読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
親子、だもの。呪いのように駒子は繰り返す。あの時世界は溢れる文字と二人だけで完結していた。ママだけがすべてだった駒子の幼少期と少女期。けれど少女期の途中で引き戻された現実の世界。どこへ行くの。どこへ行ったの。辛くはないが息苦しく生きる駒子から生まれるものは一体なんなのか。
一章ごとに物語が変わるような印象だった。最後まで読んで最初に戻ってくると、最初の駒子の幼い語り口や、陶酔しているような感じが伝わってきてぞくっとした。段々と駒子が現実に馴染んでいくのも分かって、少しずつ理性的になっていくようなのが不思議だ。どうしてこんなものが書けるんだろう。桜庭さんに重ね合わせてしまうんだけれど、こういう生みの苦しみを感じているんだろうなあと思ったりした。
最後周辺は感極まって泣いてしまった。あの、サイン会で少年が泣くところ。
テレビで芸能人とか憧れの人と同じ空間にいることで泣いてしまうファンの女の子の映像が流れることがあるけれど、最近それを見ていた父が思いっきり吐き捨てるような声で「泣くなやぁ!」と言っているのを聞いてしまったので、そして結構自分でもそれに傷付いてしまっていたみたいなので(「いいやんか泣いても!」と噛み付いたけれど)、こういう、駒子みたいに思ってくる人がいるんなら、この人が好きでよかったなと思えるというか。
ラストのために辛い時代(章)を乗り越えるのもいいなと思いました。
作り手が死んだ後も、本だけが残って未来の誰かを救うことがあるかもしれない。
(略)
あたしは、世界は確かにあたしの苦しみだけではできていないけれど、あたしたちの苦しみでできているかもしれない、と思う。
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「まずい時にまずいところに」いたために、代々、イェルナッツ家の人々は辛酸をなめてきた。スタンリー(イェルナッツ四世)は、無実の罪で、砂漠の真ん中の少年院にぶちこまれ、残酷な女所長の命令で、くる日もくる日も不毛の地に〈穴〉を掘る毎日。
ある日、ついにスタンリーはどこかにあるかもしれないイェルナッツ家の〈約束の地〉をめざして、決死の脱出を図るのだった。
五代にわたる不運をみごと大逆転する少年たちの友情とプライドをかけた冒険物語!
鳥肌ものの素晴らしい小説だった! なんていうラストの怒濤の展開!
過去と現在が入り交じって語られて、どこがどこに繋がるのかというのを楽しみにしていたのに、こういうラストが来るなんて、笑いながら目を爛々と輝かせて読んでしまった(怖い)
少年たちの中で、弱気なスタンリーが次第に強くなっていくところというのも素晴らしいけれど、何のために穴を掘っていたのかというのが分かるところがすごい。不毛の地に繰り返される穴掘り、という生産性のない行為に、主人公のスタンリーが見つけるものというのが感動するのかも。
児童書っぽいこともあるので、読みやすくてオススメです。是非読んでもらいたい!
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作!(上巻裏表紙より)
先生からお借りした本。
ひどく貧しい人々のシーンから物語は始まる。衝撃的なシーン過ぎる。「誰かに食べられる」という言葉は比喩だと思ってたのに、そのまんま事実だったというのが下巻で分かるのが怖かった。
上巻はレオが、フョードルの子どもの死体と同じ惨殺死体を発見するところで終わる。上巻はミステリーというより、ここがどういう世界でどういうことが許されまかり通るのかという説明だった気がする。頭の中で「オルフェウスの窓」ががーっと通り過ぎていった。
大変なことにまったく伏線に気付いていなくて、明かされたものにびっくりした。逃亡と追跡を二つやってのけるレオにどきどきして、葛藤を抱えて苦悩する彼にも魅力を覚えた。国家がなければ個人は成り立たない国での、個人を守るための物語だったのかな。ワシーリーとの決着や、犯人との決着、そしてレオが選んだ未来。結末はまさに、子どもたちの未来のためのものだった。ラストの素晴らしさは、世界観の残酷さや不条理さのために際立っていたと思う。
きょうも早くおうちに帰って本を読もう——
作家・桜庭一樹は稀代の読書魔である。
ハルには穴居人生活をしつつ、冬にはコタツで亀になりながら、
今日も今日とて本を読むのだ。
