読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
的場果歩、三十歳。彼女が働く灰谷市役所はいまだ前時代的な男性社会で、女性はサポートや雑用ばかり。身勝手な恋人は仕事に夢中で、結婚話をしても冷たい態度。
——私は大丈夫。何があっても、笑っていられる。
自分にそう言い聞かせる彼女を、さりげなく守り、いたわる四才年下の係長・藤堂。その優しさは年上への気づかいか、それとも——?
お互いになかなか踏み出せない、ちょっともどかしい大人のラブストーリー。(カバー折り返しより)
初アルファポリスである。前々から気になっていたんですが、こういう、現代社会の大人の女性の恋愛小説というのはちょっと踏み出すのに勇気がいりました。いやでも面白かったです!
悩みとか周囲の環境がリアルでえぐられた気がしました。しかし果歩は笑って仕事ができる人なのにあれほど抱え込んで悩んでいるとかうじうじしているというのは、色々辛かったんだなあ……と思います。一つ疑うと本当のところが見えなくなる、という感じで、中盤まで胃がぎりぎりする話でハッピーエンドで終わるのだろうかとちょっと疑いました。
そんな果歩を救うのは、年下の上司・藤堂。ちょっと何を考えているのか分からない、不思議な空気感のヒーローは、優しく、時に厳しく、しかし果歩の心を守ってくれようとする。「森のくまさん」という表現がかわいくてツボでした。そういうヒーローすきすき。
二人が恋も仕事もちょっと進展したところで終わっているので、2巻を楽しみに読みます。
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人は有史以来、常に天を目指した。
「お洋服いっぱい買うから」雛/ヒビナ。
「オレ絶対有名になるから」乙/ツバメ。
「行って参りますわ」凰/アゲハ。
都市を守るため、三人の少女は翼をもって空にはばだく——。
近未来都市ウィーン——ミリオポリスに建造された超巨大タワー、〈ヴィェナ・タワー〉。それは、人の命を削って創られたものだった。
その横をかすめて、火の玉が墜ちる。落ちた星——ロシアの原子炉衛星アンタレスは、災厄の始まりでしかなかった。動きはじめる七つのテログループ。ようやく攻勢のテロ組織として、整いつつあったMSSに、いや三人の少女に最大の試練が訪れる。
天と地の間に生きる少女たちの物語。(カバー折り返しより)
オイレンとリンクする、衛星落下事件のMSS側視点の物語。MPBの三人娘、特に涼月はかなり惨い戦いを強いられていましたが、MSS三人組は三人でいることが当たり前なのでそこはちょっとほっとして読みました。
前線に出ていたオイレンの話とは違い、スプライトは事件首謀者の周辺人物が描かれることもあって、ちょっと軽い印象の話になっていた気がしますけれど、これ読む順番が違うと全然違う感想になるんだろうなあ。「電子レンジ」が何を意味するか知っている身としては、「冬真にげてー!!!」の心境だったんですけれども!
MPBとMSSがすれ違う瞬間はやっぱり鳥肌ものでした。涼月から見るのと凰から見るのと全然違って面白い。けれど私には、ちょっとすれててひん曲がった性格の、でもどこか熱い涼月の物語の方が合っている気がする。
アリシアとカシュヴァーンの間に設定された、ルアークの誕生日。盛大な誕生会を開催することになったライセン一家は、それぞれ個性溢れる祝いの品を用意するが……そこにやってきた、奇妙な誕生祝いとは!? また、ティルナードがセイグラムに隠れて外出をするあんな一日や、レネがバルロイから決別(?)するこんな大騒動など、これまで語られることのなかった五つの「絆」を紡ぐ短編集が登場! 死神妻と暴君夫、いつもとちょっとだけ違うおかしな夫婦の日常は、いつも以上に甘〜いラブが大増量!(裏表紙より)
いつにもましてにやにや巻でした。このシリーズも電車で読めない話だよな……(にやけてしまうから)
ルアークの物語、ティルの物語、エルティーナの物語、レネとバルロイの物語、そして夫婦の物語と、五つの短編が収録されています。どこかしら影のある死神姫シリーズの、その影の部分が結構見えた巻かな、と思いました。本編はアリシアの目から語られることが多いせいか、あんまり後ろを振り向かない印象があるので……。
ティルぼっちゃんが成長したことに目頭が熱くなります。見守るカシュヴァーンの目が優しいこと。セイグラムにも助けられていますが、ティルナードはいい男、になるにはまだまだ遠そうだなあとちょっと思ったりも。ティルが悪いわけではなくて、周りが怪物じみた手腕を持った人たちばかりなので、ティルはなかなか大変なのではないでしょうか。
エルティーナとジスカルドは、関係が変わったらいいな、と希望を抱いて本編を読みたいと思います。ライセン夫婦はらぶらぶでごちそうさまでした。
ワケあって、田舎から東京に出てきた岩倉たがねは十五歳。数々のバイトをクビになり、空腹を抱えながらさまよっていた新宿で見つけたのは、毛筆で書かれた不思議な求人広告。「住み込みで食事付き」に惹かれたたがねだったが、雇い主は怪しげな婆さん・櫻木闘子。やさしい孫の恭介はいるものの、たがねを待ち受けていたのは、予想だにしないオシゴトだった!
