読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
身のうちに病を飼い、未来を望まぬヤクザ「藤堂」、記憶を喪い、未来の鍵となる美少年「穂」、未来を手にせんとする男「沖」、沖と宿命で結ばれた異能の女「蛭雪」、未来を望まずにはいられぬ少年「誠」、誠と偶然で結ばれた異能の女「戊」——縁は結ばれ、賽は投げられた。世界は、未来は変わるのか?
本屋大賞作家、冲方丁が若き日の情熱と才能をフル投入した、いまだかつてない異形のエンタテインメント!!(裏表紙より)
ヤクザと異能もの。伝奇というのかな。ヤクザの抗争に、異能を持つ集団が関わって、この世界の裏側に存在する不可思議な力を交えて戦うことに。
主人公たちの中でメインの藤堂。刑務所に行ったこともあるヤクザで、ずっしりした大人かと思いきや、作品全体がすごく若々しい雰囲気になっていて、重くもなく軽くもなく、っていうバランスが不思議だ。穂が無垢というか、まっさらゆえに最強っていうところがすごく好きです。
この作品が原点として、これ以降の冲方丁作品をみていくと、いろいろ要素が見えて面白いなあ。
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自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。——新聞の募集広告を目にして酒場を訪れた客は、奇談蒐集家を名乗る男と美貌の助手に、怪奇と謎に満ちた体験談を披露する。鏡に宿る美しい姫君との恋、運命を予見できる魔術師との出会い……。しかし、不可思議な謎は、助手によって見事なまでに解き明かされてしまう。安楽椅子探偵の推理が冴える、連作短編集。(裏表紙より)
「自分の影に刺された男」「古道具屋の姫君」「不器用な魔術師」「水色の魔人」「冬薔薇の館」「金眼銀眼邪眼」「すべては奇談のために」の七つの短編が連作になっています。
奇談、と呼ばれるような不思議な話をしたら、男とその助手に真相を解き明かされる、という流れなのですが、語り手が違うとこうも、文体から見るものから印象から違うものになるのだなあ、というのがよくわかって勉強になりました。
謎自体は読んでいて結構簡単に解けるのですが、最後の最後、「すべては奇談のために」で謎が解けてすっきり、という気持ちをひっくり返されるのが意外で、えーって思ったんですけど、なんというか、オチと一緒に、そういう不思議があってもいいかなあ、なんて思いながら読み終わりました。
目が覚めたら魔法のしっぽが生えていたイジメられっ子、父を亡くし若い継母とふたり年を越す高校生……。児童文学から恋愛小説、SF、時代小説まで、ジャンルを超えて活躍する著者ならではの、色とりどりの6篇が入った“玩具箱”。明日への希望きらめく瑞々しい気持ちをギュッと詰め込みました。文庫オリジナルの自著解説を収録。(裏表紙より)
「謹賀新年」「ぼくの神さま」「がんじっこ」「孫の恋愛」「しっぽ」「この大樹の傍らで」の6編。本当に短い話ばかりで、どちらかというと児童文学に近い感じかなあ。すごく読みやすいけれどちょっと物足りない。
「孫の恋愛」が好きです。狐の一族がいて、諏珠という美しい老女狐と家族の話なんですが、ちょっと色っぽくて、ふわふわと暖かくて、切ない。
僕は音楽を聴くと、その音楽の世界に意識が飛ぶ“特異体質”の持ち主。でも同級生の静原秕奈の歌声には参った。僕は完全に現実を離れ、すっかり異世界に取り込まれてしまったのだ。こんな鮮烈な体験は珍しい。現れたのは螺旋の塔。そして最上階には少女がひとり閉じ込められていた。彼女はいったい何者? 個性的な登場人物たちが織りなすユーモラスで切ない、ひと夏の音楽ファンタジー。(第9回トクマ・Edge新人賞受賞作)
音楽を聴くとその世界に意識が飛ぶ、高校一年生の少年が、友人とともに行ったライブハウスで歌っていた同級生の少女と出会う話。高校一年生の夏、不良な友人との友情、個性的でアウトローのようだけれど心優しい大人たち、そして過去の後悔と寂しさと。徳間書店の新人賞ってこういうラノベっぽいような、でも優しくて温かい話を出してくれるので好き。
音楽世界に没入するって、本当に異世界に飛ぶような感じで、そこの住人と会話するので最初はちょっとびっくりしたんですが、そうやって自分と、そして音楽を通じた世界と対話している感じが好きでした。
わたしの人生をあの方の「華」が目覚めさせてくれた——
わたし清少納言は28歳にして、帝の妃である中宮定子様に仕えることになった。華やかな宮中の雰囲気に馴染めずにいたが、17歳の定子様に漢詩の才能を認められ、知識を披露する楽しさに目覚めていく。貴族たちとの歌のやり取りなどが評判となり、清少納言の宮中での存在感は増していく。そんな中、定子様の父である関白・藤原道隆が死去し、叔父の道長が宮中で台頭していく。やがて一族の権力争いに清少納言も巻き込まれていき……。(帯より)
