読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

あたし、森村あゆみ、十九歳。ちょっとした事情なんてのがあって、今、現在進行形で家出のまっ最中。家を捨てるついでに地球まで捨てる覚悟で乗った宇宙船の中で、密航者には出喰わすし、旅行者のミスで男と同室にしなきゃならなくなるし、あげくの果てに殺し屋さんにまで狙われちゃって……。一体全体どうなっちゃったんだ、あたしの家出は!! そして今度出てきたのは王様だって……もう!(カバー折り返しより)
あらすじを読まずに読み始めて、あれっめずらしいな……と思ってからふと、まさか、と思ってカバーを見ると……ネタバレはやめてください! と思いました。せっかくちょっとの間騙されてたのに。
地球を家出してきた富裕層出身のあゆみ。他の星で生きていこうと船に乗ったはいいものの、チケットが重複して男と同室、しかも彼は密航者を伴っていた。何でも屋だという太一郎は、とある星の王位継承者……の身代わりを護衛している。そんな二人のどたばたSF。
かと思うと、もう一編は、SFらしい空恐ろしさを含んでいて、すごく面白かったです。
一人称って読みづらいときもあるのですが、新井素子さんの作品は読みやすくていいなあ。こういうの書いてみたい。
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気がつくと白い部屋にいた。白い部屋——病院。何であたし、こんな所にいるんだろう。何であたし……え? あたし、自分が誰だか判んない。記憶喪失? そんな……。おまけに、病院に来た刑事は、さらに凄いことを言うのよ。あたしのこと、殺人犯だって! 殺人の疑いをはらすべく過去を探しに出たあたし、誰かにおそわれる。何で? あたしが何したっていうの。それにあたし、誰なのよ!(カバー折り返しより)
「あたしの中の……」「ずれ」「大きな壁の中と外」「チューリップさん物語」の四作品が収録。一人称の話って得意でなかったはずなんですが、新井素子作品ならするすると読めるし楽しい。
どの話も、短いのに起伏があって、オチがあって、すごくいい。好きなのは「大きな壁の中と外」です。これ、閉鎖学園みたいな感じでもっと読みたいなあ(というか書いてみたい……)遠い過去の人々の思惑で、未来の青少年たちが戦う話って本当に好きで、新井素子はそれほど読んでいないのに、ここに自分の好きなもののルーツがある。不思議だなあ。

理解不能の授業! つぶれるバイト先! 眼科医との攻防! 100キロ超えのハイキング! 500キロ超えのサイクリング! 初めてのピンク映画館! 変人との遭遇! 迫り来る就活! 華やかな看板の裏で繰り広げられた東奔西走の日々。
こないだまで大学生作家だった朝井リョウの別に知らなくてもいい真実(帯より)
桐島しか読んだことがなく、情熱大陸で特集されていたのを見ただけなのですが、予想以上にダンスィな大学時代だったので、外で読むのが大変でした。なんど噴き出しそうになってにやついたか。
「(にこ)」の破壊力にやられ、リア充、なう、などの昨今の言葉が並び、おなか緩い系だったり、馬鹿なことばかりしている朝井さんに、思った以上に親しみを持ってしまってちょっと好きになりました。ばっかだなあ……(褒め言葉)
三浦しをんさんや、イケてない系が好きな方は多分笑ってもらえると思うので、おすすめです。

「ぼくはあなただけを守る魔物なんですから」神魔を使役し《名もなき悪魔》の名を書に記す朔使。人と獣の姿を持つ美しき神魔アガルと契約したレジナは、朔使となる試験を兼ねた調査のため、雪に閉ざされた小国ユピルスに向かうことに…。悪魔の調査のはずが、宮廷を探索中についた嘘から、王女の身代わりをすることになってしまい——!? 一途な魔物とその主となった乙女&未来の幻魔王が織りなす、悪魔召喚ラブファンタジー第二弾!(裏表紙より)
『花術師』や花神遊戯伝の一巻はすごく読みづらくて、このシリーズも一巻は少々読みづらかったのですが、読み慣れてきたのか二巻はより面白く読みました。アガルの純粋な台詞が転がるわこれ!
神魔は、悪魔は、恋なんてしないの? というのが今回のポイントなのですが、どんどんお互いを好きになっていく二人がかわいい! ヴィネトもいい感じにサポートしてくれるし、この三人組かわいいなーとにこにこしてしまいます。しかしどんどん逆ハー要素が濃くなってきた……? まだまだ離しが始まったばかりという感じなので、もっと大きく動く話が読んでみたいと思いつつ、今回のオチは「尚更したくなったら、どうしよう……」でした。最後にはああああん!!! と叫んで転がりました。ごちそうさまでした。


