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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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そこへ届くのは僕たちの声
今でも、届く声がある——。少女は声を聞く。それは自分を助けてくれた天からの声。いくつかの出来事と人の出会いが重なった時、それは大きな事件へと繋がる。子どもたちが起こした奇跡、そして大人たちの物語。

優しくて、泣きたいくらいの物語でした。
二人の子どもと大人の視点から語られる物語。最初、全然話の内容に見当がつかなくて、これはどういうジャンルなんだろう? と思いながら読み進めていくと、子どもと大人のファンタジー、でした。
目線が優しいなあと思います。語り部になるかほりも、リンも、大人たちも、みんな物語る言葉が優しくて、ぎすぎすしたものや暗い感情が感じ取れない、澄んだ印象で進んでいく。物語の脇役的立場にいる人たちも、みんな綺麗な輪の中にいるような感じ。
それだけに、子どもたちが行動した結果、ああいう世論が巻き起こったということが書かれていたのがとても胸に重かった。だからこそ、大人たちが大人たちにできる方法をやったということが泣けてしまった。物語はおおよそ子どもたちの戦いで、大人たちは寄り合わせていく役目だったけれど、最後に大人たちも戦ったということが、やっぱりこの物語を優しくしてくれたんだと思う。
いい話だった。
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楽園のつくりかた (角川文庫)
エリート中学生の優は、突如ド田舎の学校に転校することになった。一杯勉強して、東大に入り、有名企業に就職する、という将来プランがぐちゃぐちゃだ。しかも、同級生はたったの3人。
1.バカ丸出しのサル男
2.いつもマスクの根暗女
3.アイドル並みの美少女(?)
嗚呼、ここは地獄か、楽園か?
これぞ直球ど真ん中青春小説! 今もっとも注目を集める作家の代表作、待望の文庫化!!
解説・北上次郎(裏表紙より)

優の思考に若干いらいらしつつ、さくっと読めるなあと思っていたら「え!?」となった。うわあ、そういうことか! という。そう考えると、色んなことは彼なりの武装だったのかなあと思えて切ない。でもそんな憐れみはいらないというのが彼なんだろう。
優のエリート志向はテンプレすぎて若干滑稽だなと思ったりしました。エリートになりたいからといって他人を蔑ろにしていいわけじゃない。落ち込んだ、とは書かれていないけれど、優は優なりに色々思うところがあったんじゃないかな。そう考えると、悲しいような、切ないような。
でも俗物的思考でいうと、優の性格は「ひねくれヤンツンデレ」みたいになるんだろーかとか。最後にはヤンが抜けたとか。
『坊っちゃん』の時代 (第2部) (双葉文庫)
今回は森鴎外「舞姫」。これとても好きだ。エリスが格好良い。苦悩する鴎外もいい。
実は私は近代文学のおける情緒がばっさり欠けているので、苦悩〜とか時代が〜とかうまく言えないのだけれど、エリスと鴎外の恋愛ものとしてみるととても良いものだ! と思いました。この時代の女性のきらめきってすごいなあと思ったり。語彙がなくて申し訳ない。
グリム童話 (図解雑学)
グリム兄弟、再話者、物語のモチーフ、物語そのものなど、グリム童話に関するものを図解化して解説する一冊。非常に分かりやすくて、興味も深まった!
どのKHMがどのモチーフに分類されるかが分かったし、知らない話も知ることができたし。解説というより、説明書みたいな感じだった。なので最後の章の解釈や解説はちょっと影が薄い。
おとぎ話にみる死と再生―白雪姫の深層
『白雪姫』の、このお話には王様が登場しないこと、母親(継母)が娘(白雪姫)を殺そうとすること、鏡のメッセージ、毒のリンゴ、死のダンスなど、興味深いテーマを、ユング派の著名な分析医である著者が読み解いていく一冊。

これ感想書きにくいんですが、特にぴんとこないというのも非常に珍しいと思いました。読みにくかったせいかな。訳者は、患者に告げるように、という意識で訳を書かれたそうだけれど、正直言って邪魔でした。なんかすごく眠たかった。
生と死と愛、というのが多分本書のテーマなのでは。白雪姫を分析しているわけではないので、いや分析しているんだろうけれど、内容はそれに対する人間の心理なのでした。
『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)
「坊っちゃん」が創作されていくの課程を、その時代の光景と共に描き出す。明治の文人たちが登場する一作。実は創作も一部あるらしいとか?
漱石が変な人だ。あまり文豪のことは知らないのだけれど、「漱石先生の事件簿」という小説が、夏目漱石の「吾輩は猫である」を下敷きにしてあるのと、漱石自身のエピソードを絡めてあるというのが分かって、この作品と事件簿の方、両方が面白いことが分かった。
その時代、すごい人々が一挙に集まっている、素晴らしい時代だったのかもしれないと思った。
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (集英社文庫)
東京、下町の老舗古本屋「東京バンドワゴン」。営む堀田家は今は珍しき八人の大家族。伝説のロッカー我南人60歳を筆頭にひと癖もふた癖もある堀田家の面々は、ご近所さんとともに、またまた、なぞの事件に巻き込まれる。赤ちゃん置き去り騒動、自分で売った本を1冊ずつ買い戻すおじさん、幽霊を見る小学生などなど……。さて、今回も「万事解決」となるか? ホームドラマ小説の決定版、第2弾!!(裏表紙より)

