読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「あなたは特別。契約して差し上げる」
悪魔の名を記した書を複製する森玄使であるレジナ。ある日、彼女は教会内で美しい獣型の高位の魔物を召喚してしまう。慌てて自室に獣を匿うけれど、聖祭の《神の花嫁》候補が悪魔に襲われる事件が発生! レジナは囮役として花嫁の身代わりをすることに——。そんな中、彼女の危機に美青年に姿を変えた獣が契約を迫ってきて…!? 一途な魔物と乙女が織りなす、悪魔召喚ラブファンタジー!(裏表紙より)
糸森さんのお話は、世界観と設定が独特だなあ……と思います。最初に設定を頭に入れるのがたいへんだ。とりあえず、堕落した教会と、神様と、天使と魔物の物語という大雑把な解釈をしました。
過去に兄が召喚した魔物で、兄を失った天涯孤独のレジナ。教会に引き取られ、森玄使として働いている。そこへ、事故で召喚してしまった赤いけもの、別の教区から派遣してきたヴィネト、教会の美形修道士リストらが絡んで、《神の花嫁》が殺される事件に挑んでいく。
ラストにえええっと叫びました。すごかった。なんか変だなーと思ってたけど! しかしマスコットキャラ化するのはどうか!笑
アガルがとっても可愛いです。「もう、熱い!」とか「嬉しい!」とか。残酷なものが優しくて可愛いのはときめきです。
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なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか——。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。
父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す——。(帯より)
実は『天地明察』を読む前にこれを読んでしまったのですが、安井算哲が現れたところはそれでもおおっと思いました。水戸の黄門様の壮絶な一生。義というものを問いかけ続ける話。
「どうして俺なんだ」というのは、『マルドゥック・スクランブル』から連なる生きることへの最大の問いかけだなあという序盤。力や知識や人との繋がりを得ながらも、自分自身を疑うからこそ、上へ伸びていくのかもしれない。高みへのぼるにつれて、どんどん欲望が削ぎ落とされて、軽やかになっていく光國が眩しいです。ただ、その軽やかさには、失いたくないものを失ったこともある。友人、読耕斎や、妻、泰姫の喪失は辛かった……。泰姫の人柄が、この物語の重みの中の安らぎになっていて、光國はそこを愛したのだろうなあ……。
「義」という考えが、後の世の私たちに分かる形で、光國を解放し、苦しめていたところは涙でした。最後のあれは……泣くわ……。義であるけれども、義ではない。しかし、後の世になされることがある。光圀の知らない未来が、彼らが形にしようとした人の人生の続きなんだろう。

帝に特別愛された薄幸の女性に端を発して物語は進んでいきます。
死んだ母に似ているという父の新しい妃に対する思慕。山里で源氏はその妃の面影を持つ少女を垣間見ます。紫の上との出会いでした。(カバー折り返しより)
源氏物語を現代訳して、読みやすい平易な文章に仕立てたもの。すごく読みやすいし、分かりやすい。原文を最後まで読んだことがないけれど、これは「源氏物語」を読み通すのにいいきっかけになりそう。花鳥風月、四季とともに、様々な恋と宮中の出来事が描かれるのは優雅で、その時代の人たちが夢中になったのも分かる気がします。
しかし、私は光君が嫌いなのだった。どれほど容色にすぐれ、才覚のある、細やかな人物でも、女癖が悪かったら何もかもアウトだと思います。この本を読んでますますこいつはなんというだめんずだろうと思った。女性が離れようとすると惜しいと思って、文を送ったり会いに行ったりするところが嫌いだ!
そういう感想を抱けるくらいにとても読みやすい本なのですが、一つだけ。読みやすさを重視して、作中の和歌の部分も意訳にしてあるのが惜しい! ここは雰囲気が分かるようにうたで読みたかったかも。かっこ書きにして訳を載せるとかで!

