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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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複合汚染 (新潮文庫)
工業廃液や合成洗剤で河川は汚濁し、化学肥料と除草剤で土壌は死に、有害物質は食物を通じて人体に蓄積され、生まれてくる子供たちまで蝕まれていく……。毒性物質の複合がもたらす汚染の実態は、現代科学をもってしても解明できない。おそるべき環境汚染を食い止めることは出来るのか? 小説家の直感と広汎な調査により、自然と生命の危機を訴え、世間を震撼させた衝撃の問題作!(裏表紙より)

昭和50年に発行された本の文庫版を読みました。
きっかけは選挙戦において、協力した候補者が環境汚染を訴えたことから。水質、土壌、大気の汚染が進み、今私たちが口にしているものは……と考え始めてその実態を明らかにしていく内容。この当時そうした化学物質による環境汚染は、警鐘を鳴らさざるを得ないほど深刻なものとして受け止め始められたのだなあと思う。出てくる人たちの「この物質は人体にどのような影響を及ぼすのか?」と問われた時のはっきりとした回答のなさに、うーんと唸る。はっきりと回答できないのはわかるけれど、あまりにも無知すぎるのでは。でも現代を生きる自分もあまり考えずに保存料がばりばり入っているものを食べているのを思うとなあ。うーん。
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エチュード春一番 第二曲 三日月のボレロ (講談社タイガ)
 パピヨンの姿をした八百万の神・モノクロと暮らして四ヵ月。祖母の家に帰省した美綾は、自身の才能や適性を見出せず、焦燥感を抱いていた。東京へ戻る直前、美綾は神官の娘・門宮弓月の誘いで夜の氷川神社を訪れ、境内で光る蛇のビジョンを見る。それは神気だとモノクロは言う。美綾を「能力者」と認識した「視える」男、飛葉周は彼女につきまとい、仲間になるよう迫る。(裏表紙より)

第二巻。前回の事件の人たちは出てこず、新しい事件に巻き込まれる美綾。今度は神官筋の女性、弓月と、同じく神官筋だけれども危険な能力を持つ飛葉の二人です。
この話の全体像が見えない、というかどこに決着するんだろうなあと思いながら読んでいるのですが、あくまで美綾は普通の人で、たまたま神霊やら古いものに関わってしまったという立ち位置を貫くのかな、という事件の決着でした。最後、乗り込んでいくんじゃないかと思ったのに、使った手段がごくまっとうだったので。
このシリーズの空気感、大学生ということだったり、友人関係、キャンパスやサークルの雰囲気なんかがしっくり馴染む(リアルとはまた違って、ああこんなふうだったなっていう)感じがすごく好きです。美綾の高校時代の友人、愛里がすごくいいですね。他のみんなと一緒にいるときには気付かなかったのに、二人で会うようになるとその人がくっきりとして、「なんか、いいな」って思う感じ、わかります。
あまねく神竜住まう国 (児童書)
伊豆の地にひとり流された源頼朝は、まだ十代前半の少年だった。土地の豪族にうとまれ、命さえねらわれる日々に、生きる希望も失いがちな頼朝のもとへ、ある日、意外な客が訪れる……かつて、頼朝の命を不思議な方法でつなぎとめた笛の名手・草十郎と、妻の舞姫・糸世の運命もまた、この地に引き寄せられていたのだった。
北条の領主に引き渡され、川の中州の小屋でともに暮らし始めた頼朝と草十郎。だが、土地の若者と争った頼朝は、縛り上げられて「大蛇の洞窟」に投げこまれ……?
土地神である神竜と対峙し、伊豆の地に根を下ろしていく少年頼朝の姿を描く、日本のファンタジーの旗手・荻原規子の最新刊。(カバー折り返しより)

久しぶりに萩原さんの文章を読みましたが、するすると読めて楽しかった。心地いいなあと思いました。
『風神秘抄』の主人公だった草十郎と糸世が、因縁の寄り合わさってしまった頼朝を救い、自分たちにかかった影とどのように立ち向かうかという話です。きっと視点が彼らのままだったらもっと深刻にうじうじしていたんだと思うんですが、頼朝は序盤は状況の世もあって後ろ向きだったものの、ものの見方や考え方がちゃんとしているおかげもあって、草十郎たちの手助けも得ながらまっすぐに神意に対することができていて、すっきり終わってよかった。
だいぶと短い話でもあるんですが、その中でもきらりと光る個性の持ち主がたくさんいますね。嘉丙や河津三郎なんかは特にそう。嘉丙は、大事な時にはいないんだけどなんだか憎めないんだよなあ。
夜の写本師
右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。だが、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにしたことで、彼の運命は一変する。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジスト。月の巫女、闇の魔女、海の娘、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。エイリャの仇をうつべく、カリュドウは魔法とは異なった奇妙な力をあやつる“夜の写本師”としての修業をつむが……。(カバー折り返しより)

