読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

決まっていた婚約を反故にされ、急遽カストラバ王国へ嫁ぐことが決まったブラーナ帝国の第六皇女アンナマリア。結婚相手の若き王フェランは、即位のときに異母兄を処刑した冷酷な人物だといわれていた。常に命を狙われ、輿入れしたその日も刺客を自ら手にかけたフェランが恐ろしくて、初夜の床で思わず夫を拒んでしまうアンナマリア。結ばれないまま、国王夫妻として過ごす二人だったが!?(裏表紙より)
嫁恋シリーズ六冊目。前作「緑の森〜」のエリスセレナの姉姫アンナマリアの物語。妹へのコンプレックスよいです。セレナは吹っ切って行動を起こせる子でしたが、アンナは思い悩んで口に出せないタイプで、いろいろじりじりしました。相変わらず陰謀が前面に押し出されていて、それほど糖度は高くありませんでしたが、安心して読めるのはすごいなあと思う。
アンナが声を上げるところは、アンナらしさが失われていなくてとてもかっこよかった。
ところで、このシリーズで悲恋ものをちょっと読んでみたいな、と思ったりしました。最終的にみんな幸せにくっついてしまうので……。
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「今も私の心の中に遠藤は生き続けています」。入退院を繰り返す生活。抱腹絶倒のイタズラの数々。母との絆と信仰への道。『沈黙』『深い河』の成立の背景。最後まで衰えることのなかった文学への執念……。四十年余りの間、遠藤さんを支え続けた夫人が、様々なエピソードを交えながら語る遠藤周作の文学と人間の素顔。(裏表紙より)
カトリック、母との愛、母への愛。そして文学。対談形式ですが、話の誘導がそんなに感じられず、自然としたところで鈴木さんと遠藤さんが思い出を語る、という風な体裁で、とても読みやすくて、興味深かった。
私は遠藤周作は『深い河』しか読んだことがないし、何年も昔のことなのでどういう話だったのかははっきりと言えないのですが、ただものすごく魂を磨くような話だったことは記憶しています。作家について全然知らなかったので、どういう状況で書かれていたのかが分かって、ひたすらにため息が出るばかり。
めぐりあわせや絆の話が、ものすごくいいなと思う。こんな風に誰かを愛し、祈る人がいるのはいい。

借金と引き替えにヤクザと取り引きをし、豪華客船に乗り込むことになったディーラーの浅葱。指令は「中国人事業家・蔡文狼に近づくこと」。ところがカジノで出会った蔡は、数ヶ月前にたった一度だけ、彼女に振られた浅葱が酔った勢いで抱かれた相手だったのだ。「賭けをしないか? お前が負けたら命令を一つ聞くんだ」と蔡にけしかけられた浅葱だが…? 「俺はアナタを騙すために近づいた。そうだ、それだけだったのに……」中国系マフィア(!?)×ディーラーで贈る、貴方にも(多分)出来る豪華客船ラブゲームをどうぞ!(裏表紙より)
本格的にBLを読まんとして、友人から貸してもらいました。ルビー文庫は初めてではないのですが(茅田砂胡さんの『桐原家の人々』を読んだので)、お、面白かったよ!? とちょっとうろたえてしまうくらい、まとまっているお話だったと思います。ちょっとBLに対してのイメージが払拭された。
お話としては、紹介を読んで大体予測できる展開の範囲でかなり軽いと思ったのですが、こういうものなんだろうと思います。でも主人公の一人称でなんだか受け(というのかな)が可愛らしかったし、攻めの方はかっこよかった。その分、攻めの弱い部分(家族が仲良くないところとか)をもっと見てみたかった気もします。蔡の行動で謎だった部分が最後でぽろぽろっと明かされていくところが面白かったです。

母国のブラーナ帝国から遠く離れたゲオルグ公国で、女でありながら君主の地位についたエリスセレナ。婚約者であるイシュトファルに支えられ、女公としての一歩を踏み出した。だが、次々に問題が起こる。ラインヘルドの領主から突然の求婚、ときを同じくして隣国から進軍の報せが…! 最も危険な場所へ、愛する人を送り出すエリスセレナ。思いがけない陰謀が待ち構えているとも知らずに——。(裏表紙より)
緑の森を拓く姫の後日譚。女公となったエリスセレナが直面した問題の数々が今回。前回はまだ迷える姫君だったのか、この巻ではもうすで為政者になっていておおっと思う。もう前巻で抱いていた葛藤はなくなってしまったのかな、と、もうちょっと「私が何故ここにいるのか」という迷いも見てみたかった気もしますが、たった十六歳で臣下たちと渡り合うエリスセレナは本当にかっこいい。
毎巻陰謀渦巻くところに姫たちが巻き込まれていくお話なので、ラブロマンスとははっきり言えないし、政略結婚ものを求める人には甘さが足りないと思われるかもしれないけれど、こういう少女向け小説があるのは面白いなあと思う。

旧制高等女学校の生徒たちは、戦前期の女性教養層を代表する存在だった。同世代の女性の大多数とはいえない人数であったにもかかわらず、明治・大正・昭和史の一面を象徴するものだったことは疑いない。本書は、彼女たちの学校教育、家庭環境、対人関係の実態を検証する試みである。五〇年弱しか存在しなかったにもかかわらず、消滅後も、卒業生たちの思想と行動をコントロールし続けた特異な文化の再発見。(カバー折り返しより)
1910年代から20年代の女学校について特にページが割かれている印象。当時の女学生の日記を引いてきて、どんな生活をしていたかの話があり、「S」の関係や手紙のやりとりを本文を引いてきていたり。「文学少女」の章を一番面白く読みました。また「堕落少女・不良少女・モダンガール」の章でも、文学少女が不良少女に当たると書かれてあって、それも興味深かった。ローマンチックなのはいけないらしい。
新書は滅多に読まないけれど、これは知識としてすごく面白かったなと思いました。