笑いあり涙あり、ホワイトハート新人賞受賞作。(裏表紙より)
異能者が登場する現代ファンタジー。
あとがきの改題前のタイトルがツボった。これは少女小説のタイトルらしからぬ厳ついタイトル。元原稿はどんな話だったのかなあ。
ともかく、お話の内容はこんな感じ。現代日本には密かに「マロウド」と呼ばれる異界のものたちを狩る集団があった。この闘姫一族の一人、闘子の助手となったたがねのお話。ラブ方面の話はあまりなくて、たがねの一生懸命さがかわいいお話でした。
この小説のおいしいところは、ババ孫萌えだと思うんですよ! 孫に甘いおばあちゃんもえー! 家族内での甘やかしって、(人に迷惑をかけない範囲では)本当においしいんですよね! たがねは幸せになれー!
三か月以内に借金が返せなかったら金貸しの後妻!? 借金返済のため、パミーナは高賃金だが三日と人が続かない“悪魔の屋敷”で働くことに。しかし、屋敷の主・美貌の天才博士クルトは、一筋縄ではいかない人間不信の変わり者で!?「泣いて逃げ出すまでいびり抜いてやる!」と辞めさせる気満々のクルトとの勝負を受けて立ったパミーナ! なのに、いきなり甘い言葉を囁かれ、ときめいてしまい!? 人生を賭けた恋と勝負の行方は?(裏表紙より)
たくましい女の子と子どもみたいに口が悪い変人美形青年のお話。きゅんきゅんしたー!
パミーナが一生懸命でたくましくてかわいらしくて、二人の口喧嘩が楽しくて。若干クルトの思考回路が変な気もしましたが、とてもとても少女漫画で楽しい話。言い争いが子どもっぽい一方で、ときめく台詞やシーンがストレートできゅんきゅん胸を突いてきて、にやにやが止まりませんでした。
何がいいって、やっぱりパミーナの性格だ。まっすぐで、純真で、ひねたところがなくて仕事に打ち込めるところや、ちょっとうぶなところ。クルトはパミーナがいないとだめになるなーと最後辺りのシーンで笑いました。
面白かったです!
「あの子は漫画家になるのに必要なもの以外はすべてを切り捨てた!と姉が私の青春時代のことをそう言っていたように10代の頃の私は偏っていたかもしれない。それでも悔いナシ、です」と少女漫画家一条先生は言い切る。いつでもパワフルに道を切り開いてきた先生の生き方は、やることがみつからない!と悩んでいる人にとって格好の道案内となるはず。エッセイスト・岡部まりさんとの対談も収録。(裏表紙より)
とてもくだけた文体のエッセイでした。あれだ、コミックスによくある柱で書かれるような裏話を延々とやっている感じ。一条さんの子どもの頃の話や、漫画家になってからの努力、恋愛の話など。こうして知ってみると、一条ゆかりさんって『職人』な作家さんなんだなあ。何を思ってこれを描いたか、という話をされていてとても興味深かった。自分の大嫌いな人間を主人公にして描いてみようと思ってちゃんと描ききるなんてすごすぎる。『デザイナー』も『砂の城』も読んだので、そういう事情があったんだと新しい発見でした。しかし、恋愛方面の話をすごく軽い調子で語っているので、その辺りはちょっとはあー……と口を開けてしまった後に笑ってしまう感じでした。セキララというか、世間話を訊いている気軽さがあって、おかしかった。
旅客機機長と言えば、誰もが憧れる職業だが、華やかなスチュワーデスとは違い、彼らの素顔はほとんど明かされない。ならばと元機長の作家が、とっておきの話を披露してくれました。スチュワーデスとの気になる関係、離着陸が難しい空港、UFOに遭遇した体験、ジェットコースターに乗っても全く怖くないこと、さらに健康診断や給料の話まで——本音で語った、楽しいエピソード集。(裏表紙より)
元機長が語るエピソード集。私は飛行機は今までに一度しか乗ったことがない上に国際線を知らないので、想像でしか分からないんですが、そういうことがあるのかと面白く読みました。できればもうちょっと変な話(不思議な話)を読みたかった気がするけれど、機長さんなら航空会社やスタッフの事情の方が多くなってしまうか。コックピット内の様子がどういうものなのかというのが興味深かったな。
