読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
神の書の呪いを解く“鍵”を見出したヒース。そして三書の解放は、新しい伝説に……? 女子が頑張る、書を巡るビブリオ・ファンタジー最終巻!!(帯より)
物語は終わらなければならない。新しい物語を始めるために。
三書の終わりを記すシーンがとにかく印象的で、それぞれの終わらせ方に信念が見えて、泣いてしまった。シドは終わりを、イルシオーネは自由を、エリカは未来を願ったんだろうなあ。それらはきっと誰もが「物語」に願うことなんじゃないだろうか。
望まずに知の聖騎士として確固たる地位を築いてしまったヒースがおかしい。ただ書というのは攻撃するものだけではないと思うから、きっと彼女の存在は大きな意味があるはず。しかしヒエンが完全にまとわりつく形になっていたのでヒースは大変そうだ。
戦っていた二国のガーディアン能力者たちが協力しあう展開はやっぱり楽しかった。ただ戦っていたそれぞれが何を思っているのか読めなかったのが残念。久しぶりの登場で他の知の聖騎士のビジュアルが想像しにくかったし、みんながもっときゃっきゃと楽しく仕事をしているところが読みたかったなあ。
続けて読んでいたので3巻が二段組になっていて「!!?!?」となりましたが、これで削られていたら泣いちゃうところだったので、たっぷり読めてよかった。
最後のシーンは号泣しました。ここにたどり着くための物語だったと思いました。
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異教の国シテで、大好きな“ランバートル”と神書の隠された過去を知ったヒースは? 女子が頑張る、書を巡るビブリオ・ファンタジー第二弾!!(帯より)
深い傷を負った久遠の書のガーディアン、ザクロを治療するため、黄昏の書の持ち主を頼って敵国シテに赴いたヒース。だが「黄昏の書」の正体と「暁の書」「黄昏の書」「久遠の書」の秘密を知ったことで、自分の愛する物語「ランバートル」が歪められたものであると知ってしまう。
自分を構成する大事な物語が、誰かを呪うものだったと知ったときのヒースの気持ちを思うと、苦しい。自分の存在が揺るがされるみたいできつかったろうなあ……。でもここにきて読者として結構きつかったのは、ヒースのように「大事な物語」を持っていて、思い入れを抱く登場人物が多くないこと。ヒースにとってその真実がどれほど重くて苦しいのか、わかってくれる人がいない気がして。
だからヒエンのことは正直ぶん殴りたかったな! まじで! 理解できないんだろうなあという脱力感も覚えてしまった。
本が国家財産とされるイースメリア。古より伝わる“久遠の書”が目覚めを迎えた時、知の聖騎士・ヒースが図書院で出会ったのは……!?(帯より)
能力と血統から選ばれた者が、特定の書から「ガーディアン」と呼ばれる存在を呼び出し、知の聖騎士となる世界。だがヒースはただの一般人で、定まった書ではない、大切な一冊からガーディアンを呼び出し、防御のみに特化した、戦えない、異質な聖騎士。一部の人間から存在を疎まれ、聖騎士を辞めたいとまで思っていたある日、神が与えた三つの書のうちの一冊が目覚め、その主人と出会う。
読み慣れるまでちょっと時間がかかりましたが、ソヴェリナ寺院にたどり着いてからは物語が動き出した感もあって楽しく読みました。しかし、ヒースとヒエンがどう考えても合わないので展開がだいぶ不安でもある……。それにヒースラッドが何も語らないのが気になります。
幼い頃から妖怪と呼ばれるものの類を目にしてきた夏目貴志は身寄りがなく、自分にしか見えないそれらのために親戚のもとを転々とする日々を送っていた。心優しい藤原夫妻に引き取られた夏目は、祖母レイコの遺品である「友人帳」を手に入れたことで、祖母と関わりのあったあやかしたちをはじめとした、彼らと人々の事件に遭遇する。すべては心優しい友人たちのために。
原作が好きなのでアニメは一期だけを見て終わっていたんですが、最近アニメの新シリーズ制作決定の話を聞いたので、せっかくだからおさらいを兼ねて見始めました。
第三期はシリーズ屈指の名場面であろう、夏目が藤原夫妻のもとに行きたいと言うまでの話が入っています。そんな切ない話の後に、できなかった影踏み鬼をしてあやかしみんなで遊ぶのが、泣ける……。
原作になかなか新規の女子キャラが登場せず多軌が出てくるまで間があった影響か、早々に離脱する笹田が残っているオリジナル展開。また原作で謎めいていた藤原さんがだいぶ初期から登場して結構よく話しているので、原作でしか知らなかった身としては意外でした。どんな人かわからない、からの、めちゃくちゃいい人……というあれがよかったものだから。
王子妃の座を争うライバルの王女が、実は他国の王子様!?
