読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
夏です。
読書感想文の季節です。
私自身がまだ学生だということは置いておいて、中高校生、もしくは大学生の内に読んでおきたいという本をあげてみようというエントリです。
私自身が、少女小説、ミステリ、児童文学を全体的にちょっとかじった程度なので偏りがありますが、どなたかのよき読書生活の足しになれればと思います。
10枠のうち、3枠ほど趣味に走っていますが、それも愛嬌ということで。
今回は、[きっと定番編]ということで、大体の方が目にしたり名前を聞いたりしたことがあるであろう10冊をお届けします。意外性はきっとないと思いますが、学生のうちに読んでいたらまた違ったものの見方が出来るかもしれない、と思って大切にしている本たちを選びました。
大体文庫になっているので、お手に取りやすいかと思います。
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
小学生、中学生のときに読みたいなと思います。もう一度、初めて読んだときのあのあふれる気持ちを味わいたいと思う本です。
「学校に行けなくなった」モノを避ける方もいるかと思いますが、どちらかというと、祖母と孫の日々や、子どもらしい繊細な心、心の成長の積み重ねを見るような作品だと思います。
生死を扱う作品でもあるので、悩み多き年頃に出会えれば、何かが見えるかもしれません。
森絵都『カラフル』
中学生のときに読みたい本。学校と家庭での関係を描いた作品です。ラストの衝撃がたまりません。
決して単純ではない、どちらかというと欠点ばかり見える登場人物たちですが、それをぼくがどう受け止めていくかという追体験が染みます。
一方でリアルに感じられすぎて、潔癖な人にはちょっと遠ざけられてしまいそうな本である気もします。
湯本香樹実『夏の庭』
小学校高学年に読みたい本。子どもの心の影を描く湯本作品で、一番、爽やかさが感じられるかなと思います。
老人と交流を持つ理由が不謹慎でどきどきするお話ですが、夏という濃い季節、生死を目の当たりにするというところで、ぜひとも三人組と同じ小学六年生くらいに読みたいと思いました。
芥川龍之介『地獄変』
「大川の水」「羅生門」「鼻」「芋粥」「地獄変」「蜘蛛の糸」「奉教人の死」「蜜柑」「舞踏会」「秋」「藪の中」「トロッコ」収録。
芥川が一番読みやすくて好きだなあという私感で、文豪作品をひとつ。
もし私が読書感想文を書くなら、「地獄変」「奉教人の死」「薮の中」で書きたいと思います。「地獄変」はその凄まじさに。「奉教人の死」はその視点に。「薮の中」はミステリーとしても面白いので、考察を交えて書くと面白いかもしれません。
竹山道雄『ビルマの竪琴』
戦争を描いた作品です。戦争の悲惨さと悲しみを、優しい筆致で書いていると思って、もっと早くに読んでおきたいと思う作品でした。読まないと分からない悲しみと切なさだと思います。
日本兵たちが水島を思う気持ち。水島が考えること。一方で戦争の悲しさ。読み終わった後に考えることが山ほどあります。
ミヒャエル・エンデ 大島かおり訳『モモ』
大人でも読みたい児童文学からひとつ。時間を扱った作品です。エンデの作品では、石畳の町が描かれることが多い気がして、とても外の国という感じがして素敵です。
描かれるのは、時間に追われるということ。時間を節約するということ。その上で、生きること死ぬこととは何か。ではないかな、と思います。
作品の重要人物となるマイスター・ホラと時間を見る場面は、最も美しいシーンだと思います。
サン=テグジュペリ 河野万里子 訳『星の王子さま』
有名すぎるからこそ読みにくいということがあると思うのですが、ぜひとも子どものうちに読む機会があればと思って選びました。王子さまの旅は寓話めいていて、そのシンプルなほど素直なメッセージを受け取れるかどうか、がこの物語の肝であると思うのです。
王子さまと薔薇のシーンは有名かと思いますが、王子さまが「帰っていく」ところが私はとても好きです。苦しいくらいに愛に溢れている。薔薇と出会った王子さまが、「僕」に語って聞かせたことが、きらきらと輝いてここに集結してくる、と思います。
ルイス・サッカー 幸田敦子=訳『穴 HOLES』
「それもこれも、あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ!」というフレーズが繰り返し現れます。ひいひいじいさんのせいで、イェルナッツ家は「呪い」を受けているのです。その言葉の意味が分かったときを始め、物語の結末に向けて、お話の要素のすべてが主人公スタンリーの元に集まってきたとき、思わず歓声を上げてしまいます。そのくらい、大どんでん返しがすごい本なのです。呪いが解ける瞬間は圧巻。読者がそれに気付いた瞬間、どっと感動が押し寄せてくる、それくらいすごいお話だと思います。
ベルンハルト・シュリンク 松永美穂 訳『朗読者』
