読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
最愛のいとこどの(ゲルトルード)の結婚にショックを受けるアイオリアのもとへ、さらなる衝撃報告がもたらされる。第一寵妃のオクタヴィアンが後宮を“卒業”するというのだ。彼女の引退をなんとしてでも阻止したいアイオリアに、オクタヴィアンは交換条件を申し出た。曰く、「《花園》に殿方を入れてくださいませ」……。
後世に遠征王と名高いパルメニア王アイオリアI世(注:♀)の後宮《花園》をめぐる、必笑ファンタスティック・ストーリー!(裏表紙より)
『運命よ〜』の前ぐらい、後宮が解体されていく少し前のお話。いきなりとてもファンタジーになっていましたが、とても楽しかった。扉を開けた向こう側、というのはとても好きです。この世界、すごく深くて果てがないのだなあ。しかしそろそろ過去の人の名前とどういうことをしたのかというのが一致しなくなってきたので、まとめが欲しい。
番外編という位置づけでも、大きなお話の一部なのだというのが、最後のゲルトルードとソフィーの会話で分かって、幸せな気持ちで本を閉じた。こういう、回想とか、邂逅とか、時間を越えて何かを思うというのに弱いんだ。
遠征王シリーズ、とても面白かったです!
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敵国ホークランドの地で、ミルザ将軍のもとに囚われてしまった女王アイオリア。一方パルメニアでは、大公ゲルトルードの命をうけた銀騎士ナリスが、主君奪還のために動き始めていた。
「……わたしはただ、あなたを守る剣でいたかった」
「そんなふうにおまえに側にいてほしいわけじゃない!」
消えゆく命、ほどける糸、そして闇の中で見失い、光の中でふたたび手に入れるものとは?——遠征王、その最後の遠征!(裏表紙より)
コメディでライトな陰謀ものだった一巻がここまでシリアスになろうとは! しかしどっちも好みです。すごいシリーズだったなあ(もう一巻あるけれど)。登場人物たちがそれぞれ闇を抱えながら、大切な光をそれぞれの胸に宿し……その結末。
光を手にしたかったというのは共通してあるだろうけれど、女性陣は母親になりたかったのだなあと思いました。子ども、母親、血縁あるいは血というキーワードがものすごい因縁をまとってシリーズで語られているような気がして、ぞくぞくとしました。特にベルディナッドのくだりは恐ろしすぎた。人間はどこに立っているのかというベルディナッドの叫びが。
「自分の作り出した闇の上だ。おまえたちは、生きている以上、光の上を一歩も歩くことはできぬ!」
歴史はあるがお金がない弱小国ボッカサリアの少年王に、後ろ盾めあてで求婚されてしまったパルメニア女王アイオリア。
だが訪問先で、いまや敵国ホークランドの将軍となったかつての夫、“蠍の”ミルザと再会して……!?
