読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
旧制高等女学校の生徒たちは、戦前期の女性教養層を代表する存在だった。同世代の女性の大多数とはいえない人数であったにもかかわらず、明治・大正・昭和史の一面を象徴するものだったことは疑いない。本書は、彼女たちの学校教育、家庭環境、対人関係の実態を検証する試みである。五〇年弱しか存在しなかったにもかかわらず、消滅後も、卒業生たちの思想と行動をコントロールし続けた特異な文化の再発見。(カバー折り返しより)
1910年代から20年代の女学校について特にページが割かれている印象。当時の女学生の日記を引いてきて、どんな生活をしていたかの話があり、「S」の関係や手紙のやりとりを本文を引いてきていたり。「文学少女」の章を一番面白く読みました。また「堕落少女・不良少女・モダンガール」の章でも、文学少女が不良少女に当たると書かれてあって、それも興味深かった。ローマンチックなのはいけないらしい。
新書は滅多に読まないけれど、これは知識としてすごく面白かったなと思いました。
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温泉町にある老舗旅館「ほたる館」の孫娘・一子は、物怖じしないはっきりとした性格の小学五年生。昔ながらの旅館に集う個性豊かな人々や親友の雪美ちゃんに囲まれ、さまざまな経験を重ね少しずつ成長していく。
家族や友達を思いやり、ときには反発しながらも、まっすぐに向き合っていく少女たちの純粋さが眩しい物語2編を収録。著者デビュー作シリーズ第一弾。
〈解説・佐藤多佳子〉
(裏表紙より)
最近ピュアフル文庫がお気に入りなので、見つけて読んでみる。
続きが読みたいと思いました。
老舗旅館のひとり娘、小学五年生の一子が主人公。近隣に大きなホテルが出来て、そちらにお客を取られている現状、個性豊かな旅館の人々と、わけありげなお客さんの話と芸妓さんの話がこの巻です。こんなことを言っては偉そうなんですが、すごくぶれがなくて、楽しい。
わけありげなお客さんを本人に内緒で高価な部屋に案内したり、学校の先生のひいきの話があったり、小学生はこういう話がすごく響くんだろうなあというシーンがいくつもあって、この年になって読むとすごく懐かしいような気持ちになりました。
残念なのはすごくページが薄いところ……続きがあるようなので、できれば一冊にまとめてほしかったかも。
姉をさしおいて結婚が決まったプラーナ帝国の皇女エリスセレナ。嫁ぎ先は古い価値観に縛られたヴァルス帝国。政略結婚は覚悟していたものの、なぜ姉ではなく自分なのか——。複雑な思いを抱きながら輿入れする道中で、エリスセレナは金髪の聖騎士イシュトファルと出会う。彼は、婚約者であるゲオルグ公の異母弟だった。そしてゲオルグ公にはすでに愛人がいて、しかも妊娠していると知り…!?(裏表紙より)
嫁恋シリーズ第四巻。続く五巻で前後編になるのかな。
赤毛を持ち、知性に恵まれた皇女エリスセレナが主人公。美しく優しいのではなく、頭の良い女性は一般的に嫌われているけれど、主人公はそれが魅力、という設定がツボです。ただそれだけに不用意な言葉を言ってしまうという失敗も多く、その度に反省して、素直に謝罪できるエリスセレナはすごくかわいい。そればかりではなくて、「ここにいる私には意味があるはずだ」と前向きになっていき、継承権主張を始めるところはすごくかっこよかった。嫁恋シリーズは政略結婚ものシリーズだけれど、エリスセレナはその中でも一際輝いて、かっこいいヒロインだな!
