読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

ミモザの前に突然現れた、二頭の狼を連れた迷い人。葡萄酒色の瞳と長い髪を持つ少女ルビーウルフ、優しい碧色の瞳を持つ青年ジェイド、そして人に飼い慣らされた狼フロストとケーナ——かけ落ち途中の恋人同士と言うには、ちょっと風変わりな一行。
神国グラディウスの端、街道からはずれた森に兄と二人だけでひっそりと暮らす口のきけない少女ミモザ。彼女と足に障害を持つ兄ラスティが、人里離れたこんな不便な地で暮らすのは、絶対に人に知られてはならない秘密があったから。
しかし不思議な魅力を持つ迷い人一行に、ミモザは心を開いていき——。
グラディウス軍に追われる、王女になる前のルビーウルフが、心に傷を抱える兄妹に小さな奇蹟をもたらす「クローバーに願いを」の他、全7編で贈る小さな小さな物語、第1弾!(カバー折り返しより)
もう本編も読んでしまったし、短編集の2も読んでしまって、ちょっと遡って1を読んだわけですが、これで私の中でルビーウルフが完結しました。
最後まで、すっごく楽しかったシリーズでした! 短編集まで全部、面白かった。
ルビーとジェイドの物語、盗賊団時代の話、双子の妹ちゃんの話、風邪ひきの話、ミレリーナとロヴィンの話などなど。すごく物語っぽいのはミレリーナとロヴィンの話なんですけれども、ルビーウルフの物語がいいと思うのは、日常的な挿話が、すごくあったかくて楽しいところ。もう本当に大好き。
おもしろかった。

戦後、我が国で処刑された死刑囚は六百人以上にのぼる。しかし密行主義といわれる現行の死刑制度の中で、我々は確定囚のその後を知ることは出来ない。彼らが処刑までをどのように生き、どのようにして人生を終えるのか……。
二十年以上にわたり、“死刑”を追い続ける著者が、世間を騒然とさせた十三人の死刑囚の最期を通して、ベールに包まれた死刑制度の実態に迫る。衝撃のドキュメント!〈解説 牧太郎〉
死刑が確定した囚人の、簡単な略歴と死刑が確定した犯罪についての説明、そして、刑務所に収容された後、死刑が行われるまでの日々を記したもの。
刑務所というと「グリーン・マイル」で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」なんですけれども、そういうものとはまた違った……けれど一緒のような……。
お迎えが来るまで、彼ら死刑囚は、特に日本人は、だいたい模範的な囚人になる。宗教に帰依し、穏やかな人柄になり、短歌や俳句を詠み、死ぬ間際には「あの世で被害者の方にお詫びすることができます」「私のような者に先生方(刑務官たちをこう呼ぶらしい)ありがとうございました」と言うという……。この本に書かれている死刑は、まだ昭和の頃のことなので、今はきっと形も違っていると思いますが、本当なのだろうか、とちょっと疑うところもあり……。
良心を持たなかった、あるいはそれが一部欠けていたために、殺人を犯した者が、果たして神様を信じるようになるのだろうか? と。ここに書かれている死刑囚たちは、まるでお坊さんのお説教のような言い回しをしているので、心の底からそれを信じているようにも読めて、そうなのかなあと。今はどうなってるのかな。

相澤奈々、まもなく二十五歳。平凡で地味な毎日だけど、恋愛も仕事も順調だった。ところが、そんなある日、奈々は、途中入社してきた後輩に、恋人を奪われてしまう。精神的にボロボロになった奈々がすがりついたのは、クールな上司・樋口だった。
約束したのは、大人の関係。割り切った関係のはずだったのに、お互いに惹かれていって……
一度傷ついたからわかる、この恋の大切さ。甘いだけじゃない、大人のラブストーリー。(裏表紙より)
エタニティってだいたい甘々だったりらぶえっちだったり、というイメージだったんですが、オフィスラブものでも、これは結構ビターな感じ。主人公が清純とかそういうのじゃなく、すごくしっかりした考え方の持ち主で、だからこそ恋人を奪われてだめになってしまうという。そこから上司との関係が始まり……という、繋がり方もやり取りも、常にお互いが傷ついている感じがして、読んでてずっと痛々しい。だから、ちゃんと結婚できてよかった。