「約束を覚えていますか? わたしのプリマジーナ(いとしいひと)」
自分のために王位を捨てろというミルザ。さしのべられた手にあるのは、愛か憎悪か。——遠征王、その治世最大の危機!(裏表紙より)
中盤からの展開がそれまでと違ってこわい!(いい意味で) 遠征王シリーズは、誰かしらものすごい暗闇を抱えてるなあ……。それが面白いんだけれど、救われることはあるんだろうか。刻々と変化していく世界と、刻まれていく歴史が、とてつもなくおそろしいものに思える。
ボッカサリアのルキウスの見たアイオリアが、多分一番正確なアイオリア像なんだろう。色々な顔を持つアイオリア、甘え上手のひと。そのアイオリアがルキウスを導いているところは、本当に正しい王という感じなのに。周囲と己がそれを許さないというのは、なんだかやるせない。
「騒げば命がないと思え」
首もとに突きつけられた短剣。
鳴は言葉を失った。向けられた切っ先よりも冷ややかな、颯音の瞳に愕然としながら——。
身に宿る力が恐れられない戸谷ノ庄で、しばしの安息の日々を送る鳴と颯音。だが、異能集団「狐」を裏切った颯音に対し、組織から刺客が放たれる。二人で生きると誓った言葉を真実にするため戦いに赴く颯音を、鳴は送り出す。
信じているから。
共に生きると約束したから。
しかし、戦いを終えた颯音は、鳴に関する記憶の全てを失っていた——。
時は五百年の昔、戦乱の世。なくしてしまった大切な想いを取り戻すための戦いが、始まった。(カバー折り返しより)
ここまで読んで、常々二人には安穏な日々が訪れないように思えていたのだけれど、最後の選択を見て、一所に落ち着けない宿命があるのだなあとひしひしと感じた。二人がそれを打ち壊せる日はくるんだろうか。
いつも交代で語られる物語なのですが、今回は鳴の視点での話が多かったせいか、颯音の思い悩むところが少なかったためかもですが、颯音が非常にかっこよく見えたのでした……。鳴も懸命な戦う少女だったし。一方で幼女に妬くのは恋する乙女の宿命だ……! と妙な電波を受信してました。嫉妬する一生懸命な女の子かわいいです。
戸谷ノ庄での物語が一段落し、次なる舞台へ向かう模様。続きも読もう。
自身の才能を信じて絵を描いてきた清水あやめは、同級生の映像作品に打ちのめされた「しあわせのこみち」。息をするように嘘をついてきた「チハラトーコの物語」。中学の合唱コンクール、天木と松永郁也の出会いの話「樹氷の街」。三つの短編集。
「しあわせのこみち」に信じられないほど打ちのめされる。うわああってなる。どこが分かるって言ってしまうとあれなんだけど、本当にすみませんごめんなさいって言いたい。清水の気持ちも分かるし、田辺の気持ちも分かるし、翔子の気持ちも分かってしまう。
清水がつけた「幸せの小道」が出てくるこの話が、「しあわせのこみち」というひらがなのタイトルになっているのは、なんだかとてもいい。
「チハラトーコの物語」はアングラ的な何かを感じさせつつ、傷付いた人の話なのかもなあと思う。最後に希望が見えるという。アマノウズメ役をやったのは、『太陽の坐る場所』の彼女だと思われる。
「樹氷の街」。秀人があんまり出てこないけど、椿・愛なのはよくわかったので満足。天木は少し足りないなあと、鷹野と比較して思ったりする。みんなで何かをやり遂げる話は『名前探しの放課後』の方が勢いがあって好きなんだけれども、こっちの温かい感じもすごくいい。
遠征王アイオリア最愛の“いとこどの”こと女大公ゲルトルードが突如、倒錯青年貴族との結婚を宣言。猛反対のアイオリアはこの結婚を潰すべく暗躍(?)するうち、神聖シングレオ騎士団秘蔵の宝剣エヴァリオットをついうっかり抜いてしまう。そんな折、宮廷ではアイオリアを偽王とする声が高まっていた。「あれは王家の血を引いておらぬ」……出生の秘密ゆえ生命の危機に瀕したアイオリアを前に、ゲルトルードは——!?(裏表紙より)
あらすじのコメディさとは裏腹に、中身はかなりシリアスで陰謀策謀の内乱が起こる巻。段々世界観がはっきりしている感触が私の中であって、面白い世界だなあと。幻想的なものがかろうじて残っている世界の、人の争い。そこにそれら残っているものが介入したり、重要な位置を占めていたりして、面白い世界観だ。
ルシードとジルの結末が分かってしまったわけで、プリハー最新刊のタイトルにどうなるの! と思っている彼らの未来がこうなるというのは、やるせない半分、とてもリアルさがあって面白くてうなってしまうのが半分。
たった一文しか出ていないヘメロスと珊瑚がかわいくてきゅんとしました。一文だけでもえられるとかどれだけ好きなんだろう私。
男装の女王アイオリアI世の、愛妾の席がひとつ空いた。
さっそく栄誉ある後宮《花園》入りを賭け、国をあげての美女探しが始まり、お祭り好きの王様も政務を放りだして、みずからスカウトに出かけてしまった。ところがその旅先で愛妾候補として白羽の矢が立ったのは、王騎士ジャック=グレモロンの相棒、槍使いゲイリー=オリンザの娘で……!?
