読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)
ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。
猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった。
事件から十年――。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める……。(裏表紙より)
何度目かの再読。ストーリーは覚えていても、謎の解き明かしの部分を覚えていなくて、ああこの人がそうだったのか! と思ってしまった。定期的に読み返さない喜びがここに。
人物がみんな個性豊かで見ていて楽しい。プライドや、意識の持ち方や、創るもの、それぞれあって。綺麗に組まれていくんだよなあラストまで! 本当に好きだ。
環の言葉は今でも痛いなあと思う。ここまでの気持ちを持って物を創れてるかって聞かれると、情けないことに違うって言ってしまう。
何度読んでも最終章、公輝の祈りのところで泣くんだけれど、今回の読書で、狩野の思いがどんと来てしまった。
実際はそんなことないんだろうなあと思ってしまうんだけれど、こういう風に思う人がいてもいいと思う。
これを読むと、幼い頃好きだった色んなものを、大人になってもずっと忘れないでいたいなと思うようになりました。しがみつき続けることがオタクに繋がるとしても!(台無し!)
この本は色んな人に知ってもらいたいけれど、それをうまく伝える方法を知らないので言葉を尽くすしかない。でもその力が足りなくてとても歯がゆくなる。

ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。
猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった。
事件から十年――。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める……。(裏表紙より)
何度目かの再読。ストーリーは覚えていても、謎の解き明かしの部分を覚えていなくて、ああこの人がそうだったのか! と思ってしまった。定期的に読み返さない喜びがここに。
人物がみんな個性豊かで見ていて楽しい。プライドや、意識の持ち方や、創るもの、それぞれあって。綺麗に組まれていくんだよなあラストまで! 本当に好きだ。
環の言葉は今でも痛いなあと思う。ここまでの気持ちを持って物を創れてるかって聞かれると、情けないことに違うって言ってしまう。
何度読んでも最終章、公輝の祈りのところで泣くんだけれど、今回の読書で、狩野の思いがどんと来てしまった。
「(略)勘違いしないで。私が今言った『優しすぎる』は、『作者に優しすぎる』っていう意味だから」
人を傷付けず、闇も覗き込まずに、相手を感動させ、心を揺さぶることはきっとできる。そうやって生きていこう。自分の信じる、優しい世界を完成させよう。
実際はそんなことないんだろうなあと思ってしまうんだけれど、こういう風に思う人がいてもいいと思う。
これを読むと、幼い頃好きだった色んなものを、大人になってもずっと忘れないでいたいなと思うようになりました。しがみつき続けることがオタクに繋がるとしても!(台無し!)
この本は色んな人に知ってもらいたいけれど、それをうまく伝える方法を知らないので言葉を尽くすしかない。でもその力が足りなくてとても歯がゆくなる。
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ビルマの戦線で英軍の捕虜となった日本軍の兵隊たちにもやがて帰る日がきた。が、ただひとり帰らぬ兵士があった。なぜか彼は、ただ無言のうちに思い出の竪琴をとりあげ、戦友たちが合唱している”はにゅうの宿”の伴奏をはげしくかき鳴らすのであった。戦場を流れる兵隊たちの歌声に、国境を越えた人類愛への願いを込めた本書は、戦後の荒廃した人々の心の糧となった。(裏表紙より)
染み入りました。読みやすかったし、理解もしやすくて。
読み終わった後、うたう部隊のみんなが一斉に空を見上げたような気がしたのは、きっと色々なものを巡る心を解き放つように、堪えるような気持ちになったからだなあとか、詩人的に考えたりしました。
最初の戦闘の緊迫感から、水島上等兵を待っている焦燥、部隊の人々の苦肉の策など、ドラマがたくさん詰まっていて、素晴らしい小説でした。けれど一方で、その当時の現実を恐らくかなりリアルに書いていたように思います。私たちは想像でしか知らないけれど。でもこの作品を読んだら、澄み切った人々の瞳が浮かんでくるようで、やはり最後に空を見上げたくなるのでした。

