読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々——。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。(裏表紙より)
伊坂さんは何故かあんまり手に取ったことがなくて。これは借り物(ごめんめっちゃ長いこと……)
無茶苦茶な男・陣内と、それに巻き込まれる人々の視点から描く短編集で、目の見えない青年・永瀬が解くちょっとした謎もすごいですが、そこから更に未来の時間軸になる家裁調査官になった陣内の頃の話も、いい話で面白かった! 少年が絡むとやっぱり爽やかでいいなあ。「チルドレンII」はすごく好きだった。

1997年の本なので、また違った見地が必要なんだろうけれど、90年代後半のゲイの現状を、ゲイの歴史、欧米での状況を踏まえつつ、「ゲイ・スタディーズ」を論じる。
「ゲイ・スタディーズ」とは、「当事者たるゲイによって担われ、ゲイが自己について考え、よりよく生きることに寄与すること、さらに異性の間の愛情にのみ価値を置き、それを至上のものとして同性愛を差別する社会の意識と構造とを分析することによって、同性愛恐怖・嫌悪と闘っていくのに役立つ学問」(本文より)と定義されている。
色々分からないところも多いのだけれど、「私は同性愛者です」と宣言されなければ異性愛者としてカテゴライズされている、暗黙の了解が存在している社会に、改めて不思議だなあと感じたり。
「同性愛者に理解があるよ」ということは、多くの場合、それは社会に流布している間違った同性愛者観である、ということに、すごく納得されたり。この場合、多くの色んな「理解」に当てはまることだなと思って、すごく興味深かった。

ネプティス王国の新国王、レトムゥールとの結婚が決まったブラーナ皇女のプシュケは、期待に胸をときめかせた。政略結婚とはいえ、以前からレトムゥールに憧れていたからだ。しかし、ネプティスに着いたプシュケに対し、露骨に反発する美少女がいた。はじめは彼女がレトムゥールと結婚するはずだったらしい。もしや、レトムゥールも彼女のことが好きなのでは——不安になるプシュケだったが!?(裏表紙より)
末っ子甘えんぼ気質の姫プシュケと、「黄土の大地を潤す姫」で登場したレトムゥールのお話。
全体的に可愛らしい感じだった、かな?
プシュケがちょっとぬけたところがあるので、陰謀面としては今回は弱い印象でした。ライバルのアーケスメイア姫との対立もありつつなんだけれど、レトムゥールとの恋愛模様はそんなにない。むしろ、自分の身分を自覚して、頑張ると決めるまでのお話だったような気がしました。それから異文化理解についても書かれていました。プシュケは柔軟でいい子だなあ。レトムゥールはまだまだ保護者、という感じですけれど、なんだかかわいらしい夫婦になりそうです。

一九七〇年代から現在に至るまで、とくに“二十四年組”を中心に花開いた〈少女漫画〉の魅力とその高度な達成——大島弓子と萩尾望都、岡崎京子の作品を主な手がかりに、少女漫画を戦後文化論として読み解く。ヒロインたちが抱える繊細な“怯え”は、大人の論理が強要する安易な成熟の拒否であり、無意識の抵抗だったのではないか。今日に至るまで連綿と受け継がれてきた“震え”や“怯え”の伝達装置としての〈純粋少女〉たちに、高度消費社会の諸矛盾を乗りこえる可能性をみる。巻末に「少女漫画の名作一覧」を収録。(カバー折り返しより)
柔らかな文体と考察で、この方の文章は好きだなーと思いながら読む。なんというか、少女漫画に
対して嫌悪感というか抵抗感があんまりないような見方をされている気がする。
でもタイトルにあるような話はほとんどないです。
序章「七〇年代少女漫画前史」では、七十年代少女漫画論でよく見る「成熟の拒否」が扱われているけれど、この本はその「読者の心」に強く言及するわけではなくて、大島弓子『バナナブレッドのプディング』、萩尾望都『トーマの心臓』、岡崎京子『ヘルタースケルター』を通して、少女漫画の主人公たる「少女」とその作家とは何かを探っていく感じで、ようはすごく私好みの一冊でした。大島弓子から萩尾望都、そして岡崎京子から現代少女漫画へ持っていくのが自然体で、嫌らしくなかったなあ!
飯沢さんは大島弓子さんがお好きなようで、それに多く割かれている印象。終章の「純粋少女と少女漫画のいま」がよかったなあ。好きだー。
巻末の少女漫画の名作一覧は完全に飯沢さんの趣味というかで、最後まで固くない感じが好きでした。

