読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「四人ゲーム」。まっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、肩を順番に叩きながら部屋をぐるぐる回るゲームだ。とうぜん四人では成立しないはずのゲームを始めたところ、忽然と五人目が出現した! でもみんな最初からいたとしか思えない顔ぶればかり。――行者に祟られ座敷童子に守られているという古い豪壮な屋敷に、後継者選びのため親族一同が呼び集められたのだが、後継ぎの資格をもつ者の食事にのみ毒が入れられる事件や、さまざまな怪異が続出。謎を解くべく急遽、少年探偵団が結成された。もちろんメンバーの中には座敷童子も紛れこんでいるのだが…。(外箱より)
刊行当時読んだ覚えがあるけれど、記録をつける前だったはず。
家の後継者問題で資格のある家族が集められたある日、子どもたちがいつの間にか一人増えていた。座敷童ならぬ「お蔵様」のはずだが、いったい誰なのか、子どもたちも大人たちもわからない。そのうち後継の資格を持つ人間の食事に毒が入れられるという事件が起きる。
呪われているという家を誰が継ぐのか、大人たちの話し合いは絶対に駆け引きだらけでどろどろしていると思うのですが、子どもたちの話なのでそうした嫌な部分は少なく、誰が「お蔵様」なのか、誰が毒を入れたり人を傷つけようとしているのか、という謎解きがメイン。
最終的に、自宅とは別の、広い親戚の家で、たまにしか会わないだろう親族の大人や子どもたちと非日常を過ごす楽しさと物寂しさに落ち着くという、ノスタルジーが感じられる一冊でとてもよかった。
また書籍デザインがよくってなあ。子どもの頃の夏休みに本を読み耽っている気分になりました。

洋菓子店“パティスリー・ラ・サンテ”のオーナー・比呂也は、パティシエの退社で閉店の危機に直面していた。その窮地に現れたのは、比呂也の理想を実現するに申し分のない腕を持つパティシエ・孚臣。だが彼は、先日、成り行きで肉体関係を持ってしまった相手だった!? 『オンとオフの切替さえすれば』自分の理想のために孚臣の採用を決めた比呂也だったが、『こっちも込みで』と伸ばされた手をなぜか振り払うことができなくて……。天才パティシエ×美麗オーナーのデリシャスラブ。(裏表紙より)
味覚は優れているけれど作ることには向いておらず、自身はオーナーに徹している比呂也。次のパティシエを探さざるを得なくなったところ、偶然出会って一夜をともにした孚臣がやってくる。実は素晴らしい腕前の持ち主だと知って雇用関係を結んだけれど、なんだかんだで肉体関係も含む関係になってしまい。
調理場で致すんじゃない! という気持ちになってしまうのは本当にごめんなさい。
ちょっと素直じゃないところのあるオーナーと、言葉が足りないパティシエのお話。姉と兄が絡んでくるところがいかにもBLだなあ。
終盤で比呂也が勝手にこじらせてすれ違っているの、ちゃんと話せばいいもの……と思ってしまった。嫉妬とはいえ態度に出すのよくないよ!
ひたすらにガレット・デ・ロワが食べたくなってしまう作品でした。ああ、あの甘さが恋しいよー!

天才と名高い外科医の高本葵は前世の記憶を持っている。一度目の人生は異世界のある国の貴族令嬢エリーゼで、権力を振りかざした結果、処刑された。その過ちを繰り返さないため、人を救う医師を志したのだ。しかし要請を受けて海外に向かう飛行機が事故に遭い、同乗者たちの治療を優先した結果、命を落とし……次に目覚めたときは何故か終わったはずの前世、しかも時間が巻き戻った状態だった。死の運命から逃れ、罪を犯さないため、エリーゼのやり直しの人生が始まる。
現代から転生して、という前に、一度異世界の前世があって、そこに巻き戻るという、とてもチートがやりやすい設定だなあと思いながら見ていました。一度目と三度目の人生のあれこれは人間関係以外さほど大きく関わらない内容でしたが、現代人の医学知識で無双するの、サクセスストーリーとして派手でわかりやすい。
人を助けたいという思いや、医学の知識、技術といったものは、大人や権力者、政治が絡むと簡単に踏みにじられてしまうものなんだなあ……と思って苦い気持ちになる。エリーゼはとてつもない将来性、自国の利益に繋がるものを秘めた存在だけれど、本当に早く逃げた方がいい……と思ってしまった。リンデンがいるから逃げないんだろうけど。
一方で同じ医者だったり患者だったりは、純粋にエリーゼの知識や技術、心遣いに理解を示したり感謝してくれたりするのが対照的で、だからエリーゼは医者であることにこだわるし、誇りを持っているんだなあと思いました。