絶対に恋に落ちてはいけない相手、イズディハールを好きになってしまったルフィナ。
二人は人目を忍んで想いを募らせていく。
「何があっても、俺が守るから」
深い口づけと、敏感な部分を容赦なく責める巧みな指。
声を殺して快感を受け止めれば、さらに愉悦が深まって――。
お互いを信じ、周囲の協力を得て、最高の大団円へ!(Amazonより)
因縁のある国同士の王女と王子が互いに惹かれあっていくラブロマンス。
とても可愛らしくてよかったのですが、このタイトルはどうなんだろう。合っていない気がしてすごく違和感がある。何せ冒頭から悲恋エンドの気配がまったくないからなあ。
歴史的に古く、周辺諸国からは害がないと判断されているサンティスの王女が、かつて面子を潰されたと父王が未だ許せずにいるタバール王国の王女に負けるなと、ある国の王太子妃の座を射止めるべく外交に出る。だがその国で出会った妃の座を競うはずのタバールの王女は、なんと双子の兄が身代わりになったものだった。
ロミオとジュリエットのような、国や家が絡んだ困難な恋。ルフィナはより王女らしく成長し、イズディハールは彼女を励ましながら恋を叶えようと努力する。この構図を見ればハッピーエンドにならない方がおかしいというくらいに一生懸命ぶりだったので、二人が幸せになれて本当によかった。
かつて『真実の愛』が蔓延した結果、現在では政略結婚が下火傾向。
男爵令嬢であるアンナが仕事と出会いの両立を期待し、王宮侍女となって早二年。
侍女なのに月の大半を掃除仕事ばかりさせられても、あまり気にせずポジティブに掃除技術の研鑽に努める日々を過ごすアンナだったが、アレな掃除が一番の悩みで——。
煌びやかな王侯貴族の世界の裏側を、王宮侍女アンナのひとり語りで赤裸々に綴る宮廷日常譚。(裏表紙より)
「真実の愛」によって結ばれた王族はそんなことを忘れたような雰囲気で、あちこちで「真実の愛」が声高に叫ばれ、婚約破棄だのなんだのと大騒ぎした後の国。華やかな貴族の世界を、王宮侍女(メイド?)から描いたお話。
王宮にいる主人公のアンナが目にするのはあちらこちらの情事の痕跡。それを掃除するのが仕事(本来の仕事とは違うけれど)という、読んでいるこちらもなんだかなあという顔になってしまう節操のなさ。裏方の人たちはきっとこういう気持ちになるんだろうなあ。
短い文が続くところが読みづらいと感じたり、化粧が上手な設定はどこから? そもそも化粧道具が揃えられる経済状況は? とか、最後にメイドじゃないとばれて喧嘩するシーンは、他のおばちゃんたちからも責められているけれどそこまで仲悪かったの? とか、物語の進行に合わせた設定や展開が始まったように感じられて引っかかるところが多かったな。
侍女でなく下働きのメイドの仕事をしながら、まあいいかと上手くやっていたアンナが、最後に元の場所に戻り、なんならその仕事ぶりを見ていた人たちに今後大事にされていきそうな予感を感じさせてこの巻は終わり。ルカリオがいい人のようなので上手くいってほしいなあ。
ある日学校中の生徒がゾンビと化し、学校に閉じ込められてしまった女子高生のくるみ、ゆき、りーさん。絶望する彼女らを励ました保健室のめぐねえの発案で、学園生活部を立ち上げ、生き抜くことを決意する。隠れていたみーくんを保護し、意見の相違を乗り越えながら、生き抜くと決めた五人。だがついに彼女たちが「卒業」する日がきてしまう。
ゾンビが溢れる世界で、学校で生き残る女子高生たち。それだけでもキャッチーですが、最後の最後にマジかよと思われる意外な展開と、走り出す彼女たちという、青春×ゾンビの掛け合わせが面白い作品でした。アニメも見たくなったぞ。
普通の学校の風景が、まるで夢から覚めるみたいに現実の世界に戻っていく冒頭の描写があるんですが、これが後々大事なオチにつながるものだったことにびっくりした。現実から目を背けたいし、心の中にある大事なものに縋っていたい、彼女たちの気持ちを思うと……。
