読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

曾祖母・フサの危篤の知らせを受け、雲出家を訪れた純太。初めて会う親族たちは、30億とも言われる違産のことで気もそぞろだった。だが遺言の内容は「一月以内に『雲出流のやり方で』目標金額を稼げた者に財産を分配する」というもの。雲出流=詐欺で。雲出家は詐欺師の一族だったのだ! 所持金400円の純太は、所持金ゼロの親戚のお兄さん・研士とパートナーを組み、目標金額2000万円の詐欺ゲームに参加することになるが……? 人生を変える夏休みが始まる!!(裏表紙より)
面白かったあ! 中学生の男の子が詐欺を働くお話で、いいお話でもあり、気持ちいいお話でもありました。楽しかった! わくわくした! 夏休みの非日常なお話って、どうしてこうも面白いんだろう。細々したエピソードがまたくすっと笑えて楽しかった。捨身おじさんが意外で、最初はいけすかなかったのにすごく好きになってしまった。楽しい。
詐欺のお話ではあるんだけれども、純太が全然すれなかったし、まっすぐな男の子でよかった。いい子だよなー! だからこそいいことがあるんだろう。
できれば続きを読みたいな!

小磯健二は、憧れの先輩・篠原夏希に、「4日間だけフィアンセの振りをして!」とアルバイトを頼まれ、長野県の田舎に同行することに。夏希の曾祖母を中心にご親戚に囲まれながらも、大役を果たそうと頑張る健二のもとに、謎の数列が届く。数学が得意な彼は、夢中で答えを導きだすが、翌朝世界は一変していた。世界の危機を救うため、健二と夏希、そして親戚一同が立ち上がる! 熱くてやさしい夏の物語。解説・大森望(裏表紙より)
細田守監督作品「サマーウォーズ」のノベライズ。
登場人物の心情が描かれていて、映画とはまた別の角度で面白かったです。映画にはなかった設定や話もあり、人物関係も整理されていて、映画が更に分かりやすくなりました。映画では彼は陣内家の人々より一歩引いたところにいたのですが、小説版は健二がよく動いていたので主人公らしくて嬉しかったです。
やはり、健二の書き込みが! 健二の、ここぞ、という時の台詞がかっこよかったし、夏希との過去の話もにやにやしながら読みました。夏希の恋愛事情の設定は映画と違うのですが、一夏に花開いた恋としてにやにやできるもので楽しかった。

名門家の次期当主ながら、離島の寄宿学校を脱走するほどのヤンチャ坊主・坊城光。そんな光の教育係になったのは、“調教師”の異名を持つ美貌の凄腕教育係・シドだった。シドは光に24時間体制での紳士教育を開始。さらには光がおイタをするたびに、耳を噛んだり胸を攻めたりと、エッチでSな“お仕置き”をしてきて……!? 美貌のドS教育係と負けん気お坊ちゃまのセレブ・ラブ♥(裏表紙より)
光が離島の寄宿学校を脱走した後、やはり教育をと言われてやってきたのは、調教師と呼ばれる凄腕のシド。教育中にお仕置きをされていくうち、光はシドに思いを寄せるようになって。
有能な調教師と鎖で繋がれた小猿、なイメージの二人のお話。さほどエロくはなかったな、と思いました。
光がお兄ちゃん大好きで、なのに比較されて傷ついているわけじゃない、という設定が新鮮でした。兄はどこまでも尊敬できる人、というところに、光かわいいなー! と思った。あと少年たちの仲良しかわいい! ロベルトもミシェルもかわいいし、三人仲良しなのがいいな!

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから——「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか? 不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。(裏表紙より)
多分人生で初めて読んだ「大人の小説」です。何かとお守りにするようにして持ち歩くことがあるんですが、今回久しぶりに手に取って読んで、泣いたー……。自分のルーツはここにあるんだ、と感じた再読でした。
連作短編集で、連作ですが、ちゃんと一つの方向に向かってまとめられたお話なので、最後の言葉がすとんと来るあのラスト数ページに、だーっと泣きました。もうこれは反射としか言いようがない気がする……(毎回泣くから)。恩田さんの初期にあたる作品なので、今ではいくつかの作品の続編や関連作が出ています(『エンド・ゲーム』や『蒲公英草紙』)。最近は、恩田さんの世界はもうちょっと硬派な筆致でミステリと不思議な世界の話の方向にいっている気がするので、違いを感じて面白かったです。
特に「引き出し」を持つ春田一族の話はとても好きだなあ! 最初に読んだお話がこれだというのは、本当によかったと思う。全体的に優しい語り口の不思議なお話なのですが、内容紹介にあるようにどことなく淡い哀しみ、切なさのようなものがあって、時間とか別れとかそういったものにひっそりと触れているところがあって私はこの本がすごく好きなんです。あー、もー、好きだなあ!
オススメされた本でした! ありがとうございました!