月石、黒曜石、真珠を手にして生まれてきたカリュドウは、魔道師エイリャに引き取られて成長する。本を読み尽くした幸せな少年期だったが、世界最強の魔道師アンジストにエイリャと彼女の後継者になるであろう少女を目の前で殺される。逃亡したカリュドウはパドゥキアで写本師の仕事を始める。
魔法の種類の中に本による術がある世界。読み進めながら、闇のきらめきを感じる作品で、語句の選び方や並び方がとても美しくて、すごくいいファンタジーを読んだという充実感を覚えました。
テーマに女性性があるんですが、男と比較してどうこうというわけでなく、男がどうしても求めてやまない力として描かれているのがすごく好き。女としての力を奪われたから男として生まれるっていうところも、その逆もあるっていうことが、大きな世界を感じさせる。
そしてまた魔道と写本っていうのがとても美しい。その地の風景と道具が間近に迫ってくる感じがしてすごくよかった。
麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ (富士見ミステリー文庫)
「決してこの扉を開けては駄目よ」
 先輩からの忠告が頭に浮かぶ。
 メイドの仕事を始めてから5年。シャーロットは主人のフレデリックに対する想いを日増しに募らせていた。彼は人形作家という仕事以上に人形を偏愛していたが、気にならなかった。
 だがフレデリックには愛する妻ミリアムがいた。しかし彼女とは一度も会った事がなく、生活している様子もまったく感じられない。
 人形への偏愛……姿を見せない奥方……。
 とある疑問をもったシャーロットは、好奇心とフレデリックへの想いを抑えられず、ミリアムの部屋の扉に手をかけた。それが恐怖の事件への扉とも知らずに——。
 一つの屋敷で起きる三つの時代にまたがる愛と憎しみの物語。最後まで読み終えた時、貴方ばどこまでも暗く深い悪意の存在に震撼する!(カバー折り返しより)

蓬色の漆喰、白い化粧瓦の屋敷。人形師の主人フレデリックと、部屋から出ない奥方のミリアム。唯一のメイドであるシャーロットは、奥方は人形でないかと疑う。
そして別の時代。日光を嫌う妹のために、蓬色の漆喰と白い化粧瓦の屋敷に家族で引っ越してきたルシアラは、以前の住人のものと思しき手記を手にする。
読み進めていく中で、だいぶと思い込みが強い言い回しが使われているので、かなりミスリードを誘われているなあとは思ったんですが、ラストが近付くといろんなブロックがすごい速さで組み替えられていって、ああそういうことなのか! という結末になるミステリーでした。読み終えてなお、何もかもが報われなくていやあな感じが残る……。救いになるような人が誰もいないせいだったのかな。
バカが全裸でやってくる (メディアワークス文庫)
この作品は、フィクションです。
 僕の夢は小説家だ。そのための努力もしてるし、誰よりもその思いは強い。お話をつくることを覚えた子供の頃のあの日から、僕には小説しかなかった。けれど僕は天才じゃなかった。小説家になりたくて、でも夢が迷子になりそうで。苦悩する僕のもとにやってきたのは、全裸のバカだった。大学の新歓コンパ。そこにバカが全裸でやってきた。そしてこれが僕の夢を叶えるきっかけになった。こんなこと、誰が想像できた? 現実は、僕の夢である『小説家』が描く物語よりも奇妙だった。(裏表紙より)