ウラシマトンネル、それは入れば欲しいものがなんでも手に入るけれど歳を取る代償を支払うもの。高校2年の塔野カオルは転校生の花城あんずと少しずつ親しくなる。漫画家の才能が欲しい花城と、死んでしまった妹を取り戻したい塔野、願いを叶えるためトンネルを利用すると決めた二人は現象の検証を始める。けれどその道は次第に違っていき……。
原作未読。映像を見て俄然原作を読みたくなってきた。
「欲しいものがなんでも手に入るけれど、自分と外の世界の時間が違ってしまう」トンネルを使う、過去と現在と未来、その全部の狭間で揺れ動く高校生の男女の青春小説。いまの自分の環境のどうしようもなさも含めて現実なんだけれど、どうにかしたい、なんとかしたい、欲しい未来を手に入れたいと足掻くところに胸がぎゅっとなるんだよなあ……。
しかしやっぱりメールってエモいよな。スマホが一般的に普及するより前のガラケーを使っていたり、傘が錆びて古くなったり、というちょっとした描写に時間の流れを感じて、いいなあと思う。

11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。
20年の歳月が流れていた。そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。
子ども時代と大人時代の一日が交換されたのだ、と彼女は話した。
一方、20年後の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれていた。ある目的を達成するために、彼は急いでいた。残された時間は半日に満たないものだった——。
ミリ単位でひかれた、切なさの設計図。二度読み必至、著者だからこそできた、完全犯罪のような青春ミステリー、待望の文庫化。(裏表紙より)
大人と子どもの自分の意識が入れ替わった。すべては幼い彼女を助け、大人の彼女の悲しみを取り除くため。
未来を変える悲しい結末に至るかと思ったけれど、なんとかハッピーエンドになってよかった。本当の起点は何かとか、蓮司と小春の関係の複雑さとか、そういうものを全部飛び越えられたのがこの本の結末、本を閉じた後のことなのかなあ、などと思う。
全体的に淡々しているので、宝くじの当選番号で兄がお金持ちになるという展開も、そのお金をもとに人助けをしていたり、震災のことだったりもさらっと描かれている。そのバランス加減が読みやすさに繋がってるんだろうな。

領土を拡大するとともに各地の甘味をも手中に収めたハプスブルク家。世界に君臨したロイヤルファミリーが愛したスウィーツとはどんなものだったのか。巻末にはハプスブルク家秘伝のレシピを再現、皇家の味をご家庭で。(裏表紙より)
ハプスブルク家の出身者と歴史とスイーツ、そのエピソードをまとめた一冊。読んでいるだけで砂糖が大量に使われているのがわかって口の中が甘くなる……。
お菓子ばかり食べているわけじゃないとは思っても、こんなに甘いものを好き好んでずっと食べていたなら健康を害するに決まっているとわかる。しかし食べる人は食べるし、意識が高すぎて身体を追い詰めるようなことをする人もいるし、さすがハプスブルク家の人たち。極端すぎる。
巻末にあるレシピ集がめちゃくちゃ甘くて美味しそうなので機会があったら作ってみたい。

