読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
私が読んだのは福武文庫版だったけれど、在庫がないようなので河出文庫版を張っておきます。
「護法」「魚鱗記」「花妖記」「髑髏盃」「菊燈台」「髪切り」「うつろ舟」「ダイダロス」の八編。
「護法」の話は聞いたことがある。護法童子が男の願いを叶えて、女房の首をすげ替えるという話。これが一番妖譚として好きだったかな。
「魚鱗記」は魚を狂わせる様を楽しむという遊戯に興じていた頃の、ある一家で亡くなった女の子が幽霊として出たのを客人が見る話。少し子ども向けっぽかった。「菊燈台」は塩汲みの奴隷が長者の娘に気に入られて炎の中に、という話。安吾の「夜長姫と耳男」と似た匂いがした。そのせいか、かなり印象に残っている。底深いところにあるエロスというのか、そういうもの。
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かなり面白かった! 王道を行きつつ元気で勢いがある。ミレーユが可愛いなあと思って、フレッドは馬鹿系なんだろうかと読み進めてみると策士ときた! 好みど真ん中。
リヒャルトが若干うさんくさいかなと思いながら、ジークの正体ってやっぱり? と思ったらその通り。期待を裏切らない。一巻だけの知識しかない私としてははジークとリヒャルトにミレーユを取り合って欲しかったなーとか。
登場人物みんな良いなと思う。どこか少女小説の理想的なものが流れているような。筋肉が出て来るのは樹川さとみっぽいなーと思いました(すみません好きなんです樹川さん……)
白薔薇乙女の会が突っ込んでくるシーンの「脱出します!」が何故かツボにはまった。
アンケートのオススメでした。ありがとうございました! これは続きを買いたい……。
短編集。「小さな部屋」「禅僧」「閑山」「紫大納言」「露の答」「桜の森の満開の下」「土の中からの話」「二流の人」「家康」「道鏡」「夜長姫と耳男」「梟雄」「花咲ける石」以上の作品が収録されている。
この頃から付箋を付けて読むようにしているので、そこから引用などをする事にする。
坂口安吾の童話小説は美しくて芸術品のようだ。芸術には醜い物も芸術とする力があるので、美しいと思えるのだ。
「紫大納言」
宇治拾遺物語? 伊勢物語? とか色々考えたが、元が分からない。大納言が天女に縋る言葉は必死でいて詩的だった。
「(中略)償いは、私が、地上で致しましょう。忘れの川、あきらめの野に呼びよせて、必ず涙を涸らしましょう。あなたの悲しみのありさまあなたの涙を再び見ずにすむためならば、靴となって、あなたの足にふまれ、花となって、あなたの髪を飾ることをいといませぬ」
表題作「桜の森の満開の下」
桜の下に行くと発狂するような恐ろしさがあるということを書いて始まる。解説に書いてあったが、男が出会うのは鬼というのにかなり納得してしまった。
ほど経て彼はただ一つのなまあたたかな何物かを感じました。そしてそれが彼自身の胸の悲しみであることに気がつきました。花と虚空の冴えた冷めたさにつつまれて、ほのあたたかいふくらみが、すこしずつ分かりかけてくるのでした。
閉じられた空間で見つめるものは己ばかりという感じ。
一番お気に入りになったのが「夜長姫と耳男」。登場人物の魂がとても高い所にある感じがする。夜長姫は神の視点に立っているし、耳男は芸術家としての苦悩を越えて高みに至ろうとする。ラストの姫の言葉がすごかった。
「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天上に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして……」
私としてはそれ以外の感情も有り得る。もっと純粋なものが。と思いもしたが、まだ完全な思考に至っていない。しかしやはりこれらの感情も欲からくる純粋なものかなと思ったりもする。
解説にも付箋を付けていた。
「ふるさと」に対する愛と憎しみ、懐かしさと嫌悪といったアンビバレンツな感情はもちろんのこと、「ふるさと」は始源の場所であるのと同時に終極の場所であり、孤独の極みであると同時に孤独を宥める所であり、「むごたらしく、救いのないもの」であるのと同時に、懐かしさと憧れを掻き立てられ、そこにおいて究極的な慰めを見出すものでもある。
安吾は日本的な血縁的、地縁的な共同体としての”ふるさと”を否定するところに「ふるさと」を見ていた。その時、彼の「ふるさと」はむしろ集団性から孤立、逸脱、落伍した”孤独”な個性のほうにあった。
私にとってふるさとは心安らぐ場所であり、血縁的、地縁的な「繋がり」があるところをふるさととするので、坂口安吾の考えを解いたこの説を面白く読んだ。
ヴァレリーとアリエノールの婚姻による共同統治はつかのまの平和をもたらした。勢力の微妙な均衡の中、仲間たちと別れ、ヤーファで過ごすヴァレリー。しかし要衝アスカロンの支配をめぐって、和平は決裂しつつあった。両陣営の内部で続発する不穏な動き。多くの仲間の死……。そしてついにヴァレリーとエルシードの運命を賭けた最後の戦いが始まる。傑作歴史エンタテイメント、感動の大団円。(裏表紙より)
最終巻。
途中の巻から、現在の文章から過去の事を述べる文に入る事があって、時系列が上手く整理できずに混乱する事がよくあった。
