読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
化政文化華やかりし頃、瀬戸内の湊町・尾道で、花鳥風月を生涯描き続けた平田玉蘊。楚々とした美人で、一見儚げに見えながら、実は芯の強い蘇鉄のような女性。頼山陽と運命的に出会い、お互いに惹かれ合うが、添い遂げることは出来なかった……。激しい情熱を内に秘め、決して挫けることなく毅然と、自らの道を追い求めた玉蘊を、丹念にかつ鮮烈に描いた、気鋭の時代小説作家によるデビュー作、待望の文庫化。(裏表紙より)
今井絵美子さんの何かが読みたいなーと思ったらデビュー作を見つけたので読むことに。絵画の世界も男のもの、多分御武家さんが教養として絵も習うような時代にいる、女流画家、平田玉蘊の一生。すみません、西洋もですが日本美術もとんと疎くて、何を描いた方かというのは後で調べました。作中では、花鳥風月を描き続けたとありますね。
それでもちょっとだけ美術史をやったんですが、私はどうも、女流作家(画家)が時の人である有名画家の男とうんたらかんたらという心情がいまいち理解し難くて。その時代の女性の考え方や、風変わりとも思える強さなどに首を捻ってしまっていたのですが、この作品の平田玉蘊、豊という人は、長男のいない家で長子として家を支えようと若くして強くあるものの、肩肘張ったところや勘気が見られず、とてもすっと入り込んできた「強い女性」でした。山陽の勝手な振る舞いには、楚々として添い遂げたいという気持ちを抱きつつ、やっぱりと身を引いてしまう弱さがあったり、山陽の周りの女性や妹の女としての喜びに嫉妬を抱きながら噛み殺したりと、耐え忍ぶ女性らしさがあったりして。ただ絵に向かい続けることができてよかったと思います。そうでなければ潰れてしまっていたと思う。
そして恥なんですが私植物にも大層疎く、蘇鉄ってどんな木かなー松とかの裸子植物? と思う程度で、後に調べてびっくりしました。ヤシやん! いや、ヤシではないけど。ああいう幹がごつごつ皮がばりばりして、葉っぱがつんつんとしたものが生えている、完全なる南国の植物。はー、そりゃ白い花にたとえられても「私は蘇鉄の女」と思うだろうなあ。これは異国の香り、文化、という開けていく世界そのものだったのだなあ。
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「新たな契約を結ぼうか?」
魔の潜む都ロゼッタ。幼い頃の記憶がない少女リゼルは、化物に襲われていたところを炎の魔法を操る青年伯爵アーベルトに救われる。悪魔に力を与える妙薬《エフェメラ》である彼女を守るかわりに、アーベルトは彼が追っている事件の捜査協力を要求。その上、メイドとして伯爵家で働くことを命じてきて…!?
永き時に飽きた悪魔伯爵との出会いが少女の運命を変える。霧煙る都のラブファンタジー。(裏表紙より)
どこかロンドンを思わせる、血なまぐさい事件と貧民窟を抱える魔都ロゼッタ。幼い頃から負っている醜い顔の火傷と悪魔の所有印のせいで、花を売ろうとするも自身を養うことさえままならない少女リゼル。そんな彼女が、人間に擬装して人の社会を生きているアーベルトと出会い、悪魔がらみの事件を解決する物語。
軽くですがちょっと謎解き風味のにおいがあったり(誰が怪しいのかは一発で分かるんですが)するのは、この世界観のせいでしょうか。悪魔?らしい伯爵と警官と聖職者と、下町と霧と殺人事件。主人公がメイドに扮したり囮を担ったりするところがとても! いいです!