少年と女性の恋の話、と言い切るには、その背景にある社会的事情、歴史などままならぬことが多く、情熱を秘めているように見えて淡々と静かな物語だと思います。最後まで読むと辛い気持ちになりますが、語り手の「ぼく」の心情を追っていくと、その律儀で真摯な、ひたむきな思いとともに、前述した「ままならぬこと」の悲惨さが浮かび上がってくる……という仕様ではないでしょうか。最後まで悲しく辛いお話であると感じています。
ヒルトン 菊池重三郎訳『チップス先生 さようなら』
一人のひとの人生を100ページほどで描いた物語。チップス先生の回想で、彼の思い出の話です。かなり短いですが、チップス先生の人生の愛おしきことよ、という気持ちになりました。こんな風に年を取っていきたい、何かひとつのことに打ち込んでいきたいとも思いました。
外国作品なので、注釈があっても読みづらいということがありますが、学生のうちにぜひ読みたい、という気分にさせられました。
以上10冊です。
実は昨年途中まで書いていた記事で、書いているうちに夏休みが終わってしまったのでお蔵入りしていたんですが、このたび思い出して書き上げてしまいました。かなり主観が入っておりますが、読書感想文に悩んだら、よろしければ参考にしてください。
学生のうちに、できれば、中学生高校生のうちに読んでみたかった、という本は、年を取るごとにたくさんでてきます。もちろん大人になってもまた違った読み方ができる本は山ほどありますが、誰かに勧められなければ手に取らない、という現状があるようなので、こんなところでひっそり活動してみます。
読書感想文の季節です。
私自身がまだ学生だということは置いておいて、中高校生、もしくは大学生の内に読んでおきたいという本をあげてみようというエントリです。
私自身が、少女小説、ミステリ、児童文学を全体的にちょっとかじった程度なので偏りがありますが、どなたかのよき読書生活の足しになれればと思います。
10枠のうち、3枠ほど趣味に走っていますが、それも愛嬌ということで。
今回は、[きっと定番編]ということで、大体の方が目にしたり名前を聞いたりしたことがあるであろう10冊をお届けします。意外性はきっとないと思いますが、学生のうちに読んでいたらまた違ったものの見方が出来るかもしれない、と思って大切にしている本たちを選びました。
大体文庫になっているので、お手に取りやすいかと思います。
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
中学生のまいは突然学校に行けなくなり、だいすきなおばあちゃんの元でしばらく暮らすことになった。おばあちゃんは、西の魔女。おばあちゃんから魔女修行を受けることになったまいは、何でも自分で決めるが大事だと聞かされる。
小学生、中学生のときに読みたいなと思います。もう一度、初めて読んだときのあのあふれる気持ちを味わいたいと思う本です。
「学校に行けなくなった」モノを避ける方もいるかと思いますが、どちらかというと、祖母と孫の日々や、子どもらしい繊細な心、心の成長の積み重ねを見るような作品だと思います。
生死を扱う作品でもあるので、悩み多き年頃に出会えれば、何かが見えるかもしれません。
森絵都『カラフル』
「おめでとうございます! 抽選に当たりました!」死んだはずのぼくは、輪廻に戻るチャンスとして、下界の人間の身体にホームステイし、生前の罪を思い出すことに。しかしそのホームステイ先は、小林真という冴えない少年。家庭は崩壊の危機。学校生活は最低。けれど――。
中学生のときに読みたい本。学校と家庭での関係を描いた作品です。ラストの衝撃がたまりません。
決して単純ではない、どちらかというと欠点ばかり見える登場人物たちですが、それをぼくがどう受け止めていくかという追体験が染みます。
一方でリアルに感じられすぎて、潔癖な人にはちょっと遠ざけられてしまいそうな本である気もします。
湯本香樹実『夏の庭』
人間が死ぬところを見たい、と小学六年生の男子三人組は、夏休み、ある一人暮らしの老人の家を観察する。やがて老人と少年たちの交流が生まれ、季節はゆっくりと秋へ向かい、少年たちは少しずつ大人になる。
小学校高学年に読みたい本。子どもの心の影を描く湯本作品で、一番、爽やかさが感じられるかなと思います。
老人と交流を持つ理由が不謹慎でどきどきするお話ですが、夏という濃い季節、生死を目の当たりにするというところで、ぜひとも三人組と同じ小学六年生くらいに読みたいと思いました。
芥川龍之介『地獄変』
「大川の水」「羅生門」「鼻」「芋粥」「地獄変」「蜘蛛の糸」「奉教人の死」「蜜柑」「舞踏会」「秋」「藪の中」「トロッコ」収録。
芥川が一番読みやすくて好きだなあという私感で、文豪作品をひとつ。
もし私が読書感想文を書くなら、「地獄変」「奉教人の死」「薮の中」で書きたいと思います。「地獄変」はその凄まじさに。「奉教人の死」はその視点に。「薮の中」はミステリーとしても面白いので、考察を交えて書くと面白いかもしれません。
竹山道雄『ビルマの竪琴』
一九四五年終戦。ビルマにいた日本の隊に、水島という上等兵がいた。彼は降伏しない同胞の説得へ向かうが、彼は戻ってはこなかった。しかし引き上げる兵隊たちの前に、水島そっくりのビルマ僧が現れる。彼は水島か、水島ならば何故帰ってこないのか。
