読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

とある中学2年2組の35名。そのうちの20人の物語を綴った連作短編集。
心に響きすぎてしぬかと思いました。とある一クラスの姿が、20人それぞれの語りによって浮かび上がってくるのです。そして、中学生に存在する幼さと打算と不満と恋。どちらかというと恋がメインの物語のはずなのに、私が感じたのは、等身大の幼さでした。
豊島さんって、ものすごく、心が幼いがためのすれ違いをリアルに書く、と思いました。果歩と健次、エリナと晴一なんてその典型みたいな印象を受けました。
そして一番読んでいて幼いと思ったのは、恋愛模様がほとんどクラスの中で完結してしまっていること。世界が、とても狭い。
物語の女子が特に私自身のリアルに響いて、恥ずかしくて顔を覆ってしまいそうになりました。
帯があるのですが、
甘酸っぱい。ほろ苦い。だけじゃない——
あなたの”あの頃”をうずかせる
不慣れな恋の物語
本当に、過去がふるふると震えている感じでした。
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本書は、つぎのようなかたに向けて書かれています。
・脳内に文學少女を飼っている人
・これから飼おうと思っている人
・飼おうかどうしようか迷っている人
・もう飼うもんかと決意した人」
(本のなかは、逃げ場のない青空。——はじめに)
と書かれてあるので、オトメな書評集なのかしらーと思っていたら、とても軽快でちょっぴり辛口な、文学論、作家論、という感じでした。括弧が多くて読むのが疲れた。
文中に登場する本、取り扱われている本が、全然、私の読むものと傾向が違って、論じられていても「?」となって勉強不足を実感しました。
一番面白かったと思ったのは、「日曜日 芥川選評を読む」。芥川賞には受賞作全集なるものがあって、選評も読むことが出来るそうなのですが、これの選評にツッコミを入れてみた章。芥川賞は、優秀賞自体か、その作家に未来ありとして授けるのか、という苦悩なんかもあったようで、なるほどーと思いながら読んだ。

「悪霊よ、去れ!」
修験者を志す高校生・袴田幸太郎が力を込めて突き出した数珠は、しかし何の効果も生み出さなかった。「袴田さん、お上手ですね。凄い、凄いですよ」などと拍手とともに真面目に感心されたりして——袴田が転校先で出会った2人の少年は、それでもしっかりと、普通の人間ではないのだった。
母親の幽霊に育てられたという不思議な少年「伊佐」、万年不機嫌そうな雪女の息子「雪」。そんな彼らと一緒の道行きは、やっぱり怪異な事件のオンパレードで……。
1人と2匹(?)とその愉快な仲間達が織りなす、楽しくてハートフルな当世妖怪奇譚。(裏表紙より)
かわいい話だった。ボーイミーツボーイというのかな。妖怪の少年二人と人間の少年の、怪異な事件を追う話を三編収録。
派手な事件といえば、ちょっと気持ち悪い感じの怪奇な登場人物(幽霊とか妖怪とか)との戦いくらいで、あとはしんしんとお話が進む。
魅力的な登場人物ってこういうのなのかな、となんだか思うところあって考えてしまった。伊佐も雪も袴田も、ヒメも玄太郎も、みんなそれぞれ見えないところで動き回ってる気がする。全然何をしているのかは掴めないし、ご都合主義的に唐突に現れてぱっと解決してしまうんだけれど、現れると一気に文字の画面が華やかになるなあ、と。
明らかになっていないことがいくつもあるし、伏せられてもいるようなので、続きがとても気になる。

精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!(裏表紙より)
頭の中がえらいことになりました。どこからが現実でどこからが夢なのか段々分からなくなっていく後半で、ラストがラストなので、え!? と叫びました。
作中で、美貌の女性である敦子(パプリカ)は様々な男性から愛を寄せられるわけですが、やっぱりこれって男性の妄想の具現化だよなあと思うなど。あとがきにもありましたが、知性的な女性もいいけどキュートな少女もいいなという感じだなというのは結構感じました。
前半、中盤、後半と分かれている感じ。前半は夢探偵パプリカの活躍、中盤はDCミニを巡る争奪戦、後半は夢と現実にカオス感がすごかった。
今敏監督の「パプリカ」がまた見てみたいなーと思いました。よくこれを映像化できたなあ。

