読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

幼さと、かよわさと必死な姿で、常にショーで人気ナンバーワンのまゆ十四歳——(実は躁鬱の激しい二十一歳)、魅せることに至上の喜びを感じる女王様、ミーコ——(実は恋に悩むSMの女王様)、女の子にモテモテなのに女性恐怖症の皐月——(実は……)
彼女たちが毎夜働くのは、廃校の校舎を改築した非合法ファイト倶楽部。それぞれ、秘めた思いを胸に戦っている——。驚天動地のラブ&アクション!(裏表紙より)
もっとアングラ系(「池袋ウエストゲートパーク」みたいな)かなーと思って読むのびくびくしてたけれど、読むと少女たちに焦点を当てられたさっぱりした現実のお話だった。
まゆが一番分からないなー。死体は分かるんだが、心理がよく分からない。生きることが書かれていると思ったので、一番現実としてリアルな、生活を営んだり命を生み出したりする『家庭』を築くという命への道の方向に、まゆ十四歳を死体として置いていった、というのはいいんだけど、何故ケッコンマニアだ。ケッコンマニアが生に執着している、子孫を残そうとしている、という執着の実体だからだろうか。
ミーコはSMの女王様なので、ミーコの話はぐちゃぐちゃどろどろなのかと思ってたら、実はかなりかわいかった。エロくもグロくもない。師範代がかわいいよ。多分一番かわいいと思う。
戦うことっていうのは、何も戦闘ということではなくて、自分と戦ったり、何かを見つけ出そうともがいたり、自分や世界を問うたりすることなんだなと思った。自分でも何を言ってるか分からないな。
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財産家のおばが住まう〈崖の館〉を訪れた高校生の涼子といとこたち。ここで二年前、おばの愛娘・千波は命を落とした。着いた当日から、絵の消失、密室間の人間移動など、館では奇怪な事件が続発する。家族同然の人たちの中に犯人が? 千波の死も同じ人間がもたらしたのか? 雪で閉ざされた館で各々推理をめぐらせるが、ついに悪意の手は新たな犠牲者に伸びる。(裏表紙より)
とても読みにくかった……疲れた……というのが第一印象。でも澄んだ印象で面白かった。
色々説明されていない涼子やいとこたちのバックグラウンドが気になるのだけれど、ここではあんまり関係がない。館という密室が重要。涼子やいとこたちはそれぞれに、とても、頭が良い。馬鹿な人間がいなくて、人間臭いのは嫉妬心をあらわにする由莉くらいだなと思った。犯人が現れてもなんだか遠い出来事のような気がした。あまりにもそれぞれが完結しすぎていて感情移入がしにくい気がする。
映像にするならとても陰影が綺麗だろうなと思った。青少年たちを閉じ込める、冬と海と崖の館。自由の裏に潜む影。密室になったそこで起こる事件と疑心暗鬼。少女の成長と恋。崖に消えていく娘たちっていうのが一番好きなキーワードだ。ラストはぐっとなった。

大都市ファウラーで、三人の少女は新しい生活をはじめた。キリはハル神父に弟子入りして武術の鍛錬に励み、ロキシーは半分獣である自分をコントロールするために、祈りの日々を送っていた。ただひとり、人質としてランディ商会のジョンに軟禁されていたファナもようやく解放されることになり、喜ぶキリだったが、同時にジョンから残酷な現実をつきつけられ、ある決断を迫られていた——。(折り返しより)
なんだか、キリが最終的に独りになりそうな気配がする、というのが読んだ感想。ファナとジョンの間の殺伐としているけど優しい気配が、とても悲しかった。
しかし展開速すぎないだろうか! 今のところここまでしか持ってないので、聖山に行ったらどうなってしまうのかかなり気になる。キリの幼女疑惑も、周囲が何を考えているのかという疑問もあるし。気になる。
三大賞金首。一色を有する大主教と聖女。揃うとかっこいいだろうなあああとごろごろする。

神聖帝国ディートニア転覆のため、ハル神父を探すキリ。ロキシー、ファナとともに東の大都市ファウラーへ渡った彼女だが、ハルの友人で、案内役を頼むはずのグラハムが消息を絶ってしまう。欲望うずまく街ファウラーの洗礼を浴びながらも、わずかな手がかりをもとにグラハムの行方を追うキリは、やがて水からが身につけている聖武具『黒真珠』に導かれるようにハルのもとに辿り着くが——。(折り返しより)
ファウラーは中国なのかあという。この世界の主はユーラシア大陸なんだろうか。
今回は協力者探しがメイン。ハル神父が○○してたのは趣味だろうかにやにやと思いつつ(挿絵がすごく綺麗な人だった)、一番好きなのはシュトラールだったりします。金髪褐色肌の無愛想男で信心深いとか!
ものすんごい光と影が綺麗な映画になるだろうなあと思いながらこの巻を読んでいた。大都市とか賭場とか派手なアクション! そして美少女や美女。いいなあ。これ好き。きらきらしてる。一巻は荒野で、乱入者と戦いみたいな感じでこっちも好きだけど!