事実上、ブラーナ帝国の支配下にあるネプティス王国で、女でありながら近衛兵を務めるナルメル。自分の国が、他国に支配されながら発展を遂げていることに、複雑な感情を抱いている。そんなとき、ブラーナ帝国の皇子アリアスが総督府の長官としてやってきた。彼の責任感のない発言や態度から、はじめは軽蔑していたナルメルだったが、護衛として共に行動するうちに意外な一面を知って…?(裏表紙より)
嫁恋シリーズ番外編。『紅〜』で舞台だったネプティス王国の中編が二本。一本は、ナティール即位後のお話。もう一本は、即位前のお話。相変わらずべたべた甘いお話ではなくて、国の興衰とはみたいな話があったり、国の在り方や各国文化についての入門書を読んでいる気分になります。面白い。
「大河は愛をつなぐ」が、真っすぐな少女近衛兵と無気力な皇子様という組み合わせで、二人の会話を見ていると楽しいです。嫁恋はみんなどこかしら柔らかで『お姫様』だったので(『緑の森〜』のエリスセレナは例外かな?)、ナルメルのキャラクターは新鮮で面白かったです。ちょっと間が抜けた感じも可愛らしかった。
「草原の女王」は女族長のお話。ナティールはあちこちでフラグを立て過ぎだな!

30年前シャンソン歌手としてデビューしたパリで“食いしん坊”に開眼した著者が、日本料理はむろん世界の歌の友人たちから仕込んだ素敵な料理とその調理のコツを、こっそりあなたにお伝えする“料理+シャンソン”エッセイ集。読んだら、きっと食べたくなり、作ってみたくなる、とってもおいしくてちょっぴりシミジミする本です。(裏表紙より)
1983年の本。読んでいたら作りたくなったので、ヴィシソワーズスープを作りました。
料理のおいしそうな描写が、今読んでも全然色あせていなくて、食事前だったのでお腹を鳴らしながら読んだ。石井さんの言葉選びが好きだ。文章の書ける人は、本当に品のいい文章を書かれる。
料理もいいのですが、石井さんの日常が垣間見えるのがとてもいい。外国人の友人たち、仕事のこと……。料理というものを通して、それを食べている人が見えるというのはいいな。本当に食べ物を大事にしていらっしゃるんだろう。

『ポーの一族』はなぜ一八七九年に設定されなければならなかったのか——。
もはや少女マンガの枠を超え、芸術作家の第一人者である萩尾望都氏の代表作『ポーの一族』。バンパネラ(吸血鬼)として生きなければならない少年・エドガーを中心に描かれた、哀切に満ちたこの作品には、E・A・ポーやシェイクスピア、そしてマザー・グースなどさまざまな英米文学が織り込まれている。そしてさらに、そこに見え隠れする「アリス」の影。
「一八七九年」からたどり着いたひとつの答え。知られざる「ポーの真実」が今ここに!(裏表紙より)
96ページと短いですが、かなり納得のできる『ポーの一族』論でした。2007年のもので、比較的新しいのがめずらしい。
私の中で『ポーの一族』というと、バンパネラというものは、とか、時間とか生死というものに目を向けがちなのですが、いとうさんはエドガー・アラン・ポーやマザーグース、ふしぎの国のアリスといったものから『ポーの一族』を見ていて、歴史からも引いてくるところもあって、とても新鮮で面白く、興味深く読みました。
何故「1879年なのか」という問いは、面白いなあ。欠陥なのか、そういう年代の数字というものが理解できないところがあって、全然関心を引かれないものだったので、すごくふむふむと思って読みました。
興味深かったです。

ライトノベル作家になるためにはどうすればいいのか? 優れたライトノベルを書くためにはどうすればいいのか? ——そんな作家志望者の疑問に、エンタテインメントの最前線で活躍中の冲方丁が一発回答! 『マルドゥック・スクランブル』『カオス レギオン』『蒼穹のファフナー』といった話題作の秘蔵プロットをそのまま公開し、創作の過程を著者自ら解説した、型破りな指南書が登場!!(裏表紙より)
突然読みたくなったので。面白かった! こういう本が本当にもっと増えればいいのにな! 一応マルドゥックもレギオンもファフナーも読了済みなので、話がよく分かって面白かった。特に『カオス レギオン』のプロットはすごいな! ファンタジーの世界、土地、という考え方にすごく共感する部分があったけれど、そこを故郷を追われた者を使ってとことん描こうする冲方先生がすごすぎる。
個人的に本当にファフナーの続きが読みたいですせんせい。

「自分の言葉」を大切にすることは「人の気持ち」を大切にすることです——
過程でも、職場でも学校でも……毎日、なにか「うれしいこと」「楽しいこと」に出会える人は、やっぱり素敵な言葉の持ち主。自分もまわりも幸せにする魔法、それが「言葉のごちそう」なのです。(裏表紙より)
何年も前に買ったまま、読んだかどうかも分からないまま本棚にささっていたので、読んだ。
話し方の指南書ではなく、考え方の改め方を示す感じ。人の体験談を交えてあるのが面白い。うまい返し方、感じのいい店員の対応の言葉、その逆の例。当たり前のことしか書いていないけれど、その当たり前がこうして形にしてあるので興味深く読んだ。やっぱり心構えだよなあ。