金髪トサカ頭の竜二が飲んだくれの落語家・笑酔亭梅寿の内弟子となって、はや一年。梅駆の名前はもらったものの、相も変わらずどつかれけなされの修行の日々を送っている。そんな中、師匠の梅寿が所属事務所の松茸芸能と大ゲンカ、独立する羽目に——! 東西落語対決、テレビ出演、果ては波紋騒動と、ますますヒートアップする笑いと涙の落語ミステリ第二弾!(裏表紙より)
1巻でワルだった竜二は形を潜め、時折悪態は心のなかでつくけれども、様々な問題に真剣に向き合おうとし、あらゆるモノを吸収しようとするしなやかさが見えてきているように思いました。つまりとても落ち着きを得ている。
1巻のクライマックスだったO-1グランプリの結果の後からの話が2巻の導入。竜二らしい落語を探る話で、竜二が一体どういう状況なのか自分にも分かっていないので読者にも分からず、もどかしくて、一体大丈夫なのかとハラハラした。
ミステリー成分はちょっと少なめの印象。どちらかというと落語とか人の関わりに重点を置かれている感じでした。

「お母さん、これは、ひどい」都会でフリーライターとして活躍するみずほ。地元で契約社員として生活するチエミ。かつて友人関係にあった二人の人生は、チエミの母が殺害されたことで再び重なる。逃亡するチエミを追い、突き動かされて聞き取りを始めるみずほ。何故チエミは姿を現さないのか? 二人の女性と母の物語。
すごかったです。いつもの辻村さんじゃない……とか思いながら、ごくごく読みました。
逃亡する友人を追うために聞き取り調査をする、というところから、その人物が「どう見られていたか」が描かれるので、そういう視点の向け方や描き方がすごいと思いました。一定じゃないけれど、何か罪深いものとして見られているのが分かるので、チエミが追い詰められていたように感じた。
母親がその娘にどう関わるか、という問題作でもあったように思います。ちなみ我が家は、私は若干チエミ入ってる。妹はもう関わらないでと反発して離れていくタイプ。うわーやべーと思いながら読みました。
チエミの逃亡理由は大体察せられるし、それが結局どうなったかも想像がついていたんですが、その中で母殺害の真相がすごかった。
S学院は多分青南学院(冷たい校舎の学校)だろうなあと思いながら読む。全然話の筋に関係ないけど。

些細なことがきっかけでいじめられるようになったトシちゃんとワタルの逃避行「ロードムービー」彼と塾の問題児の少女の「道の先」ヒロとみーちゃんが冬の冷たい校舎に至るまでの一幕「雪の降る道」。『冷たい校舎のときは止まる』から生まれた短編集。
表題作「ロードムービー」が、辻村さんらしいトリックでとても面白かった。いじめの結果がそういうものになったのも、素晴らしくかっこよかった。直前まで冷たい校舎を読んでいたので、トシちゃんが誰の子どもかと考えたり、タカノのおじさんと、綺麗なおねえさんににやっとしたり。結末でようやくお前らは! となったり。とてもおいしゅうございました。
「道の先」は冷たい校舎で最初に消えた彼の話。若干彼女も出てきます。大人になった彼がどんな風に希望を指し示すのかという話だったのかなと。多分、冷たい校舎での出来事と、彼女の存在がなければだめだっただろうなあという、彼の成長ぶりが分かる話でした。
「雪の降る道」は幼い二人と兄ちゃんの話。みーちゃんは相変わらず人の痛みに一生懸命で、意外にもヒロがわがままというか自分勝手なのがびっくりしました。冷たい校舎の方では大人しい印象だったので。でもわがままも仕方がなかったのかな、と思う背景があるので、きっとこれをきっかけに、ヒロはみーちゃんを大切に思うようになったんだなと考えると、正直にやにやします。
せっかくなのでノベルス版。