腐野花は結婚する。しかし相手は、私の男ではない。養父であり男である淳吾は、傘を傾け雨から花を守る。ずっと守ってきた。結婚し、新婚旅行から戻ってきた花は、以前の部屋から淳吾が消えてしまったことを知る。罪の象徴であった、あの死体を片付けて。
これ構成がすごくすごーく好きだ。設定が暗く澱んでいて、あんまり読み進める気がしなかったのだけれど、読んでいくうちに考えていけばいくほどすごく面白かった。
全6章。視点を変えて次第に過去へ遡っていくのが構成。1章は謎を残したまま終わり、2章から少しずつ明らかになっていく愛情と罪と繋がり。純度を増していく一方で、読み終わった章の歪みを強調していく、というのがとても感動した。あくまで私感だけど、すごいこれ。
第4章の「花と、あたらしいカメラ」の、叫ぶシーンがすごく頭にある。どんより曇った、雲の低い風の強い空の下で、濁った暗い海の前に立っているぼろぼろの花と、親父さん、というイメージが。
決して希望のある未来は迎えないのに、ラストの希望を抱いた花の言葉が苦しい。

小学六年生、高校三年生、二十九歳。好きだった。逢いたかった。生きていた。貴樹は明里が好きだった。だが二人の間には、未だ巨大すぎる時間が、茫漠とした未来が、どうしようもなく横たわっていた。どれだけの速さで生きれば、君にまた逢えるのか。「桜花抄」「コスモナウト」「秒速五センチメートル」の三編。
映像の「秒速五センチメートル」を監督自身がノベライズしたもの。映像を見たことがあるならすごくいい補完になっていると思うし、これだけでも言葉の大切さがよく分かる小説で、とても良かった。
映像の方は、世の男性方に「鬱だ」と言われる決着が着くのだけれど、映像の第三話がプロモーションビデオのようになっているので、小説できちんと書かれているのは良かったなあと思った。希望がある。
第一話「桜花抄」は十二歳と十四歳の二人の物語で、初々しくてうまくいかなくて甘酸っぱい。第二話「コスモナウト」は一番好き。貴樹に恋した女の子が一喜一憂して、最後「——優しくしないで」と願う切ない話。第三話「秒速五センチメートル」は前述したように、もがくように生きてきた貴樹と希望の話。
映像も綺麗なので合わせて見てほしい。
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仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。(裏表紙より)
日常から別の場所で日々を越えて、心を癒して旅立っていく、というのは「西の魔女が死んだ」と同じシチュエーションだと。「天国はまだ遠く」は大人になって疲れた女の子に向けられた小説、なのかな。
田村さんの方言が更に癒しを呼び起こす感じがした。「ラブアンドピース以外のことが聴きたかったら、吉幾三を聴けばええ。それ以外のことは幾三がみんな歌ってくれとるから」が、いいわ……と思った。若い人を「姉ちゃん」とか「兄ちゃん」とか、田舎のおっちゃんおばちゃんはそんな感じだよなあ。(四十代五十代の我が両親も、うちの近所の人にかかれば兄ちゃん姉ちゃんになる)(私はなんだろう、お嬢ちゃん?)
自殺をはかるところでえぐかったら絶対面白くなかったと思った。そんなこと全然なくて、ゆっくり流れる時間がなんだかいいなあと思えて、結論の出し方も納得できるもので、良い物語だった。
これ読んで気づいたけれど、瀬尾さんって教員だったんだ。「図書館の神様」で抱いた印象がぐっと強くなった気がする。

父と母と兄に囲まれ、佐和子は普通の家庭にいたはずだった。だが母は家族と離れて一人暮らし、将来を有望されていた兄は農業に精を出し、父は父さんを止めると宣言した。それでも、佐和子は幸福な日々で大人になっていく。中学生から高校生の時間。
数年前に、映画のCMで、冬の夕方の道を女子高生がマフラーに顔を埋めながらただ歩いていくという画が、ずーっと頭の中にあって、先日映画が放送されたけれど見られなかったので、原作を借りてみた。
内容は、幸福。ぱあっと明るい幸福じゃなくて、しんしんと降り積もる幸福という感じ。「幸福な朝食」「バイブル」「救世主」は当たり前の日々で、突然襲ってくる「プレゼントの効用」にどきっとした。でもやっぱりこれも日々も積み重ねのひとつなんだなあと思ったりもする。
「大丈夫だよ」
「そう?」
「大丈夫。僕、大きくなるから」
「そっか。そうだね」
『プレゼントの効用』
大浦君の止まった時間と、弟君の進む時間。佐和子がそれを認めた瞬間にほろりとした。

バレー部のエースだった早川清。部員の一人が自殺したことで、正しく清い道から外れた。それまでの道から一転地方の私大に進学したあと、清はある高校で国語の講師として働き始める。部活動顧問は、望んでいたバレー部ではなくて文芸部。しかも部員は一人だった。
青春らしい青春を過さなかった若い女性がもう一度青春する話と受け取った。
清は先生らしくない先生で、正直なめてるので、世の文学人間と教職の講義を真剣に受けている学生はむっとしそうだが、しかし段々と文学を楽しんでいく課程はとてもわくわくした。授業も面白くなって生徒に受け入れられていくのは、段々と信頼を得ていくのが分かって嬉しかった。
垣内くんが他の生徒とどう過ごしているのかという視点があったら少女小説かな。垣内くんが誰よりも大人であるように見えるのは、清が子ども過ぎるからか。二人セットでちょうどいいということか。
しかし先生らしくない先生というのが、大人と子どもの中間の位置にいる感じがしてすごーく良かった。大学生が読んだらいいと思うよこれ。しかも教職目指してる人(最初むっとするだろうけど)