私たちは日々受け入れられない現実を、自分の心の形に合うように転換している。誰もが作り出し、必要としている物語を、言葉で表現していくことの喜びを伝える。(裏表紙より)
三つの場所で行った講演を、大きく三つの部に分けて文章化したもの。すべて「物語」について語っています。これまで小川さんのエッセイも読んできたけれど、小川さんの語る「物語について」という話が、もうすっごく好きなんです。
上記の紹介文にあたる「私たちは〜転換している。」というのは内容にあるのですが、このことは私たちが自然的に作っている物語なのだと小川さんは語られます。誰も自分を責めていないのに自分を責めているのも物語であり、そこにあった木が「まだいるからね」と語りかけてくるように感じられたというのも物語。物語という言い方は、私がこうして書くととても軽々しいですが、この『物語の役割』ではとても尊いものであるという書き方がされていて、小川さんの文章がしんとつもってくるようでなんだか泣きたくなりました。
『博士の愛した数式』が生まれるまで、という章があり、小川さんがどうやってあの物語を見つけていったか(と私は思った)というのが書かれています。
「同じ本で育った人は共通の思いを分かち合う」というのは、小川さんがイスラエル版の『博士の愛した数式』を刊行するときのエージェントのメールにあった言葉だそうなんですが、この後の文章のようなことが起きれば、本当にそれは素晴らしいことだと思いました。
民族も言葉も年代も性別も違う人間が、どこかで出会ったとします。(中略)もしその人が、『ファーブル昆虫記』や『トムは真夜中の庭で』や『アンネの日記』をあげたとしたら、私はたちまちその人と心を通わせることが出来るでしょう。

浩志は、父親の再婚をきっかけに家を出た。
壁に囲まれた路地を入り、「緑の扉」を開いた浩志を迎えたのは、高校生の一人暮らしには充分な広さの部屋と、不可解な出来事。無言電話、奇妙な落書き、謎の手紙etc.
そして、「出ていったほうがいいよ」と呟く和泉少年の言葉が意味するものは……。
嫌がらせ? それとも、死への誘い!?
——怖い——。しかし浩志の家は、もはやここ(・・)しかない! 息をもつかせぬ本格ホラー。(カバー折り返しより)
昔『過ぎる十七の春』を読んだときにぞぞっとしたのですが、今回もひいっとなりつつも、その怖さが面白かったです。「絶対に許さないよ」は怖い。
少年の罪、異界との境界にある家。悪意なのか、怪奇なのか。救われるものもありながら、決して動かせない異界がある。日常の中に入り込んだ恐怖をきっちりと描くとこんなお話になるのかと、面白かった。

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?(裏表紙より)
デビュー作だったのか! はー面白かったー。一人称で進むお話なので淡白で薄い主人公なのだけれど、周りが濃い。手に汗握る面白さというよりも、淡々とした世界とシュールな設定の中のものが、どう結びついていくのかが面白い話だった!
閉ざされた島での奇妙な日々。そこに外の世界からもたらすものは何なのか、というのを、カカシ殺人事件から始まった謎の裏でずっと問われ続けてくるのだけれど、この、最後の! ずっと「島に欠けているもの」が何なのかというものが分かったとき、思わずぶわっとこみ上げてしまった。
好きな小説だった!

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々——。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。(裏表紙より)
伊坂さんは何故かあんまり手に取ったことがなくて。これは借り物(ごめんめっちゃ長いこと……)
無茶苦茶な男・陣内と、それに巻き込まれる人々の視点から描く短編集で、目の見えない青年・永瀬が解くちょっとした謎もすごいですが、そこから更に未来の時間軸になる家裁調査官になった陣内の頃の話も、いい話で面白かった! 少年が絡むとやっぱり爽やかでいいなあ。「チルドレンII」はすごく好きだった。