たった五人で生き延びるにもなかなか上手くいかないんだから、それ以上の数だともっと大変だよなあ、そりゃ内部崩壊もするわ、と他のゾンビ作品に思いを馳せたりもしました。
漫画家の岸辺露伴はオークション会場でモリス・ルブランの『黒い絵』を競り落とす。だがその絵を競り合った男たちに襲われ、危うく絵を盗まれてしまいそうになる。その絵には秘密があり、ルーブル美術館に手がかりがあると知った露伴は、担当編集者の泉とフランスへ飛ぶ。
ルーブル美術館と、岸辺露伴、罪と罰と、黒。美しいものの影と歴史の重みめいたものに、人間の逃れ得ない罪がある。
作品の雰囲気を象徴するものがぎゅぎゅっと詰め込まれている。それができるセンスがすごい。フランスの風景がまた雰囲気があっていいんだよなあ。
「黒い絵」の力が、個人の罪だけでなく祖先の罪を突きつけてくるところが面白い。ジョジョシリーズはあまり触れていないんですが、そういえばあれは血脈の話だったなあ、なんてことを思いました。
絵にまつわる話というと奈々瀬という芸術家にとってのミューズ、運命の女的な登場人物がいるのがロマンだよなあ。岸辺露伴にとってもそうだし、仁左右衛門にとってもそうだったのかもしれない。
ルーブル美術館と、岸辺露伴、罪と罰と、黒。美しいものの影と歴史の重みめいたものに、人間の逃れ得ない罪がある。
作品の雰囲気を象徴するものがぎゅぎゅっと詰め込まれている。それができるセンスがすごい。フランスの風景がまた雰囲気があっていいんだよなあ。
「黒い絵」の力が、個人の罪だけでなく祖先の罪を突きつけてくるところが面白い。ジョジョシリーズはあまり触れていないんですが、そういえばあれは血脈の話だったなあ、なんてことを思いました。
絵にまつわる話というと奈々瀬という芸術家にとってのミューズ、運命の女的な登場人物がいるのがロマンだよなあ。岸辺露伴にとってもそうだし、仁左右衛門にとってもそうだったのかもしれない。
東京のある下町に、年金で暮らす初枝と、押しかけてきた夫婦の治と信代、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。散らかった家で、万引きで生活する一家は、ある日幼い少女が放置されているのを見かねて連れ帰る。秘密を持ちながら身を寄せ合い、擬似的な家族を形成する彼らだが、その日々は終わりを告げて……。
年金暮らしと強請りとは言えない強請りで生活する初枝。わけありの信代と、息子に万引きを促す治。言われるままに万引きをしながらゆり/凛がきたことで少しずつ自らのあり方に疑問を抱き始める祥太、妹の名前を使いながら孤独に生きる亜紀、虐待を受けてこの家族に迎えられることになったゆりことじゅり。
すべてがすべて、寄せ集め。本当の家族ではなく、みんながみんな小さな罪を塗り重ねて、この日々を保っている。それが社会の常識という正しいあり方によって崩されてしまうことは、本当に正しいのか。
正しいんだよ、でもそれだけじゃない。罪を重ねることでしか救えないときもあるかもしれない。そんなジレンマを感じる良い作品でした。
役者さんたちがすごくよくってねえ。人生に疲れたような、軽薄で、けれど奥底にどうしようもない孤独や空白があるような。物語が進む中で、寄せ集めのものが少しでもその孤独を慰撫しているような、そんな雰囲気が感じられて。初枝の死が終わりで、始まりなんだという、否応なく変わるものを感じさせるのも、切ないしやるせない。
大人たちは自らの罪を償う必要があり、どこへも行けない子どもたちはもしかしたらどこかへ行けるかもしれない、外の世界に出て行ける可能性の種を手に入れられたであろうとわかるラストシーンがよかったな。