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花が咲く頃いた君と (双葉文庫)
ヒマワリ、コスモス、椿、桜。四季を彩る花が繋ぐ人と人の心——。女友達や同級生、祖父や訳ありの異性との関係をあたたかく、そして切なく描く珠玉の四篇。単行本刊行時、「今年最高の本」恋愛小説部門で二位になり、多くの読者から感動の声と絶賛を得た傑作短編集がついに文庫化。きっとあなたの、大切な一冊になるでしょう。(裏表紙より)

好きだなあああああってごろごろした。
「サマバケ96」「コスモスと逃亡者」「椿の葉に雪の積もる音がする」「僕と桜と五つの春」の四つの短編集。
「サマバケ96」公団に母と二人で暮らしているギャルのアンナと、ふとしたことで彼女と友達になったユカ。中三の夏休み、めいっぱい遊ぼうと計画したものの。この、公団と一戸建てとか、母子家庭と田舎がある家族とか、一緒にいる友達なのにちょっとしたずれにすごく傷ついたりする、この繊細な設定と話な! 好きすぎて机叩く。
「コスモスと逃亡者」少し知能が低い女の子たからと、借金取りに追われているおじさんの短い交流の日々の話。常識みたいなものがぐらぐらしている感じが好き。自分の世界で生きているのが、世の人の「普通」とそぐわない感じ。
「椿の葉に雪の積もる音がする」同居しているおじいちゃんと、両親との微妙な距離に気付き始める年頃の雁子。しかし、ある日おじいちゃんが脳梗塞で倒れてしまう。多分、雁子は「死」というものに初めて触れて、それがすごく身近すぎた。そのぽっかり空いた虚無みたいな悲しみに、すごく自分を重ね合わせた。家族が揃っていて、その中におじいちゃんも当然のように入っているのに、それが不意に奪われることがあるんだ、という理解に、気持ちが追いつかなかったところがよく分かる。
「僕と桜と五つの春」いわゆるコミュ障の純一は、小学生の時、隠れた空き地の桜の木を目にして以来、ずっとそこに通い続ける。中学に上がったある日、隣の席になったちょっと悪い女の子、金萩恵理香と出会い、まるであの桜のようだと感想を抱く。二人の関係性の変化に、大人になるってこういうことなんだな、と思う。世界が開けると、人は少し優しくなる。多分、相手を理解できるからなんだろう。
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