『赤朽葉家の伝説』日本推理作家協会賞受賞から
『私の男』直木賞受賞までの耽溺の日々!(カバー折り返しより)
面白かった! この本には前巻があるようなので注意。しかし前巻が図書館に入っていない……。
桜庭さんは超がつく本読みさんなんだな。羨ましい。私もがつがつ読みたい。本屋行って面白そうと思うやつ買いまくりたい。
桜庭さんは翻訳小説の方をよく読まれるんだなという印象。でも日本のものも読み込んでいるという感じが。すごいなあ、どういうものが蓄積されてるんだろう。
対談だったか、『私の男』で実体験ですかとインタビューされて〜という話は確かテレビでインタビューそのものを見た覚えがある。うっわ失礼な質問(当時読んでいないながら)と思ったのと、桜庭さんの間を置かない答えが怖かったので覚えてる。
この本の中で持ってる本は、「はてしない物語」くらいかも……。それも話題に出ていた箱入りの2800円のを……。
東京から千キロ北東に浮かぶ神流島。中二の天海陽菜は毎日が息苦しくてならなかった。誰にも嫌われたくない、目立ってはならない、という不安と、圧迫的な軍事訓練の重圧などで疲れ果てていた陽菜は、安らぎを求めて、森の奥にいる「マリア」に会いに行くのだが、そこに見知らぬ少年がやってきて…。目も眩むような奇跡が陽菜の生活を塗りかえる…!? 衝撃のミステリアス・ファンタジー始動!(孵らぬ者たちの箱庭 カバー折り返しより)
中学生らしい悩みと、軍事訓練という非日常にどきっとする一巻目。湊という存在で少しずつ良い方向に転がるのかと見せつつも、ずっと底の方には不穏の気配が流れていて、いつ爆発するのかと気が気じゃなかった。なので天使病が出たとき「うわああああ」と絶望した。陽菜に辛すぎる。
陽菜自身の性格もあるけれど、本当は責める資格なんて誰にもないような気がするな。嫌いというのは分かるけれど、それを盾に人間を邪険にすることはどうかなと思う……。でもみんなうまく行くなんてないんだよな。難しい人間関係がリアルに書かれていてすごいと思った。
2巻は訓練という形で覚悟の一段階目が出来たからか、陽菜の感情がストレートになってきている感じ、かな。
尾田教官良いキャラ。お願いだから支えになって、と思いつつ、きっと任務に忠実な彼女はそれ以上にはならないんだろうなと思うと切ない。あくまでも陽菜は自分自身で戦わなきゃならないんだよな……。
敷島の青春観察が面白い。ばかなおとなめ! ひどい人間のくせに! と思いつつかわいいと思うのは止められないのだった。尾田たちが付き合うのは、彼の人徳のおかげなんだろうか。確かに非情なところがある人だが、憎めない人だと思う。
初の実戦があって陽菜が力の使い方が分かったところで、夏が終わる。最後の夏ってサブタイトルがうわああああん。
誰の世界がひびわれるのか、というのが3巻。この巻から文字がちょっと小さくなってぎっちり詰まっている印象を受けた。行間が狭くなったみたいだ。
樋口ちょーうさんくせーと思いつつ、アイス話の三人仲良しがかわいかった。アイスを食べて、話が進むにつれて実戦と陽菜の必要な『食事』のことがあって、という対比が怖いというか、うわあああという思うことがやっぱり多い「アンゲルゼ」。
覚野が来るのが切なかった。彼自身のきっかけや、「ここにいられる」の言葉がもんどりうつくらい切なくて胸が痛かった。青春ー! 陽菜を取り巻く世界が厳しすぎるせいで、青春が痛甘酸っぱいになってるよー……。
それでラストに敷島の問題発言。あれは、本当の意味での? それとも比喩?
最終巻は分厚いしぎっしり。
敷島と有紗の関係は、戦友であり親子に似たものだったと思うよ……。惜しむということは心を少し渡しているんだから、きっとそうだ。他にも湊自身の戦いがあって、写真の話には涙をこぼしてしまった。
そしてお前かー! という人がロンでした。敷島と東の連係プレーもちょう格好良かった! 軍事ものならではの上司と部下の阿吽の呼吸! しびれる!
一方で冬の町の一幕がまた寂しいというか、甘酸っぱいというかで。孵化のシーンは綺麗だったけれど別れの気配があって唇を引き結んで必死に涙をこらえてました。もーちゃん、十四歳で未来を誓えるあなたはきっと素敵な大人になれると思う。
ああ、あともう一巻あったらよかったのにと思う分厚さと、敵対勢力側女王蜂の存在とか、惜しい楽しみがありました。
敷島の手紙はいい。おっさんの手紙なんてなんてロマンチックなんだ。
とにかくめちゃくちゃ、読んだ! と思える素敵小説でした。同人誌楽しみだー!!