事故で両親を失った18歳の菱谷瀬那の前に現れたのは、亡き母の知人だという、中東の王国シハーブの王子カイサル。両親の借金を清算する代わりにシハーブに来いというカイサルに、瀬那はお金のことよりも寂しさから頷いてしまう。だが端整で精悍な容貌、財力とそれに見合う手腕を備えたカイサルは、猛々しく傲慢な悪魔のような男だった。無垢な瀬那は、カイサルが与える過剰な贅沢と、どんなに抗っても許されない夜毎の甘い凌辱が何を意味するのかわからず怯えるばかりで——。愛を知らない砂漠の王子の凶暴な純愛。(裏表紙より)
強引俺様で残酷な攻めが、「小鳥のような受け」(あとがきより)を束縛して酷いことを繰り返す、という、攻めの人が、相手のことをまったくと言っていいほど分かっていない上に、押せ押せ押せ押せの攻勢だったので、今まで読んできたものと感触が違ってなんだか面白かったです。瀬那のことが好きで、贅沢させて、何不自由ない暮らしを与えて、愛していると示しているのに! とカイサルの冷酷さと溺愛、純愛(?)が新鮮でした。そうか、俺様溺愛ってこんな感じなのか。勉強になった。
舞台は聖暦二十世紀初頭のアンゲリア王国。裕福な生まれのメリッサ・クリマイヤーは、初めて訪れたサーカスで、無口な網渡りの青年リンドウと、人間の言葉を話す不思議なライオン、ギデオンに出会う。
ある時、メリッサはリンドウがまったく歳をとらないことに気がつく。それは、かれがギデオンと交わしているという魔法の契約のせいだった——。
切なくて思わず涙する、珠玉のラブストーリー!(裏表紙より)
最近なるべく感情を表に出さないように、本心を隠すような日々を送っているので、疲れているなあと思っていたんですが、この本を読んでいたら何かのスイッチが入ってしまったらしく、ラスト周辺で 大 号 泣 。「ひいいいん。ひぐっ、うぐっ」と涙でページが見えなくなるほど大泣きしました。
現実世界を思わせる異世界で、裕福な家に生まれたメリッサは、サーカスの青年リンドウと不思議なライオンであるギデオンと出会う。しかしとあることをきっかけに記憶を失ってしまったメリッサは、自分でも理由が分からない心の飢えを感じて、看護婦となって戦場へ。お話は大きくはないのに、すごく読み応えがあるというか、綺麗にこの一冊にすべてが詰まっていて、すごく満たされました。
魔法を信じる心。よろこびというもの。それらが物語に結びつくとここまでどーんと胸に響くのかと、またページをめくって目をうるうるさせている状態です。あり得ないものを純粋に信じ続ける心や、それが許されること。そして続いていくことというシチュエーションに弱いんだろうなあ。
「平和の歌を歌いますよー♪」。あらゆるテロや犯罪が多発し、『ロケットの街』とまで渾名される国際都市ミリオポリス。「黒犬(シュヴァルツ)」「紅犬(ロッター)」「白犬(ヴァイス)」と呼ばれる警察組織MPBの〈ケルベルス〉が治安を守るこの都市に、ロシアの原子炉衛星〈アンタレス〉が墜落した。七つのテログループが暗躍する、この事件を収拾するため壊れかけの〈ケルベルス〉遊撃小隊が、超警戒態勢の街を駆け抜ける——! クールでキュートでグロテスクな“死に至る悪ふざけ(オイレンシュピーゲル)”第2幕!(裏表紙より)
第二巻。長編でした。ちょーたぎったああああああ!!!!!
涼月たちの「どうして」や、「死者が生者の道となる」、「三人で一頭の獣である」。熱くたぎったし、悲しかったし、理不尽な思いもたくさん味わったけれど、天国にも地獄にもならない街、かあ……とラストシーンがじいんときた。すごい物語だぞこれ。
また、スプライトの面々がつかの間交差したのにすごい燃えた。うおおおおって頭の中で叫びながら読みました。スプライト側からこの戦いがどんな風に書かれるのかすごく楽しみです。
民族的、人種的な問題や確執から目を背けることなくこのすごく面白い物語を書いている辺りがなんかもうこわい。恐怖心を覚える。面白かった……。