木かげから飛び出した茂は、声のした方に向けて懐中電灯をすばやく点滅させる。その瞬間、闇にひそんでいた風魔忍者は目がくらみ、屋根からころがり落ちた。だが、そこには茂がばらまいておいたカンシャク玉が……。茂は古道具屋で買った奇妙な機械(タイム・マシン)をいじっているうちに突然、江戸時代の寒村へ来ていた。そこで、人々を苦しめる風魔忍者団を目撃した彼は正義感に燃えて彼等と対決! 現代と過去の対比をたくみにとり入れた光瀬龍の傑作ジュニアSF。(Amazonより)
何も考えずに読み始めて児童書、ジュヴナイルSFなのか、と気付く。
これは子どもの頃に読んだらわくわくしそうだなあ。タイムマシン、江戸時代、忍者、現代のものを持ち込んで友達みんなで無双……。ヒロインの最後も含めてこの作品の魅力だと思います。色々と細かい部分は気にしない方が楽しいやつですね。

特別知能犯捜査係に配属された元機動隊の刑事・上下中。そんな彼の相棒となった泉州院雅は、頭脳明晰ながら人の感情が理解できぬ毒舌家で……。そんな凸凹コンビが立ち向かうは、恋心を弄ぶ卑劣な結婚詐欺事件!!(Amazonより)
元機動隊所属の刑事と、長官の身内で頭脳明晰、顔立ちも整っているけれど世間一般の感覚を持たない先輩刑事、凸凹な二人が初めて組んで捜査に乗り出すのは結婚詐欺事件。
上下刑事が泉州院に対して、教えてやろうとか先輩なのになんて思わないのがとてもいいと思いながら読んでいました。ものすごく柔軟に「そういう人なんだ」と受け入れて上手に付き合っているのに、本人にまったくその自覚がないのがいい感じ。泉州院もそう思っているだろうに表現の方法が健康を心配することになっているっぽいのがおかしい。
結婚詐欺の犯人周りの話、犯人となりすましている人物との関係が、私はあまり考えたことのなかったものだったので、おっ、と思って面白かった。そうだよなあ、似てるもんだよなあと思って。

金剛郭の崩壊、倒幕から約半年が経ち、日ノ本はいくつかの勢力に分かれ、各地で生き残った人々がカバネと戦いながらなんとか生活を続けていた。そして甲鉄城は、北陸の海門駅にいた。カバネが多数巣食う海門を攻略すべく連合軍に加わるが、カバネの動きに、カバネリの生駒は奇妙なものを覚え……。
美馬の反乱を乗り越えていまなお進み続ける甲鉄城。大小の犠牲を払いながらたどり着いた北陸の地で、統率されたカバネの軍団と戦う。カバネリという存在になった生駒が、人かカバネか、と苦悩して、自分はカバネリだと吠えた生駒とは真逆に、激しい怒りや悲しみを暴走させていく敵大将の景之たち。人を人たらしめるものは何か。狭間のものである生駒と無名のコミカルであったりちょっとエロチックな描写だったりでも描かれているのが興味深くて面白いと思います。
それはそれとして最後のダンス、いる?笑 いや楽しいし綺麗だからいいんだけど!

男にだまされふられる度に住む場所を変え、いまは娘のキクりんと小さな漁港に住む肉子ちゃん。太っていて不細工、空気の読めないながら、明るく素直な肉子ちゃんは、焼肉屋の店主に気に入られ、店員として雇われて漁船の家に住むようになり、いまではキクりんも11歳になった。キクりんこと喜久子は学校での出来事や不安定な暮らしに悩む思春期を迎えていて……。
大雑把で世間知らず、太っていて決して美人ではない母と、色白ですらっとしていて、けれど他の女子のように可愛らしく振る舞う性格ではない少女らしい潔癖さを持つ娘。微妙な年頃の喜久子は、同性のクラスメートたちのカーストだったり不安定な暮らしだったり、漠然と不安を感じている。けれど心とは関係なく毎日は続くし、様々な変化も起こって、翻弄されてしまう。
母娘の関係や、思春期の少女の気持ちだったり、すごく丁寧に描かれた作品ですごくよかった。喜久子の気持ちがすごくよくわかってなあ……。それにしてもクラスメート女子の人間関係をこうやってちゃんと理解しているの、すごく頭がいいな。自分に対しても理解が深くて、自分が一番マリアちゃんに怒っている、と気付くところ、すごくぎゅっとなった。
似てない親子に関してはさほど気にしていなかったんですが、そういうことだったのかという描写が挟まるところも、肉子ちゃんの魅力や、母娘の確かな絆を感じられる展開だと思いました。