文庫版も貼っちゃえ。


ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヶ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友(クラスメート)の名前が思い出せない。死んだのは誰!? 誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作!(上巻・裏表紙より)
何度目かの再読。高校生の時に読んで、辻村さん大好き! と叫ぶきっかけになった作品。以降辻村さんを追いかけるようになりました。
上巻は、疑心暗鬼に陥って混乱しながらも冷静に推理をする人々と、充の話。
充の自己分析は、結構身に痛かった。優しいのは誰にも興味がないからだという。だからみんなに都合がいいし、頼られもする。傷を負った人を引き寄せもする。
ホストが誰か分かっているので、そういうのを考えながら読むのがやっぱり楽しい。
中巻は、清水、梨香、昭彦の話。一人一人の視点や悩みが、少しずつ自分と重なっていくのが分かってやっぱり好きだーと思う。なんで私の考えてることが分かるんだろうというのが、辻村作品が好きな理由なんだー。
今のところみんな恐怖を抱きながら消えていくけれど、消えた後、みんなはホストに対してどう思ったんだろう。こういうことになった原因がそうだから、仕方がないと思ったんだろうか、と考えたりする。
下巻は、菅原、景子、鷹野、深月の話。痛さが段々と増してきていて苦しかった。ただ、その中で、唯一自分から立ち向かうものを選んだ景子の話はかっこよかった。それだけに、鷹野が回避しようとした際の裕二との会話は、あれだけ短いのに痺れるほど素敵だった。
菅原の話はぼろぼろ泣いた。菅原の、何故『ひまわり』に来たくないのか、っていうのは、その通りだと私も思ってた。長編の一エピソードなのに、辻村さんらしいトリックや描き方で感動した。
鷹野の、深月に対する台詞。過去形かー!!! と思って泣いた。
ラストのまとまり方は、苦しいところを乗り越えた先に希望を見せてくれたようで、ほっとした。やっぱり好きだと思った。



文庫版も貼っちゃえ。


ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヶ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友(クラスメート)の名前が思い出せない。死んだのは誰!? 誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作!(上巻・裏表紙より)
何度目かの再読。高校生の時に読んで、辻村さん大好き! と叫ぶきっかけになった作品。以降辻村さんを追いかけるようになりました。
上巻は、疑心暗鬼に陥って混乱しながらも冷静に推理をする人々と、充の話。
充の自己分析は、結構身に痛かった。優しいのは誰にも興味がないからだという。だからみんなに都合がいいし、頼られもする。傷を負った人を引き寄せもする。
ホストが誰か分かっているので、そういうのを考えながら読むのがやっぱり楽しい。
中巻は、清水、梨香、昭彦の話。一人一人の視点や悩みが、少しずつ自分と重なっていくのが分かってやっぱり好きだーと思う。なんで私の考えてることが分かるんだろうというのが、辻村作品が好きな理由なんだー。
今のところみんな恐怖を抱きながら消えていくけれど、消えた後、みんなはホストに対してどう思ったんだろう。こういうことになった原因がそうだから、仕方がないと思ったんだろうか、と考えたりする。
下巻は、菅原、景子、鷹野、深月の話。痛さが段々と増してきていて苦しかった。ただ、その中で、唯一自分から立ち向かうものを選んだ景子の話はかっこよかった。それだけに、鷹野が回避しようとした際の裕二との会話は、あれだけ短いのに痺れるほど素敵だった。
菅原の話はぼろぼろ泣いた。菅原の、何故『ひまわり』に来たくないのか、っていうのは、その通りだと私も思ってた。長編の一エピソードなのに、辻村さんらしいトリックや描き方で感動した。
鷹野の、深月に対する台詞。過去形かー!!! と思って泣いた。
ラストのまとまり方は、苦しいところを乗り越えた先に希望を見せてくれたようで、ほっとした。やっぱり好きだと思った。

それは突然だった。保育園の頃、毎日遊んでくれた大好きだったお兄さんが、中学生になった夏実の前に現れた。「追われているんだ。かくまってくれないか」なんとお兄さんはロリコン男としてネット上でマークされていて!? こうして、夏実とお兄さんのちょっとキケンな逃避行が始まった——。可愛いだけじゃない。女の子のむきだしの想いが胸をしめつける、まぶしく切ない四つの物語。(裏表紙より)
『エバーグリーン』とか『檸檬のころ』タイプの小説を想像してたのに全然違ったー!
「あわになる」は良い意味での「さあ生まれておいでなさい」です。それはどう反応すれば……と若干困ったのですが、……本人たちがいいのなら良いんでしょうと納得してみる。
表題作は女の子とお兄さんの逃避行です。シリアスです。
「すこやかだから」は若干エロいです。女の子らしくない小学六年生とナイフを持ち歩く小学五年生の触れあいですが、雰囲気が背徳的。
変わって「ハローラジオスター」は大人っぽいです。女子大生の日々恋愛成分多め、です。遊ぶことに命かけてる感じの女の子の日々。希望があっていいなと思いました。
単行本版とはかなり内容が違っているらしいですとあとがきにありました。私が読んだのは文庫版です。