幼さと、かよわさと必死な姿で、常にショーで人気ナンバーワンのまゆ十四歳——(実は躁鬱の激しい二十一歳)、魅せることに至上の喜びを感じる女王様、ミーコ——(実は恋に悩むSMの女王様)、女の子にモテモテなのに女性恐怖症の皐月——(実は……)
彼女たちが毎夜働くのは、廃校の校舎を改築した非合法ファイト倶楽部。それぞれ、秘めた思いを胸に戦っている——。驚天動地のラブ&アクション!(裏表紙より)
もっとアングラ系(「池袋ウエストゲートパーク」みたいな)かなーと思って読むのびくびくしてたけれど、読むと少女たちに焦点を当てられたさっぱりした現実のお話だった。
まゆが一番分からないなー。死体は分かるんだが、心理がよく分からない。生きることが書かれていると思ったので、一番現実としてリアルな、生活を営んだり命を生み出したりする『家庭』を築くという命への道の方向に、まゆ十四歳を死体として置いていった、というのはいいんだけど、何故ケッコンマニアだ。ケッコンマニアが生に執着している、子孫を残そうとしている、という執着の実体だからだろうか。
ミーコはSMの女王様なので、ミーコの話はぐちゃぐちゃどろどろなのかと思ってたら、実はかなりかわいかった。エロくもグロくもない。師範代がかわいいよ。多分一番かわいいと思う。
戦うことっていうのは、何も戦闘ということではなくて、自分と戦ったり、何かを見つけ出そうともがいたり、自分や世界を問うたりすることなんだなと思った。自分でも何を言ってるか分からないな。
財産家のおばが住まう〈崖の館〉を訪れた高校生の涼子といとこたち。ここで二年前、おばの愛娘・千波は命を落とした。着いた当日から、絵の消失、密室間の人間移動など、館では奇怪な事件が続発する。家族同然の人たちの中に犯人が? 千波の死も同じ人間がもたらしたのか? 雪で閉ざされた館で各々推理をめぐらせるが、ついに悪意の手は新たな犠牲者に伸びる。(裏表紙より)
とても読みにくかった……疲れた……というのが第一印象。でも澄んだ印象で面白かった。
色々説明されていない涼子やいとこたちのバックグラウンドが気になるのだけれど、ここではあんまり関係がない。館という密室が重要。涼子やいとこたちはそれぞれに、とても、頭が良い。馬鹿な人間がいなくて、人間臭いのは嫉妬心をあらわにする由莉くらいだなと思った。犯人が現れてもなんだか遠い出来事のような気がした。あまりにもそれぞれが完結しすぎていて感情移入がしにくい気がする。
映像にするならとても陰影が綺麗だろうなと思った。青少年たちを閉じ込める、冬と海と崖の館。自由の裏に潜む影。密室になったそこで起こる事件と疑心暗鬼。少女の成長と恋。崖に消えていく娘たちっていうのが一番好きなキーワードだ。ラストはぐっとなった。
神聖帝国ディートニア転覆のため、ハル神父を探すキリ。ロキシー、ファナとともに東の大都市ファウラーへ渡った彼女だが、ハルの友人で、案内役を頼むはずのグラハムが消息を絶ってしまう。欲望うずまく街ファウラーの洗礼を浴びながらも、わずかな手がかりをもとにグラハムの行方を追うキリは、やがて水からが身につけている聖武具『黒真珠』に導かれるようにハルのもとに辿り着くが——。(折り返しより)
ファウラーは中国なのかあという。この世界の主はユーラシア大陸なんだろうか。
今回は協力者探しがメイン。ハル神父が○○してたのは趣味だろうかにやにやと思いつつ(挿絵がすごく綺麗な人だった)、一番好きなのはシュトラールだったりします。金髪褐色肌の無愛想男で信心深いとか!
ものすんごい光と影が綺麗な映画になるだろうなあと思いながらこの巻を読んでいた。大都市とか賭場とか派手なアクション! そして美少女や美女。いいなあ。これ好き。きらきらしてる。一巻は荒野で、乱入者と戦いみたいな感じでこっちも好きだけど!
大都市ファウラーで、三人の少女は新しい生活をはじめた。キリはハル神父に弟子入りして武術の鍛錬に励み、ロキシーは半分獣である自分をコントロールするために、祈りの日々を送っていた。ただひとり、人質としてランディ商会のジョンに軟禁されていたファナもようやく解放されることになり、喜ぶキリだったが、同時にジョンから残酷な現実をつきつけられ、ある決断を迫られていた——。(折り返しより)
なんだか、キリが最終的に独りになりそうな気配がする、というのが読んだ感想。ファナとジョンの間の殺伐としているけど優しい気配が、とても悲しかった。
しかし展開速すぎないだろうか! 今のところここまでしか持ってないので、聖山に行ったらどうなってしまうのかかなり気になる。キリの幼女疑惑も、周囲が何を考えているのかという疑問もあるし。気になる。
三大賞金首。一色を有する大主教と聖女。揃うとかっこいいだろうなあああとごろごろする。
腐野花は結婚する。しかし相手は、私の男ではない。養父であり男である淳吾は、傘を傾け雨から花を守る。ずっと守ってきた。結婚し、新婚旅行から戻ってきた花は、以前の部屋から淳吾が消えてしまったことを知る。罪の象徴であった、あの死体を片付けて。
これ構成がすごくすごーく好きだ。設定が暗く澱んでいて、あんまり読み進める気がしなかったのだけれど、読んでいくうちに考えていけばいくほどすごく面白かった。
全6章。視点を変えて次第に過去へ遡っていくのが構成。1章は謎を残したまま終わり、2章から少しずつ明らかになっていく愛情と罪と繋がり。純度を増していく一方で、読み終わった章の歪みを強調していく、というのがとても感動した。あくまで私感だけど、すごいこれ。
第4章の「花と、あたらしいカメラ」の、叫ぶシーンがすごく頭にある。どんより曇った、雲の低い風の強い空の下で、濁った暗い海の前に立っているぼろぼろの花と、親父さん、というイメージが。
決して希望のある未来は迎えないのに、ラストの希望を抱いた花の言葉が苦しい。