夢の映像を記録した「夢札」、それを解析する「夢判断」を職業とする浩章のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する、集団白昼夢。浩章はパニックに陥った子供たちの面談に向かうが、一方で亡くなったはずの女の影に悩まされていた。日本で初めて予知夢を見ていると認められた、結衣子。災厄の夢を見た彼女は——。悪夢が現実に起こるのを、止めることはできるのか?戦慄と驚愕の新感覚サスペンス!(裏表紙より)
ドラマの「悪夢ちゃん」の原案だということですが、そうでした、あの時間帯のドラマは、原作小説から結構かけ離れた改変をするんだった(という思い込みが私にはあります……)。
時間と場所は特定できないけれど、予知夢をみることができる結衣子。彼女が見た大事故の夢が、彼女自身の最期だった。結衣子が死んでから十二年。夢判断をする職についていた浩章は、結衣子がまるで生きているかのような幻をみる。けれどそれは本当に幻か? 折しも、とある学校で集団白昼夢事件が起こっており……。
どこかのエッセイで「無意識をめぐる冒険」を書きたいということを書いておられたような気がするのを、読み進めていて「無意識をめぐる」というワードが出てきてはっと思い出しました。
現実と夢と、科学では解明しきれない不可思議の出来事が入り混じった、恩田陸作品ならではのもので、終わり方もオープンエンドで投げるといういつものでした。私は現実と夢が融合しきって別世界を構築したのかなあと思ったのですが、「夢違というタイトルから、夢によって未来が変わって、パラレルワールドに移行したんじゃないか」という意見を読んで、なるほどーと思いました。だとすると結衣子は死なず、浩章と一緒にいる未来に、夢が変わり、結衣子は自分の願いを叶えることができたわけだ。

少し前に一斉を風靡した「東大ノート」のまとめ本、の二冊目。デザインの勉強のつもりで読んでみたんですが、ノートって個性が出るんですねえ! 自分がそういう勉強から遠ざかってもうだいぶと立つので、頭のいい人のノートを見る機会がなく、今回初めて見ました。みんな綺麗に書くなー。
私は授業ノートとテスト勉強用のノートを作る人間で、それは社会に出てからも、殴り書きのようにばばばっと素早くとるメモ用のノートと、まとめノートを作るようにしていますが、このまとめノート、綺麗に書けないんですよね……。そして綺麗に書くのを諦めるという。
この本は東大ノートに加えて、京大ノートも特集しており。東と西の文化というわけではないでしょうが、やっぱりちょっと地域性が出るものなのかもしれませんね。そう、何故かやたらとカラーペンを使いたがる気がするんだ関西は……。

憂鬱な毎日を送るアンナのもとに、10年ぶりの手紙が届いた。差出人は、アンナの腹心の侍女だったリリヤ。「今こそ、あの事件の真相についてお話しできるのではないかと思い、筆をとりました」——10年前、名家の子息・キリルに見初められ、誰もが羨む結婚を間近に控えながら、キリルの弟との密会を重ねていたアンナ。その先に起きた、不可解な事件…。リリヤの手紙が明かす、衝撃の真相とは…!?(裏表紙より)
こういうの出してくれるからコバルトが好き……。短編の「妖精の庭」「夏の夜の夢」表題作の中編「嘘つきたちの輪舞」の三編が収録されています。
どれも、古いヨーロッパの時代の雰囲気を残す、華やかでいて陰鬱で、古いものと新しいものが混沌と入り混じっている、寂しい雰囲気のお話。どの話も、悲しい……。
「嘘つきたちの輪舞」は、全員、嘘つき、というすれ違いが生みだした悲劇なんですが、それアカーン!! と叫びながらもページをめくる手が止まりませんでした。全員がだめだってわかってて行動してる感じとか、なぜ嘘をつき続けることを選ぶのかとか、最後まで頭を抱えてしまう。この、死と悲劇と、遺された者たちっていうシチュエーションが、素晴らしいくらい陰鬱。この終わり方をしたこの話に拍手を送りたい。私は少女小説でこういう話があってもいいと思うんだ!
すごく面白かったです。

凛々しく純情な少女マリアーヌは、無自覚に令嬢を虜にしつつ可愛い乙女を目指す日々。ロベルト王子の特別扱いにトキメキながらも、過去のトラウマからそれを恋とは結びつけられずにいた。王宮ではローズウィークという祭が始まり、王子はレディ達に大人気。無意識に焼きもちを焼くマリアーヌに、思わずロベルトは愛の告白を! しかし、告白はカイルによって曲解され思わぬ方向へ!? 薔薇咲く王宮で、恋と陰謀の幕が開く! (裏表紙より)
『レディ・マリアーヌの秘密』の続きにして完結巻。短い! そして思った方向と違うところへ落ちてしまった!
前巻ちょっとファンタジー要素が入ったので、それ関係の陰謀もありかと思ったら、王宮恋模様、対王子様、という感じになっており、糖分高めで甘かったんですが、いろいろと消化不良ー! マリアーヌにはもっと騎士然としているところを見せてほしかった!
しかし、まるっとお祭りの話っていうのはいいですね! 着替えがあったりハプニングがあったりして楽しい! そして、ミリエールがとってもかわいい! この子はきっと大人になったら美人で策士なお姫様なんだろうなあ。その話が読みたい……。
ロベルトのフェロモンたっぷりのヒーロー感もよかったし、マリアーヌがそれにほだされてしまうところも見たかったですが、楽しいシリーズでした。