泉水子は〈戦国学園祭〉で能力を顕現させた。影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定するが、陰陽師を代表する高柳は、異議をとなえる。そして、IUCN(国際自然保護連合)は、人間を救済する人間の世界遺産を見つけだすため、泉水子に働きかけ始めた!?
泉水子と深行は、だれも思いつかない道のりへ踏みだす。姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか——。ついにRDGシリーズ、完結。(カバー折り返しより)
アニメのクライマックスだった五巻の印象を引きずっていたので、エピローグ的な話かと思いきや、高柳との決着があったり、その他にも事件があったりと、完結巻らしい(でもこのシリーズらしい)山場と終わりがある六巻でした。
泉水子が学園に居場所を見出し始めたことから、流れが変わっている予感があって、彼女の出した答えがなんともらしく、それでいて一気に集結する感覚がすごかった! というのは、機会があったので荻原さんの特集をやっていた雑誌の「ユリイカ」を読んだので、「どう結末をつけるのかと思ったら、泉水子に集結していったのがすごくて」という佐藤多佳子さん上橋菜穂子さんとの対談を読んですごく気になっていたのでした。本当に、その答えは意表をつかれた。そういう考え方もできるんだ、と驚きもしたけれど、この話の、姫神と世界とはどういうものなのかを考えると、すごく納得がいってしみじみすごいと思った。
深行との関係は、そのシーンで彼が呆然とする気持ちが本当によく分かって、大変なのに噴き出してしまった。殺し文句だよなあ。気持ちがわからないのは相手も同じ、というのをすごくよく現したシーンだ。言われてもいないのにそうと行動できない、現代っ子な深行が、ラストシーンで行動に出たのでぎゃーと叫びました。二人で未来を決めていく、というごくありふれたささやかに思える幸せが、またいい。
というわけで、このシリーズの読書もこれでおしまい。最後にアニメ主題歌「スモルワールドロップ」を聴いて、きゅーんとしました。面白かった!

大手出版社・千石社の週刊誌編集部に所属していた新見は、文芸誌に関わることを目指していたが、その春、下った辞令は、なんと少女雑誌編集部への異動。望まぬ部署、けばけばしいファッションや小物、ローティーンの少女たちに関わることになった新見は、やる気なくただ仕事をしていたが……。
編集者もの。もう冒頭から完全にやる気がない主人公、新見がひどい。細々した仕事はちゃんとしているんだろうけれど、常に不満を抱えているのはちょっと……。でも、二十六歳の男の人に、中学生女子が好きなものを詰め込んだ雑誌を作っていけと言われても無理か。
作っている人の苦悩、編集者の、というのが面白い。会社、事務所の思惑も絡んできて、大人の世界ってたいへん……と思うなどする。人との繋がりがすごい影響を及ぼす大人の世界こわい。大人の思惑で、中学生の女の子の明暗が分かれるというのが辛い。そう思って読んでいくと、どんな少女モデルも、雑誌を卒業した後はなにがしかの形で輝かしい場所を目指していこうとする、というのが、ぐっとくる。夢の輝きは痛くて苦しいけれど、憧れてしまう気持ち、分かるかもしれない。

自分の容姿に自信がもてないミラ、クラスの人気者カオリ、「わたし」というしがらみに悩む秋穂、そして誰とも交わろうとしないシズ。同じ高校の写真部に所属する4人は、性格も、好きなカメラも違うけれど、それぞれのコンプレックスと戦っていた。カメラを構えると忘れられる悩み。しかし、ファインダーを覗く先に不可解な謎が広がっていて……。(帯より)
女子高生とカメラ部とミステリ、と聞いて飛びつきました。ミステリ成分よりも、悩める女子の割合の方が大きかったですが、女子高生の痛々しい「自分」と「他者」という学校社会の話で、刺さる感じがとてもよかったです。
カメラという、解放の手段を持っているせいで、四人は思ったよりものびのびとしているけれど、ふとした時、周囲と自分を比べてしまって卑屈になったり腹が立ったり悲しくなったり、痛い思いをするところがいい。表現の手段を持っている者ならではの、ちょっとした傲慢が出る「コンプレックス・フィルタ」や、たった一つ好きなものを見出してしまった者の「ペンタプリズム・コントラスト」。作り手として共感できる書き込みは薄いかもしれないけれど、ちょっとした謎の部分があったりするところも面白かったです。

