読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
19世紀・イギリス。有名執事の娘シャロンは、新人メイドとして貴族のお屋敷に勤めることになった。勤め先は、カルヴァート家の別邸——ベリーカルテット。ところがシャロンが屋敷に到着すると、滞在していた女性が遺書をのこして亡くなっていた!? カルヴァート家次男で美貌の作家・ロイと、新人メイド・シャロンの推理が冴え渡る! 謎が謎を呼ぶヴィクトリアン・メイド・ミステリー!(裏表紙より)
19世紀イギリスのメイドと坊々作家のミステリー。これはいいなあ! ホームズとかクリスティみたいな雰囲気がある気がする。あっさりめなんだけれど、ちゃんと謎解き。ミステリーにしては心理的な要因があると思うのですが、軽く読めて面白かったです。あとがきに一作目とあるので、多分続きが出るのだろう。シャノンがちょっと淡々としすぎていますが、その彼女がすごいという父親はどんなのか知りたいです。
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学園バトルが日本の未来を左右する!?
私は高校生の蘇芳。いとこの紫風(美形なうえに天才剣士!)が当選確実の生徒会長選挙を控えたある日、選挙への妨害行為が相次いだ。また派手好きで金持ちの道博の仕業かと思ったら、「伝道者」を名乗る者が出現。私たちの住む悠久のミヤコを何者かが狙っている!(帯より)
謎×学園×ハイパーアクション、という謳い文句な恩田陸作品……なんですが、あらすじからぶっ飛んでてこれはいったいどういう話なの!? と思ったら、やっぱりすっごく変で、変なんだけとお約束事がばっちりで面白かったです。ノスタルジーも方向性を変えるとこういう派手な「ジャポン」なものになるのかあ。
まず、主人公蘇芳はおかっぱセーラー服の美少女。自分の刀を貰い受けるには腕が足りないといわれ、歯がゆく思っている少女剣士。その同じ一族の少女・萌黄は、リボンで髪をまとめた袴姿。頭もよく、腕も立つ少女。そして一族の御曹司・紫風もまた、強く賢く、リーダーシップのとれる生徒会長候補。その三人とミヤコという場所を巡る物語です。どう考えてもミステリじゃないし、ファンタジーでもラノベな上、読み進めていくとお約束を踏んでいくハリウッド映画みたいな活劇になっていて、恩田さんはこういうものも書けるのかとびっくりしました。もっと暗くてじわっと怖いものの方が好きなのだと思っていた(そういうシーンもあるんですが)
恩田さんらしさだと思えていた、そういったじわっとした怖さ、少女たちの活発な明るさと強さ、日本という場所のノスタルジーを全部ひっくるめてしまってエンターテイメントにしてしまうと、こういう話になるのかもしれない。すごく映像的に書かれているので、文章も簡略だし、狙っているシーンもたくさんあって、頭の中で映像にするとすごく生き生きとしてくる物語だと思いました。
面白かったです。私はこれ好きです。
歴史小説家の植松三十里さんが、どんな創作活動を経て作家になり、十年書き続けてきたのかというエッセイ。四十八歳で時代・歴史小説を書いているのかーととても興味深く読みました。自分が普段あまり読まないジャンルなだけに、すごく面白かった。
投稿生活は、カルチャースクールの創作教室でのことが書かれていて、そういう形もあるのかと勉強になりました。色々な形があるものだな。しかし結局は縁を大事にしているかどうかなのかもしれないなと思う。
小説の仕事をするにあたっては、丁寧な資料の読み込みや、ゆかりの地の訪問、関係者を辿ったり。もちろんご家族がおありなので、生まれ育ちの話、結婚後の渡米、娘さんの不登校など、すごく波瀾万丈なことをさらっと、しかし真剣に書かれているので、こちらに真面目に読みました。
面白かった。植松さんの小説、今度読んでみよう!