今とてもドラマで見たい小説のシリーズ。相変わらず個性が強い!
今回は前巻と比べるどちらかというとつなぎな印象なのは、ひとつひとつのお話の関係がちょっと薄いせいなのかも。藤島さんの話をずっと続けたら良かったのにーと思ったけれど、それは多分私が彼をとても好きなせいなので、偏った意見だと思うから、はっきり言う。非常に今回も面白かった!
これ家族増えたらまたどったんばったんなるよな! と続刊に期待をしています。新しい家族はきっとサチさんが見えると思うんだ! と思うと私きらっきらしてしまう。そして池沢さんもどうなるのか非常に楽しみ! これだけ明るく楽しみな小説ってそうそうないなと思う!
ファミリーポートレイト
親子、だもの。呪いのように駒子は繰り返す。あの時世界は溢れる文字と二人だけで完結していた。ママだけがすべてだった駒子の幼少期と少女期。けれど少女期の途中で引き戻された現実の世界。どこへ行くの。どこへ行ったの。辛くはないが息苦しく生きる駒子から生まれるものは一体なんなのか。

一章ごとに物語が変わるような印象だった。最後まで読んで最初に戻ってくると、最初の駒子の幼い語り口や、陶酔しているような感じが伝わってきてぞくっとした。段々と駒子が現実に馴染んでいくのも分かって、少しずつ理性的になっていくようなのが不思議だ。どうしてこんなものが書けるんだろう。桜庭さんに重ね合わせてしまうんだけれど、こういう生みの苦しみを感じているんだろうなあと思ったりした。
最後周辺は感極まって泣いてしまった。あの、サイン会で少年が泣くところ。
テレビで芸能人とか憧れの人と同じ空間にいることで泣いてしまうファンの女の子の映像が流れることがあるけれど、最近それを見ていた父が思いっきり吐き捨てるような声で「泣くなやぁ!」と言っているのを聞いてしまったので、そして結構自分でもそれに傷付いてしまっていたみたいなので(「いいやんか泣いても!」と噛み付いたけれど)、こういう、駒子みたいに思ってくる人がいるんなら、この人が好きでよかったなと思えるというか。
ラストのために辛い時代(章)を乗り越えるのもいいなと思いました。

作り手が死んだ後も、本だけが残って未来の誰かを救うことがあるかもしれない。
(略)
あたしは、世界は確かにあたしの苦しみだけではできていないけれど、あたしたちの苦しみでできているかもしれない、と思う。
穴 (ユースセレクション)
「まずい時にまずいところに」いたために、代々、イェルナッツ家の人々は辛酸をなめてきた。スタンリー(イェルナッツ四世)は、無実の罪で、砂漠の真ん中の少年院にぶちこまれ、残酷な女所長の命令で、くる日もくる日も不毛の地に〈穴〉を掘る毎日。
 ある日、ついにスタンリーはどこかにあるかもしれないイェルナッツ家の〈約束の地〉をめざして、決死の脱出を図るのだった。
 五代にわたる不運をみごと大逆転する少年たちの友情とプライドをかけた冒険物語!

鳥肌ものの素晴らしい小説だった! なんていうラストの怒濤の展開!
過去と現在が入り交じって語られて、どこがどこに繋がるのかというのを楽しみにしていたのに、こういうラストが来るなんて、笑いながら目を爛々と輝かせて読んでしまった(怖い)
少年たちの中で、弱気なスタンリーが次第に強くなっていくところというのも素晴らしいけれど、何のために穴を掘っていたのかというのが分かるところがすごい。不毛の地に繰り返される穴掘り、という生産性のない行為に、主人公のスタンリーが見つけるものというのが感動するのかも。
児童書っぽいこともあるので、読みやすくてオススメです。是非読んでもらいたい!
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作!(上巻裏表紙より)

先生からお借りした本。
ひどく貧しい人々のシーンから物語は始まる。衝撃的なシーン過ぎる。「誰かに食べられる」という言葉は比喩だと思ってたのに、そのまんま事実だったというのが下巻で分かるのが怖かった。
上巻はレオが、フョードルの子どもの死体と同じ惨殺死体を発見するところで終わる。上巻はミステリーというより、ここがどういう世界でどういうことが許されまかり通るのかという説明だった気がする。頭の中で「オルフェウスの窓」ががーっと通り過ぎていった。
大変なことにまったく伏線に気付いていなくて、明かされたものにびっくりした。逃亡と追跡を二つやってのけるレオにどきどきして、葛藤を抱えて苦悩する彼にも魅力を覚えた。国家がなければ個人は成り立たない国での、個人を守るための物語だったのかな。ワシーリーとの決着や、犯人との決着、そしてレオが選んだ未来。結末はまさに、子どもたちの未来のためのものだった。ラストの素晴らしさは、世界観の残酷さや不条理さのために際立っていたと思う。
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Author:月子
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