意外に優しいアーベルトで私がおおっ! と感動したのは、「あんたも悪魔のくせに!」と言ったリゼルに激高したり嫌味を言ったりせず、黙って抱え込んでくれた、あそこですよ! こいついい男だ……! と感動しました。
《エフェメラ》らしい設定はあんまり出てこなかったのがあれだったんですが、最後の啖呵でヒロイン激かわと思ったので、満足しました。この話結構好きだ。
伯爵家でナースメイドとして働くマリアンは、屋敷で開かれたガーデンパーティで、侯爵家のローレンスに見初められ、強引に唇を奪われてしまう。彼は真剣にマリアンを愛していると優しく語り、結婚を申し込む。貴族である彼がどうして私を? 戸惑い恥じらうマリアンに、歳の離れたローレンスのしなやかな手は次々と未知の悦びを教えてゆく。清純な少女の身体は初めて愛を知って……!?(裏表紙より)
ホワイトハートにこんな真っピンクの背表紙があるの!? と思ったら、今流行りのTLものでした。甘々でべたべたなロマンスでした。
孤児である十六歳のナースメイドの少女が、その初心さと清純さゆえに、手慣れた貴族女性に飽きていた侯爵に見初められて結ばれるという話以上のなにものでもないのですが、ほんのりとヴィクトリアンな舞台と二人の甘い生活が味だと思いました。エロスを追及するならそのまま衆も(省略)しても面白かったんじゃないかなーと思う私は汚れてて本当に申し訳ありませんでした。
「私のこと、好きになって下さいっ!」ある理由から、花盗人と呼ばれる宮廷一のプレイボーイ・アロイスを籠絡することになったフリーダ姫。外見だけはアロイス好みの大人びて遊び慣れした美女に見えるものの、その中身は泣き虫で純情な少女。そんなフリーダのあまりに危なっかしい誘惑に、本気の恋をしないはずのアロイスも次第に調子を崩されて!? 蕾の姫君と華麗なる花盗人の、ままならぬ恋の行方は!? 大団円の王道ラブコメディ!(裏表紙より)
ご主人様なシリーズ四作目にしてシリーズ完結巻。三作目に登場した、騎士である姫君フリーダと、これまで三作に登場して見事なアシストをしてくれていた花盗人、遊び人アロイスのラブコメでした。
お兄ちゃんなアロイスが、フリーダを放っておけないと世話を焼いたり、目を離せないフリーダがその純粋さゆえにアロイスのハートをぐらぐら揺さぶってしまうのは大変にやにやでした。宮廷で居場所を作っていくフリーダの話も見てみたい気がしましたが、アロイスとのやりとりがもう可愛くて。
これまでの主人公たちがそろい踏みして、みんなが応援してくれるのはとても楽しかった。特に男衆のやりとりが笑 「愚か者の世界へようこそ」「同じ穴の狢です」声出して笑ってもうた。
楽しいラブコメシリーズでした!
時は幕末、処は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、なんと貧乏神だった! とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至。傑作時代長篇。(裏表紙より)
作業の合間のちょっとずつ読もう、と思って手元においていたんですが、これが段々と面白くなってきて!
時代物はあんまり読まないので、倒幕やら志士やらという話は一般的に坂本龍馬、勝海舟サイコー! みたいなものが刷り込みされているのですが、この作品の武士側から見ると、武士とはこういう存在だったのだな……と染みるような感慨がありました。いちいち、彦四郎が哀れ、かつ、かっこよすぎる。不運でいるところに頼んでしまった神が、貧乏神、疫病神、そして死神。死神をどうするのかと思いきや……貫いた彦四郎は強い心の持ち主だ。最後がもう粋って感じ。
そしてまた、この神々の人間臭いこと。涙もろくて、情に流されやすくて、だから人間の近くにいるのかなと思ったりする。
面白かった!