アリエノールが穏やかになっていて、これが彼女本来の姿なのかと思った。マリアンは違うようだったけれど、アリエノールはヴァレリーに対して娘のようであるのが本来の姿ではないのだろうかと私は思う。
彼女が行けと言った時、戻ってきたヴァレリーの愚かさは美しかったと思う。
あとでwikiで調べてみたんだが、西洋人のアル=アーディルは空想上の人物らしい。本当はサラディンの子どもにアーディルがいるみたい。アーディルの子どもがアル=カーミル。スルタンになる。ということで、この「ジハード」のヴァレリーはエルシードと結婚して王位を継ぐと思われる。
1191年の末、獅子心王リチャードの軍勢はついに聖都イェルサレムに迫った。おりあしくサラディンが病に倒れ、イスラム陣営は混迷を極める。ラスカリスとルイセを失い、失意のヴァレリーに、今や十字軍側の参謀となった『蒼狼』ことキヤトが牙をむく。果たしてこの都を守り抜くことが出来るのか? そして、和平のために、ある「政略」が進行する……。ヴァレリーたちの運命は? 怒濤の第五弾。
シャラザードの本心というべき、心の内面が描かれる。病的な執着。彼女の事が描かれるのが少し意外だった。シャラザードはヴァレリーとエルシードを迎える側であり、それ以上の何者でもないと思っていたから。だがそれだと、五、六巻で強く描かれようとする、ヴァレリーとイエス・キリストを重ねる手法が生きなくなるんだろうか。
ヒロインの記憶喪失(幼児退行?)という美味しい要素があるのに、あんまりライトノベル的盛り上がりがないなと思ったり。もうちょっとヴァレリーとなんやかんやあっても良かったんじゃないかな。
アスカロンの戦いの後、聖都イェルサレムに迫ったリチャード獅子心王が突然、半年間の休戦を求めてきた。和戦を巡って、イスラム陣営が混乱するなか、王者サラディンの意を受け、和平交渉の使者としてヴァレリーは敵地へと赴くことになった。膠着状態に陥った局面を打開することができるのか。果てしない戦いに救いはあるのか。しかし、ついに思わぬ犠牲が……。佳境に突入する第四弾。(裏表紙より)
視点が神だからか、出て来るキャラにすぐ死亡フラグが立つのはちょっと悲しい。もうちょっと引っ張っても良いのではないかな。
ヴァレリーが預けていった手紙。作戦ばかりかと思いきや、「いまのきみが、私は好きだよ」なんて反則。エルシードが叫ぶ「世には醜しかないのか!」の叫びが痛いのに、ヴァレリーは一番彼女をよく分かっている。
第十話で、書き出しがラスカリスで死亡フラグ立ちまくり。はっきりと書かれていて辛い。
ウィルフレッドが案外可愛い性格をしていることが判明する。ここから先は、ヴァレリーとエルシードの下につくので、凛々しいところはもうないかな、と思う。
女性が少ないので潤いがなくて、でも家族のほのぼのを見るとすごく和む。
ラスカリスの死。そんな死に方はひどい、と思った。彼は戦場でヴァレリーを逃がす為に刃を受けるような人だったのに。その影響でルイセはヴァレリーを射て、もう戻れない事を知って、自ら命を絶つ。ひどすぎる。ヴァレリーの叫びが痛い。
十字軍支配下のアッカからラスカリスとルイセによって救出されたヴァレリー。だが、その傷も癒えぬうちに、裏切り者という疑いを晴らし、イスラム軍の信頼を回復するために、次なる主戦場アスカロンをめざす。戦う相手は、リチャード王から主将として派遣された英雄アイヴァンホー。果たしてヴァレリーに勝機はあるのか? そしてついに、戦いの火蓋は切って落とされた。傑作シリーズ第三弾。(裏表紙より)
皇太子アル=アフダルがちょい役なのに良いキャラ。ヴァレリーの、周りへ及ぼす影響という特性を、よく表された人物だと思う。何より才を隠しているのが恰好良い。
ここでヴァレリーの出自が明らかに。ビザンツ帝国のマヌエル一世のの庶子。けれどマヌエル一世は非公式に帝位を与えていたらしく、姉が殺された時にはすでに皇帝だったようだ。
エルシードとの再会。ちょっと無茶だが、エルシードらしいとも言える。史実はどうなっていたのだろうか。
この巻のラストでは、ベレンガリアによって、戦いの形が明らかにされる。エルシードとリチャード、ヴァレリーとベレンガリア。ただここの会話って、そんな会話をしている暇や場所があったのだろうか、と違和感があった。
1191年初秋。アッカを占領した第三次十字軍は聖都イェルサレムを目指して、イスラム世界を蹂躙しつつ進軍を続けていた。そして、要衝の城市ヤーファをめぐって両軍は激突し、ついにリチャード獅子心王の軍勢が王者サラディン本隊に肉迫する。サラディン危うし——。このイスラム軍の危機を回避すべく、ヴァレリーは捨て身の作戦に打って出るのだが……。手に汗握る超大型歴史エンタテインメイト第二弾。(裏表紙より)
リチャードの妹ジョアンナ・アリエノール登場。歴史ファンタジーということ、アリエノールはヴァレリーと将来一時期結婚するらしい。視点が天からということで、未来がちらりと予告される書き方がされている。
モンテフェラート侯コンラードがヴァレリーの兄である事が明らかになるが、まだまだ謎がある感じがする。
アル=カーミルが好きだ。冷徹でありながら、自我に目覚めて、エルシードに向けて怒りを向けるシーンは格好良かった。
ただ、歴史ファンタジーは読むのが疲れる。事実である事を織り交ぜながらキャラクターのエピソードを書き込んでいくからか、読むのに疲れを感じてしまう。