読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

18世紀、ロシア——。ピョートル大帝一家は宮廷の中心にいた。欧州の貴族には田舎者と馬鹿にされることもあるけれど、ロシア宮廷では誰もが自分たちに道を開け、頭を垂れる。大公女アンナは、ただただ幸せな毎日を謳歌していた。だがある日突然、アンナは美貌の青年貴族と婚約することになる。それが、歴史を揺るがす、大事件へと発展していくとも知らずに…!! 2013年度ロマン大賞受賞作!!(裏表紙より)
「恋文」にまつわる物語。かなり込み入った宮廷事情を、まだ年若く子どもっぽいところもある、けれど聡明な少女、大公女アンナの視点から見る。
後半かなりばたばたと畳んでいった感じはあったのですが、歴史ロマンはやっぱりいいなあ! 今この時の状況はこうだけれど、最後にはこうなる、というのが、すごくどきどきわくわくする。物語の余韻に浸りました。
アンナの恋愛事情はわりとさっぱりだし、父大帝周辺や陰謀などのどろどろ具合の方に重きを置かれているように思えたんですが、登場するアンナとリーザ姉妹の教育係、マリア・カンテミールの存在がすごくいい! アンナが成長し、マリア(理想の貴婦人像)に近づいていって、激怒した大帝を制止したシーンは、それまでマリアが担っていたであろう役割を果たしたように感じられて素晴らしくかっこよかった!
素敵な歴史ロマンだった。面白かった!
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「あなたの本当の目的というのは、もう一度人間になること?」
大学生になった春、美綾の家に迷い込んできたパピヨンが「わしは八百万の神だ」と名乗る。はじめてのひとり暮らし、再会した旧友の過去の謎、事故死した同級生の幽霊騒動、ロッカーでの盗難事件。波乱続きの新生活、美綾は「人間の感覚を勉強中」の超現実主義の神様と噛み合わない会話をしながら自立していく——!(裏表紙より)
萩原さんの新作は、不思議なことと人の心の影の部分を描く現代もの。弱々しいわけではないけれど女子校育ちで純粋で真面目な性格をしている美綾が、八百万の神を名乗るパピヨンとの同居生活をする話。
大学進学の、入学時の空気感や、居場所を探したり、人の見方が変わったりする、すくすくと育つ芽みたいな印象が柔らかくってとても心地よくって、だから人の心の影の部分が痛くて怖くて。真相の部分を読むと、美綾は強いなあ……と思いました。今回出てきた人たちが今後に関わってくることはあるのかな。
川森先生がなんだかいい感じなので、この人は結構食い込んできそうだなあ(そして大事なところで選択肢を投げそうだなあ)などと思いつつ、どうぞ次も出ますように!

周期的に発生する天災『星の災禍』により、故郷と家族を失った少年・ラッカウス。今は聖都で神官としての教育を受ける彼だが、その心中には常に疑問があった。
「『星の災禍』とは何なのか」
次の犠牲者が出る前に答えを知りたい。衝動的に禁忌の森へと忍び込んだ彼は、無垢なる少女シースティと出会う。彼女に惹かれ、人目を盗んで森に通うラッカウスは知らなかった。彼女が、触れてはいけない世界の秘密に繋がっているということを…。
「シースティ。君を悲しませたりしない。この先ずっと」
美しくて寂しくて、とても透き通った物語で、あとからじわっと沁みるようにして切なさを覚えて、それを大事に抱えて生きていたいような、ささやかなお話だったように思います。
巫女ヴィリヤの力の恩恵を受けて、小さな奇跡の力を用いる神官。星が降ることによって人が死に絶える『星の災禍』を生き残った者は、必ず強い力を持つため、神官となるべく修行を積む。そして、神官は、多くが孤児や、家族に見向きされない長男以外の子どもが多い。そんな、『星の災禍』を生き残った少年ラッカウスが、禁じられた森の塔に住む、感情や言葉を知らない少女が星を受け止めるのを目撃したことから、世界の秘密につながっていく。
ラッカウスと、シースティと名付けた少女の交流が、暖かいのに悲しい予感しかしないのがなあ……。一緒にどこかに逃げよう、という夢を、必死にあがいて抱えたラスト周辺も、その後の彼の選択も、悲しいけれど綺麗で。
この物語に登場するいろんな人が、それぞれの意味でひとりぼっちだというのが分かる瞬間に、ぶわっとこみ上げるものがありました。素敵な物語でした。

「月経とは?」「摂食障害について教えてください」「セックスが苦痛です」「むなしくてたまりません」「子どもがひきこもっています」「別れたい」「恋をしました」「一人で死ぬのが怖い」……。年を経ても尽きない女の悩み。いくつもの修羅を引き受け、ひたすら生き抜いてきた著者が、親身に本音で語りかける人生の極意とは。(カバー折り返しより)
女性ならではの悩み、女性としての身体、病気、恋愛、結婚、家族、人生などなど、一生にまつわる悩みを著者の伊藤さんが回答する形式。もうすっぱりきっぱり、中庸性とか平等とかなく、完全に女性の視点からの回答でした。「援助交際していたことを彼に言えない」の答えが「言わなくていい。その時は必要だった。彼に向かい合っている今、やってないならそれでいい」ということなのだから、清々しい。
私はここまで人生も達観できてないし、というか女性という性別も俯瞰できていないので、読んでいてまだぴんとこずに読みました。多分、好みとしては少女性のなんたらを読む方が楽しいからなんだとも思うんですけれども。

ミモザの前に突然現れた、二頭の狼を連れた迷い人。葡萄酒色の瞳と長い髪を持つ少女ルビーウルフ、優しい碧色の瞳を持つ青年ジェイド、そして人に飼い慣らされた狼フロストとケーナ——かけ落ち途中の恋人同士と言うには、ちょっと風変わりな一行。
神国グラディウスの端、街道からはずれた森に兄と二人だけでひっそりと暮らす口のきけない少女ミモザ。彼女と足に障害を持つ兄ラスティが、人里離れたこんな不便な地で暮らすのは、絶対に人に知られてはならない秘密があったから。
しかし不思議な魅力を持つ迷い人一行に、ミモザは心を開いていき——。
グラディウス軍に追われる、王女になる前のルビーウルフが、心に傷を抱える兄妹に小さな奇蹟をもたらす「クローバーに願いを」の他、全7編で贈る小さな小さな物語、第1弾!(カバー折り返しより)
もう本編も読んでしまったし、短編集の2も読んでしまって、ちょっと遡って1を読んだわけですが、これで私の中でルビーウルフが完結しました。
最後まで、すっごく楽しかったシリーズでした! 短編集まで全部、面白かった。
ルビーとジェイドの物語、盗賊団時代の話、双子の妹ちゃんの話、風邪ひきの話、ミレリーナとロヴィンの話などなど。すごく物語っぽいのはミレリーナとロヴィンの話なんですけれども、ルビーウルフの物語がいいと思うのは、日常的な挿話が、すごくあったかくて楽しいところ。もう本当に大好き。
おもしろかった。

戦後、我が国で処刑された死刑囚は六百人以上にのぼる。しかし密行主義といわれる現行の死刑制度の中で、我々は確定囚のその後を知ることは出来ない。彼らが処刑までをどのように生き、どのようにして人生を終えるのか……。
二十年以上にわたり、“死刑”を追い続ける著者が、世間を騒然とさせた十三人の死刑囚の最期を通して、ベールに包まれた死刑制度の実態に迫る。衝撃のドキュメント!〈解説 牧太郎〉
死刑が確定した囚人の、簡単な略歴と死刑が確定した犯罪についての説明、そして、刑務所に収容された後、死刑が行われるまでの日々を記したもの。
刑務所というと「グリーン・マイル」で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」なんですけれども、そういうものとはまた違った……けれど一緒のような……。
お迎えが来るまで、彼ら死刑囚は、特に日本人は、だいたい模範的な囚人になる。宗教に帰依し、穏やかな人柄になり、短歌や俳句を詠み、死ぬ間際には「あの世で被害者の方にお詫びすることができます」「私のような者に先生方(刑務官たちをこう呼ぶらしい)ありがとうございました」と言うという……。この本に書かれている死刑は、まだ昭和の頃のことなので、今はきっと形も違っていると思いますが、本当なのだろうか、とちょっと疑うところもあり……。
良心を持たなかった、あるいはそれが一部欠けていたために、殺人を犯した者が、果たして神様を信じるようになるのだろうか? と。ここに書かれている死刑囚たちは、まるでお坊さんのお説教のような言い回しをしているので、心の底からそれを信じているようにも読めて、そうなのかなあと。今はどうなってるのかな。

相澤奈々、まもなく二十五歳。平凡で地味な毎日だけど、恋愛も仕事も順調だった。ところが、そんなある日、奈々は、途中入社してきた後輩に、恋人を奪われてしまう。精神的にボロボロになった奈々がすがりついたのは、クールな上司・樋口だった。
約束したのは、大人の関係。割り切った関係のはずだったのに、お互いに惹かれていって……
一度傷ついたからわかる、この恋の大切さ。甘いだけじゃない、大人のラブストーリー。(裏表紙より)
エタニティってだいたい甘々だったりらぶえっちだったり、というイメージだったんですが、オフィスラブものでも、これは結構ビターな感じ。主人公が清純とかそういうのじゃなく、すごくしっかりした考え方の持ち主で、だからこそ恋人を奪われてだめになってしまうという。そこから上司との関係が始まり……という、繋がり方もやり取りも、常にお互いが傷ついている感じがして、読んでてずっと痛々しい。だから、ちゃんと結婚できてよかった。

夢の映像を記録した「夢札」、それを解析する「夢判断」を職業とする浩章のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する、集団白昼夢。浩章はパニックに陥った子供たちの面談に向かうが、一方で亡くなったはずの女の影に悩まされていた。日本で初めて予知夢を見ていると認められた、結衣子。災厄の夢を見た彼女は——。悪夢が現実に起こるのを、止めることはできるのか?戦慄と驚愕の新感覚サスペンス!(裏表紙より)
ドラマの「悪夢ちゃん」の原案だということですが、そうでした、あの時間帯のドラマは、原作小説から結構かけ離れた改変をするんだった(という思い込みが私にはあります……)。
時間と場所は特定できないけれど、予知夢をみることができる結衣子。彼女が見た大事故の夢が、彼女自身の最期だった。結衣子が死んでから十二年。夢判断をする職についていた浩章は、結衣子がまるで生きているかのような幻をみる。けれどそれは本当に幻か? 折しも、とある学校で集団白昼夢事件が起こっており……。
どこかのエッセイで「無意識をめぐる冒険」を書きたいということを書いておられたような気がするのを、読み進めていて「無意識をめぐる」というワードが出てきてはっと思い出しました。
現実と夢と、科学では解明しきれない不可思議の出来事が入り混じった、恩田陸作品ならではのもので、終わり方もオープンエンドで投げるといういつものでした。私は現実と夢が融合しきって別世界を構築したのかなあと思ったのですが、「夢違というタイトルから、夢によって未来が変わって、パラレルワールドに移行したんじゃないか」という意見を読んで、なるほどーと思いました。だとすると結衣子は死なず、浩章と一緒にいる未来に、夢が変わり、結衣子は自分の願いを叶えることができたわけだ。

少し前に一斉を風靡した「東大ノート」のまとめ本、の二冊目。デザインの勉強のつもりで読んでみたんですが、ノートって個性が出るんですねえ! 自分がそういう勉強から遠ざかってもうだいぶと立つので、頭のいい人のノートを見る機会がなく、今回初めて見ました。みんな綺麗に書くなー。
私は授業ノートとテスト勉強用のノートを作る人間で、それは社会に出てからも、殴り書きのようにばばばっと素早くとるメモ用のノートと、まとめノートを作るようにしていますが、このまとめノート、綺麗に書けないんですよね……。そして綺麗に書くのを諦めるという。
この本は東大ノートに加えて、京大ノートも特集しており。東と西の文化というわけではないでしょうが、やっぱりちょっと地域性が出るものなのかもしれませんね。そう、何故かやたらとカラーペンを使いたがる気がするんだ関西は……。