ごしている四人が、とても眩しかったです。ずいぶん遠くなってしまった私自身の十四歳を思い出した気がしました。
カシュヴァーンの誕生日に盛り上がるライセン屋敷。『好き』のプレゼントを要求する暴君夫にアリシアの「おなかが痛い」も最高潮!! しかし、幸せなひとときは甲胄の使者が訪れて一転、なんとライセン夫婦は国王陛下より緊急招集を受けたのだ。めくるめく伏魔殿の王宮にアリシアは興味津々だが、そこにジスカルド侯爵や傭兵バルロイも召集されており、カシュヴァーンたちは激しく牽制し合う。さらには【図書館の幽霊】と呼ばれる”怪物ゼオ”の登場で歯車は狂い始めて——!? アリシア大活躍、混迷の第6弾!!(裏表紙より)
登場人物がめいっぱい多くなってまいりました。糖分も急上昇です。照れるようになったアリシアがかわいくて、それにいちいち反応してしまうカシュヴァーンもかわいいです。嬉しくてたまらないんだろうなあ。
〈翼の祈り〉教団関係のごたごたは今回はおやすみ。今度は国内関係の事件ですが、謎が謎のままでした。王子ゼオルディスは何者か、彼に付き従う兄妹はどうしてそうなっているのか。
それぞれ風変わりな人々がどこか傷を負って集まって支え合うようになるまでの物語になっているような気がするので、カシュヴァーンとよく似たゼオルディスも救われることを祈ります。
ところで一方で夫婦のいちゃいちゃがものすごくて、アリシアのように「いま何の話してたっけ……」となってしまいます。キスは自然になってきましたね……。子どもの話も出たりして、にやにやが止まりませんでした。
住みなれた浅草に別れを告げ、三浦半島の港町・三崎へと発作的に引越したのが2001年。買物かごを提げて毎夕おつかいにでかけ、おいしい魚、おいしい野菜を丁寧簡単に料理して食べる日々が始まった。三崎の人たちとの親戚みたいなつきあいと、間近に海を望む暮らしから、じっくり練られたいくつもの作品が誕生した。ごはんの話と創作秘話が一体となった人気のネット連載ついに文庫化!(裏表紙より)
かなり前に買っておいて、読みさしで本棚にさしたまま忘れていた、という本。
面白かった! エッセイ集です。その日あった出来事と、ご近所の話と、創作の話、お仕事の話、ご飯の話、が大体の内容成分。近所付き合いがものすごく濃い。みんなこんな身近でいいんだろうかっていうほど、みんな親しい。まるで別の世界みたいだ。
土地と、食べ物と、人を愛しているんだろうなあというのがすごく伝わってくる気がしました。どんな風に世界が見えているんだろう、とちょっとどきどきしたりも。いしいさんの本、私は実は未読で、でもすっごく丁寧に練られた世界観なんだろうというのが窺える文章でした。今度は物語を読みたい!
青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから……、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。(裏表紙より)
再読。一回目は単行本で読んだ。文庫の方が表紙が綺麗で好き。常野物語のフォントが好きだ。
「にゅう・せんちゅりぃ」の訪れた日本の、ある地方での出来事を、峰子が語り手として語る。文章の穏やかさが、更に世界を穏やかに見せるのだけれど、みんながそれぞれ感じている暗闇はひたひたと、国を覆い尽くす影として膨らみ始めているのが、現代の私たちには分かる。
常野一族のテーマを、私は勝手に時間だと思っているのだけれど、これもやっぱり時間の物語かなと思う。この物語では時間というものが、美術として表現されていると思うのだ。そして、どこか、新しい未来へ向かわなければならない時代に、常野は現れている感じがする。
恩田陸さんの『少女』というと、どこか影のある西洋のにおいが漂っているのだけれど、この物語の日本の少女たちの清らかさが、とても素敵だった。
落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。十七歳の誕生日を目前に理穂は失恋。身体が弱く入院を繰り返す美咲は同情されるのが大嫌い。如月は天才野球選手の兄・睦月と何かと比較される。でもお構いなしに、それぞれの夏は輝いていた。葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。解説・金原瑞人(裏表紙より)
ブックトークの授業に友人が紹介したもの。高校生たちの物語。いい爽やかさだった!
登場する多くはいわゆる底辺と呼ばれる高校生たちだけれど、きっと高校生の持つけだるい気持ちって変わらないんじゃないかなあ。親がうざい、勉強が嫌い、遊ぶことが好き。そんな感じ。
こういうタイプの高校生ものによくある薄暗さがなくて、若々しい青さ、青春、空、海、そんな透き通った清々しさがあったと思う。