温泉町にある老舗旅館「ほたる館」の孫娘・一子は、物怖じしないはっきりとした性格の小学五年生。昔ながらの旅館に集う個性豊かな人々や親友の雪美ちゃんに囲まれ、さまざまな経験を重ね少しずつ成長していく。
家族や友達を思いやり、ときには反発しながらも、まっすぐに向き合っていく少女たちの純粋さが眩しい物語2編を収録。著者デビュー作シリーズ第一弾。
〈解説・佐藤多佳子〉
(裏表紙より)
最近ピュアフル文庫がお気に入りなので、見つけて読んでみる。
続きが読みたいと思いました。
老舗旅館のひとり娘、小学五年生の一子が主人公。近隣に大きなホテルが出来て、そちらにお客を取られている現状、個性豊かな旅館の人々と、わけありげなお客さんの話と芸妓さんの話がこの巻です。こんなことを言っては偉そうなんですが、すごくぶれがなくて、楽しい。
わけありげなお客さんを本人に内緒で高価な部屋に案内したり、学校の先生のひいきの話があったり、小学生はこういう話がすごく響くんだろうなあというシーンがいくつもあって、この年になって読むとすごく懐かしいような気持ちになりました。
残念なのはすごくページが薄いところ……続きがあるようなので、できれば一冊にまとめてほしかったかも。

姉をさしおいて結婚が決まったプラーナ帝国の皇女エリスセレナ。嫁ぎ先は古い価値観に縛られたヴァルス帝国。政略結婚は覚悟していたものの、なぜ姉ではなく自分なのか——。複雑な思いを抱きながら輿入れする道中で、エリスセレナは金髪の聖騎士イシュトファルと出会う。彼は、婚約者であるゲオルグ公の異母弟だった。そしてゲオルグ公にはすでに愛人がいて、しかも妊娠していると知り…!?(裏表紙より)
嫁恋シリーズ第四巻。続く五巻で前後編になるのかな。
赤毛を持ち、知性に恵まれた皇女エリスセレナが主人公。美しく優しいのではなく、頭の良い女性は一般的に嫌われているけれど、主人公はそれが魅力、という設定がツボです。ただそれだけに不用意な言葉を言ってしまうという失敗も多く、その度に反省して、素直に謝罪できるエリスセレナはすごくかわいい。そればかりではなくて、「ここにいる私には意味があるはずだ」と前向きになっていき、継承権主張を始めるところはすごくかっこよかった。嫁恋シリーズは政略結婚ものシリーズだけれど、エリスセレナはその中でも一際輝いて、かっこいいヒロインだな!
ヒーローとなるイシュトファルは穏やかな騎士そのもので、エリスセレナも一般的なかわいげというものを持っていないという風に描かれているだけに、二人の歩み寄りがじれったくてもだもだしました。

彼の妻は小説家だった。彼は妻の最初の読者だった。しかし妻はある日「思考すると寿命を削る」原因不明の奇病にかかる[Side:A]。彼女は小説家だった。夫は彼女の読者だった。しかし夫はある日交通事故に遭ったことで膵臓に腫瘍が見つかり、寿命がわずかだと判明する[Side:B]。
ものすごい話だった……。読み終わった後、ため息をついてしまった。凄まじかった。
二種類の夫婦を追っているだけなのに、ものすごいドラマとストーリーが詰まっていて、すごかった。小説家と読者を執拗に描いていて、その二つが結びついた(恋愛や男女という関係で)瞬間すごく嬉しいんだけど、一気に一方の喪失という形で落ちていく(もしくは高みに登っていくのか?)のが面白いけど怖い。容赦ない。けどすごく面白いというアンビバレンスが。
自分が書き手であるということを考えると、AもBもなんだか親身に感じてしまう。受け入れてほしいし、丸ごと受け入れてくれる人が欲しい、とよく感じているなあと確認した。

フランダースの貧しい少年ネロは、村人たちから迫害を受けながらもルーベンスの絵に憧れ、老犬パトラシエを友として一心に絵を描きつづける。しかし、クリスマスの朝アントワープの大伽藍に見いだされたものは、この不幸な天才少年と愛犬との相いだいた亡骸だった。虐げられた者への同情を率直素朴な表現でつづった少年文学の傑作。他に「ニュールンベルクのストーブ」を併録。(裏表紙より)
ちゃんと読んだことがないので読んでみようと思って。ネロが十五歳の少年である。パトラシエ視点の文章もあって、人間と同じように考えているのに、犬ということが強調されているので、西洋圏のお話だなあとぼんやり思う。
「フランダースの犬」の話の流れはみんなに認知されている話の流れのままだと思う。
面白いなあ! と思ったのが「ニュールンベルクのストーブ」。偶然家にあったある芸術家の傑作のストーブが父のせいで売られることになり、その中に潜り込んで一緒についていく少年の話。行方にどきどきしたり、幻想的なシーンがあったりして、最後に少年オーガストが出会ったストーブの買い手……! その他にも、二編とも芸術家というものを掘り下げようとしたり、畏敬していたりして、すごく好きだった。