ティッセとも和解し、久しぶりに訪れた平和が破られたのは突然だった。ムイの前に現れたラーシェンが告白し、それを見たフィンドルがいきなり唇を奪ってきたのだ。混乱するムイにはさらなる災厄が! グリジスの策略で、バレンとの婚約が進んでいた。しかもバレンを領主にし、ムイは領主を解任するという。今度はもう逃げられそうにもなくて…!? 人気シリーズ、ついに完結!(裏表紙より)
ピクテ・シェンカの不思議な森シリーズ8巻にして最終巻。ティッセとの和解と領主問題。三角関係が終わらなかったのが残念。どちらとも拮抗していた様子だったし、決着は無理かなあと思っていたらそのまま終わってしまった。私はラーシェンを推したい。
ティッセとのお出掛けがよかったなあ! 本屋さんに行く二人が可愛くて。ティッセの考えていることは策略なんだけれど、二人で選ぶというのが大事。
ムイの進路が気になる結末でした。
『金星、君に会いたい』生放送で全世界に呼びかけ、金星特急をグラナダへ呼び寄せた錆丸。スペイン内戦は止まるものの、一行はイェニツェリの追跡を躱しながら列車の到着を待たなくてはならなくなる。グラナダを出れば、次はおそらく終着駅、この世に戻ることはない。覚悟を決め残された時間を精一杯生きぬこうとする花婿候補達と、それを助けたい錆丸。彼らの旅の終わりに待つものとは? そして錆丸と金星の世紀の大恋愛の行方は? 大人気シリーズ、堂々の完結!!(裏表紙より)
すごかった。
それしか言えないけど、本当にすごかった。こういう文庫のシリーズで、一冊で区切ってでなく7巻すべてないと成り立たないシリーズってそうそうない。すごく読み応えがあって、終わりに向かっていく、それだけでこの本はすごいけれど、それだけじゃなかった。
一巻からの、子ども子どもしていた(かつ、世慣れた不幸の匂いのする子だった)錆丸が、一人前の男になる過程がすごかった。7巻で爆発してた。「何、俺の奥さん」って!! なんというかっこよさ!!! かーらーの!!! 絶望感!!!!!! 思わずびっくりつけまくるよ。たたき落とされた。もう心臓ぎりぎりいったし、涙も止まらなかった。ネタバレ書きたくないけど、あー誰かが言ってたよなーとかいうのもよぎった。ただ恋をしただけなのになんて残酷なんだろう、と呆然とする展開。上位的存在である金星にも許されないことが恋なのかとか。純粋で、だからこそ残酷。
白鎖組とか、お兄ちゃんとか、家族とか。女の子同士の秘密とかともだちとか。もうなんかいろいろすごく胸に迫るものが多すぎて、未だにまとまらない。永遠というものの在処を、錆丸と砂鉄とユースタスが全部見せてくれた気がする。
電車に乗って、最後に着く場所は。
最高の冒険でした! ありがとうございました。
グラナダに辿り着いた錆丸一行は、無事砂鉄たちと合流を果たす。あとは金星特急の到着を待つばかり。根城にしたアルハンブラ宮殿で、錆丸たちはイェニツェリの追撃を避けつつ列車に乗り込む作戦を練る。一方その頃、兄の砂鉄に恋する彗星含む“許されない恋をしている少女たち”が、金星の庭に集められていた。時空を超えたその場所で、錆丸の蜥蜴ウェルの目を通して旅の一部始終を見せられていたのだ―—。いよいよクライマックスへカウントダウン、人気シリーズ第6弾!!(裏表紙より)
状況が状況なのですが、みんながやることをやって生活しているのがなんだかほっこりします。さんざんおかしい人たちだと感想に書いてきたけれど、過去の話などを読むと、みんなちゃんと傷ついて少しずつ強くなっていた人たちなんだなあと思う。
錆丸が、本当にいい男になってきた! 最後はぞくぞくっと震えが走った。かああっこいいいいい!!! あんな風にプロポーズされたら落ちるよなあ……。ちゃんと欲しい答えが手に入るのだろうか。伊織兄ちゃんはちゃんと応援してくれそうだし、これからきっといい未来が手に入ることを願いつつも、不穏な気配があってどきどきする。
砂鉄とかユースタスのあれそれにはきゃー! ってなったんですが……前半の、金星の庭にいる少女たちの視点が後半になるとまったくなかったのがほんと恐い。がくぶるするほど恐い。これ死人出るのと違うか……。みんな、死ぬことを覚悟して乗ってきた人たちだもんなあ……。
残り一冊!