「あなたは特別。契約して差し上げる」
悪魔の名を記した書を複製する森玄使であるレジナ。ある日、彼女は教会内で美しい獣型の高位の魔物を召喚してしまう。慌てて自室に獣を匿うけれど、聖祭の《神の花嫁》候補が悪魔に襲われる事件が発生! レジナは囮役として花嫁の身代わりをすることに——。そんな中、彼女の危機に美青年に姿を変えた獣が契約を迫ってきて…!? 一途な魔物と乙女が織りなす、悪魔召喚ラブファンタジー!(裏表紙より)
糸森さんのお話は、世界観と設定が独特だなあ……と思います。最初に設定を頭に入れるのがたいへんだ。とりあえず、堕落した教会と、神様と、天使と魔物の物語という大雑把な解釈をしました。
過去に兄が召喚した魔物で、兄を失った天涯孤独のレジナ。教会に引き取られ、森玄使として働いている。そこへ、事故で召喚してしまった赤いけもの、別の教区から派遣してきたヴィネト、教会の美形修道士リストらが絡んで、《神の花嫁》が殺される事件に挑んでいく。
ラストにえええっと叫びました。すごかった。なんか変だなーと思ってたけど! しかしマスコットキャラ化するのはどうか!笑
アガルがとっても可愛いです。「もう、熱い!」とか「嬉しい!」とか。残酷なものが優しくて可愛いのはときめきです。
なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか——。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。
父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す——。(帯より)
実は『天地明察』を読む前にこれを読んでしまったのですが、安井算哲が現れたところはそれでもおおっと思いました。水戸の黄門様の壮絶な一生。義というものを問いかけ続ける話。
「どうして俺なんだ」というのは、『マルドゥック・スクランブル』から連なる生きることへの最大の問いかけだなあという序盤。力や知識や人との繋がりを得ながらも、自分自身を疑うからこそ、上へ伸びていくのかもしれない。高みへのぼるにつれて、どんどん欲望が削ぎ落とされて、軽やかになっていく光國が眩しいです。ただ、その軽やかさには、失いたくないものを失ったこともある。友人、読耕斎や、妻、泰姫の喪失は辛かった……。泰姫の人柄が、この物語の重みの中の安らぎになっていて、光國はそこを愛したのだろうなあ……。
「義」という考えが、後の世の私たちに分かる形で、光國を解放し、苦しめていたところは涙でした。最後のあれは……泣くわ……。義であるけれども、義ではない。しかし、後の世になされることがある。光圀の知らない未来が、彼らが形にしようとした人の人生の続きなんだろう。
帝に特別愛された薄幸の女性に端を発して物語は進んでいきます。
死んだ母に似ているという父の新しい妃に対する思慕。山里で源氏はその妃の面影を持つ少女を垣間見ます。紫の上との出会いでした。(カバー折り返しより)
源氏物語を現代訳して、読みやすい平易な文章に仕立てたもの。すごく読みやすいし、分かりやすい。原文を最後まで読んだことがないけれど、これは「源氏物語」を読み通すのにいいきっかけになりそう。花鳥風月、四季とともに、様々な恋と宮中の出来事が描かれるのは優雅で、その時代の人たちが夢中になったのも分かる気がします。
しかし、私は光君が嫌いなのだった。どれほど容色にすぐれ、才覚のある、細やかな人物でも、女癖が悪かったら何もかもアウトだと思います。この本を読んでますますこいつはなんというだめんずだろうと思った。女性が離れようとすると惜しいと思って、文を送ったり会いに行ったりするところが嫌いだ!
そういう感想を抱けるくらいにとても読みやすい本なのですが、一つだけ。読みやすさを重視して、作中の和歌の部分も意訳にしてあるのが惜しい! ここは雰囲気が分かるようにうたで読みたかったかも。かっこ書きにして訳を載せるとかで!
泉水子は〈戦国学園祭〉で能力を顕現させた。影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定するが、陰陽師を代表する高柳は、異議をとなえる。そして、IUCN(国際自然保護連合)は、人間を救済する人間の世界遺産を見つけだすため、泉水子に働きかけ始めた!?
泉水子と深行は、だれも思いつかない道のりへ踏みだす。姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか——。ついにRDGシリーズ、完結。(カバー折り返しより)
アニメのクライマックスだった五巻の印象を引きずっていたので、エピローグ的な話かと思いきや、高柳との決着があったり、その他にも事件があったりと、完結巻らしい(でもこのシリーズらしい)山場と終わりがある六巻でした。
泉水子が学園に居場所を見出し始めたことから、流れが変わっている予感があって、彼女の出した答えがなんともらしく、それでいて一気に集結する感覚がすごかった! というのは、機会があったので荻原さんの特集をやっていた雑誌の「ユリイカ」を読んだので、「どう結末をつけるのかと思ったら、泉水子に集結していったのがすごくて」という佐藤多佳子さん上橋菜穂子さんとの対談を読んですごく気になっていたのでした。本当に、その答えは意表をつかれた。そういう考え方もできるんだ、と驚きもしたけれど、この話の、姫神と世界とはどういうものなのかを考えると、すごく納得がいってしみじみすごいと思った。
深行との関係は、そのシーンで彼が呆然とする気持ちが本当によく分かって、大変なのに噴き出してしまった。殺し文句だよなあ。気持ちがわからないのは相手も同じ、というのをすごくよく現したシーンだ。言われてもいないのにそうと行動できない、現代っ子な深行が、ラストシーンで行動に出たのでぎゃーと叫びました。二人で未来を決めていく、というごくありふれたささやかに思える幸せが、またいい。
というわけで、このシリーズの読書もこれでおしまい。最後にアニメ主題歌「スモルワールドロップ」を聴いて、きゅーんとしました。面白かった!
大手出版社・千石社の週刊誌編集部に所属していた新見は、文芸誌に関わることを目指していたが、その春、下った辞令は、なんと少女雑誌編集部への異動。望まぬ部署、けばけばしいファッションや小物、ローティーンの少女たちに関わることになった新見は、やる気なくただ仕事をしていたが……。
編集者もの。もう冒頭から完全にやる気がない主人公、新見がひどい。細々した仕事はちゃんとしているんだろうけれど、常に不満を抱えているのはちょっと……。でも、二十六歳の男の人に、中学生女子が好きなものを詰め込んだ雑誌を作っていけと言われても無理か。
作っている人の苦悩、編集者の、というのが面白い。会社、事務所の思惑も絡んできて、大人の世界ってたいへん……と思うなどする。人との繋がりがすごい影響を及ぼす大人の世界こわい。大人の思惑で、中学生の女の子の明暗が分かれるというのが辛い。そう思って読んでいくと、どんな少女モデルも、雑誌を卒業した後はなにがしかの形で輝かしい場所を目指していこうとする、というのが、ぐっとくる。夢の輝きは痛くて苦しいけれど、憧れてしまう気持ち、分かるかもしれない。