読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
岩塩鉱を生き残った男・ヴァンと、ついに対面したホッサル。人はなぜ病み、なぜ治る者と治らぬ者がいるのか——投げかけられた問いに答えようとする中で、ホッサルは黒狼熱の秘密に気づく。その頃仲間を失った〈火馬の民〉のオーファンは、故郷をとり戻すべく最後の勝負を仕掛けていた。病む者の哀しみを見過ごせなかったヴァンが、愛する者たちが生きる世界のために下した決断とは——!? 上橋菜穂子の傑作長編、堂々完結!(裏表紙より)
そうなる気がしていたけれど! というヴァンの選択による結末を迎えた第四巻。
やはり見せ場はヴァンとホッサルの会話でしょうか。二人の会話がすごく面白くって、夢中で読みました。どんなプロも、素人の何気ない発言に胸を突かれる瞬間があるのは不変ですね。それがミラルの言う、私たちが個性を持っているということの証だと思う。
けれど必死に生きている人々がいる一方で、それぞれの平和や発展や未来のために動いている人たちの思惑が、なんとも言えず悲しい。そういう力を持ったのならそうするんだ、ということなんだろうけれど。
ヴァンが行ってしまったのが悲しいのに、ユナだけじゃない家族のみんなが追いかけていってくれたのがすごく嬉しくて、希望を感じられる結末を迎えられたのが本当によかった。
統治者たちの思惑から逃れるように去ってしまったヴァンたちだけれど、ホッサルはこの後もそうした陰謀の中で巧みに生きていかなくちゃならないんだよな……。けれど彼は決して生きることを諦めないんだという結末が、本当に素晴らしかったです。
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何者かに攫われたユナを追い、〈火馬の民〉の集落へ辿り着いたヴァン。彼らは帝国・東乎瑠の侵攻によって故郷を追われ、強い哀しみと怒りを抱えていた。族長のオーファンから岩塩鉱を襲った犬の秘密と、自身の身体に起こった異変の真相を明かされ、戸惑うヴァンだが……!? 一方、黒狼熱の治療法をもとめ、医術師ホッサルは一人の男の行方を追っていた。病に罹る者と罹らない者、その違いは本当に神の意思なのか——。(裏表紙より)
病を放った首謀者たちとついに遭遇するヴァン、囚われの身となったホッサル。ユナを追ってきたヴァンはホッサルたちと出会う、ついに二つの道が交わった第三巻。
しかしヴァンの遭遇した状況はなかなか辛いな。残っていた身内をも巻き込む形でこの陰謀が動いていると知ってしまった。戦って、人を殺して、死にたいと思ったことがあるヴァンだから彼らの気持ちを理解し、受け止め、自分の答えが出せることの尊さを思いました。排除するのではなく、そこにあると知って認める、きっとそれがいまできる最良のことなんだよな……。
謎の病で全滅した岩塩鉱を訪れた若き天才医術師ホッサル。遺体の状況から、二百五十年前に自らの故国を滅ぼした伝説の疫病“黒狼熱”であることに気づく。征服民には致命的なのに、先住民であるアカファの民は罹らぬ、この謎の病は、神が侵略者に下した天罰だという噂が流れ始める。古き疫病は、何故甦ったのか——。治療法が見つからぬ中、ホッサルは黒狼熱に罹りながらも生き残った囚人がいると知り……!?(裏表紙より)
アカファ王と王幡侯の前で起こった事件から、ヴァンたちの穏やかな暮らしの終わり、黒狼病の発生源を探り始めたホッサルたちに支配層の者たちの思惑が立ち塞がる第二巻。
思わせぶりに登場してここでいなくなるの? という状態だったサエがここで登場。でもなんか変だな? という違和感は続く三巻でわかるわけですが、他にも、登場人物たちにとって「何故あなたが?」という人が次々に登場し、どんどん話が複雑化していくぞ、でもめちゃくちゃ面白いぞ!? とページをめくる手が止まらなかったです。
しかし、みんななにがしかの悲しみと一緒に生きているんだなあ……と思わずにはいられない。当たり前のように死が近くにある。それをみんな当たり前のものとして受け入れているのが伝わってきて、しんみりしてしまうのに力強さを感じる。この物語は生きているって感じがする。
強大な帝国・東乎瑠から故郷を守るため、死兵の役目を引き受けた戦士団“独角”。妻と子を病で失い絶望の底にあったヴァンはその頭として戦うが、奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた。ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生。生き延びたヴァンは、同じく病から逃れた幼子にユナと名前を付けて育てるが!? たったふたりだけ生き残った父と子が、未曾有の危機に立ち向かう。壮大な冒険が、いまはじまる――!(裏表紙より)
戦士団の頭として戦い、奴隷として囚われていたヴァン。謎の病でその労働地の人間が全滅し、偶然助かった幼子を連れ、生きるために旅を始めた。
医科学の領域の医術師であり高貴な身の上のホッサルは、効果の高い治療を信仰心から疎んじてきた国で、恐ろしい病に打ち勝つ術を模索する。
様々な氏族、そこにやってきた人々の様々な思惑が入り混じる物語。いやあもう一気読みしてしまった。
一巻は、始まりの話。死に至る病から逃れたヴァンとユナの旅の始まりと、難しい立場を綱渡りをするように歩むホッサルの状況説明、黒狼病が彼らの身近に迫る巻。
ヴァンとユナが居場所を得ていくところがすごくよかった。多分ここはすごく大事になると思って丁寧に読みました。こうやって一緒に暮らすことで家族になるんだよなあ。
ゲーム実況を通じて、最高を越えた最高のハッピーエンドを導いた遠藤と小林の二人は、女神リレナの計らいでジークとリーゼロッテの結婚式に参列できることに!