親も子も、どうすればいいのか、誰に相談すればいいのかわからず、気持ちばかりが焦ってしまう。ハローワークを訪ねてみても、同じ求人がグルグル回る“カラ求人”や、非現実的な“神様スペック”を求める企業が少なくない。そうこうしているうちに、時間だけが過ぎていき、やがて家族ごと地域に埋没してしまう——。ひきこもりが「長期化」「潜在化」する中で、当事者たちによる外に出るための新たな動きを探った。(帯より)
2014年10月刊行。当事者の実例よりも、より社会的な要素から話が始まります。
引きこもりの調査では、四十代以上は弾かれている場合が多いとか、初めて知りました。確かに、今は若者の引きこもりの方がよりクローズアップされている感があるけれど、一人暮らしの中年の人(特に男性)は昔からよくいるような気がする。
そういった人たちは、失業をきっかけに外への関わりを見失って、家に引き守るようになる。仕事、というのは、生活の糧を得るためのものだけれど、一度失うと居場所を失うも同然という感覚、よくわかる。
そういった失業者の問題、ハローワークにおける求人の現状も取り上げつつ、話は引きこもり支援活動、当事者、親たちの活動に至ります。
結論的には、とにかく外へつなげることが大事ということなのかな。移動費もない、生活費すらない、そういう中でどのように支援すべきかという問題の解決は難しいけれど、親がいる状況で引きこもっている人は、外との関わりを、きっかけを得るべきなのだろうなあ。家族という世界が、とても狭いものだということに気づければ、変わることもあるかもしれない。

「だから——ルビーウルフ様もお花を飾りましょう!」
にこにこと笑いながら、キャスはルビーウルフの手をがっちりと掴む。
城中がお祭り気分に浮かれていた。
花飴選び。それは未婚の男女を結びつけるための行事だった。この日になると、独り身の女は各々の好きな花を胸元に飾り、その花を目当ての男性に取ってもらえたら、めでたく恋人成立。
「そういえば、ジェイド様のまわりにも、この日になると用もないのに近寄りたがる人が増えますね」
関係ないよと言いながら、やっぱり気になるルビーウルフ。しかも彼女が儀式のルールを知らなかったために……。
グラディウス城は今日も大騒ぎ! 狼王女の冒険譚、これが本当の大団円!(カバー折り返しより)
短編集2。ああー! 短編集の1に気づかなかったばっかりに、悔しい思いをしています。これから本屋さんに探しに行こう……。
本編ではしっかりした足取りで、自分自身の気持ちを確認し、それを伝えあった二人でしたが、この巻での二人は、そういうことを前提とした、ちょっと甘めの優しい短編が多くて、にやにやするところがたくさんありました。
いやしかし、それにしてもジェイドはなかなか理性の人だな……。
1巻だと、結構すれた感じのきつい人物かと思えたんですが、巻を重ねるごとに、しっかりとルビーを支える、穏やかで優しい、気苦労性の青年になっていましたね。懐広いわー。かつ理性の人って、おいしいわー……笑 だから「君に捧げる永遠の花」はたいへんごちそうさまでした。
シリーズ、短編集1は読めてませんが、すっごく面白かったです! ありがとうございました!

陸路を使い帰国の途についたルビーウルフたち。神具は失われたまま、見えない敵にいつ襲われるかという危険と隣り合わせの旅路であった。しかも——
「ねえ、暑いのよ。扇いでちょうだい」
温室育ちのコロナード王国の姫君・エミリエンヌは、お荷物以外のなにものでもない。イライラを募らせながらたどり着いた砂漠の国境で、一行は何者かの魔法攻撃で離れ離れになってしまったのだ。
お荷物エミリエンヌと二人きりという貧乏くじを引いたルビーウルフ。そんな彼女に、さらなる試練が降りかかる。
追い込まれた極限状態の中で、ルビーは己の奥底に眠っていた感情に気づく。
狼王女の冒険譚、最大クライマックス!(カバー折り返しより)
最終巻だとは思わずぼーっと読んでたら、本編の最後の話だとあとがきに書いてあってびっくりしました。いつまでもルビーの物語が続いていくように感じていたから。
いやあ、淡路さんの作品は、『花守の竜の叙情詩』が最初に読んだものだったので、すごくしっとりしたリリカルな話を書かれる方かと思ってたんですけど、違った。淡路さんって、すごくすごく丁寧で、無駄のない、綺麗な話を書かれる方なんだ!
ルビーウルフは、古き良き、というのか、元盗賊の女王と伝説にまつわる王道ファンタジーで、登場人物の配置、その世界観を表現するにふさわしい道具、設定がきっちり整頓されていて、とても読みやすくて入り込みやすい、美しい構造の話だと感じました。読んでいて、すっと入ってくる。ささいな台詞まで気を配られているし、決め台詞もかっこいいし。
あくまでルビーたちは自分たちの手の届く範囲で、できることをしながら、ついでに世界も守ろうという感じで、その距離感もなんだか心地よかったなあ。