美しい王妃は侍女ツルの言葉によって、しだいに圧政者となり、人の道から外れてゆく。そして現代の小さな街に住む老女との関わりは? 時代はうねる。物語が生まれる。寓意が深まる。「わたしは、人の心にとり憑いて、わたしにとり憑かれるような心を持った人間を滅ぼしてやるの。人間を滅ぼすほど面白いことはないものね。え? 恐ろしいって? わたしのこと?」毒のあるファンタジー!(裏表紙より)
ある国の后と侍女の物語と、現代の老婆の独り語りが交互になされる。一番とっかかりになるであろう現代パートが、独り語りの上に悪にも感じ取れる老婆の視点で、それも犯罪が行われていることが語られるので、得体が知れなくて恐い。
ツル、という存在がキーワードになっており、ツルに関わったものは何らかの悪を唆される。千年生きる、つまりとこしえに存在するものがツル=怨念、そして水と女に繋がる。さらっとした文体なのに物語はどろどろで、ちょっとえぐくて気持ち悪い。後味はよくない作品でしたが、こういうのも書かれるのねーと思いました。
本には短編「崖の上」も収録。森のものに育てられた人間の少年と、学者の娘の物語。これも後味はよくはないけれど、少年と少女の失われたもののきらめきが美しいものでした。

八咫烏が支配する世界山内では次の統治者金烏となる日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫たちをも巻き込んだ権力争いが繰り広げられていた。賢い兄宮を差し置いて世継ぎの座に就いたうつけの若宮に、強引に朝廷に引っ張り込まれたぼんくら少年雪哉は陰謀、暗殺者のうごめく朝廷を果たして生き延びられるのか……?(カバー折り返しより)
前巻『烏に単は似合わない』の裏側、四家の姫たち后候補たちが桜花宮に集められていた一方で、若宮と彼に関わることになった少年・雪哉たちは何をしていたか、という話。女っ気がないので表紙通り黒っぽい地味な一冊で、若宮といううつけ者が特別で魅力ある人物だということは分かりはしたものの、特に後日談があるわけではなかったのでちょっと消化不良でした。でも、雪哉がなにくそと頑張るところがすごく楽しく、成功物語としての部分が好きだと思いました。
しかし、若宮の喋り方が好きだわー! 「だって、私は金烏だもの」という言い方が、小憎たらしい自信とちょっとの寂しさを感じさせて、きゅんとする。
これ続編出るのかなあ。浜木綿が好きだったので、彼女の物語を見てみたいかも。

人を呪い、だまし、悲しませる魔女とその使い魔魔女ねこに生まれたゴブリーノ。三本黒い足と一本だけ白い足。綺麗な青い目をしたねこだ。妹のスーチカは魔女ねこの才能があるけれど、ゴブリーノはどの魔女も欲しがらない。ある日、母さんねこも魔女もゴブリーノを捨てて去ってしまった。自分の家を探すゴブリーノの物語。
多分読書ガイドか何かを読んでメモっていた本。魔女のねこって可愛いなー児童書かどんなのだろうと思っていた。居場所に恵まれない男の子が、自分の場所を探す冒険物語でした。
冒険物語として、繰り返しの連続になるのですが、どの飼い主に当たっても、最後には魔女ねこというだけで石を持って追われ、嫌われる。居場所が欲しいがために魔法をちらつかせて脅すことがあっても、本当はそんなことしたくないと悲しむゴブリーノ。魔女ねこに本当に向いていない子で、最終的には魔女たちにも魔女ねこには向かないと言われてしまう。それでも、彼は子どもたちにとっても好かれている。
最後には居場所を得たゴブリーノは、失ったものもあるけれど、求めたものを得ることができたので、ちょっとほっとしました。よかったと一概に言えないのは、そのままの自分ではあれなかったというところが引っかかっているからで……。
とにかく、喋る魔法のねこの冒険はとっても可愛らしかったです。