魔女や小人、魔法の鏡、そして継母によるいじめ、動植物への返信……。「シンデレラ」「白雪姫」など19世紀ドイツのグリム兄弟が編んだメルヘンは、今も世界中で愛されている。だが、それらは本当は何を語っているのだろうか。キリスト教が広まる以前の神話・伝承にまで遡り、民衆の習俗や信仰、夢や恐怖に迫る、発見に満ちた案内。(カバー折り返しより)
非常に面白かった。ほうほうほう! となった。
触れている作品は「シンデレラ」「眠れる森の美女」「ホレおばさん」「白雪姫」「ラプンツェル」「蛙の王さま」。どれも馴染みのある作品ばかりで、文章も分かりやすかったし、何より知らないことがたくさん書かれてあって興味深かった。
「シンデレラ」の類話に関してが特に興味深かった。世界中のシンデレラに触れてあるところがあった。
そういえば全然関係ない話だけれど、「鵞鳥番の娘」、小学校低学年の時にすごーく好きだったのを思い出した。確か髪の毛を梳いている時に近付いて髪を取ろうとする少年に、主人公は風よ吹けと唱えて、というシーンを思い出した。

豪華な写真集や分厚い雑誌に出てくるようなインテリアに、いったい僕らのうちの何人が暮らしているのだろう。でも小さい部屋にごちゃごちゃと気持ち良く暮らしている人間ならたくさん知っている。マスコミが垂れ流す美しき日本空間のイメージで、なにも知らない外国人を騙すのはもうやめにしよう。僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」はこんなものだ!話題の名著文庫化!(裏表紙より)
1990年くらいの日本の、アパートやマンションや寮などの普通の人々が暮らしている部屋の写真集。非常に面白かったです。みんな結構雑然と暮らしているものだよなあ!
綺麗なお屋敷の写真集も非常に楽しいのですが、こういうごったごたの、何が置いてあるか家主にしか分からない部屋というのも大変面白いです。
書斎の部屋の写真があったのですが、本棚写真集があればいいのにと思いました。あと大学の寮の写真集とか。この本に掲載されていた芸術大学の寮の写真が非常にカオスで面白かったです。

漫画家になる夢をもつアヤコと、ミュージシャンを目指すシン。別々の高校に進学することになったふたりは、中学校の卒業式で、10年後にお互いの夢を叶えて会おうと約束する。そして10年。再会の日が近づく。そのとき、夢と現実を抱えて暮らすふたりの心に浮かぶものは……。
単行本刊行時、大反響を呼んだ青春小説の傑作がついに文庫化。恋と夢と現実のはざまで揺れ動くあなたに贈る物語。(裏表紙より)
すごーくすごーくすごーーーく良かった!
少女と少年が、十年後にお互いの夢を叶えて会おうと約束する。中学生の二人は、相手が自分に力を与えてくれる存在だと知っているものの、大切すぎて恋人とかそういうものではない、というシチュエーションにまず悶えた。ピュア! ピュアすぎる!
十年の月日が流れて、シンは現実を目の当たりにして夢を諦め、アヤコは夢を叶えながら現実を遠くにしている、という相反する二人の状況がすごい。そこから二人がそれぞれに遠くにしていたものを見ようとして、掴もうとして、もがいて、その後にようやくやって来た二人の再会、というのが盛り上がりすぎてもうぼろっぼろ泣いた。シンクロしすぎた。
感動した。バイブルにする。オススメありがとうございました!

——ヴィクトリア王朝時代の面影薫る英国領・インド。14歳だったわたしは、祖国イギリスを離れ”国王の王冠にはめられた最大の宝石”と謳われた東洋の地で、一人の少女と出会う。オニキスの瞳に神秘的な雰囲気をあわせもつ彼女の名前はカーリー。彼女は、遠い異国の地で出会った、わたしの運命そのものだった——! 激動の時代に、イギリスとインドのはざまで描かれる運命の恋を描いた、高殿円のヴィクトリアン・ラブ・ストーリー、遂に開幕!(裏表紙より)
すっごく良かった! これは世界名作劇場でアニメ化してほしい……。
後妻の厄介払いでインドの寄宿学校に放り込まれることになったシャーロットは、教会の天辺の十字架に座るオニキスの瞳の美しい少女を目撃する。彼女は寄宿学校で同室となる少女、カーリーガード=アリソン。カーリーは言う。この身分社会という枠を取り払いましょうと。しかしシャーロットは、それは寄宿学校での身分上下、小さな王国(ステーション)であるオルガス女学院でのことだと思っていたのだが。
女の子ばっかりでかわいいなあとほわほわしていたら、少女漫画的要素ががーんと放り込まれて、すっごくかわいいと思った! ときめき、じゃなくて、いいなあかわいいなあというニュアンスを汲み取っていただきたい。とても良かったです!