わたしの名は桃子。あさみ、和馬、利明に送られて帰る途中、公園にUFOが落ちるのを目撃した。UFOは宇宙船だった。中からは誰も出てこない。翌日、美姫、誠も加わって調査にのりだした。宇宙船からは宇宙人が出てきて、六人を船内へ招いた。宇宙人たちは戦争の最中、敗れて地球へ避難したのだという。が、宇宙人たちを驚かせたのは、あさみが精神感応を持ってることだった……。(カバー折り返しより)
私が読んだのは集英社文庫コバルトシリーズの版。久しぶりに新井素子作品を読んだら、面白くたまらなくてびっくりした。
神様らしきものが生命の争いを何らかの形で見守っているらしい宇宙。とある宇宙人たちが地球を戦場にしているらしいと知った桃子たちは、宇宙船を乗っ取り、自分たちで戦うことにした。ESPの持ち主や、何らかの才能に秀でた六人は、実は……という。わー少女小説でSFだー! と嬉々としてしまった。
みんなでわーっと騒いで、でもちょっと寂しい気持ちが漂っていたりして、面白かった。

19世紀・イギリス。有名執事の娘シャロンは、新人メイドとして貴族のお屋敷に勤めることになった。勤め先は、カルヴァート家の別邸——ベリーカルテット。ところがシャロンが屋敷に到着すると、滞在していた女性が遺書をのこして亡くなっていた!? カルヴァート家次男で美貌の作家・ロイと、新人メイド・シャロンの推理が冴え渡る! 謎が謎を呼ぶヴィクトリアン・メイド・ミステリー!(裏表紙より)
19世紀イギリスのメイドと坊々作家のミステリー。これはいいなあ! ホームズとかクリスティみたいな雰囲気がある気がする。あっさりめなんだけれど、ちゃんと謎解き。ミステリーにしては心理的な要因があると思うのですが、軽く読めて面白かったです。あとがきに一作目とあるので、多分続きが出るのだろう。シャノンがちょっと淡々としすぎていますが、その彼女がすごいという父親はどんなのか知りたいです。

学園バトルが日本の未来を左右する!?
私は高校生の蘇芳。いとこの紫風(美形なうえに天才剣士!)が当選確実の生徒会長選挙を控えたある日、選挙への妨害行為が相次いだ。また派手好きで金持ちの道博の仕業かと思ったら、「伝道者」を名乗る者が出現。私たちの住む悠久のミヤコを何者かが狙っている!(帯より)
謎×学園×ハイパーアクション、という謳い文句な恩田陸作品……なんですが、あらすじからぶっ飛んでてこれはいったいどういう話なの!? と思ったら、やっぱりすっごく変で、変なんだけとお約束事がばっちりで面白かったです。ノスタルジーも方向性を変えるとこういう派手な「ジャポン」なものになるのかあ。
まず、主人公蘇芳はおかっぱセーラー服の美少女。自分の刀を貰い受けるには腕が足りないといわれ、歯がゆく思っている少女剣士。その同じ一族の少女・萌黄は、リボンで髪をまとめた袴姿。頭もよく、腕も立つ少女。そして一族の御曹司・紫風もまた、強く賢く、リーダーシップのとれる生徒会長候補。その三人とミヤコという場所を巡る物語です。どう考えてもミステリじゃないし、ファンタジーでもラノベな上、読み進めていくとお約束を踏んでいくハリウッド映画みたいな活劇になっていて、恩田さんはこういうものも書けるのかとびっくりしました。もっと暗くてじわっと怖いものの方が好きなのだと思っていた(そういうシーンもあるんですが)
恩田さんらしさだと思えていた、そういったじわっとした怖さ、少女たちの活発な明るさと強さ、日本という場所のノスタルジーを全部ひっくるめてしまってエンターテイメントにしてしまうと、こういう話になるのかもしれない。すごく映像的に書かれているので、文章も簡略だし、狙っているシーンもたくさんあって、頭の中で映像にするとすごく生き生きとしてくる物語だと思いました。
面白かったです。私はこれ好きです。

歴史小説家の植松三十里さんが、どんな創作活動を経て作家になり、十年書き続けてきたのかというエッセイ。四十八歳で時代・歴史小説を書いているのかーととても興味深く読みました。自分が普段あまり読まないジャンルなだけに、すごく面白かった。
投稿生活は、カルチャースクールの創作教室でのことが書かれていて、そういう形もあるのかと勉強になりました。色々な形があるものだな。しかし結局は縁を大事にしているかどうかなのかもしれないなと思う。
小説の仕事をするにあたっては、丁寧な資料の読み込みや、ゆかりの地の訪問、関係者を辿ったり。もちろんご家族がおありなので、生まれ育ちの話、結婚後の渡米、娘さんの不登校など、すごく波瀾万丈なことをさらっと、しかし真剣に書かれているので、こちらに真面目に読みました。
面白かった。植松さんの小説、今度読んでみよう!