戦争を描いた作品です。戦争の悲惨さと悲しみを、優しい筆致で書いていると思って、もっと早くに読んでおきたいと思う作品でした。読まないと分からない悲しみと切なさだと思います。
日本兵たちが水島を思う気持ち。水島が考えること。一方で戦争の悲しさ。読み終わった後に考えることが山ほどあります。
ミヒャエル・エンデ 大島かおり訳『モモ』
不思議な少女モモは、ある町の円形劇場に住み着いた。彼女は町の住人たちと親しくなっていった。しかしある時、時間どろぼうたちが現れ、時間が盗まれていってしまう。
大人でも読みたい児童文学からひとつ。時間を扱った作品です。エンデの作品では、石畳の町が描かれることが多い気がして、とても外の国という感じがして素敵です。
描かれるのは、時間に追われるということ。時間を節約するということ。その上で、生きること死ぬこととは何か。ではないかな、と思います。
作品の重要人物となるマイスター・ホラと時間を見る場面は、最も美しいシーンだと思います。
サン=テグジュペリ 河野万里子 訳『星の王子さま』
サハラ砂漠に飛行機で不時着した「僕」。彼が出会ったのは不思議な男の子。その小さな王子さまはよその星から来たのだという。砂漠で出会った王子さまは、「大切なことは目では見えない」と話す……。
有名すぎるからこそ読みにくいということがあると思うのですが、ぜひとも子どものうちに読む機会があればと思って選びました。王子さまの旅は寓話めいていて、そのシンプルなほど素直なメッセージを受け取れるかどうか、がこの物語の肝であると思うのです。
王子さまと薔薇のシーンは有名かと思いますが、王子さまが「帰っていく」ところが私はとても好きです。苦しいくらいに愛に溢れている。薔薇と出会った王子さまが、「僕」に語って聞かせたことが、きらきらと輝いてここに集結してくる、と思います。
ルイス・サッカー 幸田敦子=訳『穴 HOLES』
スタンリー・イェルナッツは無実の罪で矯正キャンプに放り込まれた。そこでのプログラムは、不毛にも思える大地にひたすら穴を掘り続けること。実は、それには彼自身も知らなかった大いなる秘密があった。
「それもこれも、あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせいだ!」というフレーズが繰り返し現れます。ひいひいじいさんのせいで、イェルナッツ家は「呪い」を受けているのです。その言葉の意味が分かったときを始め、物語の結末に向けて、お話の要素のすべてが主人公スタンリーの元に集まってきたとき、思わず歓声を上げてしまいます。そのくらい、大どんでん返しがすごい本なのです。呪いが解ける瞬間は圧巻。読者がそれに気付いた瞬間、どっと感動が押し寄せてくる、それくらいすごいお話だと思います。
ベルンハルト・シュリンク 松永美穂 訳『朗読者』
15歳の少年である「ぼく」は、母親くらい年上の女性と出会う。彼女、ハンナはぼくに本の朗読をせがむ。ハンナに対して愛情を抱くようになったぼく。そしてハンナも……。そう思っていたが、彼女はぼくの前から姿を消した。
少年と女性の恋の話、と言い切るには、その背景にある社会的事情、歴史などままならぬことが多く、情熱を秘めているように見えて淡々と静かな物語だと思います。最後まで読むと辛い気持ちになりますが、語り手の「ぼく」の心情を追っていくと、その律儀で真摯な、ひたむきな思いとともに、前述した「ままならぬこと」の悲惨さが浮かび上がってくる……という仕様ではないでしょうか。最後まで悲しく辛いお話であると感じています。
ヒルトン 菊池重三郎訳『チップス先生 さようなら』
チップスはブルックフィールド中学の教師を六十年以上勤め上げてきた。やがて学校の近くに部屋を借り、学生たちの訪れを迎える日々……。彼は回想する、教師生活、妻との思い出、戦争の頃、そして何より学生たちとの日々を。
一人のひとの人生を100ページほどで描いた物語。チップス先生の回想で、彼の思い出の話です。かなり短いですが、チップス先生の人生の愛おしきことよ、という気持ちになりました。こんな風に年を取っていきたい、何かひとつのことに打ち込んでいきたいとも思いました。
外国作品なので、注釈があっても読みづらいということがありますが、学生のうちにぜひ読みたい、という気分にさせられました。
以上10冊です。
実は昨年途中まで書いていた記事で、書いているうちに夏休みが終わってしまったのでお蔵入りしていたんですが、このたび思い出して書き上げてしまいました。かなり主観が入っておりますが、読書感想文に悩んだら、よろしければ参考にしてください。
学生のうちに、できれば、中学生高校生のうちに読んでみたかった、という本は、年を取るごとにたくさんでてきます。もちろん大人になってもまた違った読み方ができる本は山ほどありますが、誰かに勧められなければ手に取らない、という現状があるようなので、こんなところでひっそり活動してみます。
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