「神よ、やめてくれ!」
アトリアの女王にとらえられた盗人ジェンはあまりにも残酷な刑を受けなければならなかった——。
アトリア、エディス、ソウニスの三国間の緊張が高まるなかは以後からせまりくる強大な帝国メデアの影……!?
戦いの渦は、それぞれの思惑を巻きこみ、さらに大きくなっていく——。(前編、折り返しより)
アトリアに侵入したジェンが、惨い刑を受けるところから物語開始。
わくわく冒険ものっていう児童文学おなじみな感じがあんまりなくて、政略がメインな感じがした。1の一人称から、2は三人称へ変わっているけれど、相変わらずしっかりした足取りで進む物語。
もし子どもから大人になることへの物語だとしたら、これほどきつい話はないなあと思う。右手を切り落とすのは、主人公としてはあまりに過酷だ。前編ラスト「……いかせてくれ」の辺りは、なんか暗く笑っているジェンが浮かんだ。
後編ではアトリアの女王を盗むと決めたジェン。ジェンのアトリアの女王に対する思いが告白されて、ぶっ飛んだ。でもなんとなく、ジェンは寂しいと感じている人、自分が不足していると思っている人などに感情を寄せている気がする。つまり放っとけない感じ。
アトリアの女王が『ひとり』である、ということをうまく使っているオチだったなと思った。そんな気はしていたのだけれど、もしこれでアトリアの女王に信頼される家臣がたくさんいたなら、このオチはあっというものになっていなかったかも。
アトリアの女王とエディスの女王の、名前呼びの周辺がとても好きだ。女王の仲良しは良い。
不思議な印象の物語だなあ、本当に。軽い感じはしないし、とことんファンタジーなわけではないし、冒険でもない。でも輪郭が濃く太い感じがした。

「なんだって盗める」
代々、盗人の家系に生まれついたジェンは町中で、そういいふらしていた。
彼にはある重要な目的があったのだ——。
アメリカで話題の冒険ファンタジー、日本初上陸!(カバー折り返しより)
主人公ジェンの一人称で語られる。でも、子どもらしい浮ついた感じはなくて、ものすごく頭の良い落ち着いた、それ故に生意気の少年、という感じ。
旅の途中のちょっとした小競り合いは、普通の物語だったらもっと大げさに書かれていたように思うんだけれど、基本あっさりと終わる。なんだかすっきりしないなあと思うところもほんの少しあったんだけれど、読み終わった今思うと、読者に考えさせるためなんだなあと思った。
ラストもそういうラスト。淡々とした語り口としっかりした足取りの不思議な印象の物語でした。なんだか好きです。神話とか絡めてあるのも素敵だけれど、物語の形がとても。

夜、森の中で開かれる市『夜市』。異界の住人たちが行き来するこの場所に行こうと言い出したのは、同級生の裕司だった。親切な老紳士と話し、彼に案内された場所で買い求めるものとは。「夜市」「風の古道」の二編。
ホラーに馴染みがないのでよくわからないけれど、しっとりとしたいい文章だなあと思った。個人的にはもっと書き込みが欲しい感じがしたけど、それは私感。
夜市の意外な結末と、風の古道の結末の流れがどうも似ている気がするけれど、私は風の古道の法が好きだなあ。ラストページの締め方がとても好きだ。
これは成長の物語ではない。
何も終りはないし、変化も、克服もしない。
その後も続くのが感じられる。物語後の諸々の事情はどうなったんだろうなあ。