ヒーローとなるイシュトファルは穏やかな騎士そのもので、エリスセレナも一般的なかわいげというものを持っていないという風に描かれているだけに、二人の歩み寄りがじれったくてもだもだしました。
彼の妻は小説家だった。彼は妻の最初の読者だった。しかし妻はある日「思考すると寿命を削る」原因不明の奇病にかかる[Side:A]。彼女は小説家だった。夫は彼女の読者だった。しかし夫はある日交通事故に遭ったことで膵臓に腫瘍が見つかり、寿命がわずかだと判明する[Side:B]。
ものすごい話だった……。読み終わった後、ため息をついてしまった。凄まじかった。
二種類の夫婦を追っているだけなのに、ものすごいドラマとストーリーが詰まっていて、すごかった。小説家と読者を執拗に描いていて、その二つが結びついた(恋愛や男女という関係で)瞬間すごく嬉しいんだけど、一気に一方の喪失という形で落ちていく(もしくは高みに登っていくのか?)のが面白いけど怖い。容赦ない。けどすごく面白いというアンビバレンスが。
自分が書き手であるということを考えると、AもBもなんだか親身に感じてしまう。受け入れてほしいし、丸ごと受け入れてくれる人が欲しい、とよく感じているなあと確認した。
フランダースの貧しい少年ネロは、村人たちから迫害を受けながらもルーベンスの絵に憧れ、老犬パトラシエを友として一心に絵を描きつづける。しかし、クリスマスの朝アントワープの大伽藍に見いだされたものは、この不幸な天才少年と愛犬との相いだいた亡骸だった。虐げられた者への同情を率直素朴な表現でつづった少年文学の傑作。他に「ニュールンベルクのストーブ」を併録。(裏表紙より)
ちゃんと読んだことがないので読んでみようと思って。ネロが十五歳の少年である。パトラシエ視点の文章もあって、人間と同じように考えているのに、犬ということが強調されているので、西洋圏のお話だなあとぼんやり思う。
「フランダースの犬」の話の流れはみんなに認知されている話の流れのままだと思う。
面白いなあ! と思ったのが「ニュールンベルクのストーブ」。偶然家にあったある芸術家の傑作のストーブが父のせいで売られることになり、その中に潜り込んで一緒についていく少年の話。行方にどきどきしたり、幻想的なシーンがあったりして、最後に少年オーガストが出会ったストーブの買い手……! その他にも、二編とも芸術家というものを掘り下げようとしたり、畏敬していたりして、すごく好きだった。
中三の凜は「えらい子」だ。身体の不自由な姉がいて、母は彼女にかかりっきりだから、良い子でいるしかなかった。小さな胸にひそむ寂しさをなぐさめてくれたのは、ただ、小さな花と、“神主さん”の白尾だけだった。だから、進学のため町を離れた彼が教師として目の前に現れてから、凜はまた昔のように神社の境内を訪れるようになったけれど——。真夏の宵に花開く、せつない初恋物語。(カバー折り返しより)
沖原さんだいすきだー! 持っているのは『勿忘草の咲く頃に』『桜の下の人魚姫』『黄金を奏でる朝に〜セレナーデ〜』と、今回の本で刊行された本はすべて揃えたことになるのですごく嬉しい。繊細な筆致と物語がとてもとても好きなのです。新作出されないかなあ……!
中学三年の凛が寂しさを押し隠しながら過ごす一夏を描いただけ、なのに、切なくてたまらない。大人びた少女の凛は、かつての初恋を自覚して、恋未満だけれど柔らかい感情を、“神主さん”の白尾に覚えている。この細かな心とか、凛が追っていく光景が、すごく綺麗なのだ。
普通のライトノベルより、地の文も多くて、細やかなので、すごくオススメです。が、もうすでに絶版なのかな……?
成人して自らの性別を決められる日が来たら、男を選んで宇宙飛行士になることを夢見る、海王の末っ子・イル。以前イルにプロポーズしてきた陸の王子・エアリオルとは、友人としてのつき合いが続いている。ところが、エアリオルに恋する財閥令嬢が出現! しかも彼女がイルにも一目惚れをしてしまったり、海賊の略奪行為が頻繁になったりと、騒ぎは絶えない。イルとエアリオルの関係は? そして海賊を追う二人が見たものとは…?(裏表紙より)
『月の人魚姫』の続編。相変わらずかわいいお話だ。特に関係性に前進はなく、イルとエアリオルの十惑星連合加盟の夢への物語に、恋に恋する乙女とヴィンセントが絡んでどたばたする、というアニメの一話を見ているようなのが今回のお話。
イルが一生懸命な少年という感じなのに、美少女の姿というのがいいなあ。女の子になったら男前美少女になるに違いないので、女の子になってほしいんだが!