小説家になりたいと思っている『僕』。新歓コンパに乱入してきた全裸の『バカ』と関わるようになって、大学生活を放り出して執筆し始める。同級生の売れっ子作家、辛辣な甲斐抄子に近付き、やがて……という話から、いつの間にか創作なのか現実なのか分からない挿話が挟まって、あとがきを読んで悔しくなりました。第一章読み返したくなったわ!
全裸=自分の作品、さらけ出したもの。バカ=小説にとりつかれた者なんですね。バカはバカでも、愛すべきバカだなあなんて最後に思ってしまったのは、私自身もやっぱりバカだからなんでしょうかね。
黒い季節 (角川文庫)
身のうちに病を飼い、未来を望まぬヤクザ「藤堂」、記憶を喪い、未来の鍵となる美少年「穂」、未来を手にせんとする男「沖」、沖と宿命で結ばれた異能の女「蛭雪」、未来を望まずにはいられぬ少年「誠」、誠と偶然で結ばれた異能の女「戊」——縁は結ばれ、賽は投げられた。世界は、未来は変わるのか?
本屋大賞作家、冲方丁が若き日の情熱と才能をフル投入した、いまだかつてない異形のエンタテインメント!!(裏表紙より)

ヤクザと異能もの。伝奇というのかな。ヤクザの抗争に、異能を持つ集団が関わって、この世界の裏側に存在する不可思議な力を交えて戦うことに。
主人公たちの中でメインの藤堂。刑務所に行ったこともあるヤクザで、ずっしりした大人かと思いきや、作品全体がすごく若々しい雰囲気になっていて、重くもなく軽くもなく、っていうバランスが不思議だ。穂が無垢というか、まっさらゆえに最強っていうところがすごく好きです。
この作品が原点として、これ以降の冲方丁作品をみていくと、いろいろ要素が見えて面白いなあ。
奇談蒐集家 (創元推理文庫)
自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。——新聞の募集広告を目にして酒場を訪れた客は、奇談蒐集家を名乗る男と美貌の助手に、怪奇と謎に満ちた体験談を披露する。鏡に宿る美しい姫君との恋、運命を予見できる魔術師との出会い……。しかし、不可思議な謎は、助手によって見事なまでに解き明かされてしまう。安楽椅子探偵の推理が冴える、連作短編集。(裏表紙より)

「自分の影に刺された男」「古道具屋の姫君」「不器用な魔術師」「水色の魔人」「冬薔薇の館」「金眼銀眼邪眼」「すべては奇談のために」の七つの短編が連作になっています。
奇談、と呼ばれるような不思議な話をしたら、男とその助手に真相を解き明かされる、という流れなのですが、語り手が違うとこうも、文体から見るものから印象から違うものになるのだなあ、というのがよくわかって勉強になりました。
謎自体は読んでいて結構簡単に解けるのですが、最後の最後、「すべては奇談のために」で謎が解けてすっきり、という気持ちをひっくり返されるのが意外で、えーって思ったんですけど、なんというか、オチと一緒に、そういう不思議があってもいいかなあ、なんて思いながら読み終わりました。
夜のだれかの玩具箱(おもちゃばこ) (文春文庫)
温厚な父が秘めていた40年前の不思議な恋、江戸から消えた女房が見せる奇妙な夢、少年時代の後悔を振りきれない男の帰郷……。切ない恋愛から艶めく時代小説まで自在に描きだす、著者の才が冴えわたる6篇。恐怖や迷いに立ち止まってしまった大人たちの、切なくて、ちよっと妖しい世界を詰め合わせました。自作解説付き!(裏表紙より)

「仕舞い夏の海」「うちの猫は鼠を捕りません」「夢女房」「お花見しましょ」「蛍女」「もう一度さようなら」の六編。『朝のこどもの玩具箱』よりかは、ちょっと不思議、かつ怖い話が多いかな? 相変わらず読みやすくてあっという間に読んでしまったのですが、やっぱりちょっと物足りない……笑
朝のこどもの玩具箱(おもちゃばこ) (文春文庫)
目が覚めたら魔法のしっぽが生えていたイジメられっ子、父を亡くし若い継母とふたり年を越す高校生……。児童文学から恋愛小説、SF、時代小説まで、ジャンルを超えて活躍する著者ならではの、色とりどりの6篇が入った“玩具箱”。明日への希望きらめく瑞々しい気持ちをギュッと詰め込みました。文庫オリジナルの自著解説を収録。(裏表紙より)

「謹賀新年」「ぼくの神さま」「がんじっこ」「孫の恋愛」「しっぽ」「この大樹の傍らで」の6編。本当に短い話ばかりで、どちらかというと児童文学に近い感じかなあ。すごく読みやすいけれどちょっと物足りない。
「孫の恋愛」が好きです。狐の一族がいて、諏珠という美しい老女狐と家族の話なんですが、ちょっと色っぽくて、ふわふわと暖かくて、切ない。
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Author:月子
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