清少納言による、中宮定子との日々を綴ったもの。一人称です。
けれど、清少納言はあくまで語り手であって、藤原一族の権力争いとはほぼ無縁。噂によって定子のもとを辞することもありますが、そのことでひどく思い悩んだりということはなく。あったとしてもひどくあっさりと語られていく印象でした。登場人物に寄り添って臨場感を味わうという話ではなくって、あくまで「こういうことがあったのよ」というのを聞かせてもらっている感じ。血なまぐさい出来事もなく、人の心の機微やすれ違いにはっとする話ではないかなあと。研ぎ澄まされたSFもいいですが、柔らかい文体があたたかい話でした。
ロマネスク建築の写真紀行。ほとんど白黒ですがカラーページもあり。古い建物の写真ばかりなのですが、とても雰囲気があって美しく、どきっとするほどの静謐さでした。なんというか、そこに人が立っていても調和して一枚の絵になっているような。
Amazonに登録がない本で、古書市で一目惚れして買ったのですが、とても素敵な本でした。何度も手にとって眺めていたくなるような。
Amazonに登録がない本で、古書市で一目惚れして買ったのですが、とても素敵な本でした。何度も手にとって眺めていたくなるような。
「みんながこれをやらないから、私に仕事が来る」
声優界に並び称される者のない唯一無二の存在、大塚明夫。その類い希なる演技力と個性ある声は、性別と世代を超えて愛され続けている。バトーへの共感、ライダーとの共鳴、黒ひげに思う血脈、そしてソリッド・スネークに込めた魂——誰よりも仕事を愛する男が、「声優だけはやめておけ」と発信し続けるのはなぜなのか? 「戦友」山寺宏一氏をはじめ、最前線で共闘する「一流」たちの流儀とは? 稀代の名声優がおくる、声優志望者と、全ての職業人に向けた仕事・人生・演技論であり、生存戦略指南書。これは大塚明夫ファンが読む本ではない。読んだ人が、大塚明夫ファンとなる一冊である。(カバー折り返しより)
「声優だけはやめておけ。なぜなら……」というお話。五つの章に分かれていて「「声優になりたい奴はバカである」「「演じ続ける」しか私に生きる道はなかった」「「声づくり」なんぞに励むボンクラどもへ」「「惚れられる役者」だけが知っている世界」「「ゴールよりも先に君が知るべきもの」というタイトルになっています。
読み終わった感想は、「私は社会人に向いていないんだなあ」ということです。いや、自分の状況をいろいろ考えてみている最中なのですが、この本の中には「一度社会に出て、それで向いてないと思ったら」ということが書いてあるんです。なんか、書かないと自分が死ぬ気がするな、ということを最近思っていて。
という自分の話はどうでもよくて、声優・俳優としての世界のいろんな厳しさを、ストレートだけれど攻撃力をなるべく抑えた文体でつづっているので、かなり読みやすくて興味深かった。ほうほう、こういう手段で仕事を取るということもあるのか、みたいなことを感じたりもしておもしろかったです。
実験衛星打ち上げに失敗し、宇宙工学研究から手を引いて、実家である製作所を継いで社長となった佃。だが、取引停止、銀行からの融資の断り、大企業から言いがかりで特許侵害を訴えられ、会社は危機に瀕していた。だが、とある企業が進めている新型水素エンジンの特許を持っていたことによって、運命は大きく回り始める。中小企業と佃の夢をかけた物語は……。
今更ながら読みました、『下町ロケット』。困難に次ぐ困難、どうやって切り抜ける!? 大事なものはなんだ! というお話だったかなあと思いました。
すごく展開がわかりやすくて、だから勝負に勝った! という爽快感が気持ちよかった。そして、続きが読みたいなあ! と思わせる感じでした。こうなったら、佃たちがどこまで行けるのかが知りたい!
若手社員たちの「会社は社長の私物じゃない」っていうのもわかるし、夢を追いかけたい佃の気持ちも分かるなあ……。でも、夢を追いかけるって言える大人でありたいと読みながら思いました。
カナダのカフェで食べたふわふわのワッフル。モンゴルの青空の下、遊牧民と調理した羊のドラム缶蒸し。旅の最終日にバーテンダーが作ってくれたコーヒー味のオリジナルカクテル。石垣島での真夜中の潮干狩りや、ベスト・オブ・クラムチャウダーを決めるべくした飲み歩き。旅先で出会った忘れられない味と人々。美味しい旅の記録満載のエッセイ。(裏表紙より)
小川糸さんは、なぜか分からないけれどエッセイばっかり読んでいる……。小川さんのエッセイって、なんだかほっこり、かわいい。美味しいものと、綺麗な景色と、心根の優しい人たちで世界ができている感じがする。
この本は、たくさん旅に行っていらっしゃる。モンゴル、沖縄、カナダ。特にカナダの長期滞在がうらやましかったなあ! 異国の地でおいしいご飯を食べて過ごすって、いいなあと思いました。