イルは、海で生活する種族の王様の末っ子。成人して自らの性別を決められる日がきたら、絶対に男性になって、憧れの叔父さんと同じ宇宙飛行士になると決めている。なのに嵐で難破した船から、陸の王子・エアリオルを助けたために、彼から熱烈なプロポーズをされてしまい、イルは大激怒! エアリオルの失脚を狙う一派の思惑もからん、二人の関係はどうなる…!? 榎木洋子のロマンティック・ファンタジー!!(裏表紙より)
銀河連邦がすでに存在している宇宙で、ある星に海中で生活できるよう超能力等を持つまでに進化した人類がおり、第二期入植者の陸の人類と実は不仲であり、という世界観。人魚姫をモチーフにしていながら、悲恋にはならない明るく楽しい、コメディ? なお話でした。
イルが元気よくてかわいいです。イルを思う男性たちもいることだし、個人的には女の子になってほしい!
バレー部のキャプテンだった桐島が部活を辞めた。彼をよく知るバレー部の生徒たち、彼をよく知らない生徒たち、派手なグループの所属する生徒、それを遠巻きに眺める生徒……些細かもしれなかった出来事は、それぞれの重さで日常に波紋を描いた。十七歳の高校生たちの連作短編。
それぞれの一人称で書かれる高校生たちの短編集。色んなところが胸に刺さって痛かったです。クラスメートや自分と属性が違う子たちに抱く劣等感。同じ属性にいる子でも、個性の違いを感じて劣等感を抱いたり。思っても言えない気持ちがあったり。
特に、なんでもかんでも口に出す子に対して抱く感情。ストレートに口に出してもいいけれど、人を馬鹿にする言動をしたり、人を貶めることを言う子っているんだよな……という。そういう価値観で生きていくんだろうと菊池は結論づけてますけれど、私もそう思う。
舞台が、どこなんだろうか。大阪っぽいけれど大阪じゃない。
色々自分のだめなところも見せつけられる気がした一冊でした。
アレスがようやく発見した新大陸、“アンティトル”で出会った少女。そして、そこで起こっていた不気味な異変とは……?
アナトゥール最終章の序章となる、アレスくんの新大陸物語、『瑠璃色の明星姫(チャスカ)』。
他、リクエストの多かった、リディア姫とヴァン・ブルーの一夜のエピソード。
「ユナと王子はどこまでいってるの?」という質問におこたえするスペシャルマンガバージョンなど、盛りだくさんの一冊です!!(カバー折り返しより)
中学生くらいから読んでいるシリーズで、すでに完結しているんですが、久しぶりに続きを見つけて読んでみました。色々と、若い……なあ……と思うシリーズになっていました。自分が歳を取ったことを実感した。
シリーズの紹介としては、高校生のユナがエスケープしたさきの図書館で見つけた一冊の本の文句を口にした途端、異世界アナトゥールに飛ばされ、その世界の王国のひとつエスファハンの王、金の砂漠王(バーディア)、シュラ王子と出会い……という異世界召喚好きにはたまらない設定の物語。なんですが、一人称文章なので、今読むとすごく物足りない気持ち……。
この巻は最終章の序章としての中短編集になっています。世界の行く末が危うくなりつつある、異変を海賊王(ファルカス)のアレスが発見するというものが中編「瑠璃色の明星姫」。世界が虚無に覆われようとしている、という最後の戦いへの提示でした。こういう王道なのが好きだったんだなあと懐かしく思いました。