大人気、遠征王シリーズ第2弾!(裏表紙より)
薔薇の騎士を立てて愛妾を選ぶというのはとてもロマンチックなのに、そこにあるのは世界にある身分差や民族の迫害や、国家間の戦争だったりして、とても現実味があって、面白かった。面白いという表現はちょっと違うかもしれないけれど、生きているという感じがした。
かと思うとラストはものすごくシリアスで、まだまだ謎がありそうでわくわくする。シリアスとコメディのバランスすごいなあ。すごく楽しい。続きも読もう。
「怖くはないのか」
少年は言った。身のうちのどこかが、ひどく痛むかのように。
少年は、闇を抱えていた。
自身ですら気付かない深い闇を。
「……怖いわ。けれど、颯音。あなたと共にいられるのなら」
茜色の夕日が小さな部屋に射し込み、片隅に座る少女——鳴を照らし出した。
異能の力を持つ故に〈業多姫〉と呼ばれる少女・鳴。異能集団「狐」から、鳴を守ることを誓った少年・颯音。二人は旅立った。全てを捨てて。二人だけで。けれど、共にあることのできる時間は、あまりにも短かった。
戦が戦を呼ぶ戦乱の世。二人の絆が、試される——。(カバー折り返しより)
異能と少々の謎と戦いの物語。少年と少女がお互いを支えに生きていくシリーズの二巻。能力者が暮らす里に入ったはいいものの、そこでも変わらず戦いの気配はあり、裏切り者の存在があり、というのが今回。
話の進みが遅くて、じりじりさせられるのですが、二人の絆、思い合うところがとても切なくていい。大切すぎて、どちらも不器用で、遠ざけるか、駆けていくことしか知らないようなところが、とても愛おしい。二人が幸せになるのはいつのことだろう。
剣の腕をたよりに騎士をめざすジャック=グレモロンが、街の酒場で出会った青年オリエはとんでもないタラシ。なりゆきまかせにコンビを組んだ武術試合で、勝利を手にしたふたりだったが……気づけばなぜか女城守の愛人に!?
のちに遠征王と呼ばれた男装の女王アイオリア一世と、双刀の剣士——敵の返り血で朱と染まる姿から、《ジャック・ザ・ルビー》と渾名された王騎士の、これがはじまりの物語。(裏表紙より)
コメディファンタジー。政治情勢などシリアスなところはあるけれど、待てーい! というような笑い部分が多くて楽しかった。女性でたらしの主人公はままいるけれど、ここまですごいのは久しぶりに見た気がする。オリエかっこいい。この人はプリハーのルシードとメリルローズ(ジル?)の孫なわけなんだな。
世界観がすごく作り込まれている気がして、端々に感じられる空気がとてもいいなあと思った。時代の変遷が丁寧に描かれているような。
ヘメロス・ソーンダイクが出てちょっと嬉しかった。『黎明に向かって翔べ』が好きなのだ。
オリンピックを控え、急激に変貌を遂げていく東京。下町の古本屋で働く七人の少年たちが、勉強会を始めた。夢は独立開業。その資金のため共同で積み立て貯金を開始したが、青春期特有の人間関係の難しさに悩む。少年から大人へと脱皮するとき、誰もが味わうほろ苦い体験を優しい筆致で描く自伝的青春小説。(裏表紙より)
小説というより、過去日記? 東京オリンピックが開催される年に、出久根さんは二十歳を迎える。その少し前から、古書店で修行中の若者たちが集まってどうこうする話が書かれています。
印象としては、現代的な文体の文豪の日記や日常、という感じ。人間関係を丁寧に描いている感じが、そういう風に取れます。あんまり文豪作品には詳しくないのであくまでイメージ。
事件らしい事件は、主に人間関係にあって、そんなありふれたわずらわしさがなんとなく楽しい。そんな年じゃないのに、なんだかすごく懐かしくて、とても楽しいなあと思うのだ。