異界の友人たちとついに対面を果たした四人。思い出話にも花が咲く中、『リーゼロッテの手記』の実物を目にした小林のテンションは最高潮に達してしまい……?
大量書き下ろしとSS再録で綴られる後日譚。手記の内容はどれくらい変えられたのか――答え合わせが始まる!(Amazonより)
乙女ゲームの悪役令嬢キャラに入れ込み、彼女たちの幸せを願って力を尽くした「異界の神々」こと遠藤くんと小林さんの二人は、復活した女神リレナの力であちら側に渡り、ジークトリーゼロッテの結婚式に参列する。これこそ最高を越えた最高のハッピーエンド! というおまけ巻。
アニメを視聴していたので知っている話も多かったのですが、各々のその後を知りたいなら読んでおくと楽しい気持ちになれる。
個人的にエリーザベトとレオンが気になっていたので、今後この二人が師弟をやりつつ付かず離れず仲良くやるんだろうなあと想像してにまにましています。それからファビアンとツェツィ。この年齢からこんなにいちゃいちゃしているとか、楽しそうすぎる。間近で成長を見守ってにまにましたい。
最後までみんな誰かの幸せを願う最高に楽しいお話でした。
わたしが読み、貴方が唱え、帝都で花咲く“幸せの魔法”
明治24年、魔法が社会に浸透し始めた帝都東京に敵国の女スパイ蓮花が、海を越えて上陸する。目的は、伝説の「アサナトの魔導書」の奪還。
魔導書が隠されていると言われる豪商・鷹無家に潜入し、一人息子の宗一郎に接近する。だが蓮花の魔導書を読み解く能力を見込んだ宗一郎から、人々の生活を豊かにする為の魔法道具開発に、力を貸してほしいと頼まれてしまい……。
全く異なる世界を生きてきた二人が、手を取り合い運命を切り拓いていく、和風魔法ロマンス、ここに開幕!!(裏表紙より)
世界に魔法があり、呪文を読み解き提示する解読者と、それを称えて魔法を発動させる詠唱者という二種類の能力者がいる。魔法とは二人一組み、解読者に発動させる魔法の選択を託すという信頼関係がなければ発動できない。
そんな、明治の世界に魔法があったら、を描いた和風魔法もの。
もしもの明治や社会情勢を描いているところがとても面白く、時代を思えば最初はヒーローっぽくない宗一郎の優しさと芯の強さがとても稀有で魅力的に感じられてよかったなあ。
その分、本当に女スパイなの……? という蓮花の言動の数々に大変違和感があり……。椿になり切るつもりなのか当人のままで椿を名乗るのかとか、物語が始まった時点で仕事に対する姿勢や忠実性がまったく見えないせいで、全然スパイらしくなくてハラハラできなかったのが残念。
国内のお家事情やこれから移り変わるであろう時代に彼女たちが本当の意味で平和を、幸せを手に入れることができるのか、とても気になりました。叶うならば幸せな世界でありますよう。
未来の女王レティーツィアの侍女候補・アイリーチェには、年上の恋人がいる。だけど彼には、一桁の年齢の少女しか愛せない特殊な嗜好があった……!? 偶然の出逢いが四度重なれば、運命となる。アイリーチェと伯爵子息ウィラードの恋物語を綴った外伝が登場!さらにアノ騎士が主役になる短編のほか、レティがデュークを騎士に見初める(!?)までの物語などシリーズ初、【恋】がテーマの短編集!(裏表紙より)
レティの侍女候補アイリーチェと幼女趣味のウィラードの運命の出会いの話と、アストリッドがどこまでもレティが好きな話、素直じゃないノーザルツ公の話、レティとデュークの密かな出会いの話を収録。
リーチェとウィラードの恋の話、本編とはほとんど関係のないものという頭で読んでいたんですが、可愛らしいロマンスで楽しかった。口の上手いウィラードにアイリーチェが冷静に(表面上は?)、ちゃんと考えて手紙を返したりしているところ、お互いに理想の相手に巡り会えたんだろうなあと思ってにこにこしちゃった。
アストリッドのワルツの話も楽しかったし、ノーザルツ公がレティが好きなのに素直になれなくて面倒くさくて可愛かったし、レティとデュークは進展する……かも……? な感じだしで、楽しい中短編集でした。
作り手と売り場を結ぶ糸をたくさん鞄に詰め込んで、出版社の新人営業、井辻智紀は今日も本のひしめくフロアへと向かう。——でも、自社本をたくさん売ってくれた書店を訪ねたら何故か冷たくあしらわれ、文学賞の贈呈式では受賞者が会場に現れない!? 他社の先輩営業マンたちにいじられつつも、波瀾万丈の日々を奮闘する井辻君の、こころがほっとあたたまるミステリ短編集第一弾。(裏表紙より)
「成風堂書店」のシリーズに関連した、出版社の営業さんと書店とお客さんにまつわる日常の謎ミステリ。仕事をする上での、営業職の苦味も感じられるのが、胸が痛いときもあるけれどやっぱりいいんだよなあ。失敗しても、頑張ろう、忘れないで同じ失敗をしないでいこうと思える感じ。
でもなんだか、読んでいるうちに切なくなってしまった。この作品が最初に世に出たのは2008年。すでに街の本屋さんが消えると言われていて、2023年現在本当にそうなってしまった。私の最寄りの書店には誰かが一生懸命棚を作ってくれる本屋さんはないに等しくて、じっくり本を選びたいと思える場所がどんどん少なくなっている。書店も書店員も読者も、多忙だし、薄給だし……本を好きだという人はこれから少なくなっていくんだろうなあ……切ない……。
敵〈レギオン〉の電磁加速砲による数百キロ彼方からの攻撃は、シンのいたギアーデ連邦軍の前線に壊滅的被害を与え、レーナが残るサンマグノリア共和国の最終防衛線を吹き飛ばした。
進退極まったギアーデ連邦軍は、1つの結論を出す。それはシンたち「エイティシックス」の面々を《槍の穂先》として、電磁加速砲搭載型〈レギオン〉の懐に——敵陣のド真ん中に突撃させるという、もはや作戦とは言えぬ作戦だった。
だがその渦中にあって、シンは深い苦しみの中にあった。「兄」を倒し、共和国からも解放されたはず。それなのに。
待望のEp.3《ギアーデ連邦編》後編。
なぜ戦う、“死神”は。
何のために。誰のために。(カバー折り返しより)
感無量の第三巻、そしてようやくすべてが始まるエピソードですね。
アニメを見てから、大事に読もうと積んでいたものを読み始めたわけですが、ああもうやっぱり涙なしでは読みきれなかった! 胸がいっぱいになる。
そしてこれを読み、アニメに舞い戻ってみてみると、原作はよりシンの気持ちを描写していて、アニメはよりそれらをドラマティックに描いているんだなあということ。アニメ最終2話分のエピソード、原作にはない展開があって、キャラクターの感情の掘り下げと感動的な再会を演出していてとても良いアニメだったのだなあとしみじみしました。
しかし原作を読んでいると印象が変わる人たちがちらほらいるなあ……。エルンストはだいぶ怖い人なんでは。あと連邦の大人組はより大人感があるというか、子どもたちのことを頼りにしなくてはならない板挟みに苦しんだり割り切ってしまっていたりとか。
とにかく四巻からもシンとレーナたちに会えるのが楽しみだ。大事に読もう。
共和国の指揮官・レーナとの非業の別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着いたシンたち〈エイティシックス〉の面々は、ギアーデ連邦軍に保護され、一時の平穏を得る。
だが──彼らは戦場に戻ることを選んだ。連邦軍に志願し、再び地獄の最前線へと立った彼らは、シンの“能力”によって予見された〈レギオン〉の大攻勢に向けて戦い続ける。そしてその傍らには、彼らよりさらに若い、年端もいかぬ少女であり、新たな仲間である「フレデリカ・ローゼンフォルト」の姿もあった。
彼らはなぜ戦うのか。そして迫りくる〈レギオン〉の脅威を退ける術とは──?
第23回電撃大賞《大賞》受賞作第2弾! シンとレーナの別れから、奇跡の邂逅へと至るまでの物語を描く、〈ギアーデ連邦編〉前編!
“死神は、居るべき場所へと呼ばれる”(カバー折り返しより)
共和国での最後の戦いを終えたシンたち。シンは兄のレイの最後の思いに助けられ、レギオンの支配域を突破し、共和国以外の人類が生存するギアーデ連邦へとたどり着く。
再びの戦い、そして運命との再会を目指す第二巻ですね。アニメを見たので展開はわかっているのですが手に汗握る。折々にシンがレーナのことを思い出している描写ににやにやしちゃう。もう二度と会うことはないって思ってるんだろうけど、もしかしたら、なんて思っちゃってませんか?(にやにや)
結構しっかり指揮官やってるっぽいシンにときめき。そしてファイドとの再会にエイティシックス時代の平常感みたいなものを見せたところにときめき。これからもっとこのきゅんっていう感覚が増えるんだと思うと続きを読むのが楽しみすぎる。戦いは